酷く荒れ果てた礼拝堂。
争いの跡が色濃く残されており
床には割れたステンドグラスの破片が散乱している。
教壇の下には隠し扉があり
そこから地下室へと降りられる様だ。
中央にぽつりと佇む薄汚れた天使像は
どこか泣いている様にも見える…。
そうみたい。
自分の願いが反映された能力を授かるとか
そういったことも聞くけれど…。
…どうなのでしょうね。
その懐中時計って、寧々子さんにとって大切なもの?
やっぱり、それぞれ力が違うのね。
(腕組みしながら天井を見上げる)
んー、私は若返り?…なのかしら。
飴とこの懐中時計が鍵っぽいんだけど…
(首から下げた懐中時計を手に取り)
ええ。
寝子島に伝わる神様「落神」のエネルギーの元である「神魂」を授かり
特殊な能力「ろっこん」を得た、人間でも神様でもない存在。
…それが「もれいび」
…どうなのでしょうね。
私もこの島に来て、自分でもよくわからない内に
いつの間にかもれいびになっていたから…。
…寧々子さんは、どんな力が使えるの?
もれいび、はじめて聞く単語だけど流れからして、ろっこんを使える人たちのことをそう呼ぶのかしら。
たぶん、私も使えるみたい。ついこの間気付いたんだけどね。この島に来てから短いながら色々あったけど、それに関連してるのかな。
お世辞じゃないわ。
私、お世辞は言わない主義なの。
ろっこんは、私も使えるけれど…。
寧々子さんも、もれいびなの?
(PL:お気になさらずに〜
(ごめんなさい、冴来さんでした/謝)
あ、そっか。せっかく名前を聞いたんだから、冴木ちゃんって呼んだ方がいいかしら。
あらぁ、こんなおばさんを待ってただなんて、お世辞でも嬉しいわ。
(くくっと笑いつつ)
そうそう、貴女に訪ねたいんだけど、「ろっこん」っていうのは貴女も使えるの?
うん。寧々子さん。
私のことは…冴来って呼んで。
私、ここで待っていれば
また寧々子さんに会えるんじゃないかと思って。
だから、待ってたの。
会いに来てくれて凄く嬉しい。
私は、木鈴 寧々子(きすずねねこ)。
好きに呼んでくれて良いわよ。私はなんて呼べば良いかしら?
うん。元気よ。
お姉さんも元気そうで良かった。
私ね、花風冴来っていうの。
お姉さんのお名前は?
やっほ~。
(冴木さんの姿を捉えると、右手をひらひらとさせながら歩み寄る)
この島の観光もちょっとお休みしてゆっくりしてたんだけど、そういえばーって
貴女の名前を聞いてなかったの思い出して。元気だった?
ん…?
(人の気配を感じ、入り口に視線を向ける)
あ…お姉さん!
お姉さん、こんにちは。
またここに来てくれたのね。
(寧々子さんの姿を認め、顔を綻ばせる)
さ、て、と。
(上から何か落下してこないか警戒しつつ、教会の入り口をくぐりながら)
お譲ちゃんはいるのかな~っと。
(きょろきょろと見回し、冴木さんの姿を探す)
…愛は寛容であり、情け深い。
妬まず、自慢せず、高ぶらない。
礼を失せず、利益を求めず、苛立たず。
恨みを抱かず、不義を喜ばず、真実を喜ぶ。
全てを忍び、全てを信じ、全てを望み、全てに耐える…。
愛は決して、滅びない…。
愛…。神様、か…。
(天使像に背を預け
破れたステンドグラスの隙間から差し込む光を眺めている
…男関係なら、か…。
(ぽつり呟いて。
三日月を模した香水瓶を取り出し
切なげに、愛おしげに目を細めてそれを眺める)
…貴方はいつも、私を幸せにも不幸にもするね…。
今度はいつ、私を思い出してくれるの?
貴方がいないと、私は幸せにはなれないのに。
貴方じゃないと、私は駄目なのに…。
…会いたいなあ…。
…えっ?
あ、あの…。その、えっと…。
(突然両手を掴まれ目を丸くしておろおろと戸惑い)
あ…。ま、待って…!
あの!ありがとう…!
(去っていく背に慌てて言葉をかける)
だったらっ!
(バッと冴来の頬を両手でつかみ、親指で両方の口角をあげる)
笑顔でいなさい?貴女のそういうはかなげな表情に男は引き寄せられるかもしれないけど、幸せを引き寄せられはしないわ。
…まぁ、それが男関係なら別かもしれないけど(ボソッ)
笑顔は幸せを引き付ける力がある。この世にごまんとあふれてる、そんなありふれた言葉なんて思うかもしれないけど。
(両手を離し、冴来の目を見据える)
全く根拠のない言葉は延々と語り継がれたりはしないわ。本当にあるのよ、そんな力が。
(くるりと向きを変え、出口のほうへ歩いていく)
またね、お嬢ちゃん。
(ひらひらと手を振りながら去っていく)
…うん、そうね。
幸せは人それぞれで、自由なもので…。
誰にも押し付けられない、押し付けられるべきものじゃない…。
…だから…。
自分を幸せにする努力は、しているつもりなの。
そもそも努力なんてしなくとも、私はもう既に幸せな筈で…。
ただ…私の本当に求める幸せが
少しずつ私の手の届かない遠い場所へ
離れていっているような気がして…。
でも、大丈夫。きっと気のせいだから。
大丈夫…。私は、信じているもの…。
さっき言ってた”大切なものを捨てたり忘れたりしてしまう”こと?
(天使像に背中を預け、床のステンドグラスをつま先で弄りながら)
そうねぇ…、貴女も半分は答えが出てるんじゃない?
幸せかどうかは人それぞれ。捨てたり、忘れたりする理由も様々。でも、総じて言えるのは”変化は必然”ということね。幸にも不幸にもなるために必要だから人は変わるの。
貴女にとって幸せには映らないことも、その人にとっての幸せかもしれないわ。
(どことなく悲しげな笑顔を向けながら)
だから、完璧な答えを求めることはできない。完璧な人なんていないから。他人の幸せを願うのは自由よ。貴女が願えば、ひとりぶん世界は優しくなれる。本当は皆が皆の幸せを願えるといいのだけど。
でも、まずは自分を幸せにしなさい。さっき、幸せは人それぞれとは言ったけど、自分を幸せにする力がない人が他人を幸せにはできないわ。
貴女は、貴女の幸せを求めればいい。