【星幽塔】第一階層　ウィッチ・ゴーズ・サジタリオ｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ウィッチ・ゴーズ・サジタリオ

　獅子目が控室に戻る途中、志波武道が渋い顔で廊下を何往復もしていた。
（志波も叙勲式に出るようだが、まだ踏ん切りがつかないか……）
　無理もない。自身とて、ついさっきまで悩んでいたのだから。
　対して、狼狽えて廊下をウロウロとする志波は、内心で別の事が気掛かりだった。
（騎士の称号や勲章か……。御城まで来てみたものの、迷うな……。俺には過ぎたもののもするけど、お城側の面子を考えたら受けたほうがやっぱりいいだろうな。それよりも……）
　うーん、と唸りながら天井を見上げる志波。
（フランチェスカさんが心配だなぁ。そういや前回、開戦前はあれだけ息巻いていたけど、いざ戦ってみたら驚くほど冷静沈着だった……。悠月くん、どうやって説得したんだ……？）
　首を捻りながら志波が振り返ると、獅子目が心配そうに彼の様子を見守っていた。
「うお、いたなら声掛けてくれてもイイジャーン☆」
　志波は咄嗟に『普段』の明るい口調に戻る。
「すまない、脅かすつもりはなかった。なんだか、志波が思い悩んでいるようだったからな……」
「アチャー、見られてた？　お見苦しいところを見せちゃったぜぃ……」
　苦笑いする志波。彼は思い切って獅子目に尋ねてみた。
「悠月くん！　前回の戦いでフランチェスカさんをいったいどう説得したの！？」
「え、ああ、俺はフラン嬢に『どっしり構えて笑ってくれ』と言ったんだ」
「なるほどー……、どっしり構えて笑う、か」
　他にも色々とあったのだが、肝心な話の肝はそこであったことは間違いない。
「さーんきゅ、悠月くん！　ちょっとフランチェスカさんのところへ行ってくる！」
「フラン嬢なら、式典会場にいたぞ」
「分かった！　んじゃ、叙勲式頑張ろうＺＥ☆」
　志波は小走りで中庭へ向かっていった。
　その後、フランチェスカは志波の激励を受け、改めて彼に意気込みを語るのだった。
　式典への熱気はますます盛り上がってゆく。