遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
(遙さんの話を聞いて)
おー、オレと同じ二年生の人なんですねぃ。
ん、そっかぁ。なら、仲良くなれたら見てみたいなぁ(微笑)
シーグラスのランプシェードかぁ。きっと綺麗なんだろうなぁ♪
作品から温かみのあるものを感じるということは、
きっとその人は、心根の優しい人なんでしょうね。
(従夢君の言葉に首を振って)
ううん、オレは強くないよ。
時々後ろを振り返って、怖くなる事があるしね(苦笑)
ご、ごめんごめん…っ 誤解させるような言い方して。
あぁ…ソレはオレも同じだなぁ。優しいだけの偽善者とは合わないわー…。
うん、ちゃんと話そうとしてくれた人には、自分の事も話すよ。
キミのお兄さんとオレは少し似てる所があるのかぁ。
となると、うーん…。ダメだなぁ、これ以上は話にくいから、よかったらコレ渡しておくねぃ。
時間出来たら、メールちょーだい♪(自分のメアドをメモ用紙に書いて、従夢君に差し出す)
(場の雰囲気に気付いて、少し考えた後)
あ、すみません。入れ替わりになって申し訳ないですけど、オレはそろそろお暇します。
何かあったら、連絡下さい。
また来ますねぃ♪(そっと赤潮さんと遙さん達に頭を下げて、その場を去る)
その人物……兄は僕の理解を越えていますから
僕が時任彼方はその人間性までも悪魔的だと称した時彼はこう言った「悪魔だって恋をする」
実に陳腐な台詞ですよね
それとこうも言っていた
「悪魔はこわがられてるから人と一緒にはなれない。でも音楽はこわくない、だからさがしてる。どうやったら伝えられるだろうって」
それを今思い出しましたよ
新聞の記事で見た気がします。くだらない。彼にそんなもの通用する筈も無い。所詮その程度の理解なら崇拝など止める事だ。生贄にすらならない
低俗な信奉者にしか恵まれなかった事が不名誉だ
成程。興味がないものに対しては冷酷……では彼の冷酷で無い一面もご存知だったのでしょうね
まあ、なんと言いますか……(自分の言葉を補足しようとするがそれは止めて)
虚構ですか。それはあなたが望んでいたという事です。真実かどうかはもはや分からない。貴方のような人が自分にとって取るに足らないものを都合よく捏造したりするでしょうか?
貴方の見たいモノ、それが何だったのか……貴方は見るよりも聴いていたかっただけなのか
半分近く……納得です。僕とは人生経験の差が歴然ですから。本当に年を重ねただけの事がある人は安心しますよ。斑鳩さんには信じがたい事かも知れませんが、この人本当に僕の倍以上?って思うような常識の無いひともいますからねっ、もうっ(急に拗ねた子供っぽい口調になり、怒っているが口元が緩み)
……あ、失礼
参考になっただなんて。斑鳩さんのような方にそんな言葉が頂けるなんて光栄です
どんな生活をしていらっしゃるんですか?
斑鳩さんでしたら遊蕩も如才なくやってのけるのでしょうが
対面を保つのが得意と見える。そこは僕も自信がありますが
本音なら重症だ
ふむ
世の人間など皆狂人です。己すら完全にに理解できないのに、他人を理解するなど到底無理でしょう
僕は理解した気になって足元を掬われるぐらいなら、懐疑的に行動するよう努めます
彼の思惑通りであっても、死人はもういなのです。彼はどこでほくそ笑めばいい?
貴方の心の中、か――
まさかそんな事。塩も砂糖も使いませんよ。味が落ちる
(冗談だか本気だか分からない顔でふふふと笑い)
そうですね……強いて云うなら斑鳩さんの本性が知りたいですね
後は女性との付き合い方……ですかね
斑鳩さん、奈良の方だったとは……言葉遣いでは全く分からなかった
(ちょっと衝撃を受けた)
関西訛りは得意じゃないとか……?
