対の衣装を着た精巧な造りの双子人形と
人形サイズの調度品が置かれている。
誰かがここで1人遊びしているとかいないとか。
この声、もしかして冴来さ・・・
(鳴き声を扉越しに聞きドアノブに手を掛けるも、男性の声に気づき躊躇い)
お前やっぱり泣き虫だろ。
お父さんも、お母さんも、私よりお金が好きだったの…?
違うよね…?
あの人達とは、違うよね…?
もっと一緒に、いて欲しかったのに…。
頭が痛いよ…眠れないよぅ…。
私、どうしたらいいの…?
分からないよ…教えてよ…。
寂しいのはもう、嫌だよぅ…!
(ぺたりと座り込み、ぐすぐすと泣きじゃくる
由良さん、何処にいるの…?
私、このままじゃ貴方を忘れちゃうよ…。
大好きだったのに、忘れたくないのに…。
私の中から由良さんが、
どんどんいなくなっていっちゃう…。
苦しい…淋しいよぅ…。
(テーブルにタロットカードを広げ
裏向きのまま混ぜ一、枚そっとめくる。)
死神の逆位置…。
過去との決別…。
全てを捨ててのやり直しが必要…。
(小さく呟き悲しげに目を伏せ、
弱々しく首を振りカードを伏せようとするが
思いとどまり、カードをそっと胸に抱きしめる)
私、少しは前に進めているのかな…。
そんな気になっているだけ…?
〜…♪…〜♪
(ぐったりとした様子で横になり
小型のCDプレイヤーから流れる
音楽に合わせて小さな声で途切れ途切れに歌を口ずさむ。
流れている曲はセイレーンの歌を
ピアノで演奏したものの様だ。
http://rakkami.com/scenario/guide/342
お腹、空いてるから、弱気になるのかな…。
うん、きっとそう…。
多分そう…。
クッキー、まだあったかな…。
私は、気楽に、生きるんだ…。
もっと楽しく、生きるんだ…。
(人形を抱いたまま緩慢に体を起こし
ゴソゴソとカラーボックスを漁る)
どこにも行きたくない…。
誰にも会わせる顔がない…。
ずっとずっとここにいたい…。
誰かを傷つけてまわるぐらいなら
一人でいる方が、ずうっといい…。
助けてくれようとする人が
私にはこんなに、沢山いるのに…。
私は根暗で、うじうじしていて…
なんてみっともないんだろう…。
死ねば楽になれるかな…。
私はもう、死んでしまいたい…。
私に自由は、似合わない…。
大丈夫、一人ぼっちでいても
貴方達がいるもの、寂しくなんて無いよ…。
(弱々しく人形を抱き寄せ、体を丸めて横になる。)
もう、嫌だな…。
誰か助けて…。
…助けを拒んでるのは私なのに、なに言ってるんだろ…。
馬鹿みたい…。
『7月×日
甘いものは後を引く。
お菓子も人の優しさも。
後を引いて、やめられなくなる。
もっともっとと、際限なく求めてしまう。
まるで麻薬の様。
毒とわかっていて、やめられない。
求めているものをもう充分に与えられているにも関わらず
まだ足りないと、それ以上を求め続ける私は
酷く低俗で浅ましく、醜い。
弱味というものは隠すもの。
隠したいと願いながら、
その裏で気付いて欲しいと願っている。
汚れた自分自身を恥じ入り憎み
死んでしまいたいと願いながら
その裏でこんな自分でも
愛され、許され、生きていけます様にと願っている。
そうして、生まれる嫌悪と憎悪を
自分自身にのみ向けることも叶わず
黒い衝動を他者に向け、私はまた誰かを壊そうとする。
私はなんて醜く、薄汚れた人間なのだろう。
自己愛に溢れ、他者を傷つけるおぞましさ。
反吐がでる。
私に生きている資格なんてない。
大嫌いだ。死んでしまえ。』
(部屋の隅に掛かった蜘蛛の巣に鳥籠を抱えて近寄る)
こんにちは、蜘蛛さん。
ご機嫌はいかが?
