館の扉を開き、目と足とを外界へ向ける。
穏やかな風吹く春の午後。
退屈と眠気を持て余した一人と一人の気ままな散歩。
*花風冴来(RKM002612)
大和無銘(RKM003437)
両名のお散歩RPトピックです。
何か御座いましたらキャラクターメール等でご連絡下さいませ。
お勉強なのぜー?
見たり聞いたり本を読んだりなのぜー?
本を読むと眠たくなるのぜー。
んー、確か何処かに沢山あった気がするのぜ。
姉さんは沢山読みたいのぜ?
(館は広く、住処にしている少年も完全には把握しておらず
探検していた時、図書館の様な場所を見かけた事を告げて)
難しいのぜ?
なるほどー、それなら
人の想いを曲げる事になっちゃうのぜー。
人の想いは堅いのぜ。
大人になると、もっと硬くなるのぜ?
事情…なのぜ?
姉さんには事情がないのぜー?
怖がりさんなら、怖く無いよって教えてあげないとだぜー。
(ほぅ、と小さく息を吐いては
少女の悲し気な表情を見ながら話を聞き)
罪は消えない…
荷物見たいに置く事も、捨てちゃう事も出来ない…
姉さん、姉さん
(くいくいと、緩い力で袖を引いて)
大丈夫、なのぜ。
重たい荷物なら、一緒に持ってあげるのぜ。
たまには枕にしちゃっても良いのぜー。
(幼い少年は無邪気な笑顔を浮かべる。
少女の顔を見たからこそ、なんとなく感じたからこそ、
「大丈夫」と何度も繰り返しながら更に袖を引いて)
沢山お話すれば、沢山分かりあえるのぜ。
俺も姉さんと皆の事をもっとお話出来たら嬉しいのぜー。
姉さんがよく居る湖にも似た感じの子も居たのぜー?
また会いたいのぜー。
美味しいのぜー?
ちょっぴり気になるのぜー。
…ほぁ、なんだか不思議な雰囲気の…なんなのぜー?これ
(ペタペタと指差された飲料水に触れようとするも
ガラスの様な物に阻まれて小さな指紋が付くだけで、
やはり不思議そうに首を傾げ)
時間もそうだし、お勉強すればわかるわ。
色んなものを見たり、聞いたり…。
私だったなら…本を読むわ。
沢山、それはもう沢山山のように。
壊しちゃえばいいのだけど、法律を壊すのは難しいの。
今迄それを守って生きてきたのにそれを壊してしまったら
「今迄の自分達は間違っていた」と認めることになるし…。
自分が間違いを認めるのは、大人になると難しくなるの。
他にも色々と、沢山事情があるのだわ。
私はそうは思わないけど、そう思う人の方が多いから。
みんな怖がりで、怯えているのよ。
(悪いことをしたならここで正せばいい。
そう言う彼に少し寂しげに微笑みかけ)
…そう。間違えたなら、正せばいい。
二度と、もう二度同じ事をしないよう
何が悪かったかを知って、反省して。
でもね無銘。よくお聞き。
例え心の底から反省して間違いを正しても
間違いを犯した罪まではなくならない。
そして、一度壊してしまえばもう二度と取り戻せないものを
壊してしまった罪は、完全には償えないの。
(…そう。人の命は、一度失えばもう、取り戻せない。)
何時か、何時かか…。
早くその「何時か」が来て欲しいわ。
そうすれば貴方のことも、付喪達のことも
きっと今より理解できる筈だから。
コーヒーも炭酸も知らないか…。
まあ、そうよね。
…じゃあ、これはどう?
(自販機を弄る彼を愛らしく感じながら
自動販売機のラインナップを眺め
白いに青の水玉が描かれた缶の
炭酸入り乳酸菌飲料水(○ルピス)を指し示す)
みんな大変なのぜー…
俺も頑張って鍛えなくちゃいけないのぜ。
弱いままじゃ、呑まれちゃうのぜー
悪い物の影響なのぜ?
むむむ、難しいのぜ。
時間が経てば分かるのぜ?
ほーりつがあるのにあやふやなのぜ?
まるで役に立たないなら…
役に立たないなら、壊しちゃえば良いのぜー
悪い人は普通に暮らしちゃ駄目なのぜ?
捕まったら嫌なのぜー。
姉さん、悪い事したのぜ?