ああ、そういう意味じゃない。
廃墟の遊園地に迷い込んでくるなんて風変わりな人物だと思っただけだ。自分を棚上げするようでおかしいが(赤潮さんに向き直り)
(埃を被った座面を優しくなでる赤潮さんを見つめ)
「たぶん」?妙な言い方をするんだな
気に障ったんなら謝る。別に関西人が嫌いという訳じゃない……俺も関西出身、故郷は奈良だ。鹿しかいない
貴方は……(何か言いかけて口を閉ざし)
どこかで見かけたような気がしたが、気のせいか?
「何かさがしてるみたい」か……(僅かに目を見開き)その発想は斬新だな。俺の中にはついぞなかった、面白い解釈だ。どうやらその人物は独特の視点の持ち主らしい
コンサート会場での自殺騒ぎは時任に手ひどく振られた女の仕業とも囁かれている。腹いせで薬を呷ったんだと……
それでも弾き切ったんだから大したものだ。眼中にさえなかった。興味がないモノに対してはどこまでも冷酷な男だった。
……演奏を聞くと自殺したくなるなんて不名誉なんだか名誉なんだかわからないな。
俺が理解できたのはあいつの音楽だけか。手厳しいな……だがその通りかもな。
今はその自信も揺らいでる。俺が真実だと思っていたものは都合よく捏造された虚構だったのかもしれない。所詮人間は自分の見たいモノしか見れない、俺達を繋いでいたのは音楽だけだったのかもしれない…
少なくとも君の半分近くは生きてるよ(肩を竦め)
ああ、誤解しないでくれ。面倒くさいとは言ったがつまらなかったとは言ってない。君達と話すのは楽しい。俺にはない見方を知る事ができて参考になった
……皆口君みたいな辛辣な甥がいたら生活態度を改めなければな(冗談ぽく)
(「貴方こそ非凡だ」という指摘に不審げに眉をひそめ)
……本音で言ってるつもりだが。
最近思うんだ、本当の意味で他人を理解するなど不可能じゃないかと。時々匙を投げたくなる。だがそれは敗北を認めるみたいで癪だ、今はまだ降参したくはない。
……あいつの思惑通りでも、もうしばらくはつきあってやるつもりさ。
ただ傷をなめるだけならいいが、砂糖と嘯いて塩をすりこむようなまねはするなよ
……いや、君ならそういう事もしかねないと思ってね(意味深に含み笑い)
(「教育してほしい」という言葉に対し)
別に構わないが、何を教えてほしいんだ。聡明な君の事だ、勉強には苦労してないだろう
赤潮さん、ですか。よろしく
(ふっと微笑み)
若い……まあ、未熟者ですが……羨ましいものでもないですよ。僕は大人びているつもりだけど、時々子供だなと思う時もあって、少し悔しいから……
貴方は……(首を傾げるように品定めし)
僕よりかは年上かな?斑鳩さんぐらいですかね?
貴方も十分に若々しく思えるけれど……仕草や言動が……あ、失礼
ええ、僕は寝子島出身です。僕が生まれた時は両親は寝子島に住んでいたようですね
この遊園地は僕が生まれる前に閉鎖されてしまいましたが、子供の頃は肝試しのスポットとして話題に上がりましたね
ただ、山道を歩かなかればいけないので、実際に行こうとした子供はほとんど居ませんでしたが。僕は勿論行きません。寧ろくだらないからやめておけと諭す方でしたよ
体力をつけろだとか、少し外を歩いた方がいいとか言われて来てみたんですよ。どうして昼ではなく夜なんだと聞かれたら、僕が夜行性だからです。正直疲れました
皆さんもよくこんな所まで足を運ぶ気になったものだ
こんな所だから誰もいないと踏んでいたのに、人は大勢いるし……
(不満そうにぶつぶつ)
いえ、嫌ではなかったですが……
僕は人と話すのは嫌いではない
ただ、人嫌いなだけなのです
一般人かって兄ちゃん、此処って芸能人でも来んの?すげーな、有名スポットなんや。へーえ!
知らんねや。そーかあ、そんな前から……寂しなあ……。(自分の座った席の座面を慈しむようになぞり)
兄ちゃんは他所出身なんや。オレは、うん、多分関西。やけどオマエ、そんな目ぇせんでええやろ。
兄ちゃん関西嫌いなんか。そういう兄ちゃんは?何処なん?
