【＃18　イチャイチャしないと出られニャい部屋】

　今日は、ある実験の模様をお届けしますニャ。
　実験対象は、こちらの二組の人間ですニャ。
「ここは……どこだろう？　朱真さん、ケガや体調に異変はないか？」
「ああ、大丈夫だ。またなにか、奇妙な現象に巻き込まれたかな」
　一組目は、寒河江 和光くんと葉月 朱真ちゃん。
「尚輝先生……なんでしょうか、これは……？」
「ふむ。奇妙な部屋ですね。配線がそこらじゅうに這っていて、テレビモニターがいくつも」
　もう一組は、御巫 時子ちゃんと五十嵐 尚輝くんですニャ。
　さて、実験の概要を説明しますニャ。
　人間の『レンアイ』『つがい・カップル』が必ずしも見た目や、本人たちの言葉どおりではないことを、ボクは学習しましたニャ。あっきらかにそぉーニャのに、テレガオでモジモジしてるのに、本人たちは違うってゆーんですニャ。ではどうやって、『カップル』を見分ければいいのでしょう？
　『カップル』やそれにともなう『恥ずかしい』『コイスルオトメ』などは、いいニャ！　やスーパーニャットのもとですからニャア。ボクはもっともっと、いいニャが欲しいのですニャ！　チャンネル閲覧数をふやしたいのですニャ～！
　そのためには、より『カップル』『恥ずかしい』『レンアイ』について知る必要がありますニャ。これは、そのための実験なのですニャ！
「おや？　あそこの壁に、何か書いてあるな」
「……日本語、ですね」
　さっそく朱真ちゃんと時子ちゃんが、気づいたみたいです。
　壁には、こう書いてあるのですニャ。

『イチャイチャしないと出られニャい部屋』

　最初は『交尾しないと出られニャい部屋』にしようかと思いましたが、コメントのみニャさんに止められました。ニャカウント止められるぞって。
「出られニャい。犯人は猫でしょうか？」
「はは。面白い発想ですね、五十嵐さん」
「いえ、当然の推理ですよ。寒河江さん」
　あれ、ニャんで猫ってバレたですニャ！？
　まあいいですニャ。ここに用意した二組を観察して、人間の『カップル』とはニャんニャのか、見極めてやりますニャ！　いいニャとスパニャががっぽがっぽ、ですニャ～！



　部屋には人間のオスメスが『イチャイチャ』に使うあれこれを用意してみましたニャ。
「……朱真さん。これはなんだろう？」
　和光くんと朱真ちゃんは、『イイナズケ』だそーです。さあまた猫にはわかんニャい単語が出て来ましたニャ。イエどうしの約束で、ケッコンを決められた間柄。とかニャんとからしいですけど、ケッコンてなんですかニャー。
　ともかく二人は、『カップル』ということで間違いニャさそうです。
「どれどれ？　５０インチのテレビにポータブルブルーレイプレイヤー。映画のディスクがたくさん……いかにも人をダメにしそうなビーズクッションの椅子は一人用。サイドテーブルのドリンクはグラスが一つに、ストローが二本……」
「どういうことだろうか」
「まあ、うん。二人で使え、ということなんだろうな……」
　朱真ちゃんがちらと確認しても、壁の文字は変わりませんニャよ？
　思う存分、『イチャイチャ』するですニャ！　カップルってニャんニャのか、ボクに見せてくださいニャ！
「ええと。その……ど、どうしようか和光さん？　なんだかお膳立てをされてるみたいだが、このとおりに行動するというのもシャクというか。だから、私は……」
「朱真さん。私はかまわないよ」
　と、ためらう朱真ちゃんをよそに、和光くんはクッションにすとんと腰を落としましたニャ。あれ、気持ちいいんですよニャア。もこもこでふわふわで、あそこで寝るとよく眠れますニャ。人間だって、あのクッションには逆らえないはずですニャ。
「私はむしろ、君とそうすることを望んでいる。映画でも見ようか。私はあまり詳しくないから、朱真さんが選んでもらえると助かる」
「あ、ああ。そうだな。以前友人に勧められたものがあったから、それを見ようか」
　朱真ちゃんは真っ赤なお顔で（いいニャゲット！）、和光くんの足の間に座りましたニャ。これは、『イチャイチャ』じゃニャいですか？　イチャイチャですよニャー！
「じゃあ……そうだな。これを見よう」
「『エターニャル・サンシャイン』か、どういう映画なんだ？　ジャンルは？」
「さ、さあ？　そこまでは友人には聞かなかった。ホラーか、アクションか……もしかしたら恋愛映画、かも？」
「そうか。なんにせよ、楽しもう」
　映画が始まったら、ふたりとも夢中で画面に見入って……るフリをしても、分かりますニャ。
　ぴったりくっついて、内心ドキドキ、ってヤツですニャこれ。
「朱真さん」
「うあ、うん？　な、なんだ？」
「その……実はこの姿勢が、ちょっと辛くて。君につかまっていても、いいだろうか」
「つかまる？　構わないが……うわぁ！？」
　おお！　和光くんが朱真ちゃんを、むぎゅっとしましたニャ！　これはどっからどう見てもイチャイチャですニャ！　カップルですニャー！
「すまない。こうしていないと、転げてしまいそうで」
「か、構わないが？　別にこのくらい、なんともないんだが？」
　ふたりともお顔が真っ赤っかで、ユデダコのようですニャ。
　ほら、『カップルドリンク』もふたりで飲んでくださいニャ。……飲みましたニャー！
　いいニャがいっぱいでほくほく、ですニャ！

