館の扉を開き、目と足とを外界へ向ける。
穏やかな風吹く春の午後。
退屈と眠気を持て余した一人と一人の気ままな散歩。
*花風冴来(RKM002612)
大和無銘(RKM003437)
両名のお散歩RPトピックです。
何か御座いましたらキャラクターメール等でご連絡下さいませ。
とっても綺麗な物を見付けたのぜ。
これ、やっぱり姉さんにあげるのぜ
(小首を傾げる彼女の顔に視線を移しては
まるで宝物を見付けた様に嬉しげな表情をして、
それが彼女の髪である事を口に出す代わりでばかりに
潮の香りがする方向に数歩歩けば
ポケットにしまった先程の飴を取り出し手のひらに乗せる)
夕方になっちゃう前に、海に行くのぜ。
暗くなると海はとっても冷たいのぜ?
ええ、いい風ね。
…何か良いものでも見つかった?
(電子機器を仕舞いながら彼の呟きに応え
緩やかに吹く風の中に潮の香りを嗅いだ気がするのは
海へ向かおうとしているせいか。
隣に立つ彼が目を細め、何かを注視している事に気がつけば
自身もそちらへ視線を向けるも
別段変わったものは視界に映らず
不思議そうに小首を傾げる)
腐っちゃう前に食べるのぜ。
どんな物にも役目を果たせる時間が決まってる
役目を果たさせるのが1番良い事なのぜ。
(ポケットの中で弄べば
必然的に両手が塞がって)
姉さんの髪の毛や目は綺麗なのぜ。
んー、だとすると可愛いは違うのぜ?
(声を掛けられては返事をする様にアホ毛が揺れる
店の中を見回してはペコリと頭を下げて
外に出ては空を見上げる)
良い風…吹いてるのぜ
(ポツリと呟いてアホ毛がペタンと倒れて
見上げた空に金が混じり、
それが少女の髪だと気付けば
光に透ける様子に目を細めて)
それがいいわ。
食べ物はどんなに大切にしたってそれほど長くはもたないからね…。
大切に食べてあげるのがきっと一番いいのよ。
影も形も、喪う前にね。
私が可愛い子かっていうとどうでしょうねぇ…。
そう思う人も世の中にはきっといるのでしょうけど。
(緩やかに小さな手を引いて、訪れた際にも通った扉の前へ。
周囲から向けられる視線はその時と変わらず温かい。
去り際に「ありがとうございました、またどうぞ」と声を掛けられ
微笑と共に会釈を返した。)
さあて…。
(建物の外、ポケットから文明の利器を取り出し地図をみる。
現在地が旧市街ということもあり
海までそれ程距離もなく、陽もまだ高い。
この様子であれば女子供の足でのんびりと歩いて向かったとしても
陽が沈む前にたどり着けるだろう。)
なんだか、食べるのが勿体無い気もするのぜ
後で食べてみるのぜ
(宝石の様にすら感じているのか
飴をポケットにしまいこむ。
あるいは、更に島中を探せば、
更に物への知識が広がるかもしれない
同時に、流石に飴には憑喪は居ないらしく)
なら姉さんも可愛い子、なのぜ?
ちょっぴり恥ずかしいのぜ
(手を引かれるままに歩き出して
キョロキョロと視線を周りにやった)
食べ物だとは思えないぐらいだけど、食べ物なのよね。
きっと甘い味がするわ。
(現代では日常的に有り触れているそれも
彼の瞳には物珍しく映るらしい。
飴…キャンディと言えばシーサイドタウンの方に
評判の良いキャンディショップがあった筈だ。
(http://rakkami.com/scenario/guide/328)
いつかまた機会があれば、彼をそこへ連れて行くのも良いかもしれない。)
可愛い人じゃなくて可愛い子。
私にとって貴方は弟だからね、何をしたって可愛いわ。
(逸れないよう繋いだ手を軽く引き
綺麗なのぜ。これも飴らしいのぜ?
んー…
(少年の知っている飴とは違う事を言及しつつ
撫でられては心地良さそうに目を細める
少し離れていただけの温もりが嬉しいのか
撫でる腕に絡ませる様に腕を寄せて)
海はお母さんで、お父さんなのぜ。
早速行こうなのぜ。
んー…可愛い人?
