ドアを開けると簡素なベッドが見える。
その前にはこの部屋の住人が拘ったのだろう、部屋に不釣り合いな程綺麗に磨かれたアンティークの机と椅子が鎮座している。
食器棚の中身はガランとした中に、ぽつりとアンティークのティーセットが並べられている
…たまに上機嫌でお菓子を焼く姿がみられるとか…。
ふぅん…。
それなら、いいのだけれどね?
(疑いを込めた眼差しで那由多を見
贅沢…まあそうよね。
私はこんなに可愛いというのに
スタイルが良くないから嫌なんですって。
本当に残念な話だわ。
貴女が必要ないのなら
わざわざこんな廃墟の一室で
一緒にお茶会なんてしていない。
本当ならもっと綺麗な場所で
お茶会をしたいのだけど…。
辛さも悲しみも苦しみも私は嫌いよ。
だけれど、簡単に手放したくはない。
そういった悪感情も、全て私のもの。
私は私の認めた人にしか、私の痛みは癒させない。
…最近は、それも上手くできていないのが憂鬱ね。
人の優しさに触れすぎた結果だわ。
気がつかないうちに、どんどん私の心が書き換えられて
私が私で無くなってしまう…。
以前は今程、穏やかな人間ではなかったのに…。
全く、嫌な話ね。
(軽く溜息をついて
貴女を忘れろという方が無理でしょう。
貴女ってば四六時中、私を付け回して煩いんだもの。
忘れたくても忘れられない。
うん?
なにか聞き間違い、じゃないかな?
(へにゃりと笑顔を浮かべて冴来を見る
冴来がなんで怒ってるのか、なゆたわかんないよ
なゆたは、冴来の悲しむことなんてしないよ?
へんな冴来っ
(くすくすと無邪気に笑いながら
それにしても、冴来を拒むなんて
なぁんか贅沢な奴だね~
(ぷくっと頬を膨らませて
傍にいたいなら、いればいいんだよ
ダメな時はなゆたが話し相手になるよ
冴来はいろんな人に囲まれてるから、
なゆたなんて…必要ないかもしれないけど、ね…。
(暗い瞳で自身の膝を見つめながら
辛い時は、なゆたが美味しい紅茶を淹れてあげる
悲しい時は、なゆたが甘いお菓子をつくってあげる
苦しい時は、なゆたが冴来の痛みを共有してあげる
だから、お願い、だから
なゆたを忘れないで…。
(祈るように目を閉じて
私を壊すなら…なに?
あの人を、傷つけようとするなら許さない。
大切なの。愛しているの。
かすり傷一つ負って欲しくない。
私の大切な…とってもとっても、大切な人…。
だから、あの人にはなにも、しちゃ駄目よ?
(一見穏やかな、目が笑っていない笑顔を浮かべ
上手く、いくといいのだけれどね…。
きっと上手くはいかないわ…。
でもいいの。
それでも、私はいいの。
一方通行な愛情は、とてもとても、寂しいけれど…。
(悲しそうに目を伏せ
ずっと笑っていられたら
心から楽しいって、思っていられたら
それほど素敵なことは、ないのにね…。
くふふ、そんな日がきたら、
なゆたはきっととってもしあわせ!
(ふにゃりと冴来に笑いかけ
なゆたは、冴来が好きだよ。
すごく…すごく、ね…。
冴来がしあわせならそれでいいよ。
冴来がそれでいいのならそれでいいよ
なゆたは、なゆただけはいつも冴来の味方でいてあげる
(眉を下げ泣きそうな顔で
でも、なゆたの冴来を壊すのなら
例えそれが冴来の大切なものでも、
きっと、なゆたは…
(小さく掠れた声で呟き
えへへっ♪
うまくいくと、いいね!
冴来がしあわせで、笑っていてくれるのなら
なゆたはなんでもできる気がするんだっ
(にぱっと笑顔で冴来を見つめて
だけど、もしも、もしもね?
何かされたら、冴来が泣くような、悲しむような
辛いと思うような事があったら
…なゆたに、相談してくれる?
(無表情でまっすぐに冴来を見つめながら
貴女の代わりはいないし
今は傷つけたいと思わないわ。
いつか、壊してでも私のものに。
なんて思う日もくるのかしらね…。
大好き…。大切で、愛しくて…。
ずっとずうっと、そばにいたいの…。
近すぎるって、深く関わると私と妹が
危険だからだめだって言われたけれど…。
止められないの…。
誰よりもあの人の近くにいたい…。
麻薬でもなんでもいい。
例え一瞬でも、幸せな夢が見られるのなら…。
あの人の傍にいられれば私は幸せ…。
寂しさも、苦しさも
あの人といる時は溶けて消えて…。
会いたい…。
とっても、会いたいな…。
(那由多の歪んだ笑顔を気にもせず
目を閉じうっとりと呟き
えへへ、なゆたも冴来を愛してるよ!
