酷く荒れ果てた礼拝堂。
争いの跡が色濃く残されており
床には割れたステンドグラスの破片が散乱している。
教壇の下には隠し扉があり
そこから地下室へと降りられる様だ。
中央にぽつりと佇む薄汚れた天使像は
どこか泣いている様にも見える…。
…こんばんわ。
(顔を上げ、困った様に微笑んで)
…幸せには、なりたいわ。
でも、そういうことじゃないの。
そうじゃなくて…なんというか…。
私にとってそれは、幸せではないけど…。
他の人にとっては、どうなのかなって。
…それだけ。それだけなの。
こんばんは、お嬢ちゃん。(礼拝堂の入り口にいつの間にか立っている)
いや、ごめんなさいね。今日の宿を探してたらこの建物を見かけたものだから。(天使像に向けゆっくり歩を進めながら)
ねぇ、貴女が言ってたそれって、教えてってことはつまり幸せになりたいってこと?
…ねぇ。
人はどうして、大切なものを捨てたり忘れたりしてしまうのかな。
なくても平気だからかな…。
ない方が楽になれるからかな…。
それって、幸せなことなのかな…?
…知ってる?知っているなら…私に教えて…?
(天使像に額をつけ、小さな声で語りかける
……。
(天使像の前で手を組み、静かに祈りを捧げている)
*リセット
……ふええっ! いない! そして気づけば遅い時間!
帰っちゃったのかな?!
……うん、帰ろうかな……
【ちょっと寂しげにつぶやいた後、聖女の像の前に絆創膏を置いて立ち去る】
そっかあ……
……やっぱり、俺はお姫様が王子様と無事に結ばれるよう、
見守るしかないなあ【苦笑いしつつ】
事情を知らない人からすりゃ何事かと思うんだけどな!
まあ、童話の通りなら、本当の理由をきっと教えることないんだろうな…
【ふと冴来ちゃんが消えたのに気づきながらも、両手を組み続ける】
…………
【体力限界まで祈り続ける】
私はそんな未来を望んではいないもの。
それに、私には私の王子様がちゃんといるの。
まあ、私が勝手に王子様だと思っているだけなのだけど。
死体になっているわけでも無いのに
驚くだなんて大袈裟だわ。
全身を血で濡らしていたりするなら話はまた別でしょうけれど。
…。
(像の前で祈る蓮太郎さんを暫し眺め。
興味をなくしたようにふいと視線を外す。
自身の周囲に散らばる茨を両腕に抱え集め
教壇下の隠し扉の中へ姿を消した。)
いーやーわっかんねーぞー?
俺が唇を奪っちゃう未来もおかしくねえし【によによと笑いながら】
……まあけど、すでに冴来ちゃんにとっての王子様がすでにいるのなら、
それでいいけどなあ
まあそりゃあ俺はイケメンだからな! 心も超広い!【えへんっ】
けど、あまりにも血を流しすぎたらさすがの俺も、皆もびっくりしちゃうからな!
……だから、程ほどに、ね?
そうか……
【一つ白い薔薇を拾い上げて、手に持っていた茨と一緒に聖女の像にお供えする】
【その後、像の前で膝間ついてそっと、両手を組む】
起こしてくれるのは有難いけれど
キスは遠慮願いたいわね。
私の王子様は貴方ではないもの。
…貴方は優しいわね。有難う。
随分と荒れた聖域ではあるけれどね。
長い年月忘れ去られて清めてくれる人がいなくなっても
この子はまだ此処で祈ってる。
とても美しいわね…。
それじゃ、もし冴来ちゃんが眠ってるの見つけたら、真っ先に俺が起こしちゃおっかなー?
お目覚めのアレ、で♪
【冗談っぽく】
誰が言おうが心配しちゃうのが勘助だし…
それに、勘助にとって、大切な友達の一人、だしな
後、俺にとってカワイ子ちゃんの一人だぜ♪
【白い薔薇をじっと眺めながら】
……例え、周りが血塗られて汚いと思っても、
この子たちなら、きっと分かってくれる
冴来ちゃんのど血や涙を流してまで紡ぐ訳を
…それに白薔薇が真っ赤に染めりゃあ赤薔薇だろ!
