対の衣装を着た精巧な造りの双子人形と
人形サイズの調度品が置かれている。
誰かがここで1人遊びしているとかいないとか。
私の求める強さは…。
一人で何もかも、できること…。
誰にも頼らずに、どんなことでも…。
ひとりぼっちでも、泣いたりせずに
どんな苦しみも、抱える強さ…。
だけど、どうしても足りないの…。
沢山、沢山頑張って色んなことができる様になったのに
私はずっと、子供のままで
寂しくて悲しくて泣いてばかりで
縋って、甘えたくなるの…。
少しも、少しも強くなれない…。
…助けてっていったら、きっと、助けてくれる人はいるけど
優しくされればされる程
私は弱くなって、立てなくなって
一人でなんにも出来なくなるの…。
ずっとずうっと、一緒にいてって、甘えていたくなるの…。
そんなのは駄目だって、わかっているのに…。
だけど、一人は、寂しいの…。
寂しくなると、大好きな人に、会いたくなるの…。
離れなきゃ駄目って、言われているのに…。
離れ、たくない…。寂しいよぅ…。
ずうっと一緒に、いて、欲しいよぅ…。
(話すうちに目から涙が溢れ、悲し気に泣き出す
『なるほど、確かに強いことは必要なのかもしれません
……ところで冴来のいう強さとはなんでしょうか?』
(かたり、と人形の綺麗な目が見つめ)
『山をも持ち上げる程の怪力のことでしょうか、風よりも速く駆けることでしょうか?』
(きゅ、と握る手の力を少しだけつよめ)
『ですが、きっと貴方はそれだけでは納得しないでしょう……』
『これは……とある少女となった人形の話です』
(一度目を閉じ、ゆっくりと語り始める)
『彼女には名前がありません。……符丁があっただけでした』
『彼女が学んだのは……人を殺めることとその為の技術です』
『彼女には両親がいません。幼い頃に誘拐されたからです』
『人里から離れた場所、ただ人殺しを教え、彼女らを立派な殺人人形(キリングドール)として仕立てる場所』
『その中では、彼女ら同士を殺し合いをさせてはより精度の高い”人形”を作っていくのです』
『彼女はいつしか殺した人間の数を数えなくなった頃には、立派な”お人形”になっていました』
『──そう、作り上げた者達が褒め称えた、最高傑作のお人形!』
『彼女は間違いなく強かったのかもしれません ですが、それは悲しいことに……製作者らがいなくなってから、途端に彼女の力は不要となってしまったのです』
『ああ、なんということでしょう……彼女は少しだけ手首をひょいとひねれば人を殺めることのできる素晴らしき殺人人形! ですが新しい世界はそのような存在は欠陥品なのです……』
『……そんな彼女にも、欠陥品であっても、そんなことはないよ、と語ってくれる人がいました』
『血まみれの手なのだと脅しても、実際に、殺しかけても、決して拒絶しない、心優しき人』
『それをきっかけに、彼女は世界を知っていくのです』
『こうして人形は少女になっていくのでした』
(語り終え、再びじぃと花風さんを見つめ)
『だから冴来……貴方が気づいていないだけで、きっと貴方のことを支えてくれる人がいるはずなのです』
『今のあなたに必要な強さ。それは……勇気をもって、助けてということ』
『その声に答えてくれそうな、心優しき方に心当たりはありませんか?』
『もし、ないというのであれば……私が、その名誉ある一番目となりましょう』
そっか…。
やっぱり貴女もずっと
一緒にいてくれるわけじゃ、ないんだね…。
でも、いいの。
それでも、今は…。
今だけは私のそばにいて…。
(すがる様な目でヒルデガルドを見て、その手を弱々しく握り
私には大事な妹がいるから、私はお姉ちゃんだから…。
護ってあげなくちゃいけないから…。
ううん、お姉ちゃんじゃなくっても、
私は強くなくちゃいけないの。
弱い私は必要ないの。
弱いと、誰も必要としてくれないの…。
だから、強い自分を演じ続けて
頑張って笑っていようとするんだけど
それも、うまく出来ないの…。
一人で立たなきゃ、いけないのに…。
なんにもうまく、いかないの…。
『そう私は冴来の察する通り、主のろっこんによって動く身』
『この身が再びただの人形になるまでの時間は主もまた、まだつかみきれておりませぬ』
『あと1時間かもや、はたまた数分? それは私にも皆目見当がつかない事実』
(やや残念そうな様子で)
『されど、それまでの間であるならば、私は貴方の望みのままにふるまいましょう』
(そっと人形の手が花風さんの手に添えられる。冷たくなめらかな、人形の感触)
『温もりなき体であれども、その凍える心を温めれると信じて。ともにあらんことを』
『冴来はなぜ無理をしなければいけないのでしょうか。……聞いたところで解決できるかわかりませぬが、語るだけでも心は幾ばくか軽くなるかもやしれませぬ』
『どうか私めに語りくださいませ、冴来』
凄く遠くて、意外と近く…?
なんだか謎謎みたい…。
そう、私…凄く凄く疲れてるの。
きっと、無理をしてるの。
でも、無理をしなくちゃ、いられないの…。
貴女は私と、いてくれる?
私と一緒に、遊んでくれる…?
『どこから来たのか、と言われれば……貴方からすごく遠く、それでいて意外と近くから、といっておきましょう』
(からから、と関節が鳴り)
『……なるほど。それでは冴来と、お呼びしましょう』
『冴来、先程貴方はひどく疲れているようでしたね。……人を癒し楽しませる慰みモノとしての、人形のこの身としては、貴方の役立てればと思う次第です』
(芝居がかった動きで、踊りのあるミュージカルのようなアクションで語りながら)
喋った…。
貴女、喋れるの?
