●エピローグ●
かくして、まだオリエンテーション中にもかかわらず、学校中をさわがせた大事件、通称『らくがお仮面』事件は解決を迎えたわけでした。
鷹取洋二先輩の犯行は、第二の人格が目覚めたことによる暴走と結論づけられました。
どうやらこれが、鷹取先輩の『ろっこん』らしいです。思い込んだ人物になってしまい、なりきっている間は判断力が極端に低下する……そんな使い勝手の悪い能力のようです。
ということで責任こそ問われることはありませんでしたが、しばらくの間、先輩はうちひしがれていたといいます。また、いくら責任がなくても……ということで、みずから進み出て、校内の落書きを消して回る先輩の姿が、授業開始ごろまで見られることになりました。
といっても、それほど重労働ではなかったようです。それどころかこの作業が、先輩を立ち直らせるきっかけになりました。
なぜって、新入生を中心に、鷹取先輩のらくがき消しを手伝うと志願した生徒がたくさん……本当にたくさん、いたからです。
「ありがとうありがとう。僕は、なんという幸せ者だ……」
それまでは割と傲慢な性格だったという鷹取先輩ですが、拭うハンカチに染みこむ心の汗は、なにひとつ偽りのないものだったでしょう。
めでたし、めでたし。
……と、いいたいところですが。
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