みんなでひとつの作品を作り上げるのだ!
学園もの、恋愛、バトル、SF、ホラー、コメディ……どんな展開になるかはみんな次第だよ!
連投にならない限り、自由に投稿してみよう!
なにか困ったことが出てきたら雑談掲示板で決めるのだ!
簡素な朝ご飯を無理やり口に詰め込みながら、後数日間をどのように過ごすかをぼんやり考えてみる。
こちらに来てから何も収穫が無かったわけではない。
でも、具体的に自分が何をすればいいのかは未だによく分かっていない。
レオの態度も相変わらずだ。昨日みたいに指示を仰いで突き放されるのであれば不快になるだけ損だ。
……それとも、もしかして、今しなければならないことって全て終わってしまってるのだろうか?
先程自分が言った通り、3時間前にあの猫が現れるまで本当にただ待ち続けるしかないのだろうか?
例えば、『事故に合いそうになる』という未来を強めるような何かしらの下準備が必要とか……いや、それも余計なことなのだろうか。
結局、僕はご飯を食べ終わるまでに結論を出すことが出来なかった。
判断に必要な情報が圧倒的に不足しているのだから、当たり前のことではあったけど。
「なんで君たちは争ってるの?」
考えてみれば、なんで僕がそんな争いに巻き込まれなくてはならないんだ。
彼女の命のためとはいえ、失敗したら元も子もないというのに。
「お前は知らなくていいことだよ。むしろ深入りすれば後悔することになるさ」
「でも、敵を知らないと対策が立てられないよ」
と突っ込んだ僕をレオははぐらかした。
「必要なことはそのうち教えてやる。それより朝飯はどうするんだ? ネズミで良ければ分けてやるけどな」
「夕べとは違う店へ行くことにするよ」
毎食同じコンビニで買っていては顔を覚えられてしまうだろう。
学校と逆方向に行けば、知り合いに会う可能性は減るだろうし。
食パンでも買えば安く上がるかな、などと考える。
「…………じゃあどうするのが最善だったんだよ?」
「さっき言っただろ。話すしか無かった。そもそもあの女の行動範囲内にいた事自体が間違いだったんだ。……何だその目は」
僕は苛立ち混じりに声を上げた。レオは釈然としない返答をしそれは更に僕を苛立たせた。
僕はあれこれ言われて正確に処理できるほど賢いわけでもない。
文句を言うくらいなら常に側について、指示を出して欲しいぐらいだ。
レオは何回も世界を行き来しているんだ。僕より経験は豊富だし、いざというときの対処法も彼ならいくらでも考えうるだろうに。
「レオは肝心なときに居ないか何も言わないよね」
「俺はあれこれ指示できる立場じゃないからな」
「どうしてだい? 君なら僕なんかより適切な判断出来るだろうに」
「……ダメだ。俺の考えは“奴”には手に取るようにわかる。嬉しくねぇことに“奴”とは長い付き合いだからな。“奴”は俺が虹色の猫のヒゲに近づくならば確実に邪魔しに来る」
「奴って?」
「お前も会ったはずだ。あの仮面のガキだよ」
僕は思い出した。少年のケラケラと笑う声と、鼻を突くような鉄の匂い。赤黒く染まった床。
「……君たちはどういう関係なんだい?」
「敵対関係。俺が9回も時を遡って争わなければならない程度の因果関係だ」
これで当面の衣食住は大丈夫、と安堵の息を吐く。
それを聞きつけたのか、どこからともなくレオの姿が現れる。
「間一髪だったな。あの女が理性的で助かった」
相変わらず感情の読めない憮然とした顔のレオに、僕は茜との会話を思い返しながら一応聞いてみる。
「僕の判断は間違ってなかったよね?」
「まあ、話すしかなかっただろうな。無理やり誤魔化そうとしたところで『過去のお前』に話されて詰むことは目に見えていた。あいつが電話をかけた時も肝が冷えたぞ」
