館の扉を開き、目と足とを外界へ向ける。
穏やかな風吹く春の午後。
退屈と眠気を持て余した一人と一人の気ままな散歩。
*花風冴来(RKM002612)
大和無銘(RKM003437)
両名のお散歩RPトピックです。
何か御座いましたらキャラクターメール等でご連絡下さいませ。
心の病気…俺も気をつけなきゃだぜ。
姉さんもちゃんと食べるのぜー?
身体の風邪なら色々出来る事があるけど…
むむむ、
…?好き嫌いは無いのぜー?
(ふと思い出すは昔
風邪を引いた時の事を思い出しては考え込んでしまって)
本当は、痛いのも、悲しいのも全部消しちゃえれば良いのにだぜ。
我儘を聞いてありがとうございます、なのぜ。
…?我儘は今言ったのぜ?
ちょっと欲張りになるのぜー。
んー、姉さんは不思議な事言うのぜ。
全部消しちゃうのは、多分簡単なのぜ
でも、十人十色、色々な人が居るから、
世界はきっと綺麗なんだと思うのぜー。
(ゆっくりと身体を縮めては地面に片膝を付き頭を下げる。
何処か城仕えを連想する様なソレは、
少年なりの畏まった感謝の形の様だ。
少女の想いをある程度とはいえ感じた上での我儘
それが酷な事と理解したのか、褒め言葉に不思議そうに顔を見上げる)
姉さんは時々、とっても悲しそうな顔をするのぜ。
悲しい時は泣いても良いのぜ?
んー、
あんまりよく分かんないのぜ。
…もう1回飲んだら分かるのぜー?
誰かが塩を撒いてるんじゃないのぜ?
不思議なのぜー
(チラリと海を再び見るも、
先程の辛さを思い出しては首を横に振る
自分が「海」を知っていながら、
「塩水」の知識が無かった事の違和感には気付かず)
手がベトベトするから、ちょっと離れて歩くのぜー。
そう。心も病気になるの。
夕御飯、何を買って帰りましょうか。
貴方の為なら帰った後、なにか作るのもやぶさかではないけど…。
出来合いのものでも大丈夫?
…そっか。
いいわ。貴方がそうしたいなら、そうなさい。
我儘が人の為のものなんてねぇ…。
もっと我儘らしい我儘を言えばいいのに。
悪い子なんかじゃないわ。貴方はいい子よ。
世界が貴方のような心をもった人ばかりならきっと
誰も悲しまずに済むのでしょうね。
(彼の意思はどうやら固いらしく。
根負けする形で漸くそれを受け入れ、表情を崩す。
幼くとも、暖かな木漏れ日の様な優しさを持ち合わせる少年。
子供の頃は、皆この様な存在だったのだろうか。
自分が彼と同じ様な年頃であったときは…。
…さて、どうだっただろう)
「自分をもっと大切にしろ」って
大好きな人によく言われるのだわ。
そうしているつもりではあるのだけど
まだまだ足りないのかしらねー…。
怖いものってわけじゃないわ。
海の水は塩水で、塩の他にも色んなものがはいっていたり
道具を使わないと見えない生き物がいたりするから
人によってはかぶれたりする場合があるってだけ。
誰かが塩を撒いているわけではないけど
ずっとずっと昔の人はそう考えていたのかも。
(遠い昔。今よりも化学が発展しておらず
納得の出来ないことを納得できる様にする為には
ただ想像するしか方法がなかった時代では
「神様が海に塩を溶かしている」
と考えた人間もいるのかもしれない。
来た道を振り返っては数歩歩き、「行きましょう」と彼を促して
心の病気…なのぜ?
あふぅ、ちょっと疲れたから賛成なのぜー
でも、ずっとだとお腹が空くのぜ。
帰る時に何かを買って帰るのぜー。
(完全に少女の言う事を理解する事は出来ないなりに
感じる事があったらしく、
取り敢えずは風邪と同じ「よく眠り、よく食べる」を実践する事にしたらしく
歩いてきた道に想いを馳せる)
痛いのは嫌なのぜ。
怖いのも苦しのも辛いのも、全部嫌なのぜ。
でも、他の誰かがそうなるのは、もっと嫌なのぜー。
俺だって我儘は言うのぜー?
