酷く荒れ果てた礼拝堂。
争いの跡が色濃く残されており
床には割れたステンドグラスの破片が散乱している。
教壇の下には隠し扉があり
そこから地下室へと降りられる様だ。
中央にぽつりと佇む薄汚れた天使像は
どこか泣いている様にも見える…。
(小さく頷き)
うん、誰にも言わない。
秘密にしておく。
…でも、七回なら少ない方だと思うし
隠すことでもないような…。
そっかあ…。
市子さんでも泣くことあるんだ…。
ウ。まーそー…だな(言ってからちょっと後悔)
夏からコッチ通算でひーふーみーよー…(指折り数え)
ななかい?うわちょっとコレ誰にもゆーなよ絶対。
…えっ?
(辺りをキョロキョロ)
…それ、本当?
市子さんが?しょっちゅう?(ひそひそ)
(挨拶におどけ顔を返して)………いんじゃねーの。泣けもしねーよりは。さ。少なくとも。
ソレにあたしもね。ココだけのハナシ。ホンっっっトマジ。超!ココだけのハナシだけど。
(誰も居ないのを確かめるように目を左右にきょろきょろ)…しょっちゅー泣いてる(ひそ)
(かけられた声にびくりと身を竦め
恐る恐る声の主を確認し
安心した様に強張った体から力を抜く)
…こんにちは。
…私、泣き虫だから。
だから…。
行き詰まると、すぐ泣いちゃうの。
(恥じる様に、困った様に微笑んで
差し出されたポケットティッシュを両手でそっと受け取る)
(ぞんざいに扉を開けて、すぐに天使像と対の体でうつむく花風が目に入り。
踏み入って、後ろ手で閉じて。ズタ袋を背負い直して。ゆっくり歩み寄る。
顔を覗こうと首を傾げてみたりしながら、ポケットに空いた手を突っ込んで。
そばに立ち止まるのと同時にポケットティッシュを抜き取って、差し出す)
…また泣いてんのか。
…どうするのが正しいんだろう…。
…どうしたらいいと思う…?
…どうすれば、いいのかな…。
(天使像に額をつけ、伏せた目に涙を溜める)
…身勝手だけど…また会いたいな…。
…天国にいけば、会えるのかな…。
(天使像を見上げて呟く
………。
(天使像の前で両手を組み、静かに祈る。)
そりゃ褒めてんのか?
ったく、胡散臭ぇ糞餓鬼だぜ。
お硬い話に飽き飽きってのは同感だが
話題を考えんのが面倒臭ぇ。
言い出したお前が他の話題を適当に捻り出せ。
(同じくガラス片拾い)
イイエ、覚えておきマスヨ
トテモ面白いお方だとネ!HAHAHA!
イヤー真面目な話が長引き過ぎて疲れてしまいマシタ!
もっとコウ俗な話をシマショウ!
由良だ。
忘れちまっても構わねーぜ。
(拾ったガラス片を弄び、ゴミ箱へ放る)
覚えて頂きアリガトーゴザイマス(深々と一礼)
失礼デスガお名前ハ?
アレハンドロ・佐助か。
覚えといてやる。
(椅子から立ち上がり、床に落ちたガラスの破片を一つ拾う
神と人に寄り添うもの、デス
オットこれは失礼
僕はアレハンドロ・佐助
生まれ遠くスペインはバスクからやって来マシタ
ドーゾオミシリオキヲ
宗教家ってのはやっぱ理解できねぇな。
する気もねぇが。
お前、名前はなんだ。
僕の神の布教に拠点はイリマセン
僕自身が居ればソレデ足りマス
ト言うヨリモ宗教とは元来そうイウモノデス
ダカラこそイエスもシッダールタも旅をしながら教えを広められたのデスネ
この様な場所が必要とサレルのは信仰するタメの舞台が必要な人達のタメデス
ナノデ僕がココで行う事は先にも言いマシタガ
ココの神でもあった僕の神に敬意を示す事、それだけデス
まあ、そうだろうな。
んなとこ掃除して何になる。
お前の神とやらの布教活動拠点にでもすんのか。
僕は全人類の原罪を背負う程の覚悟はナイデスケドネ
分かってクレタようでナニヨリデス
(同じく辺りを見回し)
ココも早く掃除しなければイケマセンネェ
度し難いお人好しだな。
現代に蘇ったイエス・キリストってとこか。
…呆れてものが言えねぇな。
(軽く鼻を鳴らし、ガラス片が散らばる床に視線を這わす