様々な芳香で溢れる不思議な雰囲気の店内。
あらゆる香りで満ちているが、不思議とそれらは調和し合っている。
貴方を待つ素敵な香りに出会えますように。
=
雑談スペースです。
どうぞお気軽にご来店下さいませ。
入店退店ご自由にどうぞ。
喧嘩等、他のお客様のご迷惑となる行為をされるお方は事務所までご同行願うことが御座いますのでご了承下さいませ。
(仕草に。笑顔に。つい見とれて…目をそらして)………ソイツはどーも。
ああ…(三つ編みをいじりながら)…ソレ。サンダルウッド。
実際あるのとねーのとじゃー環境がまるでちげーしさ。イロイロなイミで。
逆に桜の方はムカシっから怖いモンといっしょくたにされがちだったり。
そーゆーイミじゃ浄と不浄。あの世とこの世みてーな関係なのかも知れん。
(しめされた先を目で追い)…なんせ。間が良かったみてーだね。
ならオネーサン。ソイツらを1個………イヤ。2個ずつ包んでくんねーか。
ってあたしの?………(困ったような顔で、ズタ袋をゴソゴソ漁りつつ)
まー…奥ゆかしいってノリにゃーホド遠いだろーけど(小瓶を取り出して)
(ほのかに桜が香る、半分も残っていないそれをカウンターにコツン、と置く)
【ゆるりとした動作で前髪を払って顔を上げ、視線が合えば屈託の無い笑みを向け】
あらまぁ、いらっしゃいませ。
ふふ、色々な香りに囲まれている事が好きですの、あたくし。
また新しい香りに出会えて光栄で御座いますわ。
ビャクダン……、サンダルウッドで御座いましょうか。浄化の力を持っているとか。
ええ、此方に御座いますわ。
サクラも先日入荷致しましたの。和の香りの奥ゆかしさはとても幻想的で御座いますのね。
【様々な香油が並べられた棚を煙管を持つ手でふわりと指示した後、感心した顔で市子さんに視線を戻す】
御自分で調香なさるの?まァ、素敵ですわ。
貴女様のお作りになった香油、是非使ってみたいものですわね、ふふ。
(入店。と同時、呼気に香りの百花繚乱がまぎれ込んで。
鼻の下を人差し指の背でくすぐったそうに、すんと撫でる。でも、不快ではなくて)
ウチもタイガイって思ってたけど…(瓶を見回し)…ココにゃー負けんね。
(視線をキセルに、キセルから店主の顔にうつして)…あの。香油ってあっかな。
白檀と。ソレに…桜の。いつもは自分で作ってんだけど…手持ちの材料切らしちって。
【カウンターの内側で煙管をくるりくるりと回しながら、棚の小瓶達を眺めている】
@@@リセット@@@
若さは流れる川のよう、老いは澱む水底のよう。
嗚呼、こう表現してしまいますと若くありたいと思ってしまいますわね。
【おどけたようにちょいと肩を竦めてみせ】
身体を隅々まで見ても、心は一つも見れませんもの。
ええ、確かに結局のところ、見えている一部分を見るしかありませんわ。
あたくしから見た貴方は古きを見据える梟のよう。猛禽の鋭さを隠し持って、古木の群をすり抜ける。
叶うのなら止まり木になってさしあげたい。そんな印象ですわ。
【前髪を軽く払い、屈託無い笑顔を向ける】
ああそんなお力でしたの。
不思議ですわね、何だかとても貴方らしいと思ってしまいましたわ。
もう何度か目を合わせて居りますから御存知かもしれませんけれど、あたくしの過去はそんな大層なものではございませんわ。
とってもチープでありきたりな三流映画。ポップコーンの肴にしては少し苦いだけの。
でも、ふふ、そのお心遣いがとっても嬉しい。教えて下さってありがとうございますわね。
【煙管を一度くるりとした後、その手をそっと胸に当てる】
ええ、一度は信じておりました。けれど裏切られてなお信じ続ける程、あたくしは一途な女では御座いませんの。
人は結局肉の塊。精神は何処へ行くのでしょうね。
苦しんで自らを殺したのに、その先でも苦しめられる世界なんて要りませんわ。
ええ、ふふ。好きにさせて頂きますわ。『ありがとう、良い夢を。』
……御気分は如何?
