様々な芳香で溢れる不思議な雰囲気の店内。
あらゆる香りで満ちているが、不思議とそれらは調和し合っている。
貴方を待つ素敵な香りに出会えますように。
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雑談スペースです。
どうぞお気軽にご来店下さいませ。
入店退店ご自由にどうぞ。
喧嘩等、他のお客様のご迷惑となる行為をされるお方は事務所までご同行願うことが御座いますのでご了承下さいませ。
(静かに扉を開け仕事帰りと思しき男性がひとり入店する)
(物珍しげに、だが礼を失しない程度にあたりを見回し)……外観だけでは何の店だかわからなかったが……アロマ専門店か?随分とエキゾチックな内装だな。どことなくあの香水屋に似ている
(柳子さんと冴来さんに目をとめ歩み寄り軽く会釈)
貴女が店主か。
仕事帰りにふらりと立ち寄ってみたのだが……安眠グッズを売っているのか
こちらのお嬢さんの用が済んでからでいいが、俺にも一つ二つ見繕って欲しい
……最近眠りが浅くてね。
疲れてるせいかもしれないが……夢見がよくないのには辟易する
睡眠薬を処方してもらおうかと思ったが、安易に薬に頼るのも抵抗を感じてね。
何かいい物はあるかな。
…貴女が…何を、考えているかは…
…私には…分からない、けど…。
…貴女は、悪い人では…ないと、感じる…。
…。
(こくりと頷き)
…最終的に…私を、変えられるのは…私、自身だけ…。
…私が、自分で…変わろうと、努力、しなければ…
…きっと、何も…変わらない…。
…気休めでも…試して、みたい…。
…その言葉を、私に…教えて、くれる…?
あらまあ、単純な物の例えですわ。あたくしが人畜無害な獏なのか、悪夢振りまく獏なのか、それは感じる人それぞれでございますもの。
印象はあたくしの事でございますけれど、あたくしが決めることができない事象ですわ。
でも頭の中身は違う。だから、そうですわ、気を付けなければなりませんの。
【あたくしそう考えておりますの、と語ると紫煙をふうと吹き】
ええ、ええ、彼は貴女の気持ち全てを受け止めてくれますわ。
ただ、ええそう、ただ彼は貴女を応援することしかできない。あたくしはあたくしの意見を語ることしかできない。
最終決定と共に踏み出せるのは貴女だけ。足踏みできるのも貴女だけ。あたくし、それだけは忘れてはいけないと思いますわ?
夢喰いバクの話は御存知かしら?
悪い夢はバクに食べてもらうの。そうすればその夢は二度と見ない。……と、いう言い伝え。空想上の動物ですわ。言わば気休め。
ある言葉をバクに向かって言えば、その夢をきれいさっぱり食べてくれますわ。
そうすれば、二度とその悪夢に悩まされることはなくなりますの。二度と。
……貴女…みたいな……?
(不安気に小首を傾げ)
…♪
(嬉しそうに頷き)
…大切に、する…。
…これからは…私が…この子を目一杯…愛して、あげるの…♪
(柳子さんの言葉を真剣な表情で聞き)
…うん…。
…私…今のままじゃ、いけないの…。
…変わりたい…。
…変わらなくちゃ、いけないの…。
…その為の、手伝いを…きっと、この子は…してくれる…。
(小さく目を閉じ、夢羊にそっと頬を寄せ)
…私が悲しい…気持ちで、いると…
…周りの、人達も…悲しい気持ちに、なっちゃうの…。
…だから、早く…元気に、ならなきゃ…。
…悪夢を、貴女に…?
…どうぞって…言いたい、けど…どうすれば、悪夢を…
…貴女に…譲ることが、できるの、かな…?
ええ、ようございましたわ。あまりふらふらしてらっしゃいますと、怖いナニカに狙われますわよ?
例えば……、ええ、あたくしみたいな。
【台詞と声色とはウラハラな無邪気な笑顔を向け】
『ラベンダー』……だったかしら?嗚呼、良いお名前。
彼は貴女に生命を貰いましたわ。彼のこと、大事にしてあげて下さいましね。彼には貴女しかおりませんから。
【心の底から嬉しそうな声色と共にそう言葉を発し】
あたくし、夢の話が大好きですのよ。特に……、そう、こんなとっても不幸な夢。
でもよろしいかしら、貴女。夢は何処までいっても夢でございますの。どれだけリアルでも所詮夢でございますわ。
今からあたくしが発する言葉、少々刺々しく感じられるかもしれませんわ。
でもあたくし、きちんと夢を話して下さった方に嘘は吐きたくありませんの。あたくしはあたくしの考えを正直に申し上げますわ。
現実のモノではないモノにいつまでも縛られていても何か始まるかしら?違う、とあたくしは思いますわ。
好きだと言っておきながら、今の心地良い不幸の中で足踏みばかりしている限りは、それは貴女、その人物が好きなのではなくてこの不幸が好きなのではなくて?
