【＃20　猫に対する人間の依存症についての問題提起】

　ボクとしたことが、ウッカリですニャ。
　スミャホを落としてしまったのですニャ。
　そしてまさに今、そのスミャホを人間に拾われてしまったのですニャ。
「スミャートホン？　インターニャット？　かぎしっぽオンニャイン……！」
「さっそく、わくわくしてるね。夏朝」
　拾ったのは恵御納 夏朝ちゃんと、恵御納 夏夜ちゃんですニャ。
「夏夜ちゃんだって。ねえ、ジョニーくん、だったよね……ちょっとだけ、見てもいい？　見てもいいかな……！？」
「しょうがニャいですニャア。ちょっとだけですニャよ？」
　決して、人間にスミャホを見せて反応を観察してみよう、ニャんて思ってないですよ？



　ボクは常々、考えておりますニャ。
　『人間は、猫に依存しすぎではニャいのか？』と。
「わあ、懐かしい！　見て、この映像……雨宮校長の子猫を探したときの！　かわいい！　小っちゃい……！」
「この子たちも、今では立派に成猫だよね」
「うん、元気してるよ。たまに校長先生のところに会いに行くし」
「この映像の夏朝は、なんというか。うん。トんでるね」
「わああ、猫の発作が起きたときのやつ……！　こんなのも撮ってたんだ？　すごいね、インターニャット……」
「本当にね。あ、『ねこ』だ。なんだかんだと、彼らとも長い付き合いだね」
「う～ん、やっぱりかわいい……！」
　見てください。夏朝ちゃんと夏夜ちゃんの、このデレッデレなお顔を！
　人間は猫と見れば寄ってくるし、猫がいれば幸せなのですニャ。隙を見せれば触りたがるし、ともすればおいしいごはんやおやつをチラつかせてまで留まらせようとするのです。頼むからもうちょっといっしょにいておくれよォ～！　と情けなくみっともなく、ボクらに懇願するのですニャ。
　人間って、ボクらのこと好きすぎニャい？　ちょっと尋常ではニャいですよ？
　これはもう、依存症ですニャ。すべての人間は、猫依存症を患っているのですニャ！
「あ。この映像……」
　寝子島で人間たちと共存する我々現代猫としては無視できニャいこの課題を、ボクはここに問題提起して……んニャ？
「あの時も、猫に会ったなぁ」
「うん。この時は、おはぎもいっしょだったね」
「……僕たちが、分かれて、再び出会った時も」
「ん。テオ君とミラちゃんにも、お世話になったよね」
「なんか、映像を見れば見るほど……僕たちのまわりには」
「いつだって、猫がいっぱい。だね」
　……ま、そうですニャ。
　人間はいつだってフシギ事件に巻き込まれて、飛びこんで、それを解決して帰ってくるんですニャ。コッケーですニャ。ヒョーキンですニャ。
　なぜ人間は好き好んで、痛い目を見たり怖い思いをするのでしょうか？
　答えは明白ですニャ。そう、寝子島に暮らす猫を守るためですニャ！
　人間は、猫がいなくなったら生きていけませんからニャー。依存症ですからニャア。そりゃもう必死に守るというものです。
　そして猫を守ろうとする時の人間ときたら、すごいパワーを発揮したり、奇跡を起こしたりしがちなんですニャ。


　猫パペットくんも付喪神になっちゃうくらい、すごいパワーなんですニャ。
　そのくらいの大きなパワー、びっくりするような奇跡。フシギ事件もトラブルも、ツライこともイヤなことも、大変なことも、逃げないで立ち向かって。最後には、ひっくり返してしまうんです。
　だから、人間は……スゴイんですニャア。
「ジョニーくん、スミャホありがとう！　猫がいっぱいで、僕、幸せ……」
「はは、そうだね。僕も楽しかったよ。インターニャットって、いいもんだね」
「ですニャ。楽しいですニャ」
　だから、人間って……面白いんですニャア～。



　さて、今夜の取材はここまでにして、ボクもおウチに帰るとしますニャ。そろそろ、ボクのディナーが用意されてるはずですニャ。ヒメコは上下関係というものをキチンと分かってますからニャ、ボクによく尽くすのですニャ。
　ボクが飼われてるんじゃニャいかって？　ニャっはっは！　そんなバカニャ。

「にゃ～」
　あ！　あそこにいるのは……恵御納・アン・おはぎさんですニャ！
　おはぎさんは、さっきの夏朝ちゃんと夏夜ちゃんのおウチにいる猫ですニャ。
　ニャは～、こんニャところで会えるなんて、光栄ですニャ！
「にゃ～ん」
　は、はいですニャ！　こんばんはですニャ！
「うにゃ～？」
　はいですニャ、お仕事の帰りですニャ！　今日もがんばって、人間を取材してきましたニャ！　今回は、夏朝ちゃんと夏夜ちゃんを取材したんですニャ！
「にゃあ～」
　激励ありがとうございますニャ！　はいっ、これからもがんばりますニャア～！
「にゃ～ふ。うにゃあ」
　……はニャ～。カッコよくて、綺麗で、かわいいですニャアおはぎさんは。
　ボク、おはぎさんのこと、尊敬してますニャ。ニャんたっておはぎさんは、レンズ猫のセンパイなのですニャ！　あのきらきら輝くレンズの瞳、魅力的なアンテナしっぽ。夜空みたいになめらかな黒い毛並み……ステキですニャア～。
　あれ、コメント欄のみニャさんには、話したことありませんでしたか？　ボクのパパはふつうの寝子島の猫ですけど、ボクのママはレンズ猫なんですニャ。
　ボクが記者猫になったのは、おはぎさんやボクのママや、レンズ猫たちのことを、ニャットの動画で見たのがキッカケだったんですニャ。ボクやレンズ猫が、見たものを映像に残したり、送信したりできるフシギパワーを持ってるのには、ニャにか理由があるんじゃニャいか？　って思ったんですニャ。
　そう……世の中のことを、人間たちを面白おかしく取材して、寝子島の猫たちに広く知らせることがきっと、ボクの使命とゆーヤツじゃニャかろうか、と！　その過程でいっぱいいいニャとスーパーニャットがもらえるなら、こりゃもー天職じゃニャい！？　と！
　おかげで毎日、楽しくお仕事させてもらってますニャ。なんて、ボク、まだまだ新米記者猫ですけども。
　これからももっともっと、人間たちの楽しい動画、オモシロ動画、スゴイ動画を配信していけたらニャ～と思ってますニャ。
　視聴猫のみニャさん、今後とも、よろしくお願いいたしますニャ～！



　ちなみに夏朝ちゃんと夏夜ちゃんは、あれから会うたび、オヤツをくれますニャ。
「あ、ジョニーくんだ……！　夏夜ちゃん、『ささみだニャン』あったよね？」
「にぼしとカリカリもあるよ。ジョニーくん、食べる？」
　ボクを餌付けしてるつもりですかニャ～？
「いただきますニャー」
「やったね。食べてる間、撫でさせてね……？」
　まったくもう。
　人間ってばボクらのこと好きすぎて、困っちゃいますニャ！