それに、俺はちょっぴり変で、
世界はこーんなに拾いのぜ。
だから、大丈夫なのぜー。
…意地悪その1なのぜ。
姉さん、その言葉をそっくりお返しなのぜー
(賢い訳でもなく、知識が多い訳でもなく
夢物語の様な理想、それを彼は自分で「我儘」と言って
少し少女から離れてはピッと人差し指を向ける
「人に指差しちゃダメって聞いたけど、今は悪い子だから良いのぜー」
と無邪気な笑みで)
むむむ、
塩水は怖い物なのぜー?
海は塩水の塊…でも嫌いじゃないのぜー。
呑まなければ安心なのぜー?
(手を軽く払って、クルクルと喉を鳴らす
なんとなく、あまり触れない方が良い物と判断した様で)
変な水なのぜー。
誰かが塩撒いてるのぜ?
自販機…んー、分かったのぜ。
私は…うん。
身体の病気はしていないけど、心の方が少しだけ。
眠るのは好きだし、ずっと眠っていたいと思う事も偶にあるわ。
帰ったら、一緒にお昼寝でもしましょうか。
流石に食べはしないけど
噛み付いてしまうことはあるでしょうね。
…左腕だけでも、食べられたら痛いわよ?
痛くて辛くて苦しくて、とっても怖い。
…それにね。
そうやって人に噛みつかずにはいられなくなってしまった存在は、普通余り受け入れられない。
世界には、貴方ほど優しくはいられない人も結構いるの。
「自分と違う」というだけで
例え相手が何も悪いことをしていなくても
自分が受け入れられない存在を
受け入れようとしているというだけでも
傷付け迫害せずにはいられないという人が結構、ね…。
…自分の身も心も、大切にしなさいな。
(少年の暖かな優しさを迷惑だと感じているわけでは決してない。
それを素直に受け入れられず、やんわりと拒絶するかの様な言葉を並べ連ねてしまうのは
ただひたすらに、ひたすらに、彼の心身を案じるが故。
過ごしやすく思える島の中にさえ、グロテスクに横たわり続けている苦い苦い現実を、寂しげな笑みで少女は語る。
「私はもう、悲劇は見たくないのです」と。)
ピリピリしたりチクチクしたり
ベタベタするってこともあるでしょうねぇ。
とはいえ、さっき掬った時にピリピリチクチクしなかったなら
それ程酷いことにはならないでしょうけど。
(心地悪げな少年を苦笑しつつもよしよしと宥め)
海の水はね、塩水なのよ。
塩が沢山溶けているから、そのまま飲むと辛いのだわ。
ううんと…。…ああ、そうだ。
来る途中、近くに自販機があったし
少し戻って飲み物を買いましょうか。
怪我して無くても痛いのぜ?
でも、確かに血の匂いはしないのぜ。
んー、
もしかして姉さんは病気なのぜ?
それなら、ちゃんとお休みしなきゃだぜ。
帰ったら新しいお布団敷くのぜー。
(スンスンと鼻を鳴らしては安心した様に身体を預ける
それでも少し考えては自分に出来るお手伝いを思いついて)
良かったのぜ。
姉さんに嫌われたら悲しいのぜー。
手負いの獣…
近づいたら食べられちゃうのぜー?
左、うん…左腕なら良いのぜー。
怪我を治すには御飯が居るから、仕方無いのぜー
やっぱり姉さんは優しいのぜ。
それを教えなかったら、もっと食べられたのぜー?
完全に壊しちゃう事も、出来るのぜー。
(彼女の言葉に、何処か納得した様に
そして何処か他人事の様に告げる。
無知な少年だからか、あるいは自分の身に無頓着なのか、
苦悩を孕んだ少女に、真逆の笑みを向けた)
んぇー…
確かに、こんなに辛い水に入ったら、
身体がピリピリしちゃいそうなのぜー。
大きな牙、電気が流れてたら、
このピリピリももっと強くなるのぜ…
(ぺっぺっ、と塩水を口から出そうとするも、
完全には消えず嫌な感覚が身体に残っている様で)
水を飲んだのに、口の中が変な感じなのぜ。
海は水じゃなくて海…って事なのぜー?
