酷く荒れ果てた礼拝堂。
争いの跡が色濃く残されており
床には割れたステンドグラスの破片が散乱している。
教壇の下には隠し扉があり
そこから地下室へと降りられる様だ。
中央にぽつりと佇む薄汚れた天使像は
どこか泣いている様にも見える…。
笑うってイイサ、無邪気に笑うのも愛想笑いも笑いには変わりないからネ
おばあちゃんになっても笑う人は若々しくてステキだから
心も体も、ソシテ顔も老けないようにしたいよネ
ハジメマシテ、ボクはセルゲイ・ボスコフと申しマス
アハァ、ボクの制服はシルク100%のオーダーメイドだからネ
フツウと違うから、稀にオトナと間違われる事もありマス
(そう言いながら自らの胸に手を当て)
お痛ましい、おばあサマの事、心からお悔やみ申し上げマス
あー、それ学校の制服だったのねぇ…{セルゲイさんの服を見て}
立派よねぇ…はぁー、まぁまぁまぁ…
はっ! つい、何かに感心した近所のおばちゃんみたいになっちゃった。
えぇ、八千穂とは無事に仲直りしたわ。http://rakkami.com/scenario/reaction/1188
電話して本土へ帰って、数日の滞在のつもりだったんだけどね。
…おばあ様が亡くなったの。急だったわ…
セルゲイさんは先生じゃないわ。
私と同じ寝子高生。
私もついさっきはじめて会ったの。
優しい、良い人よ。
謝らないで。
待つのは平気。慣れているから。
それよりも、妹さんとお話はできた?
あら、はじめまして。冴来ちゃんの学校の先生?(セルゲイさんを見上げながら)
…にしては若いかしら…
そっかぁ、お姉さん照れちゃうなぁ、なんて(軽くおどけるように言っているが、実質照れてる)
なんかホントにごめんね、一週間前後とか言っておきながら、かれこれ何か月も…
うん。久しぶり、寧々子さん。
元気そうでよかった…。
諦めずに待っていて正解だったわ。
ずっとずうっと、会いたかったの。
あ…ええと…。
(セルゲイさんの言葉に気恥ずかしげに苦笑
…うん、そうね。
最近、さっきみたいに笑うことが余りなかったから
貴方が言うように筋肉が硬直しかかっていたかも…。
オヤ、お客サンダネ、ゴキゲンヨウ?
(木鈴サンを見て、姿勢を正して微笑みかける)
フツウの女の子らしく笑えるンダ、ヨカッタ
(サキサンの表情がほころんでやや安心をした様子で)
イヤ、なんでもないサ。表情の筋肉は使わないと硬直してシマウカラネ
(声に気付き、振り向くと駆け寄る冴来ちゃんに驚く)
わっ!?
お、驚いたぁ…久しぶりね、冴来ちゃん。聞かなくても分かるくらい元気そうで良かった(微笑み)
あ…寧々子さん?寧々子さんっ!
(寧々子さんの姿を嬉しそうな声をあげ傍へと駆け寄る
ん…?なにかしら…。
また誰か人が…?
(物音を耳にし、入り口へと視線を向け
謝んないといけないよね。(ふぅ、とため息をつきながら)
一週間どころか、今回の機会を逃したら一年になるところだったし…
はぁ…ホントひさしぶり。
冴来ちゃん元気してるかなぁ?(教会の入り口を外から見上げながら)
こんな時間にいるか、わからっ、ないっ、けどっ(崩れた教会の壁の塊を跳んでよけながら入り口をくぐる)
うん…。
闇は、優しいから。
見たくないものを見ないでいいようにしてくれるし。
だから私、昼より夜の方が好きだわ。
夜は月も綺麗に見えるしね。
日本だと成人しないとお酒が飲めないものね。
知ってる?
魔界も、年齢関係なくお酒が飲めるのよ。
これでも、昔に比べると改善された方なのだけどね。
昔の私なら、お祈りしている所を
見つかった瞬間に逃げ出しているわ。
そう、後めたいの。
とても後ろめたくて、つい色んな幸せから
逃げ出したくなってしまうの。
一番の幸せからは、逃げないと決めているけどね。
いいえ。人は神様になれるわ。
その人の事を神様だと認識してくれる人がいればね。
…なんて屁理屈は置いておくとして。
そうね。やっぱり辛くて苦しいのでしょうね…。
だとしても…少しでも理想に近づきたいわ。
人の抱える光も闇も、何もかも全て受け入れて
その上で人を愛したい。愛せる様になりたい…。
そうでないと、意味がないもの。
趣味が合ってヨカッタ、暗い所デハ全て平等ダカラカナ、大も小も、老いも若きも、正義も悪も美醜もナイ
全てヲ覆ってくれる闇、心の声に耳を傾け、仄かな灯りの優しさに気付く事もデキル
ブドウ酒イイネ、日本モ良いワイン蔵があると言うカラいつか遊びにイキタイヨ
故郷デハ、キミの年齢カラお酒飲めルヨ、ソレニ趣味で酒蔵を持つ人も少なくナイ
家族が子供に飲ませる事もフツウサ、もちろん日本ダト内でも中でも法律で禁止されてるケドネ
ナニモ怖くない、愛されるべき女性に君がなればいいだけのハナシだよ?
美貌はアル、ただ前に出る意欲、何か後ろめたいような所があるようで
そこもまた魅力かもしれないから、理想は遠のくんだろうナ.....
