館の扉を開き、目と足とを外界へ向ける。
穏やかな風吹く春の午後。
退屈と眠気を持て余した一人と一人の気ままな散歩。
*花風冴来(RKM002612)
大和無銘(RKM003437)
両名のお散歩RPトピックです。
何か御座いましたらキャラクターメール等でご連絡下さいませ。
………。
(視界を覆う疎ましい靄を払おうと目を擦る。
先ほどよりも幾分か鮮明に映る世界の中で
浜辺へと歩を進めた少年がその身を海水へ浸していく。
…何をしようというのだろう。
一体、何のつもりで。
春の海は冷ややかで、体温を無慈悲に奪うのに。
それに彼は、泳ぎを知らないのではなかったか。
海が気まぐれに起こした高波が
無防備なその身を攫いでもすれば。)
…無銘…。
(離れた箇所からでは届かぬか細い呼びかけ。
このままにしておく訳にはいかないと、その想い一つで
重い身体を立たせ、海辺へ歩を進ませる。
夕陽をの赤を映し、浜辺へ緩やかに寄せては返す波。
濡れることを厭わず海水に足を浸し
半身を呑まれたまま立ち尽くす彼の元へと近づいて)
…無銘、だめ…。風邪をひくから…。
(白く細い手で彼の腕を引き、「帰りましょう」と。)
…んっ、ちょっぴり冷たいのぜ。
(歩みを進め、先程の浜辺に戻って来る。
この季節故か辺りに人影は見えない。
そもそも人影があったとしても気にしないであろう少年は、ゆっくりとヘッドホン、花札、小太刀をマントに包んで波打ち際に置いて行き、
そのまま海の中に歩を進める。
歩を進める度に水嵩が増し、小さな少年の腰辺りまであっさりと濡らしていく)
でも、この冷たさが今の姉さんの心なのぜ?
(虚空に向かって問いかけ、そこで歩みを止める。
痛みを肩代わりする事も、共に背負う事も出来ない、許されないと言うなれば、
せめて、心を覆う影に従おう。
ぼんやりと身体の大半を水に埋めたまま、虚空を見上げていた目を閉じる。
禊というには穏やかな水流の中、暫くでも、この冷たさと重苦しさを味わう為に身体の力を抜いた)
……………?
(意識の外、少年の声で「行ってくる」と聞こえた気がした。
行ってくる。一体、どこへ。
続く鈍痛の中瞼を持ち上げ、緩慢な動作で顔を上げれば
ぼやけた視界に一人海辺へと向かう小さな後ろ姿が映る。
何をしようというのだろう。
…何処へ行って、何をしてもいい。
ただ、彼が成そうとしていることが
彼自身を危険に晒す事柄であるならば止めなければ。
それが不可能であるならば、せめて。
その想いが彼を想うが故の感情なのか
責任感の重圧から生み出されるものなのか、今はわからない。
思うだけ、見送りの言葉をかけることもできず
座り込んだまま、せめて見失ってしまうことは無いようにと
視線だけで彼の動向を追う。)
…………痛くないのぜ。
(寄りかかったまま、届かない小さな声を漏らす。
完全に自分の殻に篭った様子の人形の様にも見える少女。
それでも触れた身体からは確かな体温を感じる。
「そっとしておいてほしい」という願いとは真逆の行いが少女を傷付けると分かって居ても、
彼女の殻に触れられないとしても、
やるべきと感じたというだけの優しさとは似ても似つかない感情の元で起こした、ただ愚直に自分の決めた行動を貫いただけで)
足りない、足りないのぜ。
(なんの反応も示さない少女に、また小さく呟いては自分の手をじっと見つめて、
ベンチから立ち上がり自分の座っていた場所に先程の缶を置いては、そのまま少女の正面にしゃがみ込んで「ちょっと行って来るのぜ」と
今の自分に出来る精一杯の笑顔を向けては海の方に戻って行って)
…………………。
(身体を抱く力を強め、身を縮こめてはただ耐える。
鈍く痛む頭、いやに早い鼓動。
息をすることさえも今はただ苦しく、目を瞑れば端に涙が滲む。
けれど、この感覚には慣れている。
こうして内に閉じこもり、耐え続けていれば
また笑うことができる様になることは
これまでの経験から知っている。
……恐怖を、自分を押し殺すことにも、同じ様に慣れている。
これまで何年もの間、ずっとずっと