はてー、そういえば何処かで聞いた事があるような、無いようなー?
ええ。
何時も痛いのはとっても辛いわ。
今は、どうかな…。
痛くないと言えば嘘になるけれど
身体に怪我をしている訳じゃないし
昔よりは、ずっと楽。だから心配いらないわ。
…大丈夫よ、大丈夫。
(自身に言い聞かせるかの様に「大丈夫」とそう繰り返し。
触れ合う箇所から伝わる彼の体温に安堵の表情を見せ)
捜すこと自体を止めはしないわ。
意地悪な事だとも思わない。
ただ、そうね…。
傷付いている人間というのは手負いの獣と同じなの。
私なんかは、特にそう。
だからもしも見つけた時「傍に寄ると怪我をしそうだ」
と思ったら、一目散に逃げていい。
貴方が逃げてしまっても、私は恨んだりしないから。
だから、是非そうなさい。
(視線は遠く、水平線の彼方。
寂しがり屋の少女にとって、孤独の苦しみは忌むべきもの。
けれどそれ以上に、制御の利かない感情で
愛するものを傷つける事が恐ろしい。
故に少女はそう告げる。
「自分の苦しみに寄り添う事などせずとも良い」と。)
んー…。
例えばね、優しいと思っていた世界が
大きな牙を向けて噛み付いてくる時もあったりするの。
そういう現実を経験すると「大好きだけど大嫌い」って
思う様になってしまったり…あ。
(掬い上げた海水を口にしたのを見て言葉を切り)
…「海の水は普通の水じゃない」って
先に言っておくべきだったわねー…。
あー…。どうしましょう…。
何か普通の飲み物を持っていれば良かったのだけど…。
日常…何時も痛いのは嫌なのぜ
姉さんは、今も痛いのぜ?
怪我してるなら、見せてほしいのぜ。
ぴょん!ってひとっ飛びは出来ないのぜ、
歩いて行くしかないのぜー。
深呼吸、なのぜ。
…?
元の顔なのぜー?
わっ…んー、姉さんは暖かいのぜー。
(いまいち理解出来ないのか
小さく首を傾げるも、
抱き寄せられてはアホ毛が左右に揺れる)
誰にも見せられない姿なのぜー?
…それなら、探しちゃダメなのぜ?
でも、怖がってる姉さんを一人にするのは、嫌なのぜー。
んっ、それなら約束しなくても良いのぜ。
でも、捜しちゃうのぜ。
見つかったら覚悟してほしいのぜ。
ちょっぴり意地悪しちゃうのぜー?
(言い淀む少女を聞けば、
視線を水辺に戻しつつ
そんな事を言って、ベッと舌を出す)
皆で見れば、もっと綺麗な物になるのぜー。
(手袋を外しては水を手に組んで持ってきて見せ)
手が届く綺麗な物もあるのぜー。
好きと嫌いが一緒に?
どうしようもなく辛い思いなのぜ?
…こくっ、
………………か、辛いのぜ。
辛くは無いけど辛いのぜー…
私の場合は友達だったというか、日常だったというか。
まあ、友達にも「良い友達」と「悪い友達」がいるものだし
そういう表現もある意味正しいか。
ん、ゆっくりね。
焦るとろくな事がないし、一緒にのんびり探しましょ。
っと…言葉が悪かったわね。
「元の顔に戻せ」って言いたいわけじゃないのよ。
そんな事で怒り出すほど身勝手でもない。
どちらかと言えば笑っていてくれた方が嬉しいというだけ。
(彼へ歩み寄り、その小さな肩に手を当てそっと抱き寄せ)
あー…。
(じっと見つめられ、少し困った顔で言い淀み)
…私が隠れる時は大体
「こんな姿は誰にも見せられない」
という時が多いのよ。
不安で、悲しくて、辛い気持ちでいっぱいで
笑うことすら上手く出来ないような、そういう状態。
そういう時って大体余裕がないし
今よりもずっと臆病で、人が怖くて仕方ない。
だから、貴方に隠れる事を伝えることができるかというと
正直、かなり怪しいわ。だから約束するのは難しいわね…。
私も、綺麗なものは欲しくなる。
幾ら手を伸ばしても、届かないものだと識っていても。
しまっておくだけじゃなくて
誰かと共有することも、大切にする一つの方法よね。
怖くないのなら良かった。
確かに、優しい場所だとは言ったけど
「好き」と「嫌い」は両立するものだから。
例え優しくて大好きな場所だとしても
そこでどうしようもなく辛い思いをしたりすると、ね。
むむむー、
反対の考えなのぜー?
