夜歩く人たちのある日の記録。どんな事が起きたのやら。
僕も精神分析学はよく利用する。何かと便利なのでね。
だからこそ人から分析されると警戒してしまうだけさ。
(冴来さんの質問に、すぐには答えない。息を少し吸い込み、ゆっくりと)
ああ。(冴来さんを見つめ)
それは、僕の心にずっとある感情。支配したいのは心だけじゃない。そうなるように何度も、試した。
支配されてるのは僕の方だ。
僕はそれが嫌で、時々自分を消したくなる。
(冴来さんに距離を詰められた瞬間、身構える。触れた手は冷たくて、少し震えていた。自分は怯えてなんかいないと、強がるように)
君のような女性にこんなふうに接されたら、大抵の男はのぼせ上がるだろうな。
残念ながら僕は女と云う生き物を軽蔑している。
(フフンと、挑発するように笑う)
(自嘲気味に)
僕が優しいと言うのなら、この世のすべての人間は聖人だな。
そういうところ、僕の大嫌いなひとみたいで、本当に嫌いだよ。
(悲しげに微笑む冴来さんを見て、少し嬉しそうな顔をする)
そうか。君も罪を犯した事があるんだね……。
まだ後悔しているのか、だなんて聞くのは愚問だろうね。
別の話をしようか。
君に家族は……いるのかい?
あは、ごめんなさい。
人への理解を深めようとする内に
いつの間にか精神分析の真似事を
するような癖がついてしまっていて。
決して貴方を不快にさせようと思っているわけではないのよ。
(頬に手を当て申し訳なさそうに苦笑する)
ああ。それ、私にも覚えがあるわ。
貴方、「大切な人の心を支配したい。
自分の事だけで一杯にしたい。」
そんな風に思ったことはある?
…そう。それならいいの。
私の方こそ、不要な心配をしてしまったみたいね。
(感情的に言い切る従夢さんを見て穏やかに微笑む)
ありがとう。
それなら少し失礼して…。
(従夢さんの頬が赤らんでいることに
あえて気づかぬ振りをして少し距離を詰め
従夢さんの手に自身の手をそっと重ねる)
私が優しい?
おかしなことを言うのね。
私は優しくなんてないわ。
さっきも言ったように、私は私の我儘を通そうとしているだけ。
私の我儘を聞いてくれている貴方の方が優しいわ。
(罪を犯した事があるかと問われ、悲しげに微笑み)
…あるわ。
罪の内容については、ちょっと此処では言えないけどね。
「駄々を捏ねている」か……。
自分でも、そう思うよ。
「嫌いと云う感情は期待への失望からくるもの」か……。
まるで精神分析でもされているようで、実に嫌な気分だよ。
(片手を挙げて少し笑います)
君の言うとおり、どうなったっていい人間の幸福を願う者は確かに存在しないだろう。
しかし、大切なひとの幸せを壊したいという願望はどうだろう?
僕よりも大切なのに……ね。
僕が君に胸を痛めるだって?とんでもない。
僕は誰かを傷付ける事はあっても傷付く事なんて、ない。
(ほんの少し、感情的に強く言い切ります)
(色が白いので、顔が赤いのが目立つ。しばらく目をそらている。呼吸が少し、乱れている。隠しているが、勘のいい者なら気付くぐらいの。呼吸を整え、堂々と向き直る)
フン、いいだろう。僕に触れてみたまえよ。
(嬉しそうに目を細める冴来さんを見て、不服そうに)
その優しさが演技である事を、心の底から願うよ。
(と溜め息混じりに呟く)
そうだね、君は罪を犯した事はあるかい?