【婀娜っぽく笑み、現れた深く古い森の様な香りのする黒い薔薇を手にくるりくるりと回している】
彼女も彼女なりに悩みがありそうだがな
本能で生きてるからこそ理性が勝ちすぎた俺とは相性が悪いのかもしれない
(「自分の本音を無視する事で大人になる」という柳子さんの発言を反芻し)……言い得て妙だな。自分に嘘をつくことに抵抗を感じなくなれば大人の証拠だろう。俺たちは日々自分を詐欺にかけて生きてるんだ
……判断がむずかしいな(成長か退化か聞かれ苦笑で言葉を濁す)
それは受け取る側の考え方次第じゃないか。……あるいは……大人になるとは停滞し続ける事なのかもしれない
(独白めいた口調で)
出会ったばかりだから貴女の本性はわからない。
だが、今の振る舞いが演技だと仮定して……その演技が魅力を引き立てているなら問題ないんじゃないか。
本当の自分なんて考え自体が虚妄かもしれない。貴女は貴方が考えている貴女でしか、そして俺は俺が思っている俺でしかないのだから
いや、すべてを見るというわけじゃない。俺が視れるのはあくまで過去の一部だけだ(眼鏡のブリッジを指で押さえて俯く)
……目を合わせる事でその人間の強い感情を伴う過去を視る。
そういう訳だから、俺と目を合わせないほうがいい(冗談ぽく)
……人の過去を覗き見るのにさほど罪悪感は抱かないタチだが、貴女には夢を食べてもらう。恩を仇で返すのも後ろめたいから事前に申告しておく
……貴女は無神論者か?どうも言動の端々からそんな印象を受けたもので
唯物論に偏りすぎるのもどうかと思うが、性分だから仕方ない
目に見えない事象は信じられない、見えない心も言葉にしなければ伝わらない。友人の死後一層実感している
俺が視れるのは当時の情景のみ、当事者の心の裡まではわからない。
……もし天国や地獄が実在するならあいつの魂はどこを彷徨っているのか。神曲では自殺は大罪とされ、地獄で永遠に呪われ苦しむ宿命だそうだが
(静かに眼鏡を外し、凪いだ瞳で柳子さんを凝視)
……「この夢を貴女に捧げる」
好きにしてくれ
あら、そうでしたの?
子供は自分に正直なだけですわ。ちょうど、ええ、先程のあの子の様に。
自分の本音を無視することを覚えると大人になる、と考えておりましたわ、あたくし。
これは成長なのかしら。それとも退化?あたくしにはきっと永遠に分かりませんわ。
【態とらしい難しい顔を浮かべた後、悪戯っぽく微笑み】
ふふ、装飾の無い貴方を見せて頂けて光栄ですわ。
あたくしも自分を偽っているのかしら。こうやって振る舞い始めて随分経ちますから、どうだったかもう分からなくなってしまいましたわ。
見えないものを見るなんて面白い魔法。
全てを得ることも全てを奪うことも出来るなんて、危険な香りですわね。ふふ。
……ええ、自分の目で確認した物は嫌でも信じざるを得ませんわ。
見ていなければそれは信ずるに値しませんの、あたくしにとって。
神、天使、妖精、etcetera。
存在しない者を信じて。祈って。捧げて。時にはなりたがって。
本当に、本物にあたくしには理解出来ませんの。
【暫く目を細めて手元を見つめていたが、微笑みと共に顔を上げ】
ごめんなさいませ、あたくしったら。忘れて下さいまし。
【斑鳩さんの話に目を閉じ黙って耳を傾けた後、一つ頷いて真っ直ぐ見つめる】
悲しい夢。安堵の夢?
貴方の心が発信するメッセージかしら、それともその方からのメッセージなのかもしれませんわね。
聴かせて下さってありがとう。その夢頂いていいのなら、その夢を思い浮かべて仰って?