…うん。貴方が喋れないことは知ってるけどね…。
約束通り、貴方にご飯を持ってきたよ。
(鳥籠の中の蝶に苦しげな視線を落とし
一瞬躊躇するが、弱々しく首を振り
蝶を取り出して蜘蛛の巣にかける)
…綺麗で自由な蝶は大好き。
でも、この部屋で一緒にいてくれる
蜘蛛の方がもっと、好きなの…。
っ…。ごめんね…。ごめんなさい…。
(蜘蛛の糸に絡め取られる蝶を
罪悪感の込められた苦しげな視線で見つめ
謝罪の言葉を小さな声で繰り返す。)
『7月×日
幸せと思うならいつだって幸せ。
そう、私は幸せだ。
新しい家族も、大切な友達も
持っていなかった欲しかったものを
沢山、沢山この島で手に入れた。
幸せだ。幸せなはず。
なのに、どうしてこんなに満たされないんだろう。
どうしてまだこんなにも寂しいのだろう。
苦しい。悲しい。息苦しい。
一体なにが、足りないの?
私は、弱い。我儘だ。自分なんて嫌い。大嫌い。』
季節はもう、夏だけど…。
ここの壁は、ひんやりしてるね…。
こうしてると、思い出すなあ…。
ここは、檻の中じゃ、ないけれど…。
懐かしい…戻りたい…戻りたいな…。
もう一度だけでいいから、会いたい、よ…。
貴方は、どこにいるの…?
檻の中に、帰りたいよ…。
(部屋の壁に体を預け、さみし気に目をつぶって
…そうなるの、かもしれない。
私はいつも気まぐれで、飽きっぽくて、我儘で…。
大事にしていた物でもいつも、直ぐに壊してしまったりして
そうしていつも、後悔をするの。
大好きな人は、傷つけたくない。
そう思っているはずなのに
何もかも壊してしまいたくなるの。
そうして何もかもを傷つけて、独りぼっちになることが
凄く凄く、怖いだけ…。
…失恋なんて言葉は大嫌い。
友人として愛して貰えるのなら
私はそれで、構わない。
ねぇ、もう私何も考えたくないの…。
貴女が優しくしてくれようと
しているのはわかっているけど
私が優しくされたいのは、貴女からじゃないの…。
お願い、今はもう、一人にさせて…。
『hum……むしろ私が貴方に飽きられるのでは、と恐々しているところです』(おどけつつ)
『貴方は私に、私は貴方に、それぞれ与え続ける……こうすれば互いにギブアンドテイクな関係が続けられるのではないかと』
(離れられつつも、目線だけはそらさず)
『その傷つけたい対象は、好きな方なのでしょうか? それとも嫌いな方でしょうか?』
(慰めなんていらない に対して)
『これは失敬。……いたらぬ私をお許しください』
与えられるばかりは、不安なの…。
いつか与えてくれる人達が
私に飽きれて、去ってしまわないかって
怖くて怖くて、仕方が無いの…。
甘えていても、いいのかな…。
私は変わりたい…。
変わりたいけれど…。
だけど、無性に誰かを傷つけたくなって…。
どっちが本当の私なのか…分からない…。
もう、嫌…。
こんなこと、考えたくない…。
私はもっと、気楽に生きたい…。
(考えを払う様に緩々と頭を振り
ヒルデガルドからそっと離れ)
…私、失恋だなんてしていない。
あの人はまだ一緒にいてくれている。
離れ離れになったわけではないの。
慰めだなんて、いらないわ。
『人を助けたりするのは何も見返りを求めてだとは考えすぎだと思いますよ。それに優しくされることに権利もない。なぜなら私が冴来とこうしているのは、単に私が一緒にいたい、そう考えるからです』
『冴来が私にしてもらうことなんてありませんよ。強いて言えば……ふたりっきりの時だけでいいので、私に甘えて欲しいというぐらいですね。ええ、それじゃ私への見返りは甘えること、でいいでしょうか?』(小首を傾けながら 人なら微笑んでいるような雰囲気を醸しだし)
『冴来。過去はどうしても変えられないのです。積み重なったモノはあとから手を加えれない……ですが、これから積み重ねる未来は変えれるのです。貴方が変わりたい、と願うなら……いつかきっと、素敵なレディになるんじゃないでしょうか?』
『いつか、皆からもらった優しさを……冴来の優しさで返せるように』
(あの人に慰めてもらいたい、に対して)
『ふむ……冴来が一番に思っている人への思いは強いのですね……傍から聞いている限りでは羨ましいことですが、なにやら事情がある様子』
『伝聞でよければ、失恋に対する特効薬は時間だとか。それが良い思い出となるその日まで、楽しい時間で慰めましょう。冴来』
貰ってばかりじゃ、いけないの…。
私はもらってばかりだったから
だから、きっと、誰も私といてくれなかったの…。
だけど、私は我儘だから…。
優しくされたいの、甘えたいの…。
私はすごく、酷い子で…。
大切な友達を傷つけて…。
姉妹だなんて、偽って…。
護りたいなんて、馬鹿みたい…!
