this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
自動販売機の前
<< もどる
1
2
3
4
5
…
9
つぎへ >>
寝子島図書館でのバイトを終えて外に出てみれば、鮮やかな秋の夕暮れ。黄昏の茜色は、空を見上げて歩くうち、みるみる宵闇の藍に染まる。
暮れて行く旧市街の町並み、ぽつりと光を灯す自販機を目にして、
篠木 昴
は大股に迷い無く歩いていた足をふと止めた。
「昴さんっ!」
足を止めると同時、背後から女性の声が掛かる。つい先ほどまで図書館内で耳にしていた聞き慣れた声に、昴は動じぬ茶の瞳を巡らせる。
黄昏の町に長い黒髪をなびかせ、小柄な女性が懸命な足取りで駆けて来る。
「伊織さん」
落ちついた声で名を呼ばれ、
雪代 伊織
は黄昏の紅色した瞳を笑みに細めた。白いスカートの裾を揺らし、昴の前に立ち止まる。弾む息の中で笑い、胸を両手で押さえる。
「なんか飲みたいものはないですか」
年下のバイトの学生さんに自販機の缶ジュースを示され、伊織は紅色の瞳を輝かせる。ここで彼に缶ジュースのひとつでもご馳走すれば、いつもお世話になっている三歳も年下の学生さんに、今日こそ年上らしい行動ができる。
「ここは私が!」
頭ひとつぶんは高い昴の隣に並び、伊織は少しでも年上らしく見えるようにぐっと背筋を伸ばす。張り切って財布を取り出し、中身を確認して、
「……ご、ご馳走になります」
二千円札しか入っていなかった財布をそっと仕舞って項垂れる。
(悔しいです!)
ほとんど涙目で小銭と千円札しか受け入れてくれない自販機を睨みつける伊織を横目に、昴は何食わぬ顔で小銭を投入する。無糖のコーヒーを選んでボタンを押したところで、ポーカーフェイスが崩れた。本気で悔しがる伊織のむくれた顔があまりにも年上らしくなくて、ほんの僅か、頬が緩む。
「まあ、鯛焼きじゃないけど偶には奢りますよ」
偶には、を強調すれば、伊織は素直にこくり、少女のように頷いた。
「ありがとうございます。頂きます」
伊織は温かいミルクティーを選び、取り出し口から出して小さな両手に包み込む。夕風の中を走って冷えた頬に押し当て、楽しげに微笑む。
プルタブを引き開け熱いコーヒーを口に含みながら、昴は黄昏の空を見上げる。
「冬空で飲む暖かい自販機の飲み物もいいものです」
ついでに自販機の近くで立ち話をするのも、
(悪くない)
「そうですね」
昴に倣って缶ジュースに唇をつけ、暖かな息を零す伊織の黒髪を風が揺らして過ぎる。さり気なく風上に立ち風除けになりながら、昴はコーヒーの温もりを楽しむ。気がつけば、温かい飲み物が嬉しい時期になった。
(鍋やシチューもそろそろ食べたくなる時期だ)
面白そうだからという理由で猫鳴館に住まう昴は、館の食事班を務めている。温かいものを作れば、館の欠食学生たちはきっと喜ぶだろう。
(おでんもいい)
海や川で釣りあげてきた魚を捌いて突っ込めば、きっといい出汁も出る。
(スーパーで黒はんぺん、売ってるかな)
出身地である九州からこちらに来る際に美味さを知った食材を思い浮かべる。本場の静岡は隣の県ではあるけれど、探せば見つかるかもしれない。
缶紅茶を心底美味しそうに味わう伊織の隣、夕飯のメニューについてつい真剣に思いを馳せていて、
「あ、そういえば」
ふと、最近傍らの女性と交わした約束を思い出した。
「伊織さん、そういや何かこの時期作れるようになりたいものとかってありますか」
「お料理の稽古、ですか?」
伊織は熱い紅茶を飲みこんで目を白黒させる。
以前から昴に料理の稽古をつけてもらっているのはいいが、成果といえば、
(と、とりあえずお米が炊けるようになりました!)