そうして生きてきたのだから。)
………………。
(彼が何かを言っている。
それに耳を傾ける余裕も今はなく。
身体にかかる軽い重みを煩わしいとすら感じてしまう。
そっとしておいて欲しいと。
何もしないで欲しいと言ったのに。
その重みを振り払うことは簡単ではあるが
今はその体力すらも惜しかった。
…願わくば、これ以上はもう本当になにもしないで。
今の私は、誰かの優しさを受け入れる余裕すらも
持ち合わせてはいないのだから。)
………
(目を伏せたまま、じっと少女の言葉に耳を傾ける。
無意識に足を地面に何度か当てつつ、胸に重たい靄が掛かるのを感じた。
叱責する事も出来る筈の少女の零した謝罪に何も言えなくなってしまう)
俺も、ちょびっと疲れちゃったのぜ。
んー…
(独り言の様に呟き視界を空に向ける
「そっとしておいてほしい」
そう言った少女と少年の距離はとても近く、そして遠い。
きっと、少女の言う通り時間を置けば、再び何時もの笑顔が見れるのだろう、
それ程に少女は強く、慣れている)
…だから、よっかかっちゃうのぜ。
俺は悪い子だから、怒られても知らないのぜ。
(心に暗雲が立ち込める中、小さな風が吹いた
「ダメだ、それじゃあダメだ」
とても自分勝手で、きっと深くなんて考えていない風
その風に従うように、少女の許可を取るでも無く身体を傾けて、寄り掛かろうとする)
…………。
(ふるりと首を横に振り、震える身体を両腕で抱く。
彼が悪いわけではない。
けれど視線を合わせられない。
見ずとも声の調子と雰囲気で分かる。
困った顔をしているのだろう。
大丈夫だと笑って、安心させてあげるべきで。
そうあるべき、なのだけど。)
…ごめんなさい、無銘。
今の私には、…………。
(謝罪のあとに続く言葉を飲み込む。
「今の自分には世界の全てが
牙を剥いている様にしか思えない」
それを彼に伝えたところで何にもならない。
自分も相手も、ただ傷付いてしまうだけ。)
……ごめんなさい。
落ち着くまで少し、そっとしておいて…。
(長い睫毛を震わせて瞳を伏せ
力ない声で、そう告げる)
良かったのぜ。
帰ったらお風呂入れるのぜー。
ちゃんと食べないとダメなのぜ?
大きくなれないのぜー。
姉さんも子供なら、ちゃんと食べないとだぜ。
(じっと少女を見詰めたまま
口元に指を立てる。
この1日という時間は、
少年を良くも悪くも成長したらしく、
瞳には少し強めの光が)
(どれだけ強がり背伸びをしてみせたところで
少女は少女のままでしかなく
自分一人を支えることで本来ならば精一杯。
その上で他人の全てを抱え込もうとし
気を使い続けるならば疲労を溜め込むのも当然といえる。
…その現実を少女が語ることはなく
自身を心配する少年に、「大丈夫」とそう笑う。)
子守唄…歌うのぜ?
姉さんはお休みするのが苦手みたいなのぜ。
だから、それ位はお手伝いしたいのぜー。
(疲れた表情を隠す様な笑顔
それから目を逸らす様に前を向けば、
「ゆりかごのうたを カナリヤが歌うよ
ねんねこ ねんねこ ねんねこよ」
記憶の奥底にある1節を小さく歌い始めて)
…?
分かったのぜ。
(手に持った瞬間に入った静止の声
不思議そうに首を傾げつつ言われるままに小太刀をしまう。
常に懐にしまい込んでいる小太刀は御守りの様な物、
しまい込む際に聞こえる声に目を閉じて集中しては、はっとした顔)
ごめんなさいなのぜ。姉さん
大丈夫なのぜ、此処には姉さんを傷付ける子は居ないのぜ。
でも、怖がらせちゃったのぜ。
(困った様に目を伏せて動きを止め、
手の中の缶に熱が移るのも気にせず弄んで)
あ、それは……。………。
(少年が取り出した小太刀。
それを見ればぞわりと肌が栗立った。
「忘れてしまいたい」と望むほどの
苦く痛い過去の記憶の蓋が開く感覚。
滲む冷や汗が掌を濡らす。
…ああ、嫌だ。嫌だ。嫌だ。
今、それを思い出すのは。)
…無銘。今その道具は必要ないわ。
早くそれをしまって頂戴。
(少年から、小太刀から目を逸らし、少し震えた声で、そう。)
ん?