「いやいや、茜だって馬鹿じゃないんだから、『過去の僕』に僕のことを話せば問題になること位は分かってたよ」
擁護する僕に、レオは何かを怒っているのか刺すような視線を向けてくる。
「馬鹿はお前だ。『今のお前』に過去一週間茜とかいう女と電話で会話することは無かった、という記憶があったら、その時点でパラドックスが起きてたんだぞ」
僕は考えた。
透に見つかるのは不安だが……このまま公園で寝て体調を崩したり、アクシデントに遭ったりすることを考えると、一日でもゆっくり寝られるのはありがたい。
肝心な時に体調不良で失敗、なんてことだけは避けなくてはならない。
「ありがとう。行ってもいいかい」
僕の返答に、茜の表情が明るくなった。
「よし! 独りで抱え込んでるよりそのほうが絶対いいって。後で連絡……、あ、それだとあっちの一樹につながっちまうのか、ややこしいな」
ちょっと考えて茜は言った。
「22時頃うちに来いよ。門開けて待ってる」
「わかった、本当にありがとう」
「気にすんなよ、友達だろ。飯食べるお金はあるのか?」
「大丈夫だよ」
この上世話になるわけにはいかないと、ポケットを探っている茜を止める。
「そうか……じゃせめてこれでも」
ポケットから無造作に取り出した飴玉を渡され、ありがたくいただく。
「そんじゃまた夜にな。気をつけろよ」
茜は走り去った。
茜は電話を誰かにかけ、そして直ぐに電話を切った。
と思うと再び電話をかけてまたすぐに切った。
茜は用が済んだのか僕のところに戻ってくる。
「……今携帯の電源入ってるか?」
戻ってくるなり僕の携帯電話を見せてくれと言ったので、僕はメールの中身は見るなよと言って渡した。
茜はなんで圏外なんだ?と首を傾げたが、時間を超えた関係なんだろうと肩をすくめた。
「今、一樹の電話番号に電話をかけたんだよ。そしたら普通に一樹が出てきて、兄貴と一緒に居るって言うし、兄貴に電話をかけてみたらやっぱり一樹と一緒に居るって言われてな……。アリバイ工作を疑おうにも発信履歴は未来の数字だったり、今日の日付で兄貴にそもそも電話しれなかったみてーだし…………やっぱり、お前の話は本当だったのか?」
にわかに信じがたい、と言った困惑の表情を見せる茜に僕は頷くしか出来ない。
「……寝るところはどうすんだよ?」
「金も限られてる以上、そこら辺で野宿しかないなぁ」
これに関してはにっちもさっちもいかない。ギリギリ1週間分の食費をまかなえるぐらいで、余計なお金を使う余裕なんて殆ど無い。
「だったら、うちに来い。めったに人が来ない倉庫があるんだ。兄貴に見られるかもしれねーがそれさえ気をつければ……」
僕は考えを巡らせ……そして首を振った。
「多分、無駄だと思う。僕をここに送ったやつの言うことによれば、事故を起こさないようにしても他の何らかの要因で死んでしまうらしいから。まあそりゃ、理想を言えばギリギリ事故が起こるか起こらないか分からない位になるように調整してリスクを減らせればいいんだろうけど、神様でもなきゃそんなこと出来ないし……。下手に手を出して死因が特定できなくなるより、事故死するっていう状態が確定している今の方がかえってやり易いと思うんだ」
「そうなのか? まあ私もよく分からないし、一樹がそう言う以上はそうなんだろうが」
考えの整理がつかないのか、険しい顔で茜は額に手を当てる。
「……ちょっと待っててくれ。確かめたいことがある。5分位で戻ってくる」
不意にそう言うと、茜は僕の近くから離れ公園の出口へと走って行った。
視界から外れる直前、僕は茜がポケットから携帯電話を出したのが見えた。
「未来から来たってことなのか?」
話を聞いた後、茜は言った。
「信じられないかい?」
やはり言うべきではなかったのだろうか?