それなら、今ここで正せば良いのぜー。
小さな猫さんなのぜ。
久しぶりに見たのぜー。
でも、何処か行っちゃったのぜ…
(少年の見る景色の中でも
猫の付喪は珍しかったらしく、
小さく空に向かって手を振る。
この瞬間
付喪が消える瞬間を見た事は何度かあったが、
少年も彼らについて詳細を知る訳でも無く、
何かを考える様に首を傾げて)
なのぜ?
大丈夫なのぜー。
姉さんも何時か見えるようになるのぜ。
水が美味しく無いのに人が沢山居るのぜ?
むー、あんまり音が多いと困っちゃうのぜ。
楽しい事も沢山なのぜ?
難しそうなのぜ。
いっぱいあるから、迷っちゃうのぜー。
こーひー?たんさん?
んー、よく分かんないけど、
どっちも知らないのぜー。
(自販機に触りながら少女の方を見る
未知の物に興味津々といった様子で適当なボタン等を押しているが、
やはり使い方は分からない様で)
そう。みんな修行中なのよ。
子供だけじゃなくて、大人もね。
「使えない」んじゃなくて、「使ってはいけない」だけ。
身体に悪いものだから、悪いものの影響を受けやすい子供のうちは
大人になるまで我慢しておきましょうね、って決まりなの。
考え方次第ではあるけれど
法律があってもあやふやな時はあるし
まるで役に立たないこともあるわ。
…例えば、貴方にとって「優しい姉さん」である私が
法律上はとても悪い人間で
「悪い人間は普通に暮らしていてはいけない。
檻の中に閉じ込めて置かなければいけない」
と誰かが私を捕まえにきたら。
貴方はそれを笑って受けいれられる?
…猫?
(頭の上に猫がいる。
そう聞けばきょとんとした表情で頭の上にそっと手をやる。
その手にそれらしきモノが触れることは無かったが
彼が嘘をついているとは考えづらく。
そういうモノがいたのだと納得すると同時に
1つの仮説が頭をもたげる。
彼が探している猫、とは。)
…貴方が探している猫ってもしかすると
私には視えない存在なのかもね。
(そう言って、少し寂しげに苦笑する。)
まあ、都会の水は美味しくないとよく言うけど
悪いことばかりでもないと思うわよ?
都会は人が沢山いて、賑やかで、刺激的で
慣れることが出来れば楽しそうだし…。
なにを飲むかにもよるけど、大抵のものなら美味しいんじゃないかしら。
でもコーヒーはダメね…。あれは苦いし…。
…炭酸ジュースって、飲んだ事ある?
(コーヒー、お茶、ジュース。
様々な飲料が並んだディスプレイ。
その中から彼の口に合い
尚且つまだ飲んだ事のない飲料を選んであげたい。
そんな想いからそう尋ねる。)
20歳で大人なのぜ?
んと、ひーふーみー…沢山なのぜ。
ほーりつ…皆、修行中なのぜー?
姉さんも子供って不思議な感じなのぜ。
じゃあ、今はパイプがあっても使えないのぜ?
間違ったら、ごめんなさいなのぜー。
そうしたら正すのも簡単簡単なのぜ。
んー?場合によって変わるのぜ?
ほーりつって言うのがあっても、あやふやなのぜ?
むむむ、きっと偉い人の頭が良過ぎるのぜー。
…姉さんの頭の上、ちっちゃい猫さんが居るのぜー。
気に入ったのぜー?
(少女の金の髪、その上に小さな白い猫が1匹
少年の目でもボンヤリと感じる程に小さく儚い「それ」は嬉しげに、
しかし少女には届かない声を上げて姿を消した)
でも全部取ったら魚も海も怒るのぜー。
怒られない様に、ちょっとだけ恵みを頂くのぜ。
都会…苦いのは嫌なのぜー。
都会には近付かないのぜ…
次は忘れ物が無いように頑張るのぜ。
…美味しいのぜ?
(改めて決意をしつつ、
視線を自販機に向ける。
ゆっくりとした足取りで自販機に近付き、
表面を撫でる様な手付きで触れては首を傾げる )
私も子供だからダメ。
持つだけなら二人とも問題ないけれど
喫煙は20歳からという法律という名前の決まりがあるの。
20歳を過ぎるまでは法律上はみんな子供よ。
そうね。誰だって間違う事はあるし
正さなければ変わらないことの方が多いわ。
とはいえ、何が正しくて何が間違っているかなんて場合によって変わってくるし
正しい事をする事がいつでも正しい訳ではないから、その辺り難しいのだけれど。
私は…。…あら?
(不意に温もりのある風を感じて言葉を切り)
…私の霊感が強ければ聞かずとも直ぐ気がつけるのにね。
無銘、私の近くに誰かいる?