私はお風呂に入るのは好きな方よ。
お腹を空かせたままでいるのも
ある程度は我慢できるけど
2日だとか、3日だとか、それぐらいになると辛いわね。
そうねぇ…。
夜の散歩も良いものだけど
今日はゆっくり休みたいかな…。
足が痛いわけではないけれど…。
…大丈夫。少し休めばなんとかなるわ。
(どれだけ強がり背伸びをしてみせたところで
少女は少女のままでしかなく
自分一人を支えることで本来ならば精一杯。
その上で他人の全てを抱え込もうとし
気を使い続けるならば疲労を溜め込むのも当然といえる。
…その現実を少女が語ることはなく
自身を心配する少年に、「大丈夫」とそう笑う。)
猫さんにも大丈夫だよって教えてあげたら
お風呂も入れる様になったのぜー。
初めて起きた時より、
お腹が空きやすくなった気がするのぜ。
姉さんは、どうなのぜ?
(西に傾く日を一瞬目で追えば
服の袖で目元をクシクシと拭う。
目の前にいる少女は少数派に属しやすいと覚えたらしく、首を傾げて)
鴉が鳴いたら1回帰らないとダメなのぜ。
もう一度出る時は、お月様が顔を出した時なのぜー。
足、痛いのぜ?
(ただの散歩というには色々な事があった
そんな事を思い出しながら、
何処となく寒気を感じては少女に身を寄せる
何やら考えている様子に、随分歩いた事で身体に何かあったのかと)
蓋なのぜ?
…!分かったのぜー。
(溜息を漏らす少女の言葉に頷き
同じくベンチに座っては懐から小太刀を出して)
水を嫌がる猫は多いわね。
ご飯も…。
ずっとお腹を空かせたままでいたいって
思う人は少ないでしょうね。
(少年の空腹の音を聞いて空を見れば日が傾き始めていて
昼食をとってから長い時間が経っていることに気がついた。)
そうね、そろそろ鴉が鳴き出す頃だわ。
お家へ早くお帰りなさいってね。
結構長く歩いたし、私も少し疲れたみたい。
(赤く染まりゆく夕空の下、袖引く彼にそう答え。
さて夕飯をどうしたものかと改めて思考を巡らせる。
此処へと歩を進めるまでの道すがら
昼食をとった店とは別の定食屋を見た気はしたが。)
ああ、それは蓋を開けないと飲めなくて…。
…取り敢えず座りましょ。
帰る前に少し休みたいわ…。
(疲労の滲んだため息ひとつ。
ふらりとベンチに近づき腰を下ろす)
猫さんたちは水浴びも嫌がるのぜー。
他には、ごはんなのぜー?
美味しいごはんを食べたら、
皆幸せなのぜー。
(そんな話をしていれば、
小さく少年のお腹がなる。
思えば昼の軽食屋から遠くに来たものだ)
わぅ…んー。
変な感じなのぜ。
…姉さんも疲れちゃったのぜ?
そろそろカラスも鳴くかもなのぜ。
(頭を軽く撫でられては、
疲れた様子の少女をじっと見詰めながら、
服の袖を緩く引いて)
誰も痛いのは嫌なのぜー。
声は聞こえなくても、姿が見えなくても
きっと、変わらない物はあるのぜ。
ひんやりしてるのぜー。
んむんむ…?
(冷えた缶を両手で持っては
不思議そうに顔を近付けてプルタブの辺りに口を付け)
…気持ちよくなるにも色々と種類があるのよ。色々と。
貴方が気持ちよく感じることでも嫌だと感じる人もいる。
わかってくれればそれでいいわ。
(頭をさげる少年に少々気疲れした様子で
困った様な苦笑を向け、ぽんと頭を撫で)
缶も乱暴にされたら痛いのかしらねー…。
はい、どうぞ。
(内部を興味深げに探る彼を見守って
差し出された両手に缶をそっと手渡す)
知らない方がいい事…なのぜ?
