対の衣装を着た精巧な造りの双子人形と
人形サイズの調度品が置かれている。
誰かがここで1人遊びしているとかいないとか。
俺も人の事言えねぇな…馬鹿ばっかりだ。
お前は不思議な人間だな。
どうしてこんな変なのに心を許すんだ。
もの好きにも程があるぞ。
一緒に過ごせば過ごすだけ
本当に離れなくてはいけなくなった時に
苦しむことになるんだって、よく分かっているのに…。
毒とわかっているのに、求めずにはいられない…。
私はなんて情けないんだろう…。
そうだねぇ…。
弱い私を受け入れようとしてくれている人は
何人もいるんだけど
どうしても、これ以上近寄らないで、
触れないでって遠ざけたくなるの。
貴方にだけは、そう思わずにいられるんだけどね。
麻薬か…その通りだな…。
いいじゃねぇか。
普段暴れている分少しくらい弱音を吐いたってさ。
吐けるときに吐いとけ。
どうせ人前ではまた尖るんだろ?お前。
…私もね、離れなくちゃって思ってはいるんだよ?
でも、駄目なんだ…。
上手くできない…。
ずっと一緒にはいられなくても
今だけでも、一緒にいられないかなって、思ってしまうの。
貴方と過ごす時間は誰と過ごす時間より心地がよくて…。
後をひいて、やめられない…。
まるで、麻薬のようだよ。
うん…。
まだ死んでは、いけないよね…。
頑張らなくちゃ…。
こんな話ばかりをしたいわけではないのだけれど
つい弱音をはきたくなってしまうよ…。
…そうだな…。
もう少し…もう少し位は有余があるんじゃないかって思ってしまうんだ。
我ながら後先考えない子供のような思考だよな。
「解決する」と断定は出来ないが、解決するかもしれないなら生きていくべきさ。
人生なんてそんなもんだろ?確実な事なんて何もない。
どうしようも無い事嘆いたって仕方ないじゃないか。
だって、貴方は私に離れて欲しいのでしょう…?
クロウディアは、変な人だね…。
離れて欲しいっていうくせに
どうして私を引き離そうとしないの?
こうして一緒に過ごせば過ごすだけ
私は貴方のことを好きになって
余計に貴方から離れられなくなってしまうのに…。
ああだったら、こうだったら…。
いくら願っても、過去はかえられないのにね。
もし、昔に戻れても
きっと今度は今が恋しくなるんだろうな…。
解決する日なんて、来るのかな。
生きれば生きるだけ、後悔ばかりが積もっていくよ…。
死ぬことよりも、生きることの方が、ずっと、ずっと怖い…。
わかった。忘れることにする。
貴方に傷つけられることを
嫌だとは思わないけれど
それで貴方が傷つくのは、嫌だから…。
別に気が向いたら来るさ
どうして来ないと思うのかが分からん(首を傾げて
あぁ、「こんな人生だったら」なんて無い物ねだりの繰り返しさ。
苦しむのにはきっと理由があるからだ。
昔の事が自分の中で解決していないとかな。
忘れてくれ。
不確実な事で他人を悲しませたくない。
本当だよ。
なんで貴方が私の話なんかが聞きたくなったのか
私にはさっぱり分からない。
でも、またこうして会いに来てくれて嬉しいよ…。
私、もう貴方はここに来ては
くれないんじゃないかなって
そう思っていたから…。
貴方も?
とてもそんな風には見えないけれど…。
…新しい家族も、友達も
欲しかった色んなものを
私は山程もっているのに
どうしてこんなにも苦しくなるんだろう…。
私は我儘だ…。甘えてる…。
苦しむ必要なんて、全然ないのに…。
途中でやめられると
余計に気になるからやめて欲しいなあ…。
何を言おうとしたの?
言いたくないことなら、忘れるけれど…。
謝らないでくれ。
唐突に聞きたいと言い出したのは俺だ。
どうしてこんなこと突然聞いたんだろうな(笑いながら
そうか…違うんだな…残念だ。
戻りたいか…。
過去ばっかり引きずって生きてるきがするな。
お前も、俺も。
言いにくいが期待しない方が良いかもな。
きっとそいつは…いや、いい、なんでもない。
ううん、全然。
気にしてないよ。
話したくないことなら、
最初から話したりなんてしないもの。
貴方に対して閉ざす扉を
私はもう持っていないんだ。
貴方が聞きたいと思った時に聞いてくれたら
私はどれだけでも続きを話すよ。
嫌な話を、聞かせてごめんね…。
ううん、別人だよ。
私があの人に会ったのは、もうずっと昔なんだもの…。
名前だって、違うしね…。
もう戻れないって分かっているのに
時々無性に戻りたくなるの…。
会いたくて会いたくて、ずっとずっと探しているのに
何処にもあの人が、見つからない…。
もしかしたら、もう
死んでしまっていたり、するのかな…。
せめてもっと商品らしく、扱って貰えていたのなら
こんなに恋しくは、ならなかったのに…。
いや……そうだな。
今回はこれくらいにしておく。
話したくない事話させて悪かったな。
またいつか続きを聞かせてくれ。
ほお…あいつがねぇ…。
あながちあり得ない話でもなさそうだがな。
人を商品にする事を生業とする人間で、商品に同情する人間ってのは珍しい。
あいつなら…有り得そうだ。
それから私は、そういう人の売り買いを
生業にする人達の所へ連れていかれて
無理矢理、檻に閉じ込められた…。
最初は寂しくて悲しくて、家に帰りたかったけど
そのうち、どうでも良くなった…。
私の面倒を見てくれていた人が
私に凄く、優しくて
この人とずっと、いられるのなら
このままだって構わないって
他の場所にはいきたくないって
そんな風に、思ってた…。
その人とさえ、いられれば
私は、他には何も、いらなかったの…。
情報屋さんはその人に、そっくりなんだ…。
私は情報屋さんを好きだけど
あの人に似ているから、なのかなあ…。
違う人だって、わかっているのに…。
変わりにしている、だけなのかなあ…。
私は、情報屋さんに対して、失礼なことをしているね…。
ねぇ、やっぱりやめる…?
嫌な気分になるでしょう…?
私の過去を知ったところで
貴方は何一つとして、得をしないよ…?
続けてくれ(花風さんから視線を外したまま
うん…。
それじゃあ、最初から…。
私は…産みの親に、愛されなかった子供なの。
あの人達は私を産みはしたけれど、私のことなんかより
お金と派手な遊びが好きだった…。
そのうち、遊ぶお金に困って
私を売って、お金に変えたの。
愛してもらえなくたって
私にとってはたった二人の両親だったから
離れたくないって、言ったけど
あの人達は、私の意思なんて、どうでもよかったみたい…。
あの人達にとって私はきっと、凄く邪魔だったんだろうね…。
まぁ、いい気分にならないのは大体予想できる。
お前が話したいと思う所から。話したいように。
びっくりしたよ…。
何か疑われているのかと…。
聞いて気分の良くなる話じゃないと思うけれど
貴方が知りたいのなら、いくらでも。
でも、上手く話せるかなあ…。
どこから話せばいいんだろ…。
いや、言い方が悪かった。
俺が知りたいのはお前の過去
話したくないのなら良いんだが・・・いつも泣いてるから気になってな
え…?なんのこと…?
貴方が何を言っているのか、私、分からないよ…。
私、貴方になにかした…?
・・・いい加減手の内を明かしてくれても良いと思うんだがな。
あ、クロウディア…。
(ごしごしと目を擦り涙を拭って
…そうだよ、泣き虫だよ。
泣きたくなるんだから、しょうがないでしょ…。