(手をしっかり握り
言われた言葉を返す様に少女に向かって首を傾げ)
ん、そっか。
本当、宝石みたいでとっても綺麗ね。
(光を通し煌く飴玉を見て微笑む。
見知らぬ誰かに胸の内で感謝しつつ
「よく出来ました」と彼の頭を柔らかに撫でた。
少女の方にも彼と離れていた間の出来事に関して
語るつもりはないらしく)
さて…海に行きたいのよね?
行きましょうか、可愛い子。
(そう、椅子に腰掛けた彼に手を差し伸べる)
あふぅ…
あれ?何かあったみたいなのぜ?
(小さく欠伸を漏らしては微妙に足が着かない高さの椅子に座ったまま足をぶらつかせる
暫くして御手洗から聞こえた音に視線を向けては
何やら黄色い物体が横切った気がして
そういえば姉と呼び慕っている少女の明確な性別を確認した事があったか
その辺りを加味して掃除をするべきじゃないか…遠い記憶の教えに男児と女児の違いと気遣い
それを教えられた様な気もする。
そこまで考えた辺りで、館に戻ったら改めてトイレの掃除をする事を決めて)
あ、おかえりなさいなのぜー
これ、貰ったのぜ。
こうしたら綺麗なのぜー
(戻って来て早々に自分の心配をされては
先程貰った飴を光に透かせる様に取り出す
飴をくれた老人の姿は既に無かったが
「ちゃんとお礼も言えたのぜ」と少年は誇らしげに言って
どうやら先程の事に関しては問いかけるつもりは無いらしく
アホ毛も穏やかに左右に揺れている)
はあ…っといけない。
お待たせ、無銘。
一人で大丈夫だった?
誰かに意地悪されたりしていない?
ん、これは…。
(洗面台を覗けばそこには小さな石が転がっていた。
鈍い輝きを宿しているあたり、少々特殊な石である様に思えるが…。
手にとってまじまじと観察しているう
意識の外から男性の驚愕の声が聞こえハッと我にかえる。
途端、先程まで好奇心に押され引っ込んでいた羞恥心が
今頃になって顔を出しみるみるうちに頬を紅く染め上げた)
ご、ごめんなさいっ…!
(悲鳴の様な謝罪と同時に脱兎の勢いでその場から逃げ出し
そのままの速度で本来利用すべき箇所へと飛び込む。
穴があったら入りたいといった衝動のままに
目に付いた個室へ走り込んで鍵をかけた)
はぁー…。
我ながら私ったら、どうしてこう…。
(閉じた扉に背を預け、深い溜息と独り言。
冷静になってみれば自ら行かずとも店員に頼むという手もあったのだが
今となっては後の祭りである。
本音を言えばこのまま小一時間程一人きりの世界(女子トイレの個室)へ篭り
気が済むまで自己嫌悪に浸っていたいところではあるが
幼い弟を長時間待たせるわけにもいかない。
手の中に握りこんだままの小石を洋服のポケットにしまい込み、扉を解錠。
彼の元へと戻るべく、化粧室の外へ。)
海を見てると何だか懐かしい気もするのぜ。
だから、好きなのぜ。
でも目が痛くなるから、ずっとは見てらんないのぜ
悪くない、悪くないのぜー。
じゃあ、姉さんも変わった人なのぜ。
似た者同士、なのぜー
(自分で言って気に入ったのか
単純に言葉に出来たのが嬉しいのか
ニコニコと笑みを浮かべたままで)
行ってらっしゃいなのぜー
…知らない人ばっかなのぜ。
(見送りながら少し辺りを見回す
老若男女、様々な人物が居る物の
特に見知った顔の人物は居ない
ボンヤリとした顔で座って居れば
特に老人の気を引くらしく
声を掛けられたり飴を貰ったり
その間に少女が何をしているかも
目の中から落ち洗面台の上に転がった小さな石
薄らと鈍い輝きを持つソレを少女が見付けるかも
それは本人のみが知る事で)
ええ。波の音も心地いいし。
私も海は好きよ。自然は好き。
貴方が好きだと思うなら
貴方にとってそれは良いことなのだと思うわ。
…私に気を許すだなんて本当に変わった子。
不思議な子だこと。
じゃあ、ここで待っていて。
直ぐに帰ってくるから
知らない人について行ったりしちゃだめよ?
