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自動販売機の前
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「天動さん、猫島」
自販機の前で立ち話でもしていたのか、揃って手を振る記士郎と寝太郎に手を振り返して、けれど足は休めず、
御剣 刀
は寝子島神社から旧市街に下る坂道を一気に駆け下りる。
晩秋の冷たい風の中にあって、汗が滲むほど熱を帯びた頬を、頬より熱い掌で擦る。坂道を駆けても然程乱れぬ息を宵闇に白く吐き出す。
空を仰ぐ。黄昏の最後の光が夜に飲み込まれて消えて行く。
人気の絶えた旧市街の路地にぽつり、眩しく光る自動販売機の前、刀は足を緩める。脳裏を掠めて、先ほど自販機前で談笑していた知り合いの姿。
そういえば、日課である寝子島神社境内での鍛錬を一通り終えて此処に至るまで、水分を一切採っていない。
(一息つくか)
自販機の前、足を止める。呼吸を整えながらポケットを探り、小銭を取り出し入れる。青い缶のスポーツドリンクのボタンを押そうとして、それよりも先、がしゃん、と取り出し口に何かが落ちた。
不審に思って取り出し口を覗けば、冷たい烏龍茶が鎮座している。黒い眉をひそめて、
「おい」
思わず低く吐き捨てる。烏龍茶のボタンがプルトップで固定されている。
(注意力不足か……)
誰がしたのか、下らない悪戯に引っ掛かってしまったことに肩から力が抜ける。唇を不機嫌に引き結び、仕方なく出て来た缶入り烏龍茶を取り出す。ボタンを固定していたプルトップを引抜き、自販機横に備えられたゴミ箱に捨てる。
走って熱を持った掌に缶の冷たさが心地よかった。缶を開け、烏龍茶を喉に流し込む。火照った体に気持ちよく染み渡る冷たさと鼻に抜ける烏龍茶の香りに、まあこれも悪くないかと唇を引き上げる。
少し冷えた息を吐き出し、暮れた空を見上げる。
冬や夏のように目立つ星は少ないけれど、深い藍の空に輝き始める真っ白な月がひどく綺麗で、
(届くんじゃないか)
思ったまま、少年は月に手を伸ばす。
けれど曲げた指先に触れるものは何もない。掴み取れたは、ただ虚空だけ。
空っぽの掌を胸元に引き寄せる。開いて見ても、空っぽは空っぽのまま。
(これと同じなんじゃないか)
不安が過ぎる。
祖父の剣術を極め、その上で己が剣術を作るのだと目標を定め、それに向けて直向に走り続けてきた。けれどその目標は、月よりも高く遠いのではないか。ただ見えているだけで、どれだけ懸命に走ろうとも力の限りに手を伸ばそうとも、決して手など届かぬのではないか。
胸を掴む不安と共、こめかみを刺し貫かれるような痛みが走る。
空仰ぐ黒い瞳が歪んで俯く。
求めるものに手が届かぬ不安は、いつだって腹の底にとぐろを巻いて潜んでいる。そうして、どれだけ剣を振るい振り払おうとも、ふとした拍子に鎌首をもたげる。
(……それでも)
もう片手に掴んだ缶が潰れるほどに、両の掌を拳に変える。不安に怖じて竦みそうになる足を一歩、踏み出す。
それでも、足を止めることはない。
(考えるまでもない)
瞳に力が篭もる。伏せた睫毛を上げる。
不安の鎌首を斬り飛ばして、あの時に見た祖父の一閃。あの一振りが、己の未来を決めた。
(俺もあんな一刀を振るうんだ)
理想に届かぬ不安にどれだけ潰されそうになろうとも、その一心だけは決して揺らがせない。揺らがせたりはしない。
空に輝く月をもう一度見上げる。
三分の一ばかり残る烏龍茶の缶持つ手元に視線を落とす。何気ない仕草で缶を逆さまにして離す。お茶が零れるその瞬間、脳内に劇鉄を落とす。己に宿ったろっこんを作用させる。
(速く)
銃身から飛び出す弾丸に似て、心身が【加速】される。
(ずっと速く)