聞いてみないと分からないのぜ。
それこそもしかしたら・・・
もしかしたら・・・
んー、難しい事は分かんないのぜ。
(ふと、自分の言おうとした言葉に気づいて口を止める
今、自分が言おうとした事は駄目だ。
「優しい姉」とは反対の存在
それを言葉にするなら、恐らく自分とは相いれない存在
もし、それを誰かから聞いてしまったとすれば、
もしも、それを自分が納得してしまったとすれば
そして、彼女と対峙する時が来てしまったら・・・
そこまで考えては首を大きく横に振る
小さく息を吐いては目を閉じ伸びをした
一度お腹の中に溜まった悪い物を切り替える様に)
姉さんもなのぜ?
もしかしたら痛いのも、友達だったのかもしれないのぜー
友達が沢山なのは嬉しいけど、
ちょっとだけピリピリするのぜ。
個性なのぜー?
もっと沢山の本を読んだら、少しは分かるかもしれないのぜー
ゆっくり・・・なのぜ。
頼りにしてるのぜー、俺の心ー
む、むむむー
(自分の胸辺りをトントンと叩きながら
呟いては少女の言葉に首を傾げる。
不思議そうに自分の顔をグニグニと手で弄ってみるも、
どうやら自分は不安そうな顔をしているらしく
なんとか元の顔に戻そうとしてみるも、アホ毛が垂れていて)
かくれんぼするなら、話を聞かない様にするのぜー
ズルは駄目なのぜ、ズルは、
だから姉さんもかくれんぼする時は言ってほしいのぜ。
(少女の方をじっと見上げて
自分の口元に人差し指を立てる)
綺麗なキラキラは欲しくなるのぜ。
でもしまっておくだけが大切にする方法じゃないのぜー
胸がチクチクするのは嫌なのぜー。
怖く無いのぜー?
姉さんも言ってたのぜ。
此処は優しい場所なのぜー
ええ。
自分と正反対の考えをもつ人もいるし
楽しいことばかり、とは言えないけれど。
別の人に話を聞けば「優しい姉さん」とは違う私の話も
聞くことが出来るかもしれない。
その時何を想って何をするかは、貴方が自由に決めるといいわ。
(人には様々な顔がある。
今現在この幼い少年の目に少女が
「善い存在」として映っているのは
少女が「彼の前ではそう在ろう」と努めているからに過ぎず
この少女はその人形めいた美しい容姿とは裏腹に
罪の無い命を奪い、手を血で濡らした過去を持つ罪人でもあるのだ。
それを知った際、自分を軽蔑するか否かも
変わらず傍に留まるか、遠く離れるかも
全ては彼の自由だと、微笑のまま、静かに告げて)
痛みが懐かしいか…。
少しわかるわ。
私もそう思うこと、偶にあるもの。
全て忘れているつもりでも、心の方が覚えているのでしょう。
付喪の声を聴ける人は…。
まあ、余りいないということは確かでしょうね。
霊感というものに近いのかしら。
そういった個性を持っている人はちょっと珍しいの。
…大丈夫よ、無銘。
例え今は思い出せなくとも、心が覚えているのであれば
ゆっくり生きていくうち、貴方の過去に関係する事柄に触れた時には
心の方が「これ」と教えてくれるでしょう。
だから、そんな不安そうな顔はしないのよ。
(痛み、嘆き、罵声、嘲笑…。
脳裏に焼きつくほどに経験したそれらのことを
忘れ去ることなど到底出来はしない。
忘れたと、そう思ってはいても
それは記憶の海の深くに沈んで見え難くなっているだけだ。
一度知ったことを完全に知らなかった事にできるほど
人間は器用にはできていない。
……それがどんなに忘れ去りたい事柄であっても
忘れ去ることなど、出来はしない。)
館には沢山の付喪達がいるって言ってたものね。
隠れんぼはできないけれど、いつでも一人にならずに済むし
いつでも見つけてもらえるわね。
(驚く様子に自然と笑みをこぼしては
自身の傍から離れ、波と戯れる姿を静かに見守り)
ん、そうねぇ…。
キラキラしたものの中には綺麗なものも沢山あるけど
そうでないものも確かにあるわ。
胸の中がザラついて、苦い味がするものが。
水は平気?怖くない?