複雑な顔をしながら茜は言う。
「お前が二人いるところを見れば信じられるだろうけどな……」
「それは勘弁してくれ。過去の僕にばれたら危険なんだ」
「とにかく、お前が困ってることはわかったよ。わかった、誰にも言わない」
「ありがとう……」
少しだけ気持ちが楽になった。
とりあえずは、最悪の事態は避けられたのだろうか?
「で、これからお前どうするんだよ?」
そう言われても、まだいい考えはない。
「事故が起こる3時間前に虹色の猫が現れるはずなんだ。それまで待つ」
「待ってるだけなのか? 事故を起こさないための手を打ったほうがいいんじゃないのか?」
「それは……」
そううまくいくのだろうか?
僕は必死に記憶を辿った。
この1週間で茜にあったか?
あぁ、ダメだ。それ以前に茜は透の妹だ。この事を茜が透に話さないわけがない。
当然、同じクラスの友人である透とは毎日顔を合わせているのだ。
学校で出会った『過去の僕』が怪訝な顔をすれば、透も何かがおかしいことに気づいてしまう。
最善の策は? 一番避けなければならない状況は? なんだ? 僕はどうするべきなんだ?
軽いパニックに陥り口をパクパクさせる僕をよそに、茜は茜なりに解釈する。
「ははーん、家出か? 親と喧嘩したとかで。
何も持たないでこんなところで寝てるなんてお前もバカだなー。宿に困ったらうちに来ればいいのに」
そう出来たらどれだけ楽だったか。言いかけるが口を噤む。
レオの話を聞く限り、過去の僕と今の僕が出会ってしまう事が一番まずいと思われる。
また、過去の僕が何かに気づいて、行動を変えてしまうことも避けたい。
万が一、春奈との約束の場所を変えたり、約束をしないということになった場合、
春奈の事故死は避けられるだろう。しかし、他の要因で死んでしまう可能性が高い。
何が起こるかわからない以上、不確定要素は作りたくなかった。
茜はもう、ここで出会ってしまった以上、ごまかしが効かない。
僕は賭けに出ることにした。
ここで全て話してしまおう。その上で全てを秘密にしてもらう。
僕の話を信じてくれることを祈った。
頭を起こすと、心配そうな顔をした小柄な少女の姿が目に入る。
「一体全体どうしたって言うんだよ、一樹。やっぱり何か問題を抱えているのか? 詮索しないとは言ったが家に帰ってないっていうんじゃ話は別だぞ」
「茜!? え、何でこんな時間に」
背筋を駆け抜ける冷気は、布団もかけずに野外で寝たことによるものか、それとも予想外の事態に対する驚愕のためか。
混乱する僕の姿に、茜は軽く溜息をついた。
「こんな時間って、朝の5時だぞ? 別にランニング位してたっておかしかないだろう?」
「それは……うん、そうだね」
詰問するような茜の視線から顔を背けつつ、僕は必死に頭を働かせる。
この1週間で「過去の僕」は茜と話をすることがあっただろうか?
もしあったとするなら事態は深刻だ。
公園で寝ている僕の姿を見た茜が、「過去の僕」と顔を合わせた時にそれを話題に出さないはずがない。
どうする、どうすればいい?
全部話すしかないのか?
今まで忘れていた寒さに、僕は震えた。
真冬でないのは幸いだったが、夏だったらよかったのに。
とはいえ、それはそれで夜でも公園に人目がある可能性が高くなり、困ったかもしれないのだが。
人目につかなそうな場所を探し、植込みの陰に横たわり丸まると、暖かく重い物が上に乗ってきた。
「重いよ」
僕はレオに文句を言った。
「猫は寒さに弱えんだよ。お前だって暖かいだろ、感謝しろ」
確かにこの温もりはありがたかった。
熱だけの問題ではない。
一人でこんな状態に置かれていたら、僕の心は耐えられなかったろう。
これからどうしようか。寝る場所はともかく食べ物は?
財布のお金は、倹約すれば7日間持つだろうか? 僕はともかくレオにも準備する必要があるのか?
答えが出ないまま、僕はいつの間にかまどろんでいた。
「おい、こんなところで寝てるのか?」
そんな声に僕の眠りは破られた。
辺りはうっすら明るくなっているところを見ると、けっこう眠っていたのだろうか。
レオじゃない。僕を起こしたのは、誰だ?
