酷く荒れ果てた礼拝堂。
争いの跡が色濃く残されており
床には割れたステンドグラスの破片が散乱している。
教壇の下には隠し扉があり
そこから地下室へと降りられる様だ。
中央にぽつりと佇む薄汚れた天使像は
どこか泣いている様にも見える…。
私はそんな未来を望んではいないもの。
それに、私には私の王子様がちゃんといるの。
まあ、私が勝手に王子様だと思っているだけなのだけど。
死体になっているわけでも無いのに
驚くだなんて大袈裟だわ。
全身を血で濡らしていたりするなら話はまた別でしょうけれど。
…。
(像の前で祈る蓮太郎さんを暫し眺め。
興味をなくしたようにふいと視線を外す。
自身の周囲に散らばる茨を両腕に抱え集め
教壇下の隠し扉の中へ姿を消した。)