速度上げる心身に反比例して動きをほとんど止める世界で、刀は手を伸ばす。一度離した缶を掴み、珠のかたちして空中に静止するお茶の雫の下に缶の受け口を据える。
動きを取り戻す世界で、零れ掛けたお茶が缶に再び落ちて戻る。
(伸ばした手が届くまで駆け抜ける、そう望んだ)
そう望んで得たものは、目に映る世界が凍り付くほどまで己を加速させる力。
神様からこぼれた魂ですら、望みを叶えようと駆け続けるこの心の影響を受けた。刀はそう考える。それだけ己のこの想いが強いのだと、そう信じた。だから、
(不安もあるけど大丈夫さ)
一滴残さず缶に戻ったお茶を口に含み、飲み干す。
(この先に何があるか分からないけれども)
自販機の光に慣れた瞳に、道の先を塞ぐ夜は一層暗い。
空き缶をゴミ箱に捨て、刀は夜の暗さに怖じず地を蹴る。
(俺は望んだ場所へ必ず辿り着く)
冷たい空気を取り込んでは熱い息を吐き出し、再び走り始める。夜闇を見据える黒い瞳に迷いはない。
頭上の街灯の光を翠玉の瞳に捉える。椿の垣根の向こうの家の窓から流れ出て来る光を横目に、
後木 真央
は街灯の光の輪の外に足を踏み出す。光の輪から外れた途端に視界を阻む夜の暗さに子猫じみて丸い瞳を瞬かせ、道に沿って灯る次の街灯を見据える。暗闇に怖じて止まってしまいそうになる足を早める。
明るい場所から明るい場所へ。目的さえ目指して足を動かせば、闇に立ち竦んでしまうことはない。
(大丈夫、)
陸上部Tシャツの上に羽織った臙脂色の学校ジャージのポケットの中、掌を握り締める。
(大丈夫なのだ)
旧市街のこの道は等間隔に街灯がある。次の街灯の傍には野良猫が丸くなっている。次の街灯の隣には賑やかな一家が家の外にまで楽しげな笑い声を漏らしている。
誰かの楽しさや生き物の気配に助けられながら足を進めたその先に、目的の場所。
錆びた鉄柱に支えられた布屋根の下、何台と並ぶ自販機が放つ眩しい光に思わず安堵の息が零れる。息の白さに空気の冷たさを思い知りつつ、光に引き寄せられる虫の動きで真直ぐに自販機へ駆け寄る。
背負ってきていた赤猫リュックを下ろし、財布を引っ張り出す。ついでに色々詰まった鞄の中から缶切りとカトラリー付のマルチツールも探し出す。
「見ーっけ、なのだ」
宝物を見つけた子供の動作でマルチツールを頭上に掲げ、
「……冬の新作っ!?」
その動きのまま、固まる。
目線の先には、お目当てのはずだったジュース自販機の隣のアイス自販機。そこに貼り付けられた『新作!』の広告シール。
「まさか……まさかこんな所で」
涼しいを通り越して寒い秋の夜、本当は猛烈にコーン入りポタージュスープが飲みたいはずだった。衝動のままに猫鳴館を飛び出し夜道を彷徨った果て、やっと見つけたあったかい缶スープのはずだった。
缶の中のコーンを掻き出すために用意したマルチツールを握り締め、ふらふらとアイス自販機に引き寄せられる。
「ダブルチョコ&ストロベリーと、……」
目当てのスープは放り出して、新作アイスを示すショーウインドウに貼り付く。
この夏、一日三個までは決めて全商品クリアしたはずの自販機アイス。来年の夏まで新作は出るまいと油断していた。
「ポタージュアイス?」
まさかの新作に真央は目を剥く。冬も間近なこの時期に新たな挑戦状を叩きつけてきた自販機を睨みつけて、
「分かったのだ」
食キングを自称する真央は晩秋の寒さにかじかむ頬を両手でごしごし擦る。
「真央ちゃんはどんな挑戦でも受けるのだっ」
堂々と宣言し、小銭を叩きつける勢いで投入する。連続して新作アイス二つを買う。アイス自販機の前に仁王立ち、二つのアイスを包む紙を両方破る。その勢いで交互にアイスを齧り、
「ひ、冷えっ……」
吹き寄せる風の冷たさと口中に広がり体に染み入るアイスの冷たさに、意志に反してぶるぶるっと体が震えた。
「冷えるのだ~」
