酷く荒れ果てた礼拝堂。
争いの跡が色濃く残されており
床には割れたステンドグラスの破片が散乱している。
教壇の下には隠し扉があり
そこから地下室へと降りられる様だ。
中央にぽつりと佇む薄汚れた天使像は
どこか泣いている様にも見える…。
その時に僕は僕の信仰に殉じレタと
笑って逝くとシマスヨ(軽く笑い
先程もいいマシタガ僕はココの神に敬意を示してイマス
尊敬するモノを前にワザワザ汚れを放ってオキマセンヨ
聖人気取りもいいが
行き過ぎた奉仕で身を滅ぼさねェ様
精々気をつけろよ。
ガキってのは発想力が豊かで羨ましいぜ。
(吸い殻をゴミ箱に入れる様子を見て)
床を灰皿にするな、ってか?
お気遣い、そしてご忠告アリガトウゴザイマス
デスガ僕は神と寄り添う生き方ヲ選んだ身
スナワチ人と寄り添う生き方を選んだ身ナノデス
彼女が悩みを抱えるナラバ僕はソレニ答え続けマス
コレまでのヨウニ、コレカラモ、デス
ウーン、表現を間違えてシマイマシタネ……
正確には「その形を辞める」が正シイと考えてイマス
ツマリ、僕にトッテノ神は常に形や数を変え続け偏在する大きな流れのヨウナモノ
……スイマセン、修行不足なタメ正確な表現にはイタリマセンガ
近い表現で言えば仏教にオケル「ダーマ」にアヤフヤな人格を与えたモノデス
トニカクデスネこの私の神は人の求めに応じ求められた形をツクルノデス
キリシタンにならばヤハウェ、ブッディストにならば仏といった具合に
長くなりスギマシタ
つまりココの天使の形をしていた我が神は
ココでの役割を終えたため、マタ別の人々の神へと形を変え
またココで礼拝した方々が次に求める神として形を変えたダケナノデス
(タバコの吸殻を拾い近くのゴミ箱へ)
気にすんな。偉そうなのはお互い様だろ。
あいつは我儘で自己中などうしようもねぇクソガキだぜ。
てめぇの忍耐が何処まで持つか見ものだな。
神が役目を終えれば消滅する
聞き分けのいい存在だってんなら
ここの神は遠の昔に消滅してるんじゃねェか。
棄てられたってのはそういうことだろ。
それにな、棄てられた側ってのは多かれ少なかれ
自分を棄てた奴を恨むもんだぜ。
(短くなった煙草を床に投げ捨て、新しい煙草に火を付ける)
Hmm…
Ah…チョット他に言い方が見つからナイので偉そうに聞えタラスイマセン
僕が彼女とどの様な付き合いにナルカハ彼女次第デス
彼女が僕の言葉を拒絶スルカ
モシクハ僕の言葉を必要とシナクナルカ
そのドチラかにならない限り僕は何らかの形で彼女と関るデショウ
イマスヨ、正か邪かは僕には見えナイのでワカリマセンがネ
言えるのは神は人から恨まレル事があっても逆はナイ
自分より遥かに矮小な存在をワザワザ恨まナイシ
何より神は人の求めによって生まレル、故に役目を終えレバ
その形を失うのが道理デス
あいつと知り合いなのか。
一つ忠告しといてやる。
あいつと深く関わらねぇ方がいいぞ。
ここに神がいるとは思えねーが、いるとしても邪神だろうな。
今頃自分を棄てた連中の魂とやらを
地獄へ叩き落とす遊戯の真っ最中だろうよ。
Hmm…
僕がココで出会った方は今までに三人
ソノ中で人を呼ぶとするナラバ……花風サンデスネ
僕はココの神に敬意を表しに来たのデス
僕の信仰する神は遍在シテイルためドコデ
どの様に、何に向かって祈りを捧げても変わりマセン
腐れ縁のクソガキがここに来いって煩くてな。
そういうお前は何の用があってここに来たんだ。
神に祈るにしても、ここよりマシな教会が
この島にゃ幾つかある筈だぜ。
そっちで祈った方が神のご加護みてーなもんが
得やすいんじゃねぇか。
アリガトウゴザイマス、ソーシマス
ハイ!
