ドアを開けると簡素なベッドが見える。
その前にはこの部屋の住人が拘ったのだろう、部屋に不釣り合いな程綺麗に磨かれたアンティークの机と椅子が鎮座している。
食器棚の中身はガランとした中に、ぽつりとアンティークのティーセットが並べられている
…たまに上機嫌でお菓子を焼く姿がみられるとか…。
ふぅん…。
それなら、いいのだけれどね?
(疑いを込めた眼差しで那由多を見
贅沢…まあそうよね。
私はこんなに可愛いというのに
スタイルが良くないから嫌なんですって。
本当に残念な話だわ。
貴女が必要ないのなら
わざわざこんな廃墟の一室で
一緒にお茶会なんてしていない。
本当ならもっと綺麗な場所で
お茶会をしたいのだけど…。
辛さも悲しみも苦しみも私は嫌いよ。
だけれど、簡単に手放したくはない。
そういった悪感情も、全て私のもの。
私は私の認めた人にしか、私の痛みは癒させない。
…最近は、それも上手くできていないのが憂鬱ね。
人の優しさに触れすぎた結果だわ。
気がつかないうちに、どんどん私の心が書き換えられて
私が私で無くなってしまう…。
以前は今程、穏やかな人間ではなかったのに…。
全く、嫌な話ね。
(軽く溜息をついて
貴女を忘れろという方が無理でしょう。
貴女ってば四六時中、私を付け回して煩いんだもの。
忘れたくても忘れられない。