そう。
今、貴方は貴方として此処に存在している。
そして私も私として此処に存在しているわ。
…成る程。
それは難儀な話ね…。
「嫌い」という感情は自身がその対象に対して何かを期待し
その期待に対象が応じてくれなかったことに対する
「失望」からくるもの…。
乱暴な表現をすれば「駄々を捏ねている」状態ね。
貴方はその人に対して、きっと何かを期待していたのね。
ええ、いるわ。
私自身よりも、遥かに大切に想う人がね。
その人にとっても、私は大切な人間な筈よ。
だって、どうなったっていい人間の幸福を願う人間など
この世にはきっと存在しないもの。
ふふ。それは光栄ね。
私は貴方が私を害する可能性があると知って尚
貴方に触れることを選択するわ。
だから貴方は
「貴方が私を害することで貴方に悪感情を抱く可能性」
に関して怯えることはないし
仮にもし「貴方が私を害した」としても
そのことに関して胸を痛める必要もない。
(従夢さんがベンチに座るのを見て
嬉しそうに目を細め)
ええ。それを貴方が望むのならば。
貴方は私から、一体どんな話が聞きたいの?
(「誰と話してるの?」という問いに、くすっと笑い)
そうだね……。ここにいるのは僕以外の何者でもない。それが嫌でも、その事実からは逃れることはできない。
大切なもの……僕にとってたいせつなものは僕自身でありたかった……。
欲しいものなんて無かったのに、僕は知ってしまったんだ。
僕のほしいものは、大嫌いっだった身近なひとさ。
君にも大切なひとがいるのか。
その大切なひとの望みのために、君は生きるのかい?
君はその人にとって、たいせつなひとなのかい?
フン、迷惑だね。僕は君が嫌いだよ。
だけど他のくだらない人間とは、違う。僕に嫌いと思わせるなんて、気に入らないな。
むしろ僕は君を害するだろうけれど、それでも構わないのなら、僕に触れてみるといい。
(冴来さんがベンチに座ると、すうっと近づいて、少し離れて、自分も座る)
……君の話を聞かせてくれないか。
あら。
貴方が何処にもいないというのならば
私は今、一体誰と言葉を交わしているのかしら。
『手に入らないならば要らない』ね…。
貴方は何が欲しいの?
貴方の大切なものはなに?
簡単な話よ。
私の大切な人が、私が光の元で生きることを望んでいるから。
そして、私自身も
光の世界で生きられるようになることを望んでいるから。
どうかしら…。
ただ、貴方を放っておきたくはないと
私の心が言っていることは確かね。
…私は私の我儘を通そうとしているだけ。
迷惑であれば拒絶してくれても構わないわ。
…貴方は自分が悪い人間だと思っているのね。
そして、自分をそんな自分を許せなくて
罰を与えたくて仕方が無いのね。
…足が疲れてきてしまったわ。
少し休んでいくことにしましょう。
(バス停の傍に設置されたベンチに近づき、静かに腰を下ろす。)
…貴方も座ったら?
(無表情で、抑揚のない喋りで呟く)
漆黒の闇が、僕には似合いだよ。
はじめから僕なんてものは、どこにもいないのかだから……。
大切なものだって、手に入らないのなら……要らない……。
(心配して、優しく語りかける冴来さんの方を振り向いて、本当に悲しそうな表情で)
花風冴来、おそらく僕と君は同じ人種だ。
それなのに君はなぜ光の世界に踏み込もうとする?
そうやって親しくもない同級生の心配をして、良い人間のふりかい?
辛いことがあったのかって……?
そうだね、今日の僕は機嫌がいい。教えてあげよう。
辛くない日なんてない。それを忘れて生きているだけだ。
ただ時々思い出すんだ……。
僕はわるいにんげんだってね……。
罰を与えなきゃ、て思ったのさ。
陽の光は苦手?
私と同じね。
…そうね。
私も、それを悲しく思うこともあるけれど
光があるということは重要なことよ。
光ひとつない漆黒の闇の中では
自分の姿も、今どこにいるのかも分からない。
大切なものも、何も見えなくなってしまうわ。
…ねぇ。今の貴方、やっぱり様子がおかしいわ。
なんだか、とても疲れているみたいだけれど…。
…何か辛い事でもあった?
