「よーしみんな! 明日はいよいよお花見だな!」
ぽかぽかと暖かな日差しが降り注ぐ寝子島高校の校庭で、1年9組の担任・ 高野 有紀 先生が生徒達に威勢よく声を掛けている。
新入生は次ぐ日曜日、オリエンテーションの一環として親睦を深める為に、希望者を募って九夜山でトレッキングを行う事になっているのだ。
寝子島高校の裏から山道に入り、落神神社周辺を通るコースを歩いて、猫又川の水源近くにある桜の群生地を目指す。
そこで生徒同士弁当を広げたり、お花見を楽しんで麓に戻って来るというのんびりとした予定が組まれている。
自分達が新入生の頃も同じ行事を体験している為、サポート役として上級生も何人か参加するのが通例になっているようだ。
引率として、1年生の担任の中から高野先生、そして2組の 桐島 義弘 先生が付き添う。
「服装は自由だが、いくら距離が短いとはいえ山登りには違いない。運動靴を履き、動き易い格好をして来るように。トレッキングに必要ない、余計なものは持ってくるなよ」
キラっと眼鏡を光らせて、桐島先生は言葉を続ける。
「今回は生徒同士の交流が目的とはいえ、ハメを外したり品格を損なうような事はよせ。他の登山者と会う事もあるかも知れない。皆、寝子島高校の一員として、町の方々に見られても恥ずかしくないよう、責任感を持って……」
「まあまあ桐島先生、そんな堅苦しいことは良いじゃないですか」
「むっ……」
肩をばんばん叩きカラカラと笑う高野先生に、桐島先生は相変わらずの仏頂面で口を噤んだ。
「そういえば、落神神社に落神様が喜ぶお供えをすると、落神様の声が聞こえるって噂があるそうだが……何が好きなんだろうな? サンマとか?」
首を傾げる高野先生に、眼鏡のブリッジを押さえながら「猫じゃないんだから……」と呟く桐島先生。
しかし、高野先生には聞こえていなかったようだ。
「いいか、弁当を忘れるなよ! 持ってくるおやつは食べきれるだけにしよう! ゴミはちゃんと持ち帰るんだぞ!」
自分も周りも楽しめるよう考えれば大体大丈夫だ、と言い切って、高野先生はその場をお開きにした。
解散した新入生の集団が、校門前の桜並木を歩いている。
「私、置いてけぼりにならないか心配ー」
「大丈夫だよ、ゆっくり自分のペースで歩けば良いみたいだし」
運動が苦手という生徒を、 七夜 あおい は一緒に歩こうよと励ました。
「前にうちのおばあちゃんから聞いたんだけど、あの辺に凄くおっきな桜の木があるんだって。何処にあるかは分からなけど、見付けてお参りすると願いが叶うんだって。本当かなぁ」
寝子島生まれの生徒が、九夜山の桜の森にある、樹齢300年ともいわれる大きな桜の事を話す。
地元の人達の噂によれば、その桜の周辺は方位磁針も利かず、探そうとしても発見出来ずに帰って来る人の方が多いらしい。
「本当のところはどうなんだろうね。探してみよっか」
「やだ、迷っちゃったら怖いし。それに最近、九夜山で熊を見たって話も聞いたよ」
「あの山、熊なんているのー? まぁ、大人数で賑やかにしてれば近付いて来ないよ」
「でも、熊が好きそうなものは持って行かないようにしようよ! 蜂蜜とか絶対ダメ」
「あんたはいつも大袈裟なんだから」
怖がりの生徒が首を竦めるのを見て、他の生徒が笑い飛ばした。
「でも、こっそり食べ物を盗みに来るサルがいるのは本当みたいだよ。グルメで、美味しいものしか狙わないんだって! 何か良い対策ないかなぁ」
「お弁当取られないように気を付けなきゃね」
頷き合う彼女達に、他の生徒がそういえば、と顔を向ける。
「お花見だったら、やっぱりお弁当は華やかな方が良いかな?」
何を入れようかなーと悩んでいる生徒を横に、また別の生徒がちらりとあおいを見遣る。
「あおいちゃんも……自分で作るんだよね? お弁当」
「うん、勿論よ。お弁当なら任せて」
自信たっぷりの微笑みを浮かべるあおい。
でも、実は本人が気付いていないだけで料理は下手だったりする。
「そ、そう……」
学校でどう見ても美味しそうに見えない弁当を食べているのを目撃していた生徒達も、あおいの笑顔を前にすると流石に指摘出来なかった。
「お花見、楽しみだなぁ」
そんな事とは露知らず、あおいは桜の花に縁取られた、澄んだ浅葱色の空を見上げていた。
■担当ゲームマスター
■ゲームマスターコメント
初めまして、プレシナリオ第二弾を担当させて頂きます、羽月ゆきなと申します。
キャラクター同士の楽しい交流や風景を描かせて頂けると良いな、と思いつつ、プレイヤーの皆さんのアクションをお待ちしております。
どうぞ、よろしくお願いします。
トレッキング&お花見には学年を問わず参加出来ますので、複数のキャラクターをお持ちの方はお好きなキャラクターでご参加下さい。
桜の下でお弁当を広げるも良し、何か余興を考えてやってみるのも良し、幻の300年桜を探してみるもよし。
皆さんのキャラクターならではのアクションを書いてみて下さい。
因みに、NPC達はこんなお弁当を持ってきます。
あおい :見た目はイマイチ、味もイマイチ
高野先生:何もかも豪快
桐島先生:仕出し弁当
■アクションの例
【例1】
・プレイヤーの目的
願い事のあるキャラクターなので、願掛けをしたい!