あたくしにそれをくださると。
【カウンターにもたれて斑鳩さんの方へ身体を乗り出し、下から見上げるように瞳をじいと覗き込み】
いや、子供は苦手だ。
独身なせいかな……行動を理屈にあてはめられないというか、扱い方がよくわからなくてね(曖昧に笑う)
気を悪くしたならすまない。貴女には偽る必要がないと思ったもので。
猫を被るのもこれで結構疲れるんだ
……見抜かれてると知った上で道化を演じるのも滑稽だしな
ああ、俺も持っている。能力の詳細は伏せるが……窃視に近いな。あまり褒められた能力じゃない。
この島では普通の定義に該当しないフツウが罷り通っている。
非常識も不合理も自然体で受け入れる……順応性が高いとも言えるが、価値観の齟齬も感じる
流されるままに日々を処して生きてる俺が言えたクチでもないが
……身を以て体験したからろっこんや神魂については受け入れざる得ないが、霊魂の存在については懐疑的だ。
自分が視た事ないものを安易に信じる気にはなれない。同様の理由で天国も地獄も信じない。
人間の意識は身体機能の停止と同時に消滅する、後には蛋白質の塊だけが残る……それが真実じゃないか(思案げに目を伏せてひとりごちる)
……大切?(眉を寄せ鸚鵡返しに問い返す)
ある意味ではそうかもしれない。大学時代からの友人だ。
時任彼方というピアニストで……春先に原因不明の自殺を遂げた
……なるほど、了解した。一時的な気休めで十分だ、未来の担保など最初から望まない
夢の中、俺は白い空間にいる。
目の前には黒檀のような棺が鎮座している
よく見ればそれはピアノ形の棺で、中に古代の屈葬に似た姿勢で……子宮の中の胎児にも見える姿勢で時任が納まっている
芳しく匂いたつ百合が敷き詰められた棺を覗きこみ、心から安堵する
こいつが死んでくれてよかったとしみじみ思う
俺の未必の故意がこいつの自殺に加担したと、その時に初めて気付く
それは明晰夢で、俺はこれが夢だとハッキリ自覚している。
手にした百合を手向けようと歩み寄ったら突然死体が起き上がり、首を絞められた。
抵抗の気力も反撃の遺志もない。
ただ時任の手が冷たいのは死んでいるからかとその事ばかり考えていた。
こいつになら殺されてもいいと思った
それがいい
それでいい
きっとそれが正しい
でも目を開けて……至近距離で目が合った
あの目が忘れられない
……あの目も、あの瞳に映った俺の顔も
……こんな感じでいいか?(感傷を削ぎ落とした口調で淡々と話し柳子さんを見る)
あらまあ、もう帰ってしまわれますの?ええ、是非またお越し下さいな。
まだ知り合いが少ないものですから寂しいんですの、あたくし。
【去る後ろ姿にぴらぴらと手を振り、振り返った斑鳩さんの表情を見て残念そうに肩を竦めた】
……あら、あたくしもあの穏やかな笑みを頂きたいものですわ。
子供には優しいのですわね、ふふ、貴方をまた一つ知ることが出来ましたわ。
ろっこん?あらまあ、魔法の正体はそれでしたの。
不思議な力、でも一番不思議なのはこの力を不思議に思われる方が少ないように思われることですわ。
……この力を持っているのはあたくしだけではありませんのね。貴方もそうでしたの?
【興味に満ちた目で見つめた直後、少し驚いた表情を浮かべて目を伏せる】
悲しい香り。大切な方でしたのね。
夢を頂けるの?ええ勿論、夢は必ず覚めるもの。覚めない夢はあたくしが息の根を止めてさしあげるだけ。
貴方があたくしにくれる夢を思い浮かべてから、あたくしの目を見てそう仰って下されば。
ただ、そうですわね。あたくしが頂けるのは今ある夢。未来に見る夢は食べられませんけれど、貴方は初めて見た夢だとお思いになるでしょうね。
よろしければ、頂く前にどのようなものか伺ってもよろしくて?