あの子を傷つけたのは、不幸にしたのは私なのに…!
今も、なんにも、変わらないの…。
貴女は初めて会った私に、
こんなに優しくして、くれているのに
私にはなんにも、返せるものがないの…。
貴女はこんなに、優しいのに
私、あの人に、慰めて貰いたいって
私を助けてくれるのは、あの人じゃないと、嫌だって
そんなことばかりを、考えてるの…。
ごめんなさい、ヒルデガルド…。
私、貴女に、優しくしてもらう権利がないの…。
ごめんなさい…ごめんなさい…!
『どうして、何もできなくなったら嫌われるのですか?』
(頭を何度も撫で、背中を摩りながら)
『私は冴来とこうして初めて会いましたが、冴来が何ができるのかすら、わかってませんよ』
『それでもなお、私はこうして冴来と一緒にいる……それでは、ダメですか?』
『少し泣いて、すっきりすれば、……溜め込んでいたものを出せば、少しは落ち着きますよ』
(そのまま、花風さんに泣くことを促すように)
どうしたらいいのか、分からないの…。
寂しいのは、嫌なの…。
でも、優しくされると甘えてばかりで
私はなんにも、出来なくなるの…。
何にも、出来なくなってしまったら
みんな私を、嫌いになって
私から離れていってしまうのに…。
どうせ離れていくのなら、
誰も私に近寄らないでって、
そんな風に思ったりして
そんな私が、大嫌いなの…。
もう嫌だ…。嫌なの…。嫌だよぅ…。
私はずるい…中途半端で薄汚い…。
嫌い…嫌い!大嫌い…!
(ヒルデガルドに抱きつき
小さな子供のように泣き出して
『ふむ? 私は人形故に人の道理はわかりませんが……弱いこととひとりではいられないことは結びつくのでしょうか?』
『私は人形。今はこうして動き語ることができますが、普段はただその場にいるだけの無力な存在。されど、人形は冴来や……他の方に喜ばれることができます』
『逆に聞きますが、どうしてあなたは強くなろうとするのですか?……それは守りたい方がいるからじゃないですか?』
『この世界に完全は存在しないのではないでしょうか。 完全であるもの、それで完結していることはすなわち変化がないこと。他者を求めないそれは周囲から見れば存在しないこととなんら変わりないでしょう』
『人は人と交わることで生きる存在。ひとりでいられないのは当たり前なのです。一人でいられるのは、きっと心が壊れているから。それか、きっと人知れずに泣いていたからです』
『だから、冴来が寂しいと感じるのは正しいのです。泣きたいと思うのも正しい』(そのままそっと冴来を母親がするよう抱きかかえて、胸を貸してはそっと頭を撫でて気が済むまでそのまま)
『人前で泣きづらいなら、人形の私の前で泣けばいいじゃないですか。この身は人形なのだから』