【星幽塔】第一階層　ウィッチ・ゴーズ・サジタリオ｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ウィッチ・ゴーズ・サジタリオ

　叙勲式参加者が会場に足を踏み入れると、多くの市民たちが拍手と歓声で出迎えてくれた。
　ありがとう、という感謝の声とおめでとうと言う祝福の声の中、彼らは野外に特設された祭壇の前に設置された椅子に腰を落とした。
　祭壇脇にはフランチェスカが純白のドレスと宝石類が沢山付いた装飾過多な弓を携えている。
　恐らくあの弓は儀式用なのだろう。
　更に、来賓席にはサジタリオ領内外の諸侯、並びに有力名主たちが控える。
　その中に、月影塔第一階層『ジェミニ・マキナ・レギオン』大元帥にして『かげびと』の女王、そして人形の魔女であるラピス・ドール・マクレガーの姿があった。

　ダイアモンドで出来た２本の角、そして機械化された右腕と左脚はとても目に付く。
　さらに幼女とも言っても差し支えない小さな躰に反して、軍服と古ぼけた王冠、そして発せられる威厳と尊大さがラピスの異質さを物語っていた。
　この5000年も間、『ほしびと』たちは『やみびと』の存在は神話あるいは御伽話のなかで存在する空想の存在でしかなかった。
　日の光が届かない影の国に住まう、身体の一部が機械または無機物で構成されている種族、それが『かげびと』である。
　ゆえに、観覧者は叙勲受章者と同じくらい、ラピスに注目をしているのだ。
「ほう、我の姿が物珍しいか？」
　ラピスは自慢のダイヤモンドの角を誇らしげに観衆へ見せびらかす。
「今日はめでたい日じゃ、我の姿をよく目に焼き付けるのだぞ、平民ども？　だが、我よりも叙勲受章者たちへ注視してもらいたいものじゃがな？」
　会場に集う叙勲受章者たちへラピスは視線を向ける。
「馬子にも衣装、という言葉があるそうじゃが、なるほど、まさにその通りのようだな？」
　くっくっくっ、と彼らの正装を見て思わずニヤけるラピスであった。