刺激って事は痛いのぜ?
痛いのは嫌なのぜー。
姉さんでも?痛くない人も居るのぜ?
何だか、よく分かんなくなって来たのぜ…
(少女の言動に小さく首を傾げ
じっと見詰める
「好奇心は猫を殺す」などという言葉を知る訳でも無い少年にとっては、
白い肌に浮かぶ朱にすら興味を引かれるらしく)
俺は水浴びしてると気持ち良いのぜ。
大切に優しくなのぜ?
姉さん、疲れてるのぜ。
んと、ぎゅーってするのぜー?
(そもそも「気持ち良くなる」にも様々な種類がある事を知らず、
小さく漏らした溜息に反応しては、
ゆっくりと両手を広げて見せて)
んー………
むー……………
………………………はふぅ
分かったのぜー。
このお話はおしまいなのぜ。
…ごめんなさい、なのぜ。
(少女の言葉に確かな拒絶を感じれば、
身体ごと目線を外し、
目を閉じて考え込む様に唸り出す。
頬の傷がピリピリと痛むような感覚、
少年に向けられた確かな意思は、何処か覚えがあり、遠い昔に飽きる程に向けられた、そんな感覚にも感じられた。
そんな感覚を1度飲み込んでは小さく息を吐き出し、少女に向き直ってはペコリ
何時も笑顔を浮かべたまま頭を下げて)
はじめましてなのに、変な感じだぜー。
友達になれると良いのぜー。
俺も何時かなるかもしれないのぜ。
その時には姉さんにも話かけるのぜー。
声だけでも届くなら嬉しいのぜ。
びっくりしたのぜー。
痛くなかったのぜー?
ぉー、くださいなーなのぜ。
(取り出し口と取り出された缶を交互に見ては
取り出し口に手を入れて中に触れる。
全体を撫でる様に触れては満足そうに頷き、
手を引き抜いて今度は缶に触れたいらしく
少女に両手を出す)
いや、あの…。
貴方ぐらいの内は知らない方がいいこともあるし
刺激が強すぎる場合も…。
私でも刺激が強すぎる場合もあるから…。
(しどろもどろになりながら目線をそらす。
若干頰が赤い。)
気持ち良くは…。うーん…。
何が気持ちいいかなんて人によって違うし…。
私だったら…一概には言えないけれど
大切に、優しくしてもらえたら嬉しいかな、とは。
(ふぅ、と小さくため息を吐く。
みんなが笑顔で。仲良く。
そうあれれば素敵だ、とは思う。
ただ、それが卓上の理想論でしかないことも、少女はよく理解している。
人は、それほど単純な生き物ではないのだ。)
…苦しくても隠しておきたいこともあるのよ。
どれだけ知りたいと願われても、知られたくないと思うことも。
相手に深入りして何もかも全てを暴こうとすることが
相手の幸せにつながるとは限らない。
貴方が言う様に、私はずっと怒っているの。
他でもない私自身にね。
これ以上は、教えない。この話はここでおしまい。
(少女の声はどこか固く、「これ以上は教えない」と
「これ以上は踏み入ってくれるな」とはっきり少年を拒絶する。
痛みに寄り添おうとする優しさが、人を傷つけないとは限らない。)
…もしかしたらあそこにいる子達も
貴方を見てムズムズしていたかもしれないわねー…。
同族がきた、とかそんな風に。
…驚いた?初めてだと驚くわよね。
(彼の様子にくすくすと笑い
商品口からジュースの入った缶を取り出して)
開ける前だけど、持ってみる?
(自販機の冷却機能により
ひんやりと冷えたジュース缶を手にそう尋ねる)
きっと難しい言葉が多いのぜー。
もっと勉強しなきゃなのぜ?
でも見るだけなら出来るのぜ。
読めなかったら姉さんに読んで貰うのぜー
(管理人の言に従い、
一部の本には手を付けなかったが、
よく考えてみれば絵本の様に絵だけで分かる本の可能性もあると考えてアホ毛がピンと立ち)
約束、なのぜ。
姉さんが気に入る本があると嬉しいのぜー。
…姉さん?