海の水も、綺麗にすればね。
この辺りはそれほどでもないけれど
都会の水道水には薬が沢山入っていて
苦い味がすると聞いた事はあるわ。
どういたしまして。急な外出だったしね、仕方ないわ。
(礼を述べる彼に微笑みかけ、次いで自身の手も拭き)
さて、こっちの飲み物はどうする?
(自販機の方に視線を向け
ほぇー、
姉さんは物知りさんなのぜー。
子供はダメなのぜ?
それなら姉さんは大人だから大丈夫なのぜ?
不思議なのぜ。
誰だって間違えちゃう事はあるのぜ。
だから、誰が悪いとか、誰が正しいとか、
んー、道は誰かが正さなくちゃ、何も変わらないのかもしれないのぜ…。
でも…俺は付喪も人も、どっちも大好きだぜ?
間違えても、忘れても、壊しちゃっても、
…ちゃんと伝われば、きっと前に進めるのぜ。
(視線を少女の肩辺りに移せば
嬉しげにアホ毛が揺れ、何処からか暖かな風が)
綺麗な水が飲めるのは良い事なのぜー。
海の水も綺麗にしたら飲めるのぜー?
むむっ、お薬…苦いのぜ?
山の方に行ったらあるかもしれないのぜー。
あやや、手拭い…忘れてきちゃったのぜ。
(クシクシと袖で口元を軽く拭いながら
手を拭いてもらい「ありがとうなのぜー」と)
分かるわけじゃないわ。
そうかもしれないってだけ。
喫煙道具のパイプだったら子供が使うにはちょっと早いわね。
人に悪さをするから悪い子だって切り捨てるのは
如何なものかと思うけれど、人間は身勝手で恥知らずだから。
勝手に造って、勝手に愛して、勝手に忘れて。
最初に付喪達を傷付けたのは人間の方なのにね。
…その子に「ごめんなさい」って言っておいて。
(「人間」という種族に対する失望とも嫌悪とも取れる言葉を口にして、虚空に視線を向ける)
水を色々なものに通らせたり、薬を混ぜたりして綺麗にするのよ。
今の時代だと井戸は余り見かけないわね…。
この島の中なら何処かに一つはありそうだけど。
(彼が水を飲み終えれば自由になった手でハンカチを取り出し、水に濡れた彼の手を拭おうと)
そっか…
それなら沢山の人に知って貰えたら
皆も怖がられなくなるのぜ。
また色々な所に行ってお話してみるのぜー
姉さんは分かるのぜ?
うーん、どんな道具なのか気になるのぜ。
良い物なら俺も欲しいのぜー。
付喪には、たまに悪い事するヤツも居るのぜ。
忘れられて、悲しくて、ついつい引っ掻いちゃうのぜー。
…怖がらせそうな子には、ちゃんとメッて言っておくのぜー
(少しだけ、考える様な素振りを見せては
頬をポリポリと掻いて)
んっんっ…ふはぁ、ごちそーさまなのぜー。
悪いものを取り除くなんて出来るのぜ?
井戸が見付からないけど、変わりに凄いヤツが出来たのぜー。
むー、我慢するのぜ。
(コクコクと水を手の器から飲み
顔を上げてはペコリと頭を下げて)
人は結構臆病だから。
「分からないから怖い」と遠ざけようとする人は多いけれど
「なら、欠片だけでも分かる様にしよう」と考える人の数はそれに比べるとどうしてもね。
「お母さんのパイプ」というと喫煙道具のパイプかしら…。
また今度もう少し話を聞いてみましょ。
怖い、怖いねぇ…。
私個人の意見を言うなら、人を呪ったり、傷つけたり
死後の世界に無理矢理引きずり込もうとするオバケは少し怖いわ。
私には見えないけれど、あそこにいた子に何か言われた?
水道水は人が飲んだ時にお腹を壊しにくい様
悪いものを取り除いてある水だから。
それでも飲みすぎるとやっぱりお腹を壊すから程々にね。
(彼が飲み終えるまでそのまま待つ
人も分からないのは怖いみたいなのぜ。
仲良くなるのは難しいみたいだぜ…
んと…前に聞いた時は「お母さんのパイプ」って言ってたけど、よく分かんないのぜー
姉さん姉さん、怖いオバケって…どんなオバケなのぜ?
(時間にして十数秒、
少女には見えない何かから
ゆっくりと視線を少女に戻しては、
そんな質問を口にして)
お粗末さまでした、なのぜ。
沢山歩いたから、姉さんも疲れちゃったのぜ?