(先程の様子から共に来たがるかと考えていたが
予想は外れ、自立心があるのは良いことだと
彼の頭を撫で、傍を離れる。
レジで会計を済ませた後向かうのは
自身の性別とは逆…男性用のそこ。
そちらへ向かうのは目的は勿論、用をたすことではなく
彼の瞳から零れ落ちたという何かを確かめること。
…やましい目的はないにしても
女性である身でそこへ足を踏み入れるのは
正直少し、いやかなり、非常に問題がある気がするが
そういった倫理観を軽々押しのけてしまう辺り
好奇心というものはなんとも恐ろしいものである。
故意である事を悟られぬよう、涼しい顔で足を踏み入れれば
幸運にも内部に人の姿は無く
これ幸いとばかりに手洗い場を調べ始める。
さて、そこにそれは残っているのかどうか。
なら簡単なのぜ。
お空に向かってにこーって笑うのぜ
海は良いのぜー。青いし眩しいし…
(ゆっくりと笑顔を向けてアホ毛を回す
その時に小さな拳を向けては親指を立てて
今度は顔から想いを読み取るでもなく
提案を受け入れて貰えたかと思えば
なにやら思い入れがあるのか窓の外に視線を
少しだけ鼻歌が漏れて)
それって良い物なのぜ?
俺は、これ好きなのぜー
うに…?
俺も大好きなのぜ?
(上手く言葉に出来ないからこそ
彼女のいう事もボンヤリとした理解
背に回された手に一瞬不思議そうな顔をするも
あっけからんと言い放っては此方も手を回して抱き返して)
うに…うににに
俺は、此処で待ってるのぜ。
(一瞬迷いアホ毛が回る
思い出すのはさっきの一瞬
それでもと首を横に振っては
ちょこんと適当な場所に腰掛けて)
顔向けできるように…。
まあ、大体そんな感じ。
海か。いいわね、行きましょう。
(実際は、世間に顔向けできる生き方をしたい、というより
「そうしたかった」と言う方が正しいだろう。
そういった生き方が出来たなら、どれだけ良かった事だろう。
そういった本心は横に置き
ちょいちょいと手を引かれては、彼の提案に二つ返事で賛同する。
彼の表情から察するに何か企みがあるようにも思えるが
それが何であれ、少なからず悪意は欠片もないだろう。)
ムズムズというと…なんでしょうねぇ。
嬉しいとか、恥ずかしいとか。
私もよくわからないけど、なんだかそんな心地だわ。
…貴方のこと、大好きよ。
(彼の視線に気恥ずかしげな笑みで答え
髪を梳く手をその背に回せば
抑えきれず溢れたというように
確かな愛情を口にして、そわそわと身を揺らす彼をほんの一瞬強く抱きしめた。)
ん、ご馳走様でした。
(彼に続いて店員に軽く頭を下げ)
ああ、そうだ。お店を出る前に少しトイレに行ってくるわね。
貴方はここで待っている?
それとも私と一緒にくる?
んっ、良かったのぜ。
姉さんの自慢になれてるのぜ?
もっと、もーっと、頑張るのぜ。
(触れ合う部分から流れ込んでくる熱
それは自分とは少し違って
自分と彼女の差を感じる
この店に入った時に感じた孤独は無く
「自分は此処に居る」
当然の事がじわりと身体に沁み込むのを感じては
ゆっくりと身体を離して笑顔を見せる)
太陽の光に慣れる為…なのぜ?
少し、難しいのぜ。
お天道様に顔向けできる様に歩いていきたい、って事なのぜ?
灯りも太陽も、ちゃんとあるのぜ
…姉さん、海に行こうなのぜ。
(ボンヤリとした知識から言葉を紡ぐ途中
ふとした閃きを得て彼女の手を緩く引き
何かを考えている彼女にお構いなしとばかりの笑顔で
少しばかり季節外れな提案をする。
名案だとばかりの笑顔に少し企む様な悪戯っぽい色が混じり
少なからず少年の中では次に彼女とお出かけする場所が決まったらしく)
なんだか、懐かしい気がするのぜ。
難しいのは一旦お休み
こうなったら、沢山走るのぜ。
(ゆっくり1つ1つ言葉を紡ぎながら
他人の物とは違う熱が自分の中に充満していくのを感じる、
髪を梳かれながらも落ち着かない様子で熱のこもった視線を彼女に向け
自分の掌を拳に握り直す)
変な気分なのぜ、
走りたいような
大きな声を出したいような
なんだか、ムズムズするのぜ
(明らかにタイプの違う衝動に
あまり付いていけていないのか身体を揺らし始める
それでも触れられるのは嬉しいのか髪を梳く手からはズレない様に)
なのぜー?