(愉快そうに目を細め、斑鳩さんの目を見詰め返し)
オレ、赤潮。赤潮陽斗。よう「はる」って呼ばれる。
学生か、ティーンやな。若いってええわ、マジうらやまやわ。
本土?……あー、此処って島やもんな。せやで、余所者や。
オマエは?此処の人なん?
ええ。その姿も、演奏も、直に。僕はそれで、彼に関わるのは危険だと感じた。一緒に居た人間は彼の音楽を「なにかさがしてるみたい」と言っていたけれど
自殺……彼自身が同じ運命を辿った
彼自身も、自らの音楽に滅ぼされたのだろうか
いえ。そうですか。あなたが真に理解出来たのは彼の音楽だけだった……くだらない虚栄心では満たせないものを知ってしまった。あなたが彼の音楽に取り憑かれたように
最も近く、最も遠く、けして手に入れる事もできない。手にしてしまえば、それは価値を失う。望ものではない
ええ、彼は楽しかったでしょうね……
悪趣味な優越感だけだったのだろうか、僕は知れない
さあ。時任彼方と同い年ならば、おおよその見当はつきますが……。面倒ですか?残念です。僕は斑鳩さんと会話するの楽しかったのに
そうですか……僕だって人の反応を見て面白がる所があるから、人の事は言えないですね……
(斑鳩さんの、時任さんの話を聞いて、少し、哀しげに笑った)
はは……
僕はその友人が憐れに思えてきた。斑鳩さん、ある面に関しては貴方こそ非凡です。貴方が本心からそう言っているのなら……
傷の舐め合い……ふふ、僕がやっているのは人の傷をただ舐めているだけ
僕は本当に傷を癒やしたのかな……?傷が癒えてしまった僕に、そばにいてくれる人なんているのかな……
そうですか……?でしたら教育して頂けませんか……?
(目をぱちくりさせる赤潮さんに、少し戸惑いつつも微笑み)
……ええまあ。そんな所ですけれど。ええ、宜しくお願いします。僕は皆口従夢と言います。学生です。貴方は?
関西の方ですか……本土から来られたのですか
物珍しさに迷い込んだ一般人か。俺と同じだな
……いや。少なくとも二十年以上前に閉鎖されたらしいが、地元民じゃないからよくは知らない。
その言葉……関西出身か?(赤潮さんを少し胡散臭そうに眺め)
(斑鳩さんに対して一瞬はにかんだ後、すぐ表情を引き締め)
あ、いや、別に。廃墟の遊園地なんて入ったことあらへんだから面白くてよ。
兄ちゃん、ココって随分前から封鎖されとったんか?知っとる?
(再びきょろきょろと視線を巡らせ、皆口さんの視線に気付いて目をぱちくりさせる)
ピアノに。惹かれると弾かれるかけたんか。はは!上手い上手い!
お誘いありがとさん。せやなあ、別に急いとる訳やあらへんし。聞いとるだけでも面白そうやし。
お言葉に甘えてお邪魔するわ。よろしくな!
(軽い足取りでひょいっと近付き、ドスッと席に腰掛けて足をぶらぶらし始める)
そうか……君は生前の彼方を見た事があるのか
あいつのコンサートはいつも盛況だった。クラシックに無縁な若い女性のファンも多く詰めかけた。素人にも玄人にもわかる、それが本当の芸術、真実の才能だ
契約しないで正解だな。あいつの音楽に魅入られて身を滅ぼした人間を誇張じゃなく何人も見てきたからな…コンサート会場で自殺した人間もいた。
……おかしなことを言ったか?(「貴方はそう思っているのでしょうね」という発言に片眉を上げ)
誰が見てもそうだろう、俺自身もそう思うそしてそれは正当な評価だ。
秀才と天才、凡庸と異端、脇役と主役……役回りは最初から決まっていた。
……そうだな、掃いて捨てる程いたな。
その中で何故わざわざ俺を選んだのか……盲目的に崇拝してくれる下僕を選べば低俗な虚栄心も充たされたのに。
悪魔がカラスを見初めるような、ただの気まぐれかもな。
……自分に似て非なるもの、近い色をしていても己のように飛べないモノを見るのは楽しかった筈だ。