(話している途中、
少女が遠くを見る様な目をしているのに気付き
同じ方向に目を凝らして)
よっし、頑張るのぜー。
皆が笑顔で会えたら、喧嘩もきっと無くなるのぜ。
世界は広いけど、全部繋がってるらしいのぜ。
…あれ?姉さん姉さん、気持ち良くするってどうすれば良いのぜ?
(空を見上げ手を伸ばしてみれば、
太陽がスッポリと手のひらに収まる様に感じて嬉しげに目を細め、
ふと思い出した様に少女を揺らして)
やー、なのぜ。
姉さんが大人になったら、
もっと隠し事が増えそうなのぜー。
自分を許せなくなるのぜ?
…怒ってるのぜ?
(揺らすのをやめて、
じっと少年は少女を見詰める
アホ毛はユラユラと揺れるが、
まるで、何かを探す様に見続けて)
貴方に似ている…ふむ。
妖精は純粋な子供にしか見えないという話はよく聞くけれど…。
なんかムズムズしたから、
あの時はあんまりお話出来なかったのぜ。
次は頑張るのぜー。
…んむー
(初めてのあの場所に訪れた時、
まるで湖に写った自分自身を見ている、そんな感覚に身を竦めた事を思い出す。
考えてみれば、
目が覚めた時より聞いていた付喪の声、
しかし姿までハッキリと見える様になったのは何時からだっただろうか、
そんな、なんとも言えない違和感に目を閉じて)
おー、光ったのぜ。
触るとあぶないのぜ?
(光りだした自販機を見ては
軽く目を手で擦っては撫でられながら
次の指示を聞いて)
ふむふむ、触っても平気なのぜ?
これを押して…ほぉ?
(言われるままに先程の炭酸飲料の下にあるボタンを押す、
次の瞬間、小さな電子音とガタンッと少し大きな音がなってジュースが出てくると、
ワンテンポ遅れて反応する。
どうやら驚いているらしい)
大人用の本って…。
(そう聞いてまず最初に浮かぶのは
成人男性向けのアダルト本。
無論、それだけではないだろうが…。)
…うん、貴方にはまだ早いわね。
見せられないわね…。
(あの屋敷に居る性書収集が趣味だという
老人の霊を思い出し、少し遠い目)
「知ってしまったからこそ怖い」
と思うようなことも沢山あるけれど
知識が増えるのはいいことね。
是非連れて行って頂戴。
んー…。
気持ち良くしてあげれば、まあ多少は…。
誰とでも友達になれたらいいけれど
それはそう簡単なことでもないのだわ。
ちゃんと話をしたところで
理解して貰えない事だって多いしね。
(ふぅ、と一つため息をつく。
彼の無邪気な純粋さが眩しくて、少し苦しい。
それを疎んでいる訳では決して、決してないのだけど。)
…貴方がそう呼びたいならお母さんでも構わないわよ?
姉だろうと母だろうと、大して差はないしね。
(自分を頼ろうとしないことが歯痒いのだろう。
それがわからない少女ではない。
されるがまま、少年に身体を揺らされて)
…ごめんね無銘。
貴方に寄りかかってしまったら
私は自分で自分を許せなくなってしまうだろうから。
私が我慢するのは自分の為なの。
だからごめん。
貴方に似ている…ふむ。
妖精は純粋な子供にしか見えないという話はよく聞くけれど…。
(彼が口にした「似ている」という言葉が妙に引っかかる。
頭に浮かんだのは一つの仮説。
記憶がなく、妙に古い知識を持った不思議な少年。
この彼はもしかすると、実体を持った付喪なのでは。
…いや、まさか。)
この島というより、今の日本のお金ね。
(少年が硬貨を投入すれば金額パネルに投入額が表示されると共に
商品購入ボタンへ光がともり)
ん、じゃあ次は欲しい飲み物の下にあるボタンを押して。
そうすれば飲み物が出てくるわ。
(彼の頭をぽんぽんと優しく撫でて、そう)
絵本や大人用の本もあるみたいなのぜ。
大人用のは俺はまだ見ちゃダメみたいなのぜー
(そこに辿り着いた時、
そこを管理している声に聞いた話を思い出し)
知らない事が無くなったら、
怖い物もなくなっちゃうのぜー。
今度姉さんも連れて言ってあげるのぜ。
硬くて脆いのぜ?
