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寝子島高校
自動販売機の前
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星ヶ丘寮から一歩出た途端、眼鏡が曇った。
マフラーの内側に温かい息を吐き出し、
弓弦原 譲
は手袋の指先で眼鏡のフレームに触れる。外せばたちまち輪郭をなくす夜の高級住宅地を黒い瞳で睨み、白い息を吐き出す。
室内の温もりに慣れた眼鏡のレンズが晩秋の夜気に馴染むまで待つ。
寝付けないまま夜半を回って、夜の街に出た。これといった用事があるわけでなく、急ぐ理由もない。
気紛れに歩き始めながら、裸眼で空を仰ぐ。夜闇に呑まれ、星も月も定かには見えない。
瞳にかかる黒髪を払い、曇りの取れた眼鏡を掛ける。輪郭を取り戻した月が大きく欠けている。瞬くはずの星々は海から流れてきた群雲に半ば隠れている。
吐き出す息が白い。
夜の住宅街に響く己の足音だけを供に、当所もなく歩を進める。蔓薔薇伝う煉瓦塀や、終わりがけの秋桜が千切れそうに風に吹かれる庭擁する邸を横目に過ぎる。
(誰もいないな……)
静寂ばかりが冷たく降る街の片隅、店仕舞いしたマーケットの脇で煌々と光を放つ自動販売機の前に至って、ここまで緩めずに来た足を止める。首もとまできちんと釦を止めたコートのポケットから財布を取り出し、自販機に硬貨を投入する。
迷わず入手した缶コーヒーを片手、白い光を灯す外灯の下に立つ。
缶を開け、熱いコーヒーを口に含む。
眠れぬ理由は、容易く見当がついた。
胸の真中、居座ったまま消えない想いがある。
(……先輩)
常に前向きでバイタリティに溢れているあの人の笑顔と言葉に、幾度となく励まされてきた。
あの人が好きだというこの感情は、きっともう、どうあっても揺るがない。
出来得るなら、傍らでずっと見つめていたかった。
(でも)
見つめ続けてきたからこそ、分かる。
(先輩は……)
彼女は、己の友人が好きだ。
友人も、彼女に恋をしている。
先輩と、友人と。互いの傍らに居るからこそ、痛い程によく解る。ふたりの間に交わされる眼差しも、その眼差しに込められた互いへの想いも、――己の、どうやっても彼女に届くことのない一方通行の想いも。
コーヒーの苦さばかりが口に広がって、思わず眉間に皺を刻む。
(邪魔者の俺がいなくなれば全て丸くおさまる)
父の愛人であった母の死後、本家に引き取られ、本妻から疎まれつつ暮らして居た頃に抱いた思いと同じ思いを、けれど今回は彼女と友人を想うが故に思う。
そうすれば、二人は何の障害もなく幸せになれる。
そう信じて、割り切った。
(はずだった)
フラれても構わない、悔いを残したくない。
(そんなのは大嘘だ)
いつか口にした言葉を切り捨てる。格好悪い本音を直視したくなくて、
(かっこつけて強がっていただけだ)
温もりの残る缶を両手に包む。冷静ぶって背筋を伸ばし続けてきたけれど、本当の己はひどく弱い。
本当は、彼女を独り占めしたかった。
本当は、彼女に想われる友人が妬ましかった。
本当は、彼女に想いを告げたくなどなかった。曖昧で温い、友人の枠に収まっていたかった。たとえ己の心を隠しても。そうすれば傷付かずに済む。
想いを重ね合うふたりを祝福したかった。同時に呪わしかった。想い想われるふたりがどうしようもなく羨ましかった。
胸に渦巻く種々の感情を抑え切れず、相反する感情の板挟みに身動ぎも出来ず、眼鏡の奥の黒い瞳が歪む。
想い合う二人を見続けてきたからこそ、解りたくなくとも解る。彼女には己よりも友人の方が似合う。
(あいつならば)
諦念に近く、息を吐く。
(きっと先輩を幸せにできる、末永く支えていける)
頭ではわかっていても、胸の内、己にも整理仕切れぬ思いがぐるぐると激しく渦巻く。でも、だけど、と腹の底で己自身が喚いている。
(とんだ意気地なしめ)
譲は己自身に歯噛みする。
要は初めて好きになった人にふられる覚悟ができていない。それだけだ。
今の関係が決定的に変わってしまうことが恐ろしかった。
強くなどない己の本性を知れば、あの人はどう思う?
変わらず笑顔を向けてくれるだろうか、それとも幻滅して去っていくだろうか。
もしも背を向けられるとしても、
(……逃げてちゃだめだ)
嘘を吐いたまま二人と馴れ合うのはずるい。
己の心を偽り続けることは辛いが容易い。けれど、
(前は進めない)
そのためには、ドロドロと鬱屈したこの感情を清算しなくてはならない。本当の気持ちを伝えなくてはならない。
欠けた月を仰ぐ。缶の底で冷え切って苦いばかりのコーヒーを飲み干し、空缶を握り潰す。
(前に、進まなくては)
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あとがき
担当マスター:
阿瀬春
ファンレターはマスターページから!
お待たせいたしました。
自動販売機前での一幕、お届けにあがりました。
ちょっと寂しいお話も、なんだか切ないお話も、うっかり一触即発なお話も、のんびりゆったりなお話も、どきどきしそうなお話も。
自販機の前での色々なお話、書かせてくださいましてありがとうございました。とても楽しく書かせていただきました。
ご参加くださいました方も、読んでくださいました方も、本当にありがとうございました。
またいつかの機会にお会いできましたら、とても嬉しいです。
それではまた、です。
ありがとうございました。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年07月27日
参加申し込みの期限
2015年08月03日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年08月03日 11時00分
参加キャラクター一覧
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