夜歩く人たちのある日の記録。どんな事が起きたのやら。
僕も精神分析学はよく利用する。何かと便利なのでね。
だからこそ人から分析されると警戒してしまうだけさ。
(冴来さんの質問に、すぐには答えない。息を少し吸い込み、ゆっくりと)
ああ。(冴来さんを見つめ)
それは、僕の心にずっとある感情。支配したいのは心だけじゃない。そうなるように何度も、試した。
支配されてるのは僕の方だ。
僕はそれが嫌で、時々自分を消したくなる。
(冴来さんに距離を詰められた瞬間、身構える。触れた手は冷たくて、少し震えていた。自分は怯えてなんかいないと、強がるように)
君のような女性にこんなふうに接されたら、大抵の男はのぼせ上がるだろうな。
残念ながら僕は女と云う生き物を軽蔑している。
(フフンと、挑発するように笑う)
(自嘲気味に)
僕が優しいと言うのなら、この世のすべての人間は聖人だな。
そういうところ、僕の大嫌いなひとみたいで、本当に嫌いだよ。
(悲しげに微笑む冴来さんを見て、少し嬉しそうな顔をする)
そうか。君も罪を犯した事があるんだね……。
まだ後悔しているのか、だなんて聞くのは愚問だろうね。
別の話をしようか。
君に家族は……いるのかい?