夜歩く人たちのある日の記録。どんな事が起きたのやら。
(「誰と話してるの?」という問いに、くすっと笑い)
そうだね……。ここにいるのは僕以外の何者でもない。それが嫌でも、その事実からは逃れることはできない。
大切なもの……僕にとってたいせつなものは僕自身でありたかった……。
欲しいものなんて無かったのに、僕は知ってしまったんだ。
僕のほしいものは、大嫌いっだった身近なひとさ。
君にも大切なひとがいるのか。
その大切なひとの望みのために、君は生きるのかい?
君はその人にとって、たいせつなひとなのかい?
フン、迷惑だね。僕は君が嫌いだよ。
だけど他のくだらない人間とは、違う。僕に嫌いと思わせるなんて、気に入らないな。
むしろ僕は君を害するだろうけれど、それでも構わないのなら、僕に触れてみるといい。
(冴来さんがベンチに座ると、すうっと近づいて、少し離れて、自分も座る)
……君の話を聞かせてくれないか。