算数の勉強みたいに答えが1つじゃないのぜ。
んー、色々な人に聞いたら、
色々な答えが聞けて楽しいかもだぜ。
色々な考えがあるって分かっていても、
もしかしたら姉さんの別の顔も見れるかもしれないのぜー。
(言っている事とは裏腹に
それほど悪い顔は想像していないのか楽し気で)
痛いのは怖いのぜ。
でも、ちょっぴり懐かしい気もするのぜー。
不思議なのぜ。
付喪の声は皆には聞こえないのぜ・・・。
人の事を知るのは、ちょっぴり怖い事なのかもしれないのぜー。
十人十色、分かってても色々あるのぜー
(ふと、自分の手をじっと見てみる。
小さい手、争いには向かない事は確かでも、
それを差し引いたとしても、
ここ最近は本能の部分で争いを嫌う自分が居る事に小さく首を傾げる
物の声が聞こえる事も含めて、
何時かの様に過去に戻る事があったとしても、
目印になるような事柄すら分からなくては探す事すら出来ない)
・・・ほぁ、わわっ。
館は何処に行っても、一人にはならないから
かくれんぼは出来ないのぜー。
(ぼんやりと空を眺めていれば頭を緩く撫でられて
考え事を一度中断しては
少し驚くも嬉し気にアホ毛が揺れる)
でもキラキラしてるだけじゃダメなのぜ。
綺麗なキラキラや優しいキラキラ、色々あるのぜー
たまに嫌なキラキラもあるのぜ。
此処は良いキラキラなのぜ。
(1つ1つ、言葉を重ねながら少し離れて、
波打ち際まで歩を進めて服の袖で顔を拭う。
水に対する恐怖心は無いのか靴が水に濡れるのも気にせずに、
ゆっくりと深呼吸をして)
人の考えなんてものは
全部正しいし、全部間違っているものよ。
例え同じものを見たり聞いたり触れたりしたとしても
感じることは人によって違うものだから。
貴方にとって私が「優しい姉さん」に見えるなら
貴方にとってはそれが正解。
私にとっての貴方は「可愛くてお利口さんな弟」。
誰が違うと言っても、私にとってはそれが正解。
(満足気に揺れるアホ毛を見て微笑し
乱暴は嫌よねー…。痛いし怖いもの。
触れるなら優しくして欲しいわ。
ああ、いや。
貴方が特別変だというわけじゃないわ。
変なのはきっと、私の方。
それに、例え変だって言われたとしても
そんなこと気にしなくていいのよ。
人はみぃんな、大なり小なり変なものだし
貴方は貴方、他人は他人だから
無理してみんなと同じになんてならなくていいの。
猫のそれに似ているわねー。
人が余りこない様な静かな場所に隠れていると落ち着くの。
……よしよし。
(一瞬、悪戯好きな気質から
ぽかりと開いた口に指を入れたい衝動に駆られるも
理性で押しとどめ
かわりに優しく頭をぽんぽんと撫で)
ああ、成る程。
キラキラしたもの…。
貴方は綺麗なものが好きだものね。
暗闇を照らしてくれる灯りだとか
光を受けて輝く様なものが。
(納得したと頷き一つ、波の調べを奏でる海に視線を移す。
春の陽射し。総てを慈しむ様な光を浴び
幸福そうに揺れては煌めく平穏な海。)
姉さんにも分からないのぜ?