カミ様に人はなれない、辛いし大変ダヨ、ケレド近づく事ハできるサ
隣人を愛し、愛される事で神の御心に触れるコトハデキル、
親切にし、与え、子らを産み育てる事もその道であるト、教会の神父様が言っていたのサ
暗い部屋は好きよ。
暗いと周りがよく見えないけれど、それがいいの。
その方が落ち着く。
ワイン蔵か…。
ここに貯蔵するならやっぱり、葡萄酒かしら。
良くも悪くも、歴史は繰り返す。
世界に学習能力が備わっていないからなのか。
それとも、備わっているからなのか。
きっと、両方ね。
恋をするのは初めてでは無いような気はするけれど
こんなにも誰かを好きになったことは、今までにないわね…。
貴方の言う通り、私は怖いの。
愛し愛されることは私の理想ではあるけれど
その理想を手にした後、失った時の痛みを思うと、ね。
…ねぇ。神様になるのって、一体どんな気分だと思う?
楽しいのかしら。苦しいのかしら。
それとも、その両方かしら。
ボクには狭いガ暗くて落ち着く地下ダッタヨ、キミも暗い部屋が好きカイ?
何に使われていたんダロウ、ニホンの山の湿度デハ、ワイン蔵に使えそうダネ
ソウサ、痛みがないと学ばない事の方が世の中ニハ多いかもしれナイ
地球が始まり、自分のような思いをした人間が過去に何千万人いたと思えば楽になりはしないカナ?
その中で自分ヨリ地獄を見た人、自分ヨリ酷い罪を背負っている人がいたらボクらは無視できるだろうカ
歴史が繰り返される心配が全く無いのなら、世界中の歴史教師が失業してしまうヨ
求む事で理想は現実にできるヨ、キミに求む勇気と想いがあるならネ
出切るかって?そんな時はポケットを見て、空を見上げてクダサイ
ホラ、いつか誰かが夢を見た事で、人は電話ヲ持つ事も、月へ降り立つ事もデキタからサ
キミは大切な人が天国へ行く時に傍にいたくないのカイ?
愛憎はわからないガ、キミの強い想いが抑制を図っているのかもしれないナ
愛し愛される事を恐れている気がするヨ、もしかして、初めての、大きな恋なのカナ
争い合うことがなく、苦しみも悲しみもない世界が理想ではあるけれど
それがないと人は成長出来ない。
現実って皮肉なものね。
幸せにしたいとは思っているのだけど
どうにもうまくいかなくて。
天国に行く道があっても、その道を私は歩けないわ。
そんな道を歩いたりしたら、私はきっと焼け死んでしまうもの。
ええ。
少なくとも、私の世話をしてくれた人はきっと、ね。
どうぞ、行ってらっしゃい。
私も、貴方があの場所をみて
何を感じるのかが気になるし。
ヒトは助けが得られない事からも成長していくと思ってるヨ
争いを通じなければ見えなかったモノだってある、コレも親の喧嘩と一緒ダネ
本音をぶつけあって互いの嫌な部分を指摘するのも時には必要ナンダ
国家間の平和も家族の円満も理想論という綺麗ゴトだけでは成り立たないカラ
呪い、好きなヒトを呪って幸せにはしないのカイ? 想いが強すぎるのカナ
ソノ強い好きな気持ちを背負い込むココロを持った相手なら可能かもしれないサ
愛にもイロイロなカタチがあるから、キミが幸せになる資格も天国に行く道もきっとあると思うヨ
ソウカ、すると、キミを連れ去ったヤツも自らの地獄に囚われているかもしれないんダナ。
救われない魂がイッパイダ、ところで少しだけ教会の地下ヲ見てきてイイカイ?一人で行くサ
キミの頭の中にある光景をこの目で見てみたいんだ、その場所がどの程度の暗闇なのカ......
うん…。
手を出したくなっても私達の事を思って
敢えて必要以上に手を出さない様にしてくれているのかも。
猫の神様に尋ねたら、あの子は何と答えるかしらね。
一途と言えば聞こえはいいけど
私のこれは恋や愛というより呪いに近いわ。
だから、私に想われている人はもしかしたら不幸かも。
自分がそれだとか、考えたことはないけれど
恨みより、可哀想だと思う気持ちの方が
強いことは確かね…。
救うより、見守る事しか出来ないカモネ、カミ様はボクらの親のような存在だからサ
ボクらがオトナになって、子供を育てる頃になったらその気持ちがワカルンダロウナ
手放しから学ぶモノも多い、自転車に乗ると同じで、自分の運命は最終的に自分で漕ぐンダカラ
執着する恋ハシタ事がないナ、ボクは恋をスル時は自分の全てあげてしまいたいケド
相手の自由モ尊重シタイ、自分の感情だけで縛り付けるのは恋ではなくエゴダカラ
モシお互い気が変わる事があるならそれでオ別れサ。人間ダカラネ
それにしても、キミはとても一途だネ? 日本女性、ヤマトナデシコだと思ったヨ。相手が羨ましいナ
その通りさ、ストックホルム症候群は同情から始まって
好意だけでなく、考え方の同調や心理の転換にもなり得る、自我が未完成な未成年ほど危うい
キミが過去に連れていかれて悪い事ばかりでなかったと聞いたから心配になってサ
ひょっとしたらキミの心はその頃からナニカに囚われたままなのかと、ネ
宗教や神様は人を救う為に在るものの筈なのに
それによって争いが起こるなんて悲しい話だわ。
そもそも、「神様は人を救うためにいる」なんて
そんな考えが間違っていたりして。
そうね。きっと貴方の言う通り。
私は特別に憧れているだけよ。
うかばれようと、枯れようと、どちらでも私は構わない。
特別な何かになれさえすれば。
残念。外してしまったみたい。
やっぱり難しい謎々ね。
特に深い意味なんてないわ。
恋に落ちるにしても、復讐を誓うにしても
相手に執着を持つという点については
同じだと思っただけなの。
ええ。知っているわ。
犯罪被害者が犯人と過ごす内に
犯人に対して過度な同情や好意を抱くことよね。
それがなにか?