分かったのぜ。
…ええと、
ごちそうさまでしたのぜー
(小さく首を傾げながらも
店を出ると言われては店を見回して
先程の給仕に手を合わせた状態で挨拶して)
ええ、ちゃんと見てたわ。
流石私の自慢の弟。
立派な子ね。大好きよ。
(求められるがまま際限なく
血の繋がった母若くは姉であるかの様に彼を甘えさせる。
その愛情はかつて遠い昔、彼と同じ年頃であった少女が
血を吐く様な思いで求めても得る事が叶わなかったもの。
心が飢えと渇きに支配され、朽ちていく様な苦しみを時が経った今も覚えている。
故に、少女は彼を拒まない。
…若くは、「拒めない」と言った方が正しいのかもしれない。)
私が帽子を被らないのは太陽の光に慣れるためよ。
私は陽の光が苦手なだけで、嫌いというわけではないからね。
帽子で顔を隠して外を歩くっていうのも
余り好みではないしね。
…灯りはここでなくとも、どこでだって灯せるのよ。
方法さえ間違えなければ、きっとね。
(暖かな未来を当然の様に語る彼の姿が
どこか自身の義妹に重なって見え
胸を締め付けられる様な感覚を覚える。
「そうであるとは限らない」と彼を否定するような考えが頭に浮かぶのは
信じた希望に裏切られることを恐れる弱さのせいか。
自身がそれ程善良な人間ではないという自覚があるせいか。
はたまたその両方か。
けれど、彼の見る未来予想図(ユメ)に
冷水を浴びせかけようなどとは到底思えず
胸の痛みを隠して微笑む。)
ん…。そう…。
確かに、そうね。
貴方は私とは違うから。
だから、うん。大丈夫ね。
(彼の手は確かに小さいが、伝えられた答えには
逆境にも折れぬ確かな力強さが宿っていた。
どこまでも真っ直ぐで優しい心を持った愛しい弟。
…そもそも、自分は何を恐れているのだろう。
世界が彼に牙を剥くというのなら
彼に傷が付くその前に
この身を犠牲にしてでも守り通せばいいというだけのお話なのに?)
…ありがとうね、本当に。
それを聞かせてくれただけで、私はもう充分よ。
上手くできるとか、できないとか。
そんなことは少しも関係ないの。
元気でいてくれるだけで、それでいいのよ。
(万感の想いを込めてそう伝え、彼によって導かれた手で
黒い髪をそっと梳いた)
誰かに何かを説明するのはまだ練習不足でね…。
複雑な事柄を分かりやすいよう伝えるのは中々難しいのだわ。
…さて、ご飯も食べたことだしそろそろ外にでましょうか。
余り長居するのもお店の迷惑になってしまうしね。
頑張ったのぜー
んみゅみゅ
(記憶を失う前
当然居たであろう父や母に強請った様に甘える反面で
一人で居た時には考えもしなかった温かみに喜びを隠そうともしない)
太陽が眩しいのぜ?
…そういえば姉さんが帽子被ってるの見た事無いかもだぜ?
夜は怖いけど、優しいのぜ。
姉さんが教えてくれたから、俺も知ってるのぜ
それに、この島は簡単に灯りも点けられるから
姉さんの顔も、友達の顔もちゃんと見えるのぜ
(彼女の隠された意志に気付く事はなく
同時に彼女の隣に自分や友人が居るのが当然の様に語る
近い未来、成長した先の事なぞ考えておらず
一歩間違えれば依存にも近い自分の思考にも幼さゆえに気付かずに
ただ、穏やかに笑い、アホ毛を揺らす)
姉さん、姉さん
(手を握って緩く引く
彼女の手は自分の手より大きく、同時にそこには無い傷が見えた気がした
だからこそ、何かが振り切れた気がした。
記憶の中の旅人の言葉を真似する様に
まるで用意していたかの様にゆっくりと口を開いて)
俺も我儘を言うのぜ。
俺の手は小さいのぜ。
手が届く所も少ないのぜ
でも、こんなに近い所なら手は届くのぜ?