【調香の手を止めて顔を上げ、斑鳩さんをじいと見つめ】
(「夢ならいつか覚めなければいけない」という冴来さんの言葉を心に刻みつけるように頷き)
そうだな。あそこは人の心の廃墟だ。たまに現実逃避にくる分にはいいが、そう長居する場所じゃない。囚われて戻れなくなる。それでもいいという人間を止める権利はないが……
帰るのか。気をつけてな(冴来さんをにこやかに見送り、スッと表情を消して柳子さんに向き直る)
悪夢を造花にするか……面白いろっこんだな
よかったら俺の悪夢も食ってはくれないか
ひとつ確認しておきたいが、貴女に喰われた悪夢は完全に消滅するのだろうか
消えるのはあくまでその夢だけで、その後も違う悪夢を見る可能性はあるのか
…遊園地の、みる夢に…。
…夢なら…いつかは、覚めなきゃ…いけないね…。
(造花を受け取りじっと見つめ)
…私の夢…棄てたい、ぐらいに…不幸な夢…だったの、かな…。
…虜に、ならないように…頑張ら、なくちゃ…。
…花に興味を、持たないのは…少し寂しい、ような気がする…。
…花は、どれも…美しいのに…。
(軽く目を閉じ造花にそっと口付けた後、柳子さんに微笑み)
…ありがとう…。…私の、夢を…喰べて、くれて…。
…ラヴァンドも、この薔薇も…大切に、するね…。
(夢羊と造花を愛おしげに抱きしめ、足取り軽く退店する)
(博識と言われ恐縮したように眼鏡のブリッジに指を押し当て)
とんでもない、過大評価だ。
ただの本の受け売り、自慢するような事柄でもない……特に斬新な視点という訳でもないしな
貴女の言葉は異国の歌のようだな。
イランイランの香りに乗せて浮き沈み紡ぐ独特の韻律、酩酊を誘う抑揚……
長く共にいると悪酔いしてしまいそうだ。少しだけ友人のピアノに似ている
知らなかったのか。貴女の言う魔法とはろっこん……らっかみの力のお零れだな
やけに高飛車で偉そうな声が頭に直接響いてきた事はないか?それはテオという猫の仕業だ。
俺がろっこんに目覚めたのもちょうどそれ位、友人の死と前後して思わぬ授かりものをした。
非科学的な現象は元より信じないし、なんでもかんでもあいつの死と因縁づけたくはないが……
失くしたと同時に得た事実にいやでも皮肉を感じざるえない
良い獏か悪い獏か。
その二択は意味を成さない。貴女はそのどちらでもありどちらでもない、だから即答は避けた。
人は両義的な二面性をもつ生き物だ。
対象のどの部分に焦点を絞るかで受ける印象もまるで違ってくる……
貴女という人間に判断をくだすにはもっと深く知らなければな
椅子に座っていてもか。それは助かる
人がいなくなると気が緩んでな……机でうたた寝してしまう始末だ
(柳子さんの申し出にひとつ頷き)ではお願いしよう。色合いはシックなのがいい。青や茶系統、モノトーンで。
……その口吻、貴女は恋多き女性らしい。
その自由さに惹かれる男も、振り回されて生殺しの苦しみを味わう男もいるんだろうね。同情するよ。
一人と長続きした試しがない俺にこんな事を言う資格はないか(柳子さんの作業を眺めつつ苦笑する)
【冴来さんの様子を満足げに眺める】
思い出せなくて当然ですわ。だって貴女、あたくしに下さったでしょう?
残念ながら返品は不可能ですの、失われたモノは戻って参りませんのよ。例え戻ってきたとしても、それはよく見ると別のモノ。
あらまあ、ではコレは差し上げますわ。夢の亡骸、貴女が捨てた夢の成れの果て。
棄てた不幸は甘美な香り。虜になるのも従えるのも貴女次第。あたくしにはどうすることも出来ませんわ。
【口角を吊り上げ、次の瞬間には何事もなかったかの様に柔らかな微笑みを浮かべ。少しの躊躇も未練も無く薔薇の造花を手渡し】
欲しがっている方は居られませんわ、あたくしが保管をお願いしているだけ。悲しいかな、花の造形や香りに全く興味を持っておられない方ですの。
【ふう、と悩ましげな吐息を一つ】
ろっこん……、というのでしょうか?あたくしは魔法と呼んでおりましたわ。此処に越してきてから使えるようになりましたの。
カウンセリングの真似事として以前から『夢を頂く』ことはしていたのですけれど、こんな手品が出来るようになったのは4月頃からでございますのよ。
あら、とても博識で御座いますのね、貴男。あたくしには無い考え方、勉強になりますわ。
【感心したように頷いた後、指で自らの頬をなぞり】
あたくしには、哲学なんて難しいこと理解が難しくって。思考より行動、理屈より感情があたくしにとっては重要ですもの。
違う考えを聞けるのはとても新鮮ですわ。知識が拓けて心地が良いんですもの。