それに、動いてる…。
魔法みたい…!
(嬉しそうに瞳を輝かせ)
冷静に考えれば、誰かのろっこんなんだろうけど…。
今は、どうでもいいや。
はじめまして、ヒルデガルド。
私は花風 冴来。
ねぇ、貴女は何処から来たの?
(触れようとした瞬間にかたり、と首が動き)
『はじめまして。お嬢さん……私の名前はヒルデガルド』
(そのままゆっくりと立ち上がってはスカートをつまんでの礼)
『お名前を伺っても?』
はあ…疲れた…。
私、上手く笑えていたかな…。
演技するのは、疲れるなあ…。
(溜息をつきながら部屋に入り、
部屋に現れた人形に気がついて)
あ、あれ?
私、こんなお人形しらない…。
おかしいな…。
何処から来たんだろ…。
誰かが置いていったのかな…。
(恐る恐る人形に近づき、そっと手を伸ばして触れようとする
(かしゃん、と乾いた音を立てて、等身大の人形が部屋にやってくる)
(床にスケッチブックが無造作に放置されている。
開かれたページには
巷で人気の魔法少女アニメに登場する
可愛らしい敵キャラクターとその使い魔が
チーズを探す姿が色鉛筆で描かれており
ページの端に小さな文字で
『一番欲しいものはどれだけ探しても見つからない。
見つかったとしても手に入らない。
それでも求める事をやめられない。
欲しくて欲しくて仕方ない。』
と書かれている。)
『6月×日
もし助けを求めたら。
あの子に助けを求めるつもりなんて無いくせに
私は何を言っているんだろう。
弱さの全てをあの子に見せるつもりはない。
黒く汚れた部分は尚更。
私の綺麗な部分だけあの子はみてくれていればいい。
ねむるは、私の大切な友達だから。』
ノートに書かれた文
『6月×日
お気に入りのノートが見つかった。
このノートを私が埋めるのだと思うと胸が高鳴る。
何を書こうか。
どんな文でこのノートを埋めようか。
このノートを使い終わる時には
私の心も少しは成長できているだろうか。
大人には、まだなりたくない。
ずっとこの16という歳のままで
心だけ成長できたらいいのに。』
*部屋の基本的状況覚え書き
・床に花柄のラグマット。
ラグマットの上にアンティーク調のローテーブル。
・隅に色んな物が入ったカラーボックス。
・一匹の蜘蛛が角に巣を張り住み着いている。
・動物のぬいぐるみが数体と精巧な造りの双子人形。
・人形サイズの家具
・幾つかのクッションとブランケット
*カラーボックスの中身
・お菓子の香りがするカラーボールペン一式
・水彩色鉛筆、水彩絵の具、絵筆、パレット、スケッチブック
・表紙が深緑で金の縁取りがされたアンティーク調のノート
・花柄のティーセット、クッキー缶
・タオルと着替え
*その他部屋の主によって色々と持ち込まれる。
*お客様は気分屋な部屋の主の機嫌によって
歓迎されたり、追い出されたりします。
〜〜♪
(水が入ったガラスコップに花をさし
テーブルの上に置いて座る。)
ねむるが私に花をくれた…。
最後は格好悪かったけど。ふふ。
綺麗だなあ。どうしようかな…。
この花、あんまり長くはもたないかな…。
でもまだ押し花にするのは惜しいし…。
一週間ぐらいならもつ…?
(くすりと笑ったあと、小首を傾げ唇に指を当てて考え込む
会いたい、会いたい…。
会いたい、よぅ…。
こんなに探してるのに、見つからない…。
何処にいるの…?もう、会えないの…?
情報屋さんは、似てるけど…。
あの人じゃ、ない…。
会いたい…。淋しい…。帰りたいよぅ…。
(ぺたりと座り込み、抱きしめた縫いぐるみに顔をうずめながら
〜〜♪
(スマホから流れるアップテンポの音楽に合わせて
機嫌良さげにハミング
…!?
(頬に何か触れびくりと反応し
なんだ、蜘蛛かぁ…。
驚かさないでよ…。
この部屋に住むの?
住んでもいいけど、私のものに巣はかけないで欲しいなあ…。
蜘蛛が食べるのって、虫だよね…。
蝶々で良ければ、今度とってきてあげる。
だからそれまでは、この部屋にいてね…?
むぅ…。いいもの。
いつか虐め返してあげるから…。
貴方も行ったの?
楽しかったのなら、よかった。
(微笑んで
私、私、は…。
人を、手にかけなければどうなっていたのかなって…。
そうしたら、手にかけた相手に凄く、優しくされて…。
私にはそんな権利、ないのに…。
居た堪れなくて、悲しくなった…。
あんな過去、望まなければよかったなあ…。
うん、髪は女の子の命だから。
でもなんだろう。
人のもの程羨ましく思えるというか…。
ふふ、変な使命。
本当は、他に一緒にしたいことがあるけど…。
今はそれよりも、貴方が楽しそうにしている姿を
もっと見ていたいな。
…貴方にずっと、いい事ばかりがありますように。
(祈る様に静かに目を閉じて
そりゃ苛められるより苛めた方が楽しいからな。
俺はそっちに徹するぜ。
あー・・・あの店な。
そりゃもう楽しませて貰ったぜ。いやー!楽しかった!(笑いながら
酷い事をしなかったら光の中に居るのか・・・?
なんだかよくわからんがどういうことだ?
お前も十分サラサラだと思うぞ?
そうだな、また機会があれば巻き込んでやるよ。
馬鹿な事をするのが俺の使命だしな!