むむむー?
全部が全部正しい・・・そんな事もあるのぜー?
なら俺にとっては優しい姉さん、なのぜ。
これなら大丈夫なのぜー。
敵とか味方とか、良いとか悪いとか
ちょっとだけ、分かってきたのぜ。
(じっとしたから目を見つめれば
満足した様にアホ毛が揺れて
また、前を向いて)
乱暴な人は苦手、なのぜー
毛を引っ張られたら痛いのぜー・・・
なら、大丈夫なのぜ。
・・・?
やっぱり俺はちょっと変なのぜー?
(一瞬、何処か遠くを見る様な目をしては
首を横に振って)
猫が狭い所に入りたがる感じなのぜ?
結構落ち着くらしいのぜー
俺の好きな遊び、それなら・・・んー?
(考えれば考えるほど
館だけでは無く、自分にまで欠落している部分に気づいて
まさに話に出た自分の好きな遊び、それすら分からないらしく
無意識に空を見上げたまま口を大きく開けて)
海ってとってもキラキラしてるのぜ。
だから見てると分かるのぜ?
俺はちゃんと此処に居るのぜー
暗いと自分も隣に居る人だって分からなくなっちゃうのぜ
その質問には「わからない」と答えるしかないわね。
どちらなのかは私が決めることではなくて
私に関わった人達が決める事だから
優しい魔法使いか、悪辣な魔女か。
若しくはそれ以外の別の何かか。
人によって答は違うでしょうし
その答に私や貴方が
納得するかどうかは別にして
きっとそのどれもが正しいのだわ。
(好奇に瞳を輝かせ、こちらを覗き込む彼に
ただ静かに、彼女にできる精一杯の誠実さでそう返し)
私でもお友達になれたぐらいだし
乱暴さえしなければ貴方もきっと仲良くなれるわ。
少なくとも、嘘にする気はないけれど…。
……本当、不思議な子。
私自身ですら私を信用していないのに
どうしてまた…いや、いいか。
私の場合は好きというより、そうせずにはいられないだけ。
どうせ何かして遊ぶなら、貴方の好きな遊びをしたいわね。
それ程大掛かりな準備は必要ないけれど、まあ多少は。
そういえばあのお屋敷、タオルだとかそういったものはあるのかしら…。
(不意に浮かんだ疑問に小首を傾げ
彼が空を見上げればつられるように自身も天を仰ぎ)
…ええ、大きいわね。
空も、海も、私たちとは比べ物にならないぐらい。
ところで、無銘。
海で何かしたい事があるんじゃなかった?
んっ、忘れないで欲しいのぜ。
じゃないと、迷子になったら探せないのぜー
似てるけど、違う…
難しいのぜー
なら姉さんはどっちなのぜー?
ちょっぴり気になるのぜ。
(困ったような笑みを見ては
純粋な好奇心で顔を覗き込む
あるいは、何かを感じ取ったのか
触れる手に力を込めて)
猫のお友達なのぜ?
黒くてふてぶてしくて、いい子…
不思議な猫さんなのぜー
仲良くなれたら嬉しいのぜ。
姉さんなら大丈夫なのぜ。きっと
(少し想像しては
何故か少女の頭の上に乗る黒猫が浮かぶ
それに小さく微笑んでは
疑いを知らないとばかりに信用を表して)
廃墟なのぜー?
かくれんぼしたいのぜ?
今度一緒にするのぜ?かくれんぼ
でも、あんまり隠れるのは得意じゃないのぜ。
むぅ…風邪ひいたら嫌なのぜ
やっぱり水に入るなら色々準備が居るのぜ?