(「親戚のおじさんみたい」と指摘され苦笑いし)
君達からすれば俺なんか年寄りだろう。いくつ年が離れてると思ってる。
しかし親戚のおじさんね……君のような理屈っぽい甥がいたらさぞ面倒くさいだろうね
皆口君のそんな顔を見られただけでも言った甲斐はあったな(冗談めかし)
……ああ、これじゃ人の顔を歪めるのが好きだった彼方を軽蔑できないか。
確かに俺は彼方に見透かされていた。
俺もあいつを……その凡庸な一部を理解して、共有していたと言えるのかもしれない
アレで妙に人間臭くもあったからな……俺のする事には何でも子供みたいに興味を示したし
落語のレコードを手に入れたら嬉々として聞きにきたくらいだ。貪欲で強欲、好奇心の塊だった
君が云う凡庸な感情とは……(眼鏡越しの目を推し計るように細め)いや、言わなくていい
それはきっと俺が辿り着くべき答えだろうから。
傷の舐めあいという言葉がある。
いくら似ていても他人の傷は他人のモノ、自分の傷は自分のモノ。血は混じりあっても傷口が同化する事はありえない。それと同じ理屈で、本当の意味での傷の共有は不可能だ。束の間痛みを紛らわす事はできてもな
……本当に自分を癒したいならしめっぽい自己憐憫から抜け出す事だ。蒸し返すほどに膿んで深くなる
どちらかというと教育する側でありたいものだが
学生に指南されたら立つ瀬がないよ
時任彼方。僕も彼の音楽だけでなくその内面性にも興味があった。コンサートにも足を運んだ。悪魔と契約する気は無かったから深入りはしませんでしたが
それぐらいの最低さなら僕も持ち合わせている
到底無理……ですか。成程。貴方はそう思っているのでしょうね
プライドの高い人間は相応にして本心を隠したがる
それが凡庸な感情であるのなら尚更。いえ、一般論です
時任彼方に傅く召使なら、掃いて捨てる程いた筈です。うんざりする程に。そんなものに彼は固執するとは僕は考えられない。凡人の推論ですがね
久しぶりに若い子とって……そんな親戚のおじさんみたいな言い方よしてもらえませんか?(すごく嫌そうに)
一瞬で興冷めです
……いや、僕が間違ってた……呉井君は悪くないよ。止めてくれてありがとう。話題を変えよう……(げんなりしてへこみながら)
そう……。きみは強いひとだね。きみの目指す方向は常に前なのか……少しまぶしいよ……
(困った顔の陽太さんをちらりと見、口を手を隠しぼそぼそ言い返す)
……な……そんな、僕がきみを怖がっているような言い方……
明るく、優しいだけの偽善者より、冷たい人間の方が僕は好感が持てるよ
(ため息混じりに)
僕との関係性を持続させたいから、厳しなっても真剣に接する……そういう人間だろう、きみは
環境は似ているのかも。僕の場合は兄を悩ませているのだけれど。しかも兄の雰囲気がきみと少し似てるから厄介だ
僕もきみと話すのは吝かじゃない。それに、気分を害するのなら僕の方が得意だ
それ程までにあなたはご友人に支配されていると云うだけですよ
他の者だったら戯言だったのでしょう
貴方は見抜かれたと思った
時任彼方だけは貴方を見透かす事ができる。それを貴方はおそれていた
いや、違う……
望んでいた……?
そして、彼もまた……
これこそ凡庸な感情に尽きますがね
悪夢と悪夢が交われば、僕のものか誰かのものか、境目を無くす事が出来る気がする。他人の傷を撫でれば、何処にあるとも知れない自身の傷を手当した錯覚に浸れます
責任と愛情ですか……でしょうね。斑鳩さんには欠如していそうだ。だが貴方を教育する意味では僕の様な存在も時には必要かも知れませんね
(ふと、会釈する赤潮さんを一瞥して)
ああ、どうも(会釈して、少し微笑む)
どうされました?
僕たちはピアノに弾かれて来たんです。僕は全員初対面でしたが、中々面白いお話が出来て楽しいですよ
そちらの方……もどうです?