慌てて自販機の脇に座り込む。風避け代わりにした自販機の熱を背中に感じて小さく丸まり、鼻水を垂らしつつ大口開けてアイスを食べる。
「しゅ、修行なのだ食キングの道は険し……」
寒さを堪える呪文を途中でくしゃみに遮られながらも、舌が凍って味覚が分からなくなりながらも、一欠けも残さずアイスを食べきり、小さな剣のようにアイスの棒を握り締め、立ち上がる。
凍えた体をぎこちなく動かしゴミを捨て、ジュース自販機に縋りつく。ガタガタ震える指先で小銭を取り出し、温かいコーンポタージュスープを買う。温かい缶を両手で包んで冷えた頬に押し付けるも、芯まで冷えた身体は缶一本ではとても温もらない。
「うぅ、寒いのだ寒いのだ~」
ミルクティーと汁粉も追加購入し、その二つはジャージのポケットに懐炉代わりに突っ込む。封を切った缶を両手で握り締め、とろりと温かいスープを口にする。
甘さと冷たさに痺れていた舌がスープの温もりに溶ける。
「……あったかいのだ~」
思わず零れた溜息に押し上げられて空を仰ぐ。空に瞬く星を見上げて気がついた。そういえば上を見る余裕もなくしていた。
(下だけ見てたのだ)
勿体なかった、とふと思う。
飲み干した缶を振る。何粒がコーンが残っているのを確かめ、マルチツールの缶切りで缶の上部を開ける。カトラリーでコーンを掻き出してしまえば、コーンポタージュも完食完了。
満足な息を吐いて、自販機に寄りかかる。ポケットから汁粉を取り出し缶を開ける。夜空を見上げ、飲み口からふわふわと上がる甘い湯気にゆっくりと唇を寄せる。
(飲み終わったら、)
そうしたら帰ろう。
それまで、ここで星を見ていよう。
夜のどこかから流れてくる、ひとや猫や鳥の気配に、真央は白い息を吐き出す。空に輝く星月を眺め、汁粉を啜り、また空を見上げて、――月影にギターケース背負うて歩く、黒髪をおさげにした女性と目が合った。
「こんばんはなのだ、市子ちゃん!」
明るい自販機の前から、見知った少女にどこまでも元気な声を掛けられて、
「……よう、真央」
獅子島 市子
は夜空の下、静かに微笑む。
「良い夜なのだ♪」
弾む口調で駆け寄ろうとする真央を片手で制しようとして、市子はその手でギターケースと一緒に担いだ荷で詰まったズタ袋を揺すり上げる。子猫のように寄ってくる真央から視線を逸らす。
「すごい荷物なのだ、どこかへお出かけなのだ?」
「……んん」
逸らした視線の先に回りこまれ、何でもないようにひょいと覗き込まれ、市子は頬を引っ掻く。そっと息を吐き出し、いつだったかの結婚式に従姉妹を演じて、その後も幾度となく縁を得た少女を見やる。
「あたしな、」
唇を開こうとして、ズタ袋のポケットに放り込んでいたスマートフォンが鳴動した。
「あー、ごめん」
「ううんなのだ」
真央に断り、スマホ画面を開く。届いたメールの文面を目で追い、唇をぎゅっと結ぶ。
(しょーがねーね。まだ時間あっし)
スマホをポケットに仕舞う。ケース越しにギターを軽く叩く。
それに、渡すものもある。
不思議そうに首を傾げる真央をもう一度見、笑う。
「じゃーな、真央。元気でな」
「またねなのだ、市子ちゃん」
屈託のない笑顔を返してくれる少女に手を振り、市子は月影を辿って旧市街は参道商店街を目指して歩き始める。
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阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年07月27日
参加申し込みの期限
2015年08月03日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年08月03日 11時00分
参加キャラクター一覧
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