今度皆に聞いてみるのぜー
(潮風に鼻をならしながら
少しだけ不満が表情に出る。
年相応に頬を小さく膨らせながら
砂に靴が軽く沈む感触を楽しみつつ
今更ながら館に備えの類はあっただろうか
そもそも自分の持ち物は今身に着けている物と
似た物しか無かった事に気づいて
ポケッと空を見上げる)
ほわっ…でっかいのぜー
知ってるわ。私も貴方のことは大好きよ。
さあてねぇ…。
「一緒にいる」という事と「寄り添う」という事は
似ているようで違うものよ。
「ただ一緒にいる」だけじゃ「寄り添っている」とは言えないし
それが出来ているかどうかの判断を下すのはいつだって他人だから。
(礼と共に頭を下げる彼に少々困った様な微笑を向け)
ん、猫と言えば私には黒猫のお友達がいるのよ。
態度はふてぶてしいのだけど
人慣れしていて自由で。とってもいい子なの。
いつか貴方に紹介したいものね。
貴方との約束を嘘にしない様に頑張るわ。
自然もそうだけど、廃墟も似た様なところがあるわねー…。
探す側にとっては困りものだけど
隠れたいと思っている人にとっては
それが心地良かったりするのよ。
服を脱げば…まあ、確かに。
だけど、貴方が言う様に濡れたままだと寒いし
身体を拭く為のタオルもないから今日はお預け。
また今度ね?
(冬の時期は過ぎ去ったとはいえ
濡れそぼった身体で外を歩けば
たちまち風邪を引くだろう。
それに加え、幼い少年である彼はまだ兎も角
年頃の少女である自分が人目につく場所で裸体を晒すのは
色々と問題がある。…倫理的な意味で。
穏やかに諭しながら進むうち、靴が浜辺の砂を踏み)
…はい、到着。お疲れ様。
なのぜ?
俺は姉さんが好きなのぜ。
秘密って約束しちゃったから、姉さんにも秘密なのぜー
ちょっぴり残念なのぜ。
皆独りきり…
皆で寄り添えるなら独りきりでも寂しくないのぜ。
だって姉さんは、こうやって俺の横に居るのぜ?
それって姉さんが俺にも寄り添ってくれたって事なのぜー
俺もありがとうなのぜ。
(小さく首を傾げては、
記憶を失った後の約束にアホ毛が少し垂れる
そういえば、自分が探している猫も何か約束が関係あった様な気もして
その約束を思い出そうとするも、
少女の言葉に再び首を傾げて
再会した時を思い出したのか
嬉しそうな表情のままペコリと小さく頭を下げる)
綺麗な物も可愛い物も沢山なのぜ。
この前、小さな仔猫を見付けたのぜー
色々な所にお散歩したのぜ。
今日通らなかった場所も沢山なのぜー?
疲れたらお休みしながら、沢山沢山いろんな場所に行きたいのぜ。
…や・く・そ・く!なのぜ。
(探し物をしながら歩いた場所
それを二人で、あるいはもっと大勢で散歩をする事を想像したのか
アホ毛がピンと立ち分かり易くご機嫌になって)
良かったのぜ…
自然は優しいけど、物を隠しちゃう事もあるのぜー
隠れちゃったら探すのも大変なのぜ…
なのぜ?
服を脱いだら泳げるのぜ。
でも濡れたら寒いのぜー?
(ふと、自分の服装を見る
黒ずくめかつ肌を殆ど露出しない服に少し渋い顔をして
暖かな日差しがあるとはいえ
この時期に濡れた後に拭かずに服を着直しては色々とマズく
逆に夏あたりだと平気で脱ぎ出しそうともいえて)
どうかしらねぇ。
私は、余り人には好かれないのだけれど。
ああ、見せたくないものは内緒にしておいてくれて構わないわ。
無理やり見る気なんて少しもないし。
人はみぃんな独りきり。
他人に出来るのは、寄り添う事ぐらいだけだからね…。
「私は人を思いやれる存在だ」なんて自信は少しもないけれど
貴方がそういってくれるなら
貴方にとっての私はそういうものなのかもしれないわね。
ありがとう。
(楽しげに揺れる彼の様子に
何故だか少し救われた様な心地になり
口元に自然な笑みが浮かぶ。
…この子はきっと、沢山の人に愛される
幸せな人間へと育つだろう。
きっと、必ず。)
私に見て欲しいもの?