いや、陽太君は何も悪くないし詫びる必要がない
君と同じ芸術科の……二年生だったかな。彼女のプライベートはよく知らない……個人的なことについてはあまり話さないんだ
こないだシーグラスで作ったランプシェードを貰ったよ。あれがきてから快適に安眠できるようになった。
……魔法、なんて非科学的な言葉は使いたくないが。彼女の作品には所有者の心身をリラックスさせるヒーリング効果があるのかもな。
喩え方が紛らわしいのは俺もだ。比喩だったんだがな……久しぶりに若い子と話すのが楽しくてつい悪ノリしてしまった(申し訳なさそう片手を首の後ろにあて)
(ふと顔を上げ赤潮さんの存在に気付き、会釈をひとつ返す)
こんにちは。貴方は何故ここへ?
(パーカーのポケットに手を突っ込んだまま、踵で地面を打ち打ちぶらぶらしていたが、人気に気付いて視線を向け会釈を一つ)
もー、オレだって悩む時は悩むよぅ。
なかなかうまくいかない時とか、特にね。
だけど、悩みながらでも進んでいけてるならいいなかぁって思う時もあるよぅ。
(従夢君に真っ直ぐ見た事を言われて、困った顔になって)
ありゃ?真っ直ぐ見ちゃうのはダメだったかぁ。
んー、でも…ちゃんと話さないとって思うと、こうなっちゃうんだよね。
(目頭ぐりぐりして、向き直り)
オレ、厳しくなる時は極端だから、そーいうので急にガッカリさせちゃいそうな気がして…。
あの、わざと絶望させるとか、そういう意味で言ったんじゃないからね?(汗)
お互いに弟の事で悩んでるっていう共通点あるし、少し似た環境っていうのはあるかもね。
んーっと、1対1で話すのはいいけど、内容によってはさっき言ったみたいに厳しくなるから、
気分悪くさせちゃうっていう可能性あると思う…。
と、色々言ったけど。ソレでも構わないって事なら、きちんと話すよ。
(遙さんの言葉に、手を振って)
いやいや、気に障ったというより、知らない内にそーいう態度取ってたのかと不安になっちゃって。
な、なんか思ってたのと違う意味のようだし、ハイ…今度という事で了解でっす。
おー、オルゴールの持ち主さんはオレと同じ芸術科の人なんですか。
どんな作品を作るのかなぁ。
ハイ、その人が大丈夫だったら、是非見てみたいでっす♪
(火遊びの言葉への返しを聞いて、困ったように笑って)
ちょ、二人とも謝ってくるとか、どーしたらいいのコレ。
こっちも例え方が例え方だったし、謝らないでー。次の話題行こう…っ(汗)
そうだな……自ら罠に嵌まりに行くのも愚かしい
足元に開いた穴に落ちない為にも、距離を置いて眺めるべきだ
時任は……認めるのは癪だが、外側も内側も魅力的な人間だったからな
クラシック曲を収録したCDジャケットに毎回顔が使われた位だ。
女癖が悪く傲慢、気が乗らなければコンサートもすっぽかす。人としてはかなり最低の部類だったがな
(彼方と並ぶにはそのほうが言われ、吐き捨てるように)
……あいつと並ぶ?悪い冗談だ。そんな事は到底無理だ。
時任は自分に傅く人間が欲しかっただけだ。それか侍らせる召使いか……
……ああ、いいや。なんでもない
……そうだな
友人に指摘されなければ自分の薄情さに見て見ぬふりができたかもな
今頃は家庭を持ってよき父、よき夫を演じていたかもしれない
……だとしても、だからなんだ?