ふふ、素敵な評価をありがとう。
ええ、その枕でしたら椅子に座っていても睡眠がとれると思いますわ。やはり一番良いのは寝心地の良いベッドや布団で御座いますけれど。
かしこまりました、ではその香りを調香して香り枕に仕立てましょうか?よければお好きなお色をお選び下さいましね。
【カウンター奥の棚から精油の瓶を探し始め】
自由にもそれなりの対価が伴いますけれど、でもやはり荷は軽い方が良い。
束縛から生まれる幸福もあると理解はしておりますわ。でもあたくしは気軽な方がいいの。
うふふ、貴男と気が合うなんて嬉しいですわ。あたくしももっとお話、話して聞かせてほしいですもの。
【斑鳩さんへついと視線を向け、にこりと笑んでから視線を棚に戻し】
(柳子さんが何もない空間から青薔薇を生み出すのに軽く目を見張り)手品……いや、ろっこんか?(小さく呟く)
随分と抽象的で哲学的な物言いだね。
夜毎の死は細切れの死と評した先人もいたが……
彼に倣うなら人間はやがてくるだろう生命の終焉に備え、夜毎死を仮想体験しているのかもしれない。
夢が現実を浸蝕する事もその逆もある。
夢遊病の事例は興味深い。起きながらにして夢見る人間もいれば寝ながら生きる人間もいる。
植物人間の視る夢はどんな色彩をしているのか。覚めない夢は観測者にとっての現実じゃないのか。両者の境は実に曖昧模糊としている
夜の夢こそ真と言ったのは外国の作家だったか。
……なんて、フロイトまがいの夢判断は自重すべきだな。
生憎どちらでもない。貴女は魅力的な女性だ
……いや、食虫花のように美しく危険な女性と言い直そうか
じゃあそのU字型の枕を見せてもらおう。……頸部に負担をかけない機能的なデザインだな。これなら仮眠室でもぐっすり眠れそうだ。あそこのベットは固いせいか寝苦しくてね
貴女とは気が合うかもな。
俺も夫婦だの家庭だのといったステレオタイプの価値観は煩わしく感じる。ある種の信仰だな、あれは。
表面上は話を合わせてるが、家庭持ちを羨む気はまったくない。結婚にメリットを感じないんだ。
家庭をもつことで得るものと失うものを差し引きしたら被る不利益の方が大きい。不自由と言い換えてもいいが
誰にも何にも依存せず干渉せず、自分の面倒だけ見てひっそり生きたい。縛るのも縛られるのもごめんだ
……話が脱線したな。
(サンダルウッドとミルラの香りサンプルの小瓶をひとつ手にとりためつすがめつ蓋をあけ)
……香水には詳しくないが、心が落ち着く。
ひとつもらおう。
君は寝子高の生徒か(冴来さんに向き直り)
夢の抜け殻……面白い比喩だね。確かにあそこは現実と地続きという感じがしないな
夢を見ているのは案外寂れた遊園地自身かもな。俺達は遊園地が視る夢に取り込まれてるんだ。
…私、は…花風、冴来…。
…寝子高校の…二年生…。
…あそこは、不思議な…感じが、する…。
…誰かの、夢の…抜け殻、みたいな…。
(造花から漂う香りに目を細め)
…凄く…甘い、香り…。
…何処までも、堕ちて…いきそうな…。
……あれ……?…私…どんな夢…みてたん、だっけ…?
…思い、出せない…。
(不思議そうに首を傾げる)
…その薔薇…欲しい…。…凄く、欲しい…けど…。
…他に…欲しがってる、人…いるの…?…
…その人…どんな人…?
(じっと造花を見つめながら)
あらあら、『ありがとう、良い夢を』。
【そう笑んで言うと、噎せ返る甘い甘い芳香のする華奢な青薔薇の造花がふわりと現れる】
ふふ、良い悪夢でしたわ……、覚えておられる?
これは貴女に差し上げましょうか、あたくしには必要の無いものですもの……、ああ、でも、貴女にも必要無くなったものですものね。
貴女が要らなければあたくしが頂きますわ。知り合いにこの色を必要としている者がおりますの。どうしましょうね、貴女が決めて下さいましな?
【目を閉じ造花の香りで胸を満たした後、コケティッシュな吐息を一つ】
【再びふわりと斑鳩さんの方を振り向き】
夢は夢、現実(リアル)ではございませんの。でも夢は此方(リアル)に土足で踏み込む事も少なくございませんわ。
ええ、そうですわ、あたくし夢喰い獏ですの。頂いた夢の息の根を止める悪い獏。足枷を食い千切り自由を与える良い獏。
貴方にはどちらに見えるのか、それは貴方にしか分かりませんわ。
【目を細めて妖しくくつりと笑い、直後に今度はぱっと無邪気に笑ってみせ】
香り枕の形は色々ございますわ。四角形にU字型、クッション状の物に抱き枕状の物。お好きな形をお選び下さいな?