難しいのぜー。
大人は大変なのぜ。
気持ちよくない…
だから硬くなっちゃうのぜ?
それなら気持ちよくしてあげたら、
柔らかくなるかもだぜー。
(言いながら少女の顔を見つけて
「姉さんも大人になったら硬くなるのぜ?」
と首を傾げて)
んー?
それなら、友達になっちゃえば良いのぜー。
沢山お話したら、分かり合うのもあっという間なのぜ。
ちゃんとお話したら、きっと分かってくれるのぜ。
(袖を摘んだまま、少女の話を聞く
自分も子供だと言いつつ、
それでも口を噤む少女に少年は…)
…我慢は身体に毒なのぜー。
それでも我慢するのぜ?
姉さんが大人みたいだぜー。
姉さんじゃなくて、母さんなのぜ?
…ねぇねぇ、おかーさーん。なのぜ。
(アホ毛がゆらりと揺れる。
少年は身体を前に傾けては
今度は袖ではなく、その先の身体に触れ少女を揺らそうと手を伸ばして)
ちょっと変わった子だったのぜ。
ううん、子達だったのぜー。
なんとなく上手く言えないけど、
俺に似てる気がしたのぜ。
(泉に導かれた時に
微かに聞こえてきた声たち、
姿は見えず何処かボヤけた様な声だったが
何故か妙な既視感をおぼえた事を思い出し)
なのぜ?
なら安心…なのぜ?
あ、これは知ってるのぜ。
この島のお金なのぜー。
(手に乗せられた硬貨を見て
少女に出会う前の知識を口にし
言われるままに自販機に硬貨を入れ
自販機に動きがあるのを待って)
あら、あのお屋敷に沢山本が?
(それは素敵ね、と微笑みかけ)
私は、そうね…。
沢山、山程読みたいわ。
そうすれば今迄知らなかったコト、見たことがないモノを
知って、見ることが出来るようになるから。
私の空虚を埋められるから。
ええ、人の想いは堅いのよ。酷く脆くて堅いもの。
大人になると、硬くなる。いい意味でも、悪い意味でも。
「自分は悪いものかもしれない」
「間違っているのかもしれない」
そんな風に考えるのって、気持ちよくないしね。
事情というものはきっと誰にでもあるのだわ。
私にもあるし、貴方にもある。
其れがどういったものなのかは、人によって様々だけど。
教えてあげられたら良いけれど、残念なことに
先ず相手に知りたいと思って貰えなければ
何も伝わらないことが殆どね。
(小さな手で袖を引かれれば、静かに穏やかに目を細め)
…ありがとう。私の可愛い、愛しい子。
だけど、貴方に私の荷を背負わせたり
枕にしたりなんてことは、少し気がひけるわね。
それで貴方が潰れてしまったら、私は本当に困るもの。
大丈夫よ、私は。大丈夫。大丈夫だから、心配しないで。
(彼の優しさをやんわりと拒絶し、微笑む。
…大人になれば堅くなる。
少女自身の口でそう言ったように、少女の想いもまた頑なで
いつの間にか身についた強がりの癖を脱ぐことが出来ない。
誰かに上手く甘える術など、とうの昔に忘れてしまった。
そもそもの話、自分はそんな術を識っていたことがあっただろうか…)
…私のいる泉にも?
(彼の言葉に目を丸くし、聞き返す。
「あの泉には妖精がいる」
そのような話をしているのは少女自身ではあるが
其れは少女の創作話に過ぎず
「いて欲しい」と願いはすれど
「実在している」とは思いもよらず…)
そう…彼処には、ちゃんといるのね。
(安堵の滲む声で呟いて、小さく息を吐いた。)
私は結構好きよ?
聞くよりも、実際に飲んでみたほうが早いわね。
(そう言って自身の財布から数枚の硬貨を取り出し)
はい。先ずは此処にお金を入れてごらん?
(彼の手にその硬貨を乗せ、料金投入口を指差してみせる)