あいつの戯言を鼻で笑い飛ばせなかった、それが原因かつ敗因なら俺は所詮その程度の人間だ。つり合いはとれている。
君は他人の悪夢を知りたがるのか?悪趣味だな。
嗜虐に耽って傷口を穿り返すのは程々にしておけ、やりすぎると手遅れになる。他人を傷付けていたつもりがいつのまにか自分が傷付く、そんな不器用とも器用ともつかぬ人間もいるからな
(「悪い子供です」と述懐する従夢さんを見つめ)
君を叱る役はもっとふさわしい人間に譲りたいな
怒る事はだれでもできるが、相手に責任と愛情をもってないと叱るのは無理だ
(寂しそうな深雪さんを見て申し訳なさげに)
音楽家ならそこそこ詳しいんだが、楽器の銘柄や職人については不勉強でね
時任も言わなかったし……「お前は俺の音だけ聞いていればいい」が口癖だったから、たとえそれがピアノでも自分以外に注意が行くのが許せなかったんだろう。幼稚な独占欲だ
子どもか……(少し考え込むように)独身の俺にはぴんとこない感覚だが、廃墟で朽ち果てている姿を知れば複雑だろうな
君も時任を知ってるのか。……あいつは凄いな(ため息のように呟き)
時任の演奏は情熱的かつ饒舌だった。ピアノは気持ちを通訳してくれる
(改めてまじまじと深雪さんを見て)
……霧生深雪……思い出した、年若い天才ピアニストの噂を。いつだったか時任が言っていた、目をつけている若手がいると。あいつは好敵手に足るだろう人間をチェックしていたから
絶望、か。ピアノには瞑想と浄化の作用もある。君はピアノを弾く事で絶望を希望に置換してきたんだな。
……やはり聴いてみたいな。
君の言う通り、努力する姿勢は無駄じゃない。凡人でもある程度の域までは努力で辿り着ける。だがそこから先は天才にのみ開かれた領域だ。少なくとも俺はそう思う……身近に手本がいたからな
凡人でも優等生にはなれる、上の上には手が届く。だがそれ以上は…
記録に残る一流にはなれても、記憶に残るのは天才だけだ…
随分遠慮のない間柄だったんだな、その幼馴染は。俺も知己に対しては毒舌な方だと思うが…
自分ができる事は他人もできて当たり前だと無意識に思ってしまうのが人のサガだ。それが傲慢の原罪なのかもな。
ある人物が言う死ぬ程の努力を他の人間に強いたら、恐らく耐え抜けずに死んでいる。
世の中には往々にしてそういう事もある。裏を返せば地獄のような試練に耐え抜いた人間のみが栄光を掴めるんだ
皮肉だな
(陽太君に向き直り)
気に障ったんならすまない。腹黒というのは……いや、ここで話すのはよす。
二人になった機会に改めて
オルゴールを所有してるのは知人なんだ。君達と同じ寝子高の芸術科だから名前を挙げれば知ってるかもしれない
彼女も君に負けず劣らず個性的で素晴らしい作品を手がける。見る価値はあるよ
星ヶ丘なら時任の墓参りの行き帰りに通る。暇ができたら覗いてみるか
(陽太君のため息に対し)
火遊び……そんなつもりはなかったんだが(複雑な顔で)
俺が叱られたんじゃ世話がないな。よくわかった、こりたよ(苦笑いし)
誰にでもスランプはある、そうなんだろうけど
呉井君も悩むのか……なんて失礼か
自分の才能を信じてやる、か。霧生君の言うとおりかも。そうだね、好きってだけで続けられる人間の方が特別かもしれない
(自然と「俺の全てだ」と言う霧生さんに驚いたように、目を見張り)
……きみのすべて……か。そう言えるのは素晴らしいよ
落ちるとこまで落ちるのは仕方ないよ、きみのすべてなのだから
僕は落ちるところまで落ちる経験をしたこともない
とりあえず挑戦か、ふふ、すごいな、きみは
弟さん、いるんだ……どんな子?
そうか、君は奏者に。いいね、目指すものがあるひとは。その生き方が芸術だよ。僕にとっては
(陽太さんに、真っ直ぐ見つめられ、視線を逸らします)
……そう。ならなるべく早くがいいな……絶望するなら
きみのような真っ直ぐな目の人間は……きらいだよ……
(目を逸らさない呉井さんをじっと見て)
……気になるか……どうしてだろう……僕にも分からないな
……少しきみと僕の環境が似てるなと、思って、興味が沸いた
きみと一対一で話すのは、面白そうだ……少し嫌な思いをしそうだけれど
唯の比喩ですよ……
言葉は呪い……そう言いましたよね。暴きたてようだなんてすればするほど、僕の罠にかかることになる。お勧めしません
時任彼方……彼はピアノの才能だけではなく、その人間性も魅力的だったと聞きます。熱狂的なファンがいない方がおかしい
さしずめ悪魔崇拝者だ
なるほど……彼方と並ぶにはその方が響きがいい……
両親が軽薄なのと、自分もまたその性質を引き継いでいる事は別だし、たとえそうだとしても、それは忌避すべき事なのでしょうか……?