話したくないというのであれば
無理に聞くつもりはないけれど…。
今晩は。
ああ、同じクラスの……。
(興味が無さそうに、ぼんやりと、冴来さんを見つめる)
(心から心配うな冴来さんを、みて、ふふと、自嘲気味に笑う)
……そう、僕も夜に歩きたくなるのさ。陽の光は苦手でね……僕には眩しすぎる。
夜の闇に紛れれば、僕は消えてしまえるから……。
(夜の空を見上げ)
けれどね……こんな闇のなかでも、輝くものがある……僕はそれを見つけてしまったから、今は堪らなくかなしい……。
(冴来さんが目に入っているのか、いないのか、普段の学校での毅然と様子とは変わって、どこがおぼろげで、今にも泣き出しそうな表情。)
今晩わ。
危険だということは分かっているけれど
夜の散歩がしたい気分だったものだから。
(声をかけられ、足を止めて苦笑を返し)
ええ。同じクラスの花風冴来よ。
…貴方こそ、なんだかぼんやりしていた様だけれど大丈夫?
もしかして、何処か具合でも悪いの?
(声に嫌味ったらしさは無く
心配そうに瞳を曇らせ、様子を伺う)
(一人空を見上げ、茫然と立ち尽くす。虚ろな、瞳。足音に気づき、着崩れたシャツの袖を引っ張って左手を隠す。白い袖に血がにじむ)
(少女に振り返り)
……こんな時間に……女性が一人で……危ないですよ?(虚無的に微笑み)
あ、もしかして同じ学年の……?
………。
(洋服の上にニットカーディガンを羽織り
特に行く当てもなく、夜道をのんびりと散歩している。)
「うむ、古めだけど中学の制服だよなその格好」
(なんかいろんな人と会うな今夜は…。まあ何も事件が無くてよかったけど。…まさか何も起きてないよな?)
(近寄られて)「『声』?何の事だ?」
(中学生と言われて振り返り)
「中学生・・・だぜ?もしかして、この服装は中学校の制服なのぜ?」
(自分の格好を軽く見て
(ぞろぞろと集まってきた人たちを見て
「探偵に科学者・・・学生さんがいっぱい、案外『声』が聞こえやすい場所なのかもだぜ」
(何かを確かめる様に目を瞑り灯さんの傍に行く
(月さんの答えに)
…そこまで知られてるとなるとあてになる人物に限りがあるが。
まぁ、探偵業を営んでるのは正解だよ。見たところ君は学生、かな。
君の友人というのは、多分僕の知人なんだろう。そんなにおおやけにした覚えもないしね
(ふと斗南さんにも視線を向け)
にしてもこんな夜更けに夜歩きとは。
保護者じゃないからどうこう言うつもりはないけど、最近はこんな夜にも学生が集まりやすいものなんだね
そっか。うん、しつこく聞いちゃって悪かったね。僕はまあ自業自得なとこもあるけど、相手にも迷惑かかる問題だしね。変な噂立つと。そうなった時責任取るの面倒じゃない?
(場所がわかると聞いて)ほーう、そんならまあそっちにはそっちの都合ってぇのもあるわけだし、まあお好きなように、って言いたいけどさすがにまだ中学生をこんな時間に一人でってぇのもなぁ…。
探偵?ほーう。
(月が何かを警戒したのを感じて)今度はどうしたの?
噂するにもなにも……ここでの出来事は言いふらすつもりはありませんよ
(場所が解るときいて)そうですか。 居候をしている身でなければ匿うといったことができるのですが
(問われて)いえ、……友人から伺った人物の容姿に似てたもので。探偵業を営んでいるとのことなのでもしかしたら、と。
(人体実験とかいう話が聞こえたので警戒心をみせる)
さて、実験の気分転換に夜の散歩でもするか。
次は何と何を調合しようかな。
薬を作った以上は、やっぱり誰かで人体実験したいよね。
(視線を動かす際にふと月さんの視線に気づき)
…随分とジロジロ見られてる気がするんだが…一体何か?
それと。シーサイド九龍と口が動いてた気もするんだが…あの廃墟に足を運ぶなんて、物好きだな
シーサイド九龍と言う名前を聞いて嬉しそうに目を細め
「『そこ』が今日の目的地になりそうだなぁ」
ぴくりとアホ毛が何かに反応
「んーん、大体の場所さえ分かれば一人で行けるから大丈夫だよ?オニーサンにオネーサン」
バックステップの要領で2・3歩退き方向転換、自分が来た方の道をチラリ
「今夜の寝床も決まりそうだし、にゃはは・・・良い夜になりそう」