対の衣装を着た精巧な造りの双子人形と
人形サイズの調度品が置かれている。
誰かがここで1人遊びしているとかいないとか。
『なるほど、確かに強いことは必要なのかもしれません
……ところで冴来のいう強さとはなんでしょうか?』
(かたり、と人形の綺麗な目が見つめ)
『山をも持ち上げる程の怪力のことでしょうか、風よりも速く駆けることでしょうか?』
(きゅ、と握る手の力を少しだけつよめ)
『ですが、きっと貴方はそれだけでは納得しないでしょう……』
『これは……とある少女となった人形の話です』
(一度目を閉じ、ゆっくりと語り始める)
『彼女には名前がありません。……符丁があっただけでした』
『彼女が学んだのは……人を殺めることとその為の技術です』
『彼女には両親がいません。幼い頃に誘拐されたからです』
『人里から離れた場所、ただ人殺しを教え、彼女らを立派な殺人人形(キリングドール)として仕立てる場所』
『その中では、彼女ら同士を殺し合いをさせてはより精度の高い”人形”を作っていくのです』
『彼女はいつしか殺した人間の数を数えなくなった頃には、立派な”お人形”になっていました』
『──そう、作り上げた者達が褒め称えた、最高傑作のお人形!』
『彼女は間違いなく強かったのかもしれません ですが、それは悲しいことに……製作者らがいなくなってから、途端に彼女の力は不要となってしまったのです』
『ああ、なんということでしょう……彼女は少しだけ手首をひょいとひねれば人を殺めることのできる素晴らしき殺人人形! ですが新しい世界はそのような存在は欠陥品なのです……』
『……そんな彼女にも、欠陥品であっても、そんなことはないよ、と語ってくれる人がいました』
『血まみれの手なのだと脅しても、実際に、殺しかけても、決して拒絶しない、心優しき人』
『それをきっかけに、彼女は世界を知っていくのです』
『こうして人形は少女になっていくのでした』
(語り終え、再びじぃと花風さんを見つめ)
『だから冴来……貴方が気づいていないだけで、きっと貴方のことを支えてくれる人がいるはずなのです』
『今のあなたに必要な強さ。それは……勇気をもって、助けてということ』
『その声に答えてくれそうな、心優しき方に心当たりはありませんか?』
『もし、ないというのであれば……私が、その名誉ある一番目となりましょう』