僕はレオの言葉に頷いた。
「……そんなに簡単な話でもねぇと思うがな」
そういったレオの口ぶりからは、レオ自身もどうすればいいのかわからないようであった。
僕は空き家を出て、公園へと向かった。
この時間軸の僕がいる以上、迂闊に出歩くことは出来ない。
しかし、寝るためには雨風をしのげる場所も必要であった。
あの日春奈と待ち合わせするまでは、しばらく公園は訪れていないはずだ。
ここなら過去の僕と鉢合わせる心配はないだろう。
僕は星が煌く夜空を見上げ息をついた。
猫も仮面の少年も、すごすごと引き下がる僕達のことなど気にも留まらないようだった。
逃げる、と表現するにはいささか切迫感を欠いた状態で、僕とレオは憮然としたまま出口へと向かっていく。
「もし、虹色の猫に頭を下げず、そのまま慌てて部屋を飛び出そうとしていたら、本当に僕は死んでいたのかな?」
汚れた歩きながら、ふと気になったことを足元のレオに聞いてみる。
「さあな。そんなつまらないことが気になるか?」
「状況的に考えて、以前の僕は虹色の猫に殺されたとしか考えられないよね?」
そこでレオが振り返り、何が言いたいとばかりの訝しげな顔を向けてくる。
しかし僕が廊下のある一点を注視しているのを見て、その視線を辿るようにして再び首を巡らせる。
そこにあるのは、先程レオが気付いて僕に警告した血溜りだ。
今なら言える。
これはきっと、逃げる途中で殺された「僕」の血によるものなのだと。
「でも、こちらも誠意……と言っていいのか分からないけど、とにかく敬いの心を持って接すれば、取り敢えず殺されずに帰ることは出来たわけで」
「……機嫌を損ねなきゃ何とかなるかもしれないって言いたいのか?」
僕は、自分が猫になっていた時のことを思い出した。
そうだ、猫だからってむやみに捕まえようとすべきじゃない。
話がわかるというなら……
僕は、血のシミがついている畳に膝をつき、頭をこすりつけた。
驚いている様子のレオに構わず、虹色の猫に訴える。
「お願いします。髭をください。どうしても必要なんです」
僕の言葉は通じているだろうか?
頭をあげると、少年が面白そうに眺めていた。
「泣き落としかな? まあ暴力に訴えるよりはましだよね」
虹色猫は僕になんの反応も見せず、ゴロゴロと喉を鳴らしていた。
「……行くぞ」
レオが言った。
僕はのろのろと立ち上がった。
パチ、パチ、パチ。
仮面の少年はゆっくりと愉しそうに拍手をした。
「いい度胸だね。この状況で自棄になってる、とも言えるね」
「そうだよ、逃げ出そうとした君もいた。君は過去から逃れられずに然るべき所で消えたよ」
少年は饒舌にクスクス笑いながら言う。
「ラストチャンスだ、君には特別にヒントをあげるよ。出血大サービスだよ」
少年は愉しそうに愉しそうに笑う。
「あっさり消えられても僕がつまらないしね」
「…………」
少年にとって、僕の存在など大した意味は無いのだろう。
ただ、己の愉しみのためだけに掌の上で転がされているかのようだった。
しかし、彼からヒントを聞き出せるならそれはラッキーだろう。
「この虹色猫は、君の大切な人が死ぬ3時間前に君の前に姿を現す予定なんだ」
「その時に、捕まえろってことかい?」
「まぁ、それが一番君がヒゲを手に入れられる確率が高いだろうね。捕まえる…なんて発想をした時点でおそらくヒゲは手に入らないだろうけど」
「……捕まえる、以外に方法があるってことかい?」
少年は僕の問いには答えず、クスクスとしゃがんで虹色猫の頭をなでた。
「この子は普通の猫とは違うんだ。あんまりいじめないで欲しいなぁ」
にゃぁん、と目を細めながら虹色猫が鳴いた。
「この子ほど話の分かる猫はいないよ」
猫の顎の下を撫でながら少年は言った。