なゆたは、まだまだだって事だね。
いつかね、冴来の唯一無二になりたいの、なゆたは。
大事にされるよりも、壊されたい
(虚ろな瞳で俯いて
ふふ、冴来はそいつが好きなんだね。
愛しい、恋しいって、そういう気持ちだよ
お砂糖みたいに甘くて、飴を噛んだ時みたいな痛み。
(貼り付けたような笑みで
でもね、冴来
愛は、恋は、人を狂わせる。
麻薬みたいなものだよ
ふわふわ夢みたいに楽しいのは一時だけ
いつか自身を滅ぼす事になるのに人は気付かない
だからなゆたは、男の人は嫌い。
冴来がそいつを好きで幸せならなゆたは応援するけれど
冴来をとられるのはとっても癪だなぁ…。
(にぱっと笑いかけるも、瞳は影を帯びてどろりとしている
ええ。私は那由多が好き。
大好き。愛してるわ。
だから、忘れない。
けれど、貴女を壊す気にはなれないのよね…。
そこまでの強い愛情は、私は貴女にもっていないのかも…。
壊されたい…その気持ちは、分かる…。
私もあの人になら、壊されてもいい。
ううん、壊して貰いたい…。
胸が暖かいのに苦しくて切なくてやりきれなくて…。
何もかも、妹を投げだしても
傍に居たいと思ってしまう…。
大好き、愛しい…。
そんな言葉じゃ足りない…。
触れたくて触れたくて仕方が無くて
凄く凄く、会いたくなる…。
そういう人が、私にはいるの。
この気持ちは、なにかしらね…。
今迄感じたことのない、私の知らない感情…。
あの人を想うと、とても胸が高鳴る…。
今も、そう…。
一体、これは、何…?
那由多、貴女は知っている?
(熱に浮かされた様に
ぽつりぽつりと言葉を吐き
ほんとに…?
ほんとに、冴来はなゆたを忘れない…?
(ぼんやりと紅茶の水面を眺めながら
なゆた、冴来に…愛されてる?
冴来はなゆたが好き?
なゆた、なゆたはね
冴来になら、壊されてしまいたいなって、思うの
(眉を下げ不安げに冴来を見つめる
どうせいつか、なゆたも壊れてしまうなら
なゆたは大好きな冴来に壊されたい。
どんなに惨い殺され方だって構わないの
いつか、なゆたが死ぬときは冴来の手で…。
(小さな声でぼそりと
恋の色…ね。
冴来、ナニが気になるの?
恋なんて、大した事じゃないと思うよ、なゆたは。
(少し表情を曇らせる
何かに耐えるように両の手を机のしたでぐっと握りながら
私は那由多を忘れないわ。
私が貴女を忘れたら、貴方はとっても悲しいでしょう?
だから、私は貴女を忘れたりしない。
約束するわ。
私、貴女のことも愛しているつもりなのだけれど。
あの子が羨ましいね…。
羨ましがるような、いい愛情じゃないかも知れないわよ?
私、時々…時々だけど
あの子を壊してしまいたくなるの。
だって最近のあの子は、全然私の思う通りにならない…。
私は我儘で、残酷だから
思い通りにならないものはすぐ壊してしまいたくなるのよ。
(頬杖をついてにっこりと笑い
ん、ああ…。
ピンクは恋の色、ってよく言うでしょう?
恋ってどんなものかしら、なんて思ってね。
誰に理解されなくても、
冴来に理解されなくても、
それでも、
冴来はこうやって、
少しの時間でもなゆたと居てくれるでしょ?
(冴来の対面に座りながら
なゆたは、
それがとても愛しいの。
大切で、大切で、壊したくない
他の誰でもないなゆただけの冴来との思い出
例え冴来が明日なゆたを忘れても
せめてなゆたが思い出せるように
なゆたは冴来と過ごすの
(眉を下げて小さく一度だけ足を揺らし
いい子、美味しい?…ほんとっ?
えへへ、冴来にほめられちゃった!
なゆた嬉しいよっ
(頬を真っ赤に染めながらふにゃりと笑い
ももちゃん、いいなぁ
冴来に愛されてて…
(ぷくっと頬を膨らませて
?
ピンクのハートが、どうかしたの?
ふぅん。
理解して貰えない愛情って
とても悲しいと私は思うのだけど。
可愛い物は大好きよ。
貴女って本当に良く私の趣味を理解してくれているわね。
とってもいい子だわ。
(那由多に優しく微笑みかけ
ええ、いただきます。
(ハート型のクッキーを摘み、口にいれ
ふふ、美味しい。
那由多はお菓子作りが上手ね。
妹を思い出す、と言っても
妹には会いたければいつでも会えるし
思い出す程の事でもないかしら。
ピンク色のハート、ハートは心…。
ピンク色は恋の色、か…。
(クッキーを弄びながらぽつりと
わからなくて、いいよ
愛情なんて、
誰かに理解されるものじゃないって
なゆたは思うから…
(眉を下げ、へにゃりと笑いながら紅茶の用意をする
うんっ、
冴来は甘いのが好きだと思ったから、
ちゃんと用意しておいたよっ♪
(にぱっと笑いながら振り返り
お砂糖もね、拘ってみたんだ!