友人にそういわれなければ、気にする程でもなかったのかもしれませんよ?
僕が両親に複雑な思いがあるのは、両親が僕にそうだからでしょうね
斑鳩さんと同じ、ですよ……
(と拳をぎゅっと握りしめ)
(嬉しそうに片方の掌を見せて)
……ええ、叱って頂けるのかと。悪い子供ですよ。僕は
引くのも癪だなんて、まるで子供みたい。それじゃ僕の思うつぼだ。ご友人が気に入っていたのも分かります
……つまらない悪夢。面白い悪夢なんてのも無いでしょう
他人からすればあるのかも知れませんが
(「火遊び」と聞いて急に狼狽える)
う、別にそういう意味では……そんなはっきり言われると、逆に恥ずかしくなってきた……
ごめん。呉井君。もうこの話は……やめておこう
(ばつが悪そうに顔を逸らす
オレもピアノが大好きだけど、弾きたくても弾けない曲にぶち当たった時、悩んだし。
好きって理由だけで続けるのは、難しいなって思った事はあったなぁ…。
(従夢君から優しいと言われて、困った顔で微笑んでから真っ直ぐ見詰めて)
ごめんね、オレはキミが思ってるような優しい人じゃないから、
絶望させるとしたら、オレの方からだと思うよ。
(感情のない目を向けられても目を逸らさず)
キミが自分のお兄さんにどれほどの事をしたのか、具体的にはわからないけど、
そういう話をオレにするのは何故なのか…そこが気になるね。
それと蹴る事については「蹴るとしても加減して欲しいもんだ」って話をしてたつもりだから、
無茶苦茶にされたかどうかって質問に、ここで答える気はないよ。
ソレに限らず、オレはそういう個人的な話はサシで話したい方だから。
別の方法でなら話すよ。答えられる範囲でだけどね。
(遙さんに言われた言葉に、首を傾げて)
んー…。オレ、遙さんに腹黒な事しましたっけ?
そー思われるような事してたなら、謝りますけど。
あ。八方美人とかそのあたりの事は、この場ではノーコメントで。
いや…。自分で塞いだなら、見過ごしたり、無意識に忌避するのは難しいと思いますよ。
オルゴールの旋律については、まずオルゴールを聴かないとですねぃ。
ハイ、お店は星ヶ丘にありますよぅ(と、行き方を遙さんに説明する)
(深雪君に作品を見てみたいと言われて)
最近はフリマとかにも出てるから、もし見かけたら寄ってみて♪
ん??対極なものを作る時の頭の切り替え方?
いやぁ、特になにも。ぽわぽわと頭に浮かんできたものを作ってるよぅ。
うん、今すぐ引っ越すワケじゃないし、これからだよねぃ。
んーと、木原さんとは最近知り合ったばかりで、ピアノの直し方を教えてもらって。
そのおかげで、修理の方も進んだんだー。
(遙さんと従夢君に言われた言葉とやり取りを見て、はぁ…と溜息をつき)
オレと深雪君がいる前で、お世話になってる人に「火遊びしませんか?」的なやり取りしてたら、
気にならない方がおかしいでしょ…?
遙さん…御しやすくないって、(ふー…と息を吐いて、肩を竦め)…いいや、今度話します。
まあ自分の才能は自分が一番信じてやらねぇといけねぇし。
好きって理由だけで続けられるなら人間こんな悩まねぇんだろうな……そういう人種の方が貴重なんだよ。
(ピアノが好きなのかという問いかけに)
おう、もちろん。俺の全てだからな。
ふーん?まあどうにも気分が上がらないときはあるよな。そういうときは落ちるとこまで落ちねぇと上がってこれないのが難儀なんだけど……。
俺は音楽ならなんでも齧るから。ピアニストがピアノだけ弾いてればいいとは思わねぇし。
何が自分の身になるかわかんねぇから、とりあえず挑戦する感じだな。
まあ曲作りに関しては弟の方が才能あるんだけど……。
俺は作り手側より奏者の方が合ってるし、ピアノ極めたいからな。
へー、呉井の作品もっと見てみてぇな。つーか作風幅広いな……。
可愛いとキモこわって対極にあるような気するんだけど、作るときどうやって気持ち切り替えてんだ?