脈絡ニャいけど、朱真ちゃんのいいテレガオの画像も張っときますニャ
※まとめニャログ『人まとめ』から転載


　さて、時子ちゃんのほうは、どうなってますかニャ？
「尚輝先生……ゲームがありますよ。これで遊んでみましょうか……？」
「ゲームですか。あまりやったことはないですが」
「スーパーニャリオは、どうですか。誰でも遊べますから……」
　この時子ちゃんと尚輝くんがまた、ボクには分からないのですニャア。
　セイトトキョウシ、というヤツです。どう見てもカップルニャのにそうじゃないっていう、むずかしいヤツですニャ。コメント欄のみニャさんは、『静かに見守るのが華ニャぜ』って言ってますけど、わっかんないですニャア。
　『ジョニーくんにはまだ早い』？　『オトナになったら分かるニャ』？
　ボクは、今知りたいんですニャ！　スパニャがほしいんですニャー。
「おっ、と、と。む、難しいですねこれ、子どもはこんなゲームで遊ぶんですか」
「私もあまり、得意ではないです……ああ。また穴に落ちてしまいました」
「そこは、こうしたらどうですか。ほら、こうやってジャンプして」
「わ。尚輝先生、お上手ですね……」
「だんだんコツが分かってきました。トライ＆エラーを繰り返して学習していくのは、実験と同じですから」
「さすがです……それで、尚輝先生？」
「はい？　なんでしょう、おっと、ここの敵は手ごわいですね。ここをこう、通り抜けて」
「私たち、イチャイチャ……できてる、でしょうか？」
「……ええと。そう、ですねえ」
「もう少し、そちらに……寄っても、いいですか？　画面が見えにくい、ので」
「ええ。はい、どうぞ。見えにくいのは、困りますから」


　カチカチカチカチ。ゲームの音だけが響いてますニャけど、ボクには分かってます。だって、ふたりのお顔はほんのり赤色ですニャ。まぎれもなくこれは、イチャイチャですニャ。
　でも、カップルではニャいそうです。ニャんで？
　わっかりませんニャア。
　ちなみに時子ちゃんと尚輝くんの映像は、かぎしっぽオンニャインでもかなりの人気ですニャ。フシギ事件の様子をおさめた配信も好評です、これとかこれとか。有料配信ですので、ぜひ会員登録をお願いしますニャ。
「！！　あ、の。尚輝先生？　そんなに、近く……」
「すみません。画面が見えにくくて。その、ほら。この角度がちょうどいいんですよ。イヤ、でしたか？」
「……ヤじゃ、ないです……」
　ニャーんでこれで、付き合ってニャいんですかねえ？
　人間って、わっかりませんニャア。



　実験終了！　ほどよくイチャイチャが見られて、いいニャ！　もたくさんもらえましたので、ここらでネタバラシといきますニャ。
「……撮ってた、のか？　しかも、猫たちに見られてたって……？」
「ははは、これは困ったね。どうしようか、朱真さん？」
「消しては、くれないだろうな。はあ、まったく。私にもプライドというものがあるんだけどな……」
　でも朱真ちゃんも、まんざらでもニャかったでしょ？　イチャイチャできて。
「それはまあ、うん。そうかもね」
「あの……」
　わ。時子ちゃん、どうしましたかニャ？　お顔が近いですニャ。
「私と尚輝先生の映像、たくさん、あるんですか……？」
　そりゃもう、ありますニャよ？　たくさん、たくさん。
　見ますかニャ？　映しますニャよ。
「ぜひ……！　尚輝先生も、いっしょに見ましょう？」
「僕と時子さんの映像ですか。なんだか恥ずかしいですね。しかし、まあ……興味はありますけど」
　そんなわけで、実験の結果はいまひとつ。カップルとカップルじゃないのを見分けるのは、やっぱりむつかしーですニャけど。
　人間の『スキ』『恥ずかしい』『レンアイ』『てれがお』を見てると、確かに、うん。ボクもニャんだか、ぽかぽかしてきますニャ。
　まだまだ、研究の余地アリですニャ。これからも人間の『レンアイ』や『イチャイチャ』をがんばって撮影していきますニャで、かぎしっぽオンニャインをよろしくですニャ！