貴方が僕の言葉に耳を傾けてくれた事に感謝シマス
トコロで貴方はナゼここへ?
先程自分は無神論者と行っていマシタヨネ?
こう、言ってはココの神に失礼デスガ
ここは多かれ少なかれ神を信じる人の施設デスノデ
あなた方には面白い場所では無いと思いマスガ
そうかよ。
期待にゃ応えてやれねぇだろうが
待つのはてめぇの自由だ。
好きにしろ。
…うぜぇガキだな。
(教壇から降り、近くの椅子へどかりと腰掛ける)
これで満足か?
イエイエ、待ちマスヨ
ソレモ僕の信仰の一つの形デスカラ
違うノデアレバ何故…?
(またもやハッとし)
『モシヤ日本デハ椅子が普及シテイナイ……?
イヤ、シカシ僕の知る限りでは皆椅子と言う物を知っていマシタシ
目につくと言ってもソレコソ椅子なんてソコカシコにアリマスシ
本人も座り心地が良くナイと言っている……コレハ』(脳内にて)
……Hmm
お気遣いアリガトウゴザイマス!
デスガ遠慮させてイタダキマス
僕は座るなら椅子の方が好きデスシ
ワザワザ農家の方々やパンを作った方々の成果ヲ尻に敷くなんてモッタイナイ事出来まセン
ソレニデスネ、ココの椅子は少し古いデスガ別に釘が出ていたり脚が壊れている事もナイデスヨ!
教壇が座り心地が良くないノナラこっちを試してはドウデショウ!
(結論:椅子に何かしらのトラウマを持った人)(酷
やめとけ。
待つだけ無駄だぜ。
(厨二病と言われ、眉をひそめ
違ェよ。このクソガキが。
たまたま目についたから乗った。
それだけの話だ。
てめぇも乗るか?
座り心地はよかねーが尻の下にパンでも敷きゃ
多少はマシになるだろうよ。
ソウデスカ、デハ僕はナザレのイエスに倣い
貴方が神を信じる日を待ちマショウ
Hmm… 乗るものデハナイと分かってイテ
それでも尚ソウするのでアレバ僕から言える事はアリマセンネ
デスガやはり不可解デス…
フツウに椅子に座れば良いのにナゼワザワザ……(ハッして
ナルホド、所謂チューニビョーとユー奴デスネ!(←
生憎、俺は無神論者でね。
乗るものであろうがなかろうが関係ねぇな。
俺は乗りてぇ時に乗りてぇもんに乗る。
神は自分の中に在るものデスヨ
オヤ、オニーサン Buenas tardes コンニチハ
一応言わせてイタダキマスガ、教壇は乗るものではアリマセンヨ?
…天使か。下らねーな。
(教壇に腰を下ろし、天使像を冷めた目で一瞥。
取り出した煙草に火をつけ、煙を燻らせる。)
…そうだね。
選んだ道が地獄へと通じる道だったとしても
考え抜いて選んだ結果なら
きっと、それほど苦しまずに受け入れられる…。
うまく行かなかったら神様に八つ当たり、か。
ふふ、それもいいかも。
…神様がどれだけ強く力に溢れた存在でも
頼られてばかりじゃ、きっと疲れてしまうよね。
私達を導いてくれる神様を導いてくれる神様も
世界の何処かにはいるのかな…。
シカシ、考え抜いた一歩ナラバ後悔も少ないデショウ?
それでもドーニモ辛くなったら神に八つ当たりしてしまいナサイ
それもまた神の役割の一つデス
うん…。私も…。
神様は行く先を示してはくれるけど
そこまで運んで行ってはくれない…。
そういうものだと思う…。
自分の足で一歩を、か…。
その一歩を踏み出す場所と時期を間違えて
奈落に落ちてしまったらと思うと、怖いね。(苦笑
マタオアイシマショー(と手を振り)
ソーデス、貴女の神がその様な存在でアルナラバ
きっとソウナルノデショウ
シカシ、コレだけは忘れないでクダサイ
「神は導きはすれども歩みはせず」
導きにヨッテ良き結果を手に入れるタメには
イツだって自分で最初の一歩を踏まなければナリマセン
貴女の行く先に光のアラン事ヲ