いまいち、というよりも甚だ芳しくない。
「ごっ、ごめんなさいごめんなさい、ちゃんと練習します!」
どこか慌てた様子の伊織に、昴はちょっと首を傾げる。どうやら上達はしていなさそうだ。
「お教えする約束しましたし、好きなものを言ってくれていいですよ」
「あ、ありがとうございます!」
深々と頭を下げて、伊織は黒い睫毛を伏せる。少し悩んで、思い切ったように顔を上げ、また顔を伏せる。唇を開きかけては閉じ、決意の顔をもたげる。
「あの、昴さん……」
「はい」
もじもじと悶える伊織に、よほど難しい料理なのかと身構えた昴は、
「殿方を喜ばせるにはどのようなものがよろしいのでしょうか」
顔を真っ赤にしつつ真剣そのものの表情で恐る恐る相談してくる伊織の言葉に思わず噎せる。
「ああっ、大丈夫ですかっ」
「びっくりした、だけです」
小さな手で背中を擦られ、昴は笑う。口元を押さえ、小さく咳払いする。
「なんというか古風な言い方ですね、殿方」
帰国子女なせいか、彼女は自分から見れば時折ひどく古風な物言いをする。
「そ、そうでしょうか……」
「悪くはないですよ」
肩を落とす伊織に、昴は気にするなとばかり首を横に振る。魅力にこそなりはすれ、欠点などにはなるまい。
(男性が好きで伊織さんにも作りやすい……)
「前に読んだ本には肉じゃがやカレーなどがよい、と書いてありましたが……」
伊織は例によって古めかしい本の知識を遠慮がちに披露するも、
「……ビーフシチューかな」
「美味しそうですよね!」
現役料理番の意見には敵わない。力いっぱい頷く。
「料理番組とかで出るようなとろとろのお肉が目玉のものより、薄切り肉を使った簡単なのにしましょう」
コーヒーの残りを飲みつつ、昴は料理の手順に頭を巡らせる。贔屓目に見ても料理が得意でないバイト先の先輩でも短時間で簡単に出来て、尚且つ見栄え良く仕上げられるようにしなくては。
「野菜を大きめに切って入れると目に中々楽しいものになりますよ」
頭の中でビーフシチューを作り終える料理上手な昴の傍ら、料理下手な伊織は薄切り肉をそのまま鍋に入れるべきか切り分けるべきか、そもそも鍋をいつ火に掛けるべきか悩んで頭を混乱させる。
「……伊織さん?」
「……その、」
昴から心配そうに顔を覗き込まれ、伊織は缶を包み持つ両手にぎゅっと力をこめる。
「お慕い申し上げている方に、少しでもお礼がしたくて……」
「ああ」
頬を赤らめて俯き必死に言い募る伊織に、昴は一見鋭くも見える瞳を和らげる。
「……ですから、もし宜しければ一緒に考えていただけないかなぁ、とか」
図々しいお願いを、と伊織は口ごもる。華奢な肩がますます小さくすぼまる。
伊織の言う『お慕い申し上げる方』を、昴はよく知っている。
下手な高校生カップルよりも初々しい年上二人に、昴は思わず目を細める。今までに出会ってきたどんな年上の人間とも違う。
(全く、この二人は)
「話をしてたら久しぶりに作りたくなってきた」
縮こまる伊織の背を伸ばしたくて、昴はことさらに明るい声を出してみる。
「といっても寮は既に献立決まってるだろうし……」
「ビーフシチューをお作りになられたいのですか?」
不思議そうに見上げてくる伊織と視線を合わせ、
「そうだ伊織さん、買い物に付き合ってくれたら御馳走しますよ」
昴は力強く頷く。話し込んでいるうちに暮れなずんできた空を見上げ、ちらりと申し訳なさそうな顔をしてみせる。
「後ついでに台所をかしてくれると嬉しいなぁ、なんて。流石に厚かましいお願いですかね」
「……!」
こちらから『お願い』をした途端、しょぼくれていた伊織の瞳が瞬く間に輝いた。
「とんでも御座いません、どうぞ使ってください!」
「ありがたい……!」
正直なところ、断られることも頭にあった。だから躊躇いのない伊織の言葉と屈託のない表情は嬉しかった。これで作りたいものが作れる。
「ついでに今日作り方を覚えちゃいましょう、ビーフシチュー」
「はいっ!」
「そうと決まれば早速材料の買い出しだ。これ飲みきったら行きましょう」
「はい!」
コーヒーの缶を傾ける料理の先生と同じように、伊織は紅茶の缶をなるべく急いで空にする。
「行きましょう、昴さん!」
空っぽの缶を自販機横の缶入れに捨て、急き込んで言えば、昴は楽しげに微笑んでくれた。その笑みが年下の子供に向けるようなものに見えて、けれど今はそんなことよりも昴の申し出が嬉しくて、伊織は満面の笑みを昴に返す。
缶を捨て、先に立って歩き始める昴の広い背中を追う。背の高さが違うからか、彼の足はゆっくり歩いているように見えて速い。
(私より年下なのにずっとしっかりしていて、)
黄昏の光の中、小走りに歩を進める。年上なのに、とちょっとの不甲斐なさが胸にあるにはある。年下の彼に対して世話を焼くことよりも、こうして焼かれることの方が多い。今のように。
(……背中を押してもらうことも)
けれど、それよりも暖かな気持ちの方が今は強い。
(私ももう少し、きちんとしませんと)
甘い紅茶の温もりに似た優しい温もりに、伊織は笑みを深くする。昴の隣に追いつき、肩を並べる。
(だって私も、貴方の支えになりたいってずっと思ってるんですから)
年下ながらしっかり者で、一人が好きなくせに面倒見のいい少年の横顔を見上げる。そっと、微笑む。
(ね、昴さん)
<< もどる
1
2
3
4
5
…
9
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
自動販売機の前
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年07月27日
参加申し込みの期限
2015年08月03日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年08月03日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!