違うというのなら、これを機会に変わりなさいな。動かなければ、貴女がその人物を思う気持ちはその程度だということ。
【しゃらり、と装飾が触れ合う音を響かせ首をゆるりと傾げ、憐憫の眼差しをついと向け】
気持ちって伝染しますのよ。特に……そう、ええそうですわ、貴女のような気持ち。
いつまでもいつまでもその気持ちを纏っていれば、貴女を見た人はみんなそんな気持ちになってしまいますわ。
貴女は賢そうだから、きっと分かっておられるでしょうけれど。
……あたくしからはそれだけ。
ねえ貴女、その悪い夢、あたくしに下さらないかしら?
【そういうとちろりと自身の唇を一舐めし】
…違うの…。
…吸っては、いけない、ものじゃ…ないんだ、けど…。
(気まずそうに視線を落とし)
…ここじゃ…言えない…。
…勘違い…させて、しまって…ごめんなさい…。
(申し訳なさそうに頭を下げる)
…じゃあ…ラヴァンド…。
…私は、この子を…ラヴァンドって…呼ぶことに、する…。
…ラヴァンド…今日から…宜しくね…?
(一旦夢羊を体から離し、目を合わせて微笑んで
再び愛おしげに抱きしめる)
……その…私……。
(視線を彷徨わせ逡巡した後、躊躇いがちに口を開き)
…私…大好きな、人と…喧嘩を、して…。
…その日から、ずっと…その人が…
…闇に、消えちゃう…夢を、見るの…。
…見たくない、のに…何回も、見るの…。
…このままじゃ…心が…擦り切れちゃう、気がして…。
…私…怖くて…。
…凄く…怖いの…。
……貴女、吸ってはいけない香りをお求めなどではございませんよね?
あたくしはきちんと資格を持って香りを調合しておりますわ。近頃流行っておりますような憎き香りではございませんことよ?
【首を傾げて一瞬眉根を寄せ、打ち消すようにふるふると首を振り】
いえ、なんでもございませんわ、本土に居りました頃によく間違えられましたもので。
全く心外ですわ、貴女のように癒しの香りを求めてお越し下さる方が殆どでございますのに。ねえ。
彼の名前はまだございませんの。あたくしは彼に名前を付けておりますけれど、貴女は彼に名前を付けておられないでしょう?
彼に貴女が名付けることで、貴女の夢羊に瑞々しい生命が吹き込まれますわ!
どうぞ心に浮かんだお好きな名前で彼を喚んであげて下さいまし。
それと、ああ、貴女……。いいえ、いいえ、あたくしの勘違いならいいのですけれど。
貴女はなんだか心が此処に無いお人形さんのようで……。
何かございましたの?貴女の悪夢、よろしければあたくしに聞かせて下さいませんこと?
【カウンターに両肘を突き、煙をふうと吐いてから蠱惑的に微笑み】
…そう…香りの…ことなん、だけど…。
…調合して、貰っちゃ、駄目な…香りだと…思う…。
…夜…。
…世界に…一人、だけの…。
(ぼんやりとした面持ちで呟き
肩に触れられてハッと我に返る)
…えっと…大丈、夫…。
…ごめんなさい…。
…私…この子を、連れて…帰りたい…。
…この子は…なんて、名前なの…?
?
何かの香りの事でございますの?
どんな香りか思い出してくれれば、あたくしがコーディネートする事も出来ますわ。気軽に教えて下さいましね?
【カウンターの横の棚にある小瓶をキィンと指で軽く弾き】
効能は似ていても全く違う香りが違うものも多くございますわ。だから貴女に必要なのは彼女ではないだけかもしれませんわね。
……あらあ?月の香り?