頭の中が気になる……。
呉井も島外組か。まあ外から来る奴多いもんな。
(淋しくなると言われ照れた)ま、まあまだ時間はたっぷりあるし……な……(目逸らし)
(呉井さんの反応を見て)
呉井は木原さんと知り合いなのか?
(聞いた事がないと言われ少し寂しそう顔をして)
ご存知ないですか……。俺の中では最高の職人なんですけどね。
職人だって製作中は弾いてもらうこと想定して作ってると思いますし……。
(行く末を見届けられないのは寂しいという言葉に)確かに……作品は子どもだって言いますしね。
ご友人はピアノに明るい方だったんですね。
って時任って……もしかしてピアニストの?
ああ……(時任さんの経歴を思い出して絶句)
なるほど、ピアニストは音が言葉ですからね。
俺なんか言葉で言うより演奏したほうがよっぽど伝わることのほうが多い。
だから弾いてる節もあるんですけど。ピアノなかったら絶望してます。
……斑鳩さんの見立て当たってると思いますよ。
まあ幼馴染の奴は自他共に認める毒舌家なので(苦笑)
俺は努力すればどんな高みにも行けると信じてたんです。進歩しない奴は努力が足りないだけだって。
実際そう言ったこともあります。俺だって死ぬほど努力してきたし。
どうやらそういう訳じゃないって知ったのはあいつに指摘されてからなので……。
わかったフリか……確かに俺も同情されるのは大嫌いです。
いや……うっかり口走った俺の方が気まずいというか居た堪れないというか(首の後ろに手をやり)
陽太君が純粋なだけの高校生じゃないのは知ってるよ。意外と腹黒いこともね
頼りにしてくれるのは有り難いが、俺ほど優柔不断な人間もそうはいないよ。部外者が無責任なアドバイスをしてるだけだ。八方美人だと前の彼女にも責められたし…
なんだか謎かけみたいだな。出口を塞いだのが俺自身ならその理由は?
出口の外に何があるのか、どんな情景が広がっているのか……それを目の当たりにするのを無意識に忌避してるのか
旋律の類似については俺も気になる。陽太君も何か気付いた点があれば教えてほしい。
俺はその職人と面識がないが……そうだな、そのうち店を訪ねてみようか。星ヶ丘にあるんだろう?
(そういうやりとりは一対一の方がいいと指摘を受け)
返す言葉もないな(肩を竦め)
「弾く」の隠喩を暴き立てるのも野暮だが、俺はそんなに御しやすくないとだけ言っておく。
……ただ美しい音を奏でているだけか、か。額面通りにそう思えたら良かったんだが。
あいつのピアノは蠱惑的すぎた。
まあ君が純真な人間じゃないのは雰囲気でわかる。お互い様だな。
君も時任のピアノを聞いたのか
あいつのCDは品薄らしいが……ストーカーまがいの熱狂的なファンもいるしな
悪魔は真の名を知られると途端に力を失い膝下に下るらしいが、あいつが命を絶ったのも案外それが原因かもな
……(僅かに不快げに目を細め)はるか、と。
本名を訓読みにしただけだ。さも当然の如く所有格で呼ばれるのはぞっとしなかったがただのあだ名だ、それ以上でも以下でもない。
君も両親には複雑な思い入れがあるらしいな。俺は恨むほど執着もないが…彼等の在り方が人格形成に関わってるのは否定できない
夫婦は一種の契約形態だ。利害の一致で籍に入るのも珍しくない
俺自身そうならないとは保証できない。根が薄情だから家族をもつのに向いてないと友人にも言われたし…
……ああ、本当に。いちいち縛られている(苛立たしげにため息をつく)
(窘めるかと思った、と嘯く皆口さんに呆れ顔をし)
叱ってほしかったのか?悪い子供だな。
……挑発されて引くのも癪だろう。同情は結構だ。今は自分の事だけで手一杯でね。
(禁断症状は出てないのかとの問いに)
つまらない悪夢を見る位さ。
PL:
下の書き込みはPC切り替え忘れなのでスルーしてください…すいません