レオの判断を仰ぐべき局面であることは理解している。
今の僕が自分の考えでベストな行動を選び取れるとは思えない。
だがそれでも、僕の体は凍りついたように動かない。
全身が恐怖で強張っているということもある
しかしそれ以上に、頭にこびりついたある疑念が僕をこの場に引き止めるのだ。
「おい、早くしろ!」
焦りを隠しきれていないレオの声に、僕は逡巡の末……首を横に振った。
「別に、僕は自分の理性に自信があるわけじゃないけど、でもレオがついていながら『8回も死ぬまで』虹色の猫に突撃したとは思えない。8回のうちに逃げようとした『僕』が一人はいたはずだ」
レオから仮面の少年へと視線を移す。
精いっぱい、威嚇するように睨み付けて。
「突っ込んでも、逃げ出そうとしても、いずれにせよ僕は死ぬんだろ? だったらこの場は焦らず待つことが正解のはずだ。お前達が何か行動を起こすまで」
「9人目って……」
どういうことなんだ。
「僕の前に、8人が失敗してるってことなの……?」
その8人の血が、これだというのか。
足がガクガクする。目の前が昏くなりそうだ。
「一旦引くぞ」
レオが言った。
「今は時期じゃない、だが時期は必ず来る。無駄な失敗を繰り返したわけじゃねえよ」
この場を去る以外、僕に何ができるだろう。
テオが人間だったなら、その体に縋りついていただろう。
僕はどうすればいいのか。
あえて触れないように、考えないようにしていたのに。
僕は仮面の少年につられて足元を見てしまった。
そのおびただしい凄惨な赤い痕跡、強烈な鉄の匂いに吐き気を催した。
「……僕には……関係ないから」
「関係ないわけ無いでしょ? 薄々わかってるんじゃないのかい? 認めたくないだけで」
「…………」
「君のだよ。“失敗した”君の血液だよ」
見透かしたかのような少年の声に心臓が掴まれたような感覚を覚えた。
「正確には君ではないけれど……どちらにしろ同じ人間だし、事情も成り行きも動機も似たようなものだ」
少年は謡う様にレオに問う。
「レオ、君の隣に突っ立っている彼は何人目か覚えてるかい?」
「…………9人だ」
――それじゃ、これがラストチャンスだね。
彼はケタケタとレオを馬鹿にするように笑った。
「ふーん……まあいいや、これは考え方の違いだからね。正しいも間違ってるもない」
投げやりで薄っぺらい声色に、これでは埒が明かないとレオに助けを求める。
「この結界みたいなの、何とかならないのか」
「……直ぐには無理だな」
レオの悔しそうな声に、仮面の少年はクスクスと忍び笑いを漏らす。
「まだ時期じゃないということさ。今このタイミングで、君達が髭を手に入れるという未来が存在しないんだよ。運命は絶対だからね……ところでこっちも聞きたいことがあるんだけどさ」
そこで仮面の少年はさっと手を広げ、並べられた料理を自信満々に披露するシェフのような仕草をする。
「このぶちまけられた血が誰のものかとか、何を意味しているのかとか、君達は気にならないのかい?」
「メールは見てくれたよね?」
少年は言った。
「頑張れば歴史は変えられるかもね。でも、君は彼女を助けられるのかな?」
「どういう……」
僕の頭の中でもやもやと疑念が渦巻く。
なぜ彼は僕のことを知ってるんだ?
「今回助けても、彼女は永遠に生き続けるわけじゃない」
仮面の奥の表情は伺えないが、少年の声が冷たく響いた。
「いつか必ず死ぬんだよ? それをちょっと先送りするだけさ。次の死が、彼女にとって幸福かどうかなんて保証はないんだよ」
ようやく彼の言うことが腑に落ちた。
だから、人は一度しか死ぬことはできない、なのか。
「……それでも」
僕は言葉を絞り出した。
「それでも僕は、彼女を助けたい」