冴来ちゃんの強くなりたいという静かな情熱と、この子たちを思う温かな愛情のこもった純血なら、
汚れてるなんて思わねーぜ!
…しかしまあ、ここにも教会があるなんて気づかなかったなあ…
しかも、登山した矢先に聖女様と遭遇しちゃうなんて夢のようだ…
【聖女の像を横目に眺めながら】
その時はその時よ。仕方がないわ。
自然と目が覚めるまで。
或いは誰かが私を見つけて
目覚めさせてくれるまで
ずっとずうっと眠るだけ。
勘助は優しい子だものね。
心配なんでしてくれなくてもいいのに。
死ぬわけではないのだし、平気だわ。
幸い、ここは山の中だもの。
棘のない植物だって沢山あるわ。
…でも、また今度にしましょうか。
今の私の手は血濡れているから
こんな汚れた手で触れたりしては植物達が可哀想。
…貴女達だってこんな風に汚される為に
咲いたわけではないでしょうにね。
…ごめんね。
(手の中で所々赤に染まった白薔薇へ視線を落とし
ぽつりと小さく悲しげな声で呟く)
…フッハハハハハ! それもそうだな!
そこまで大袈裟に考える必要でもないか!
しかし誰もみられないところで倒れていたら大変だぞ!
冴来ちゃんが良くって、俺はダメってある意味不公平だなあ…【茨をいじいじ】
それに、俺は確かに真っ先に心配されるような世界一のイケメンだけども…
…勘助はどちらかと言うと冴来ちゃんを先に心配するんだと思うな【ぽつりとつぶやく】
うーん、別のものって言われたってなあ…他に思いつくものー思いつくものー…
【片手の人差し指で額を押さえて考え込み】
そのぐらい何ともないわ。
疲れたら眠ればいいだけだもの。
…私はいいの。
私はどれだけ傷ついても構わない。
だけれど、貴方は駄目よ。
一緒に冠を作るなら別のものでつくりましょう。
それなら作り方を教えてあげる。
……傷つかなくても慣れなきゃ疲れるよね
大丈夫大丈夫、仕事でやっちゃったぜっ☆って言えばなんとか誤魔化せる!…と思う!
それに、怪我しちまったらその時はその時だし…冴来ちゃんも人のこと言えないよ?
どれだけ辛くても成し遂げなくてはならないの。
そうしなければいけないの。
体が傷つく事ぐらい平気。
心が傷つく訳じゃないもの。
…蓮太郎さんも作るの?
…やめた方がいいと思う…。
貴方が怪我をすると勘助が貴方を心配するわ。
おーう…そりゃあ気が遠くなるほどキツいだろうなあ…
【そっと茨をひろって】
……冠の作り方、教えてくれないかな?
…幾つ作ればいいのでしょうね。
少なくとも十一では足りないことは確かよ。
二十….三十…。
…ううん。そんな数じゃ到底足りない。
もっと…。もっともっと沢山作らなくちゃ…。
…冴来ちゃんはダメなんかじゃない
つまり、冠一つ出来るまでは泣かなかったってことだろう?
自分の心がまた一つ上、強くなったってことだ
また、途中で泣いちゃったら、
今度は2個出来るまで泣かない、3個出来るまで泣かない…って、頑張ってみたらいいと思う
…ちなみに何個作るつもりなのかな?
…末の姫は、その身心がどれ程痛もうとも
泣き声一つあげることなく耐え忍び
愛しい兄達の呪いを解くために
イラクサで十一枚のシャツを織る…。
心根が強く、そして優しいお姫様。
私の理想よ。
…私は駄目ね。
冠を二つと作らないうちに泣き声をあげたりして。
今の私は弱すぎる。
もっと…。もっと強くならなくては…。
(手を休めることなく動かし続け
茨の冠を織り上げながら言葉を落とす)