酷く荒れ果てた礼拝堂。
争いの跡が色濃く残されており
床には割れたステンドグラスの破片が散乱している。
教壇の下には隠し扉があり
そこから地下室へと降りられる様だ。
中央にぽつりと佇む薄汚れた天使像は
どこか泣いている様にも見える…。
その時はその時よ。仕方がないわ。
自然と目が覚めるまで。
或いは誰かが私を見つけて
目覚めさせてくれるまで
ずっとずうっと眠るだけ。
勘助は優しい子だものね。
心配なんでしてくれなくてもいいのに。
死ぬわけではないのだし、平気だわ。
幸い、ここは山の中だもの。
棘のない植物だって沢山あるわ。
…でも、また今度にしましょうか。
今の私の手は血濡れているから
こんな汚れた手で触れたりしては植物達が可哀想。
…貴女達だってこんな風に汚される為に
咲いたわけではないでしょうにね。
…ごめんね。
(手の中で所々赤に染まった白薔薇へ視線を落とし
ぽつりと小さく悲しげな声で呟く)