だから、まずは姉さんから笑顔にするのぜ
(小さな両手で彼女の手を握って
そのまま自分の頭の上に持って行く
「上手く出来たら褒めて欲しいのぜ」と締めくくる様に自分の答えを言った)
「どえむ」って人は凄いのぜ
痛いのも気持ち良いの替えれるのぜ。
でも気持ちいいのは痛いのと替えないみたいなのぜ
んー、姉さんも爺様も説明が難しいのぜ…
でも、痛いのも大切って分かったのぜ。
(明らかに余分な知識を取り込みつつも
ボンヤリと彼女の言いたい事を理解した様で
アホ毛もスッキリした様子で真っ直ぐ伸びて)
…ん、なら一歩前進ね。
いい子いい子。
(癒しを求めるかの様に甘えてくる彼の頭をなで
内心、安堵で胸を撫で下ろす。
ここで彼が泣き出してしまったら
どうしていいかわからなくなってしまうところだった。)
まあ…少し寂しい世界ではあるかもしれないわ。
でも私に太陽の光は少し眩しすぎて
夜の世界にいる方が居心地がいいの。
前にも同じ様な話をした気がするけれど
夜は見たくないものを見ないでいいようにしてくれるから
落ち着いて過ごすにはその方が私にとって都合がいいのよ。
(月と星のランプが灯る夜の世界。
ぬいぐるみを胸に抱いて、月光を頼りに本を開く。
物語に没頭していれば、寂しさなんて忘れていられる。
それに疲れてしまったら、瞳を閉じて眠りの園へ。
…彼女が語る夜の世界が
「誰が訪れることもなく
彼女ただ一人だけが存在する世界」
という前提で語られているということに
はたして彼は気がつくだろうか。)
いいえ、謝る必要はないの。
貴方は間違っていないし、その願いは尊いものよ。
そう思うわ、本当に。
ただ…だから、かしらね。
私は貴方に、私と同じような思いをして欲しくはなくて。
でもね、貴方が本当に誰も傷付かず済む世界が見たいというのなら
私の言うことなんてきかなくていいのよ。
これは、私の我儘だから。
(誰が傷つく姿も、苦しむ姿も見たくはなかった。
だからそう声をあげた。
声をあげた、つもりだった。
けれどその声は、大多数の人間には届かなくて。
そうなることはわかっていた。
それでも酷く、痛かった。苦い苦い現実の味。
それと同じように大切な彼が傷つく姿を見たくはない。
それはどこまでも身勝手で、我儘な一人の少女のエゴ。)
ああ、あの人…。
あの人ったら小さな子に一体何を教えているのよ…。
まあ、いいか…。
そう、思いやり。
苦しい気持ちはできる限り小さく
楽しい気持ちは何倍にも大きくする為に必要なこと。
それができなくても生きてはいけるけど
できるに越したことはないって、私は思うわ。
…むゅぅ
(まだ意識はある様だが、身体に力が入らない
頭の中で繰り返される様な映像がゆっくりと止まり
震えも止まれば顔を上げて眠たげな表情で首を傾げる)
大丈夫なのぜ
ちょっと思い出したのぜー
(記憶が戻った副産物か、微かな頭痛を覚えつつ
甘える様に頭を身体に擦っては
力なく萎れていたアホ毛が起き上がって揺れる)
不思議は探して見つけたいのぜ。
そっちの方が、きっと楽しいのぜ
夜が続く世界なのぜ?
ちょっとだけ・・・寂しい気もする世界なのぜ
(言われた世界に同じく思いを馳せる
しかし思い付くのは漠然とした「夜」の世界
今でこそ共にする相手が居る夜も
一人の時は酷く永く悲しい月だけが居る世界
どうしても足りない想像力の差が余計に悲しみを感じて)
…
今の姉さん、あの人と同じ顔してるのぜ
いっぱい、傷付いたのぜ?
もしそうなら…ごめんなさい、なのぜ
それでも、俺は見たく無いのぜ。
痛いのも、悲しいのも
(世界には1つの筋がある
それを信じて疑わない筈の自分の記憶に微かに引っかかる記憶
過去に出会った人物と姉である彼女の顔が重なる
あの時は鵜呑みにするしかなかった言葉
自分は知っている、知ってしまっていた
もし、自分の想像の通りであるなら
とても自分勝手な願いを押し付けてしまっているのかもしれない)
俺も勉強してるのぜ。
館の爺様に聞いたり本を読んだりだぜ?
寄り添う…?
んー、んー?…あ
つまり、思いやりって事なのぜ?
(ボンヤリとした元からあった知識
それに肉着けするのはやはり人の記憶や
それを形にした本であるらしく
その中でも「人の心」の知識は足りないらしい
幾つかの知識の中から当てはまる言葉を持って来ては小さく首を傾げる)