見てみてっ?
(レースの様に細かく加工された砂糖の入った瓶をテーブルへ置き
すごく可愛いよね、
冴来、
こういうの好きかなって…
(少し頬を赤く染め、視線をうろうろとさせる
さ、紅茶できたよ!
(銀のトレーにクッキーとティーセットをのせてテーブルまで運び、並べる
あっ、冴来、冴来っ
ハート型のピンクはイチゴ、
白いのはバニラ
丸いブラウンはチョコで、
白いのはバターだよっ
た、食べてみてっ?
(きらきらと期待に満ちた目で冴来を見つめる
…そう。
貴女の私への執着はよくわからない…。
まあ、独占したいとまでは思わないけど
私も那由多のことは大好きよ。
(手招かれるまま椅子に座って溜息をつき
ありがとう。
砂糖とミルクもあるなら貰える?
クッキーもちゃんと食べてあげるから
そんな不安げにしなくていいわ。
貴女のことだし、私の為に作ったんでしょう?
貴女の努力を無駄にはしない。
…不味かったら残すけれどね。
冴来は、綺麗だよ
すごく、すっごく綺麗
冴来がどんなに否定しても
なゆたにとってはただそれだけが、
すごく、なによりも大事な事なの
歪んでてもいいよ、
なゆたは冴来が大好きなの!
そだよっ、座って座ってっ!
(椅子を引いて手招きしながら
紅茶いれるね?
クッキー、試しに焼いたんだっ
上手にできたと思うの、
その、だから…
冴来に食べてもらえたら
なゆたすごく嬉しいんだけど…
(俯き気味に冴来の表情を窺う
…私の中は澱んでいるわよ?
世界への悪意と自己嫌悪。
愛しい人を自分へ縛りたくて仕方ない。
それを綺麗というのなら、貴女の感性は歪んでいるわね。
私の様な泥水を啜って生きても
いい事はないと思うけれどね。
護ってくれなくても大丈夫。
年下に護られるほど弱くはないわ。
私は強いの。
…立ちっぱなしもなんだし、
とりあえず椅子に座りましょうか。
折角貴女が用意してくれたのだもの。
有効活用しなくては。
くふふ、ソレはないしょだよっ♪
なゆたはね、
冴来のそういう所も好きだよ?
(眉を少しだけ下げ、へにゃりと笑い
冴来の瞳の中は、とっても綺麗。
硬いようで、ほんとはすごく柔らかくて
霞んで見辛いだけで、
ほんとはすごくきらきらしてるの。
冴来の中は、とっても綺麗…
(虚ろな瞳で床を見つめながら
過去は過去、今は今なんだよ、
冴来っ!
(にぱっと笑顔で冴来を見て
なゆたはね、生きる理由を見つけちゃったから
だから、それを守らなきゃいけないの!
なゆたの理由は、冴来なの
冴来はなゆたのお水なんだよ~♪
訳がわからない…。
全部一人でやったとでもいうの?
私の見た目が優れていることは認めるけれど
纏う空気、か…。
愛しい人達の事であるならば
私も貴女と同じ様に
その人の全てを肯定するけれど
自分に向けられるのは違うような…。
クロウディアが困る理由が分かった気がする。
悪い事をしたかしら…。
貴女って本当、大袈裟ね。
私がいなくなったって
貴女はちゃんと生きられる。
私と出会う前だって
貴女は生きてこられたんだから、大丈夫よ
えへへ、なゆたは正義の味方なので
なゆたに不可能なんてないのですっ
(へにゃりと笑いながら
そうだなぁ~…
冴来が理由がほしいっていうのなら、
なゆたは理由を付けるよ!
強いて言うなら、
冴来がとっても綺麗だったから、かな?
見た目もモチロンだけど、
そうじゃなくて……
冴来の瞳の中のナニカが、
冴来の纏う空気が、全てが
なゆたを魅了したの。
だから冴来が好き、
冴来の居ないセカイで、なゆたは生きられない
お水を貰えずに干からびる魚には、
なりたくないなぁ~
頑張ったことは、褒めるけど…。
よくここまで改造したわね…。
コンロまであるなんて予想外だわ。
どうなってるのよこれ…。
情報屋さんがみたら目を丸くするでしょうね…。
愛に理由は、必要よ。
少なくとも私にとってはね…。
理由も無しに他人を好いたことなんて、私はないもの。
えへへ、冴来に誉められちゃった!
なゆたすっごくうれしいっ
(無邪気に笑顔を浮かべ、更にぎゅうっとしがみつく
?
冴来はどうしてそんな事言うの…?
なゆたは、なゆたはね
冴来が大好き!
ずっとずっと、ずーっと一緒にいたいの
大好きなのに、後付け<りゆう>は必要?