・キャラクターの目的・理由
樹齢300年の桜を探す!
・キャラクターの行動
幻の桜かぁ……
本当にあるかは分からないけど、僕にはどうしても叶えたい願いがあるんだ。
どうやって探すかは考えてなかったけど……。
とにかく根性! 見付かるまで根性で探し回るよ!
もし大きな桜を見付ける事が出来たら、その前に立って一心不乱に拝む。
「父ちゃんのお尻のおできを治して下さい!!」
あ、思わず声に出しちゃった。
【例2】
・プレイヤーの目的
お花見をしながら、色んな人と楽しく交流したい。
・キャラクターの目的・理由
気合の入ったお弁当を用意して、みんなとおかずを交換する!
・キャラクターの行動
うわー、桜きれい!
山の中だからかお花見に来る人は少ないのかな、なんて話しながら、
みんなと座ってお弁当を広げるよ。
私のお弁当はの中身は、サクサクのメンチカツににふわっふわの卵焼き。
栄養バランスも考えて、キャベツを敷いてポテトサラダやプチトマトも入れたの。
特に、一押しなのはメンチカツよ。
色んなおかずと交換してみたいから、ちょっと沢山作りすぎちゃった。
ちょっと揚げすぎて表面の色が濃くなっちゃったけど、おばあちゃんの直伝で味は自信があるの。
ほんのり甘くて、とーってもジューシーなんだよ。良かったら食べてみて!
でも、食べ物を盗みに来るサルは心配。
だからバナナを用意してきて、もしサルが来たらなるべく遠くにバナナを放り投げて
こっちから遠ざけてみよう。
【例3】
・プレイヤーの目的
キャラクターは性格上嫌々参加していますが、交流の切欠を作れたら嬉しいです。
・キャラクターの目的・理由
オリエンテーションの一環? ケッ、しょうがねえな……行ってやるよ。
・キャラクターの行動
別に、俺は他の生徒と馴れ合いたい訳じゃないんだよ。
一人の方が気楽だし、騒がしいのは好きじゃねえ。
だが、行事って事なら仕方ないな。
大人しく参加してりゃ、先公の点数稼ぎにもなるかも知れないし。
いつも通りの仏頂面で皆の後を付いて行き、弁当食う時も隅っこの方で。
おにぎり(中身はシャケとかたらこ)としょうゆ味のからあげ、
あとカブとキュウリの浅漬け……
自炊はまだ慣れないけど、自分としちゃあ上出来だと思う。美味い。
なんだよ、俺が弁当作っちゃ悪いのかよ。
顔にご飯粒とかいっぱい付けてる奴がいたら、
「ほら、口の周り拭けよ」
とウェットティッシュを渡してやる。
親切じゃねえよ。
ただ、家じゃ弟達の面倒見てたから、つい世話焼いちまうんだよ。
【例4】
・プレイヤーの目的
お笑い要員として楽しませたい。
・キャラクターの目的・理由
花見には余興が必要だろ? ってな訳で、俺の歌を聴けぇ!
・キャラクターの行動
動き易い服装?
運動するような服は持ってないから、学校のジャージと運動靴でいいかな。
みんなから遅れがちになっちゃうかも知れないけど、
ゴールの桜目指して一生懸命歩くぞ。
はー、山登りなんて中学の林間学校以来だから、流石に疲れたなぁ……
もう少し普段から運動しないとヤバイか?
でも、きれいな桜を見たら気持ちが明るくなるな。
水筒のお茶を飲んで一休みしたら、早速持参したMyマイクを取り出して
みんなで歌わないか、と誘う。
よぉし、一番手は勿論俺だ!
俺様の美声に酔いしれろ!
「ホゲェ~~~~~~♪」(物凄く下手)
あ、あれ、みんなどうした?
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▼参加申込み・アクション投稿の受付期間
▼リアクション初回公開予定日
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