雪や氷と違ってお腹も痛くならないのぜ。
元はおんなじ水なのに不思議なのぜー
(水を飲み干したのを確認しては再び手の器を水で満たそうとするも、
少女が自分と同じ行動に出たのを見ては
「いただきます」と呟き仔猫の様にピチャピチャと水を飲み始めて)
ん、そっか。
怖がられたり逃げられたりって、寂しいわよね。
その子達の探し物は何かしら。
何か手を貸せることがあるなら出来る限り手伝って…。
…無銘?
(彼の視線の先を追うも、自身の瞳には何も映らず。
…何か居るのだろうか。)
(静かに水を飲み終え、顔を上げて)
ご馳走様。
冷たくて美味しかったわ。
疲れている時に飲む冷たい水ってご馳走よね。
(そう言って、自分も手に水を掬い
「貴方もどうぞ」と差し出してみせる)
皆が仲良くなれたら俺も嬉しいのぜー。
俺以外にも話せる人は偶に居るみたいだけど
逃げちゃう人も沢山居るみたいなのぜ。
捜し物をしてる子も居るから、見掛けたら手伝ってあげて欲しいのぜー。
それに…?
(嬉しそうにアホ毛を揺らしながら
自分の出会った存在の話を続けようとするも、
何かに釣られる様に視線を虚空に向けて
「あやー」と小さく呟いては口を開けたまま黙ってしまい)
んー、
ちょっぴり、くすぐったいのぜ。
美味しいのぜー?
(水に口につける様子を眺めつつ
ワクワクとした様子を隠そうともせず、
そう尋ねて)
身体が無ければ眠る必要は余りないものね。
あの屋敷に住んでいるのなら、付喪達もみんな家族と同じ。
色々と教えてもらって、仲良くなれたら嬉しいわ。
(あの屋敷には「老人」や「くろ」の他に何人もの付喪か住んでいるらしく。
姿は見えずとも親しくなりたいと笑う。
或いは彼と共に過ごす内、少女にも彼らの姿を観る力が芽生える事もあるのだろうか。)
(水を掬った掌の器を向けられれば
どうしたものかと一瞬迷うが、直ぐに膝を折ってしゃがみ)
ありがとう。
いただきます。
(少年が差し出す手に自身の手を添え
揺らめく透明な水に口をつける)
良い物は勿体無い、美味しい物は最後までなのぜ?
コックリさん…
色々な人が居るからきっと楽しいのぜ。
皆は眠らないから、色々知ってるのぜー?
(彼女の言う「コックリさん」
それの概要はさておき、少年は友人を紹介する機会を得られると嬉しげにアホ毛を左右に揺らし)
姉さんの気持ちを知れたら嬉しいのぜ?
心は触れないし食べれないのぜー
だから耳を傾けるのぜ。
…あふぅ、沢山考えたら疲れたのぜ。
(言いたい事を言い切ったのか、
口から小さく欠伸が漏れては目元をコシコシと)
おー、それが良いのぜ。
飲み物を半分こなのぜー。
…んしょっ、
姉さん姉さん、どうぞーなのぜ。
(その手があったか、とばかりにアホ毛がピンと立ち、
水道の水を両手の器で掬って少女に向け)
いや、そういう意味じゃなくて…。
…まあいいか。
私もみんなとお話しできればいいのだけどね。
またこっくりさんの真似事をすれば誰か来てくれるかしら。
…やれやれ。
私の気持ちを知ったところで対して得にもならないのに。
難儀な子だこと。好きになさい。
(言葉とは裏腹にその声と視線は優しく、柔らかく。
とんでもないお人好しがいたものだと微笑する。)
んー…。
じゃあ、こうしましょう。
その水も別の飲み物も両方飲む。
販売機の飲み物は私と半分こ。
これならどう?
少しでも良くなるなら良い事なのぜー
帰ったら皆に元気になるおまじないを聞いてみるのぜ。
良い子だと勿体無いのぜ?