あたくしはアロマを用いておりますけれど、貴女の香水に似たブレンドのものが出来たのかもしれませんわね。
確かに青い毛並みの夢羊は夜をイメージした香りの物ですわ。ラベンダー、マンダリン、サンダルウッド、etc……。
あたくしの気分でブレンドも様々ですから、彼は世界に一人だけの夢羊。
……麻薬のような効果はございませんわよ?貴女、大丈夫ですの?
【惚けた様子を不思議に思いながら肩にちょんちょんと手を触れ】
……満たされて、ないから…。
……まだ、好きって…思うの、かな…。
(目を伏せ、呟き
…その、効能は…私に…必要、だと…思う…。
…だけど…なんだか、違う…気がするの…。
(困惑した表情を浮かべ
…貰っても…いいの…?
…えっと、じゃあ…。
……あ……。
(ペールブルーの毛並みを持った夢羊に目をとめ
ふらふらと吸い寄せられる様に近づいて)
…貴方…私のこと、呼んだ…?
…私の、香水と…似た香り…。
…月の…香り…?
(一瞬躊躇った後、そっと夢羊を抱き上げ)
…なんだろう…?
…ちょっと、怖い…でも…凄く…
…心が、満たされる、ような…。
…私…貴方の…ことが、欲しい…。
(何処か惚けた様子で呟き
夢羊をぎゅっと強く抱きしめる)
ある時好きだと思った香りも、暫くするとそうでもないと思うことはございませんかしら?
それは貴女の心が満たされたからなのですわよ。
勿論その逆もまた然りでこざいますわ。
ゆっくりと探していって下さいましね。
プチグレンちゃんはねえ、心地良い眠りを連れてきてくれたり不安や心の乱れを落ち着けてくれて、気持ちを強くするお手伝いをしてくれますわ。
貴女にはぴったりな予感がしたのですけれど……、必要なのは彼女ではなかったようですわね。
【煙をくゆらせながら興味深げにじいと見つめ】
柑橘系の元気な香りで貴女を応援してくれるベルガモットやマンダリン、スパイシーで深い薬の香りで癒してくれるミルラ、暖かで穏やかな香りで眠りに誘うマージョラムやラベンダー。
他にもたくさんの夢羊が居りますわ。
貴女は彼らを大切にしてくれそう、あたくしの勘ですわ。
よろしければ……、貴女のお気に召した夢羊を一人、差し上げますわ?
貴女だけの夢羊を選んであげて下さいましな。
…私の、心が…欲してる、香り…。
…ここは…色んな、香りが、するけど…
…どの香りを、私は…必要と、してるん、だろう…。
…うん…!
…連れて、帰りたい…!
…どの子も、みんな…可愛いなあ…。
…抱っこしても、いいの…?
(差し出された夢羊を受け取り、嬉しそうに抱きしめ)
…プチグレン…いい香り…。
…でも…貴女は、私の求める、香りとは…
…何だか、少し…違う、みたい…。
…ごめんね…。
(申し訳なさそうな顔をしてプチグレンの頭を撫でる)
あらまあ、よく来て下さいましたわね。
貴女が心地良く感じる香りが、貴女の心が欲している香り。無意識の声をどうぞ聴いていってあげて下さいましね。
【言うと、しゃらりと装飾の音を響かせて首を傾け目を細め】
貴女、彼らに興味がおありですの?彼らは夢羊、あたくしのお手製ですのよ。言わばあたくしの子供達。心を込めて作り上げておりますわ。
香りと色と形をコーディネートして、世界に一つだけの専用夢羊もご用意できますの。勿論彼らを連れ帰って下さっても嬉しく思いますわ!
よろしければ抱っこしてあげて下さいましね。貴女のことを呼ぶ夢羊ちゃんが居るかもしれませんもの。
試しに彼女は如何かしら、プチグレンという名前ですのよ。
【柑橘と草が入り混じる、力強くも落ち着いた香りの緑色夢羊を差し出し】
…。
(静かに扉を開け入店)
…不思議な、香り…。
…何だか、落ち着く…。
(息をつき、店内を見回す内に
陳列された羊形の枕に気がつく。)
…羊…!
…可愛い…!
…凄く、可愛い…!
(目をキラキラさせて羊形の枕を見つめる)
やっと開店出来ましたわ……。
ふふ、素敵な夢がたくさん来て下さると良いですわね。
【黒檀の煙管から煙をくゆらせ一人嬉しげに微笑む】
そうですわ、彼らも陳列しておかなければいけませんわね。
【様々な色・様々な香りの羊の形をした枕を綺麗に棚に並べていく】