それって綺麗なもの?可愛いもの?
それとも、そのどちらでもないものかしら。
そういえば、貴方とこうして二人で出かけるのは
今日が初めてだったわね…。
…うん。これから二人で色んな場所へ
沢山お出かけしましょうね。
それぐらいの時間の猶予は、私にもまだ残されている筈だから。
ふふ。冗談だから大丈夫よ。
私達の”お母さん”も春の時期は大体優しいし
子供を無理やりさらう程荒ぶったりはしないでしょうから。
ん?そうか…貴方には泳いだ記憶が…。
まあ、今日はこの服装だし泳ぐ準備もしてきていないからねぇ…。
今日は泳ぐのは諦めて
波打ち際で遊ぶぐらいに留めておきましょうか。
もしかしたら海に触れている内に
そういった記憶が顔を出すかもしれないわよ?
おばけなのぜ?
姉さんはおばけにも好かれる人なのぜ。
見せられるものもあれば見せられないのもあるのぜ。
その時が楽しみなのぜー
自分か相手のか分からなくなっちゃうのぜ?
きっと姉さんは思い遣りの心が強いのぜ。
「人は他人の気持ちになる事は出来ない、思い遣って近付く事ならなんとか出来るけど」
そう何処かで聞いたのぜ。
姉さんは沢山近づけるって事なのぜー
(なんとなく、ヘッドフォンを耳につけて付近の音に集中してみる
色々な音が聞こえる中にノイズの様な音が混じるが
それを合図に頭の中に渦巻く思考をリセットしては、
アホ毛を緩やかに左右に揺らしながら何処か嬉しげに身体も揺らして)
何時も一人で歩いてるけど
やっぱり並んで歩きたいのぜー
そっちの方が楽しいのぜ
(戻る場所がある事に対する安堵を感じつつ
それの名前を知らずに楽しみと表現して、
頭を撫でられながら力を抜き)
その時は、俺が姉さんを引っ張って行くのぜー
いっぱい見て欲しい物も場所もあるのぜ?
その頃には姉さんも、もっともっとつよくなってるかもしれないのぜ。
まだまだ海は冷たいのぜ。
流されちゃったら危ないのぜ?
むむ、そういえば俺は泳げるのぜ・・・?
(更に歩を進めながら、ふと疑問が湧く
そういえば泳いだ記憶は無かった気がしたのか
小さく首を傾げてしまい)
要するに、自然と霊に取り憑かれるってこと。
その良いもの、どんな物か気になるわ。
今後私にも見せてくれる?
呑まれるというのは、そうね…。
それが自分の気持ちなのか、相手の気持ちなのかわからなくなる。
と言えば伝わるかしら。
例えば、怪我をして痛がっているのは相手なのに
自分が怪我をして痛がっているのだと
勘違いをしてしまったりね。
(世界は限りなく広く、過去に見た世界も
今見ているこの風景もその一部分でしかない。
世界全てを見て回るには
一生分の時間を費やしてもまだ足りないだろう。
故に、世界全てを知ることは叶わない。
だとしても、少しでも多くを知りたいと。
今はそう思う。
その度に、この心が軋むとしても。)
ふふ。
こうして私の傍に戻ってきてしまっているのに
遅れるもなにもないでしょう?
(やはりまだ独り歩きは不安なのか
親を求める子の様に此方へ駆け戻ってきた少年をみて
くすぐる様に笑って頭を撫で)
でも…。でも、そうね。
いつか貴方も私の手を離れて
独りきりでも前に進んでいける様になるのだわ。
私もそれに負けない様に頑張らないと。
ええ。
気合い充分、って感じね。頼もしいわ。
春の海は穏やかだけど、もしも波に攫われたら
貴方に助けてもらおうかしら。
(などと冗談を口にしながら、再び歩を進める。
遠く、近く、寄せては返す波の音。
全ての生命の母は、もう目の前に。)