たまに姉さんは不思議な事を言うのぜー。
(アホ毛を緩く揺らしては空を見上げ
「カラスも一緒に帰るのぜー」と呼び掛ける様に無邪気な声を)
誰かが悲しむとしても、
嘘をついてでも切り捨てなきゃダメな時…
分かんないのぜ。
俺には全然分かんないのぜ。
(いやいや、と首を横に振ったかと思えば、
俯いてゆっくりと深呼吸)
うん、決めたのぜ。
姉さんが泣くのを我慢するなら。
俺も棘が刺さって痛くても我慢するのぜ。
そうしたら姉さんの気持ちも、きっと今より分かるのぜ。
神様に怒るのは、その後だぜー
(顔を上げてはアホ毛がピンと上を向く
なにやら吹っ切れたらしく、表情に迷いは憂いは無さそうで)
ん、んー…
むむむ…
迷うのぜー
(好奇心と食欲が争っているらしく
左右にフラフラと体を揺らして)
ゆっくり休めば、多少はね。
…あの子は、そうね。本当にいい子よ。
私には勿体無いほどの良くできた義妹だわ。
(心の病は不治の病に近く、現代医療によっての完治は困難を極める。
その事実は口にせず、幼い手で袖引く少年に「帰ろうか」と頷いて。)
どんなもので有ろうと切り捨てれば、悲しむ人は必ずいるわ。
それでも、例えそれを本心では望んでいなくとも
そうしなければならない事もある。
(独り言の様に、そう言って)
ハリネズミって例えば言い得て妙ね。
私は人よりも鋭い棘を沢山持っているハリネズミだから
その分我慢しなくちゃいけないの。
神様だって万能じゃないし、仕方のないことよ。
神様も人も、同じだわ。
(人智を超えた神にでもどうにも出来ないことはあるのだと
宥めるように、そう言い聞かせ)
ん…?
いや、飲んじゃダメってことはないけれど
これはただの水道水よ?
お茶やジュースよりこっちのほうがいい?
ゆっくり休んだら、良くなるのぜ?
すぐ帰るのぜー。
その子もきっと姉さんに早く良くなって欲しいのぜ。
良い子なのぜー。
俺も得意じゃないのもあるけど、
頑張るって食べるのぜー。
(休むの意味を少し考えては少女の服の袖をクイクイと緩く引いて)
全部消しちゃったら、
キラキラもきっと消えちゃうのぜ。
それに、どんな物でも消えたら…んー
バランスが崩れちゃう事があるのぜー。
崩れちゃったら転んで泣いちゃう人もきっと居るのぜ。
(ゆっくりと立ち上がって膝を軽く叩いては
少し困った様な顔)
姉さんは護りたいから我慢するのぜ?
なんとなく分かるけど、やっぱり悲しいのぜ…
ハリネズミみたいなのぜー。
誰かが我慢しないと良くならないなんて神様も意地悪なのぜ…。
(幼いながらに微かに感じる事があったのか
詳細を尋ねるでもなく静かに少女の顔を見上げる。
ふと何時か見た本に記されていた動物を思い出しては、吐き出す様に言葉を呟いて)
むむむ、
残念なのぜ…
魚を沢山食べるのぜ。
綺麗な服が汚れたら大変なのぜー?
…ほー
(少し離れたまま後ろをついて行ってはそんな事を言って、
館にはどういう訳か電気が通っているが、
少年は機械の扱いはサッパリな為
稼働するであろう家電も埃を被っていたりするようで、
少女の真似をする様に水道で手を洗いながら小さく感嘆の声をあげて)
んー、これ飲んじゃダメなのぜ?
(水道が気に入った様だ)
心の病気もゆっくり休むことが大事なのは身体の病気と同じね。
食事はそれなりに取っているから大丈夫。
そうしないと妹が煩いし。
好き嫌いがないのはいいことね。
私は苦い食べ物とか、少し苦手だわ。
(考え込む彼にそれ程気にせずともいいと笑いかけ)
一旦全部消してしまうだけなら、貴方が言う様にきっと簡単。
ただ、「誰も彼もが納得のいく様に」というのは難しいわ。
だからこそ、世界は彩り豊かなのだけど。
(膝を付く彼に内心少し驚きつつも、青の瞳を穏やかに細め)
…悲しいときに泣くのはね、昔散々やったのよ。
そのせいで、大切な人を追い詰めた。
だから私はもういいの。
ずっと泣いてばかりいたら、助けたいと思う人や
守りたいと思うナニカも、守れなくなってしまうもの。
(それは言外に「自分はいつも何かに悲しんでいるのだ」と言っているに等しく。
甘く滲む胸の痛みを見て見ぬ振りしては、ただ笑う)
いえ、飲んでわかるものではないわ。
ま、今は分からなくても大きくなる内に分かってくるでしょう。
私は別に手が汚れるぐらい気にしないのだけどねぇ…。
(少しばかり海辺から離れ、海岸沿いに設置された自販機の前に辿り着く。
その傍には水道とベンチが存在し、簡易に身を清め、休息を取ることもできるようで。)
さて、何か飲みたいものはある?