【棚から形状様々な香り枕を取り出して並べてみせ】
結婚……夫婦……、あたくしよく分かりませんの。まず一人に決めるなんて勿体無いですわ、そして……、ずうっと一人に傅くなんてとても面倒、自由に生きたいんですもの、あたくし。
あべこべかしら、でもあたくし自分に嘘を吐きたくありませんの。熱い夜の甘い夢は色々なバリエーションな方が刺激的なんですもの。
ええ、漠然としたものですわ。あたくしがおすすめしても、それが貴方が好きだという確信はございませんもの。好みは移ろい変わりますものね。
あら、偶然。ミルラは心を穏やかにしてくれますのよ。強い香りが苦手で御座いましたら、それの強さも調節出来ますわ。
【サンダルウッドとミルラの香りサンプルの小瓶を机に並べながら】
気分を害されたらすまない。
あの店はシーサイドタウンの裏路地にあったか……貴女とは似て非なるタイプだが、店主が変わり者でね。調香師も兼ねていたか……
香り枕……か。どんなのがあるんだい?あまりファンシーなのはちょっと……
なにぶん帰りの時間帯が不規則な仕事でね。根を詰めがちな性分も一因だが……
休暇をとってゆっくりするのが一番だろうが、家庭持ちが多い職場なせいか、独身の俺になにかと皺寄せがくる。
結婚記念日で早引けしたがってる同僚に気を利かせたりね(冗談めかし肩を竦める)
……互いを束縛し合う関係は煩わしいだけだと思うのだが。体裁を保つのも苦労する(周囲に聞こえない程度の小声で呟く)
……サンダルウッド、というと白檀か。店主の目利きなら利きそうだ。サンプルはあるかな?
俺が心地よいと感じる香りか……漠然としているね。
例の調香師に作ってもらったのもミルラの香水だった……古代エジプトでミイラの保存にも使われた、死者に寄り添う香りだとか。
キツい香りは苦手だ。死んだ友人は洒落者で、香水を好んでいたが……
……その獏は夢を食べてくれるのかい?(面白そうに)
君は……イリュージョンランドで見かけた事があるな(冴来さんに向き直り)
よくメリーゴーランドの木馬に腰掛けて物思いに耽っている…
俺は斑鳩遥、寝子島水処理センターの研究員だ。怪しい者じゃないから安心してくれ(軽く微笑む)
…こんにちは…。
(遥さんに軽く頭を下げ)
……?
…遊園地で、よく…見かける、人…?
…。
(柳子さんに向き合い、目を細めこくりと頷き)
…夢喰い、漠さん…。
…私の、夢を…貴女に、あげる…。
…私の、悪夢を…食べて、欲しいの…。
(じっと柳子さんの目をみてそう言葉を発する)
あらまあ、悪い人じゃないと評価してもらえて嫌な顔をする人は居りませんわね。
【煙管をくるりくるりと回しながらはにかみ、斑鳩さんの方を向く】
あらあ、いらっしゃいませ。お仕事お疲れ様でした。
夢獏は素敵な眠りを提供する小物や香りを取り扱っておりますの。勿論アロマも取り扱っておりますわ。
その香水屋さんは存じ上げませんけれど、そうですわね、差別化は図っていきたいところですわ。
【困ったような表情を浮かべて煙管を持つ手で頬に触れ】
そうでございますわね、お薬で齎される強制された睡眠は心地良くありませんもの。まさに最終手段ですわ。
今彼女にもおすすめしていたのですけれど、香り枕などいかがかしら?羊の形以外にも色々取り揃えておりますわ。
【様々な形や色の枕を指し示し微笑みかけ】
お疲れなのでしたら、そうでございますわね……。
マージョラムやミルラ、王道ならばラベンダーなどもおすすめですわ。貴男にはサンダルウッドも似合いそう。いいえ、あたくしの勘で御座いますわ。
嗚呼でも、貴男が心地良いと感じる香りが、今の貴男の心が欲している香りですの。だからお好きなものをお探し下さいな?貴男の無意識の声、聞いてあげて下さいましね。
【ふわりと花風さんの方へ身体を向け】
あら、試してみるのですね?ああ、ああ、分かりましたわ迷い羊さん。
簡単な言霊ですわ。バクに向かって自分の夢をあげると唱えるだけ。そうすれば獏がその夢を綺麗さっぱり平らげてくれますのよ。
貴女がそうしたければ、この夢喰い獏に下さいな?
【そういって前に立ち、自らの胸をとんとんと煙管で示す】