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黄昏への訪問者たち
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見上げた空の、現には有りえぬと思わせる紅さに
朝鳥 さゆる
は黒い睫に縁どられた瞳をうっそりと細めた。暗い琥珀を思わせる瞳に空の緋が危うく映り込む。
前兆など、何もなかった。
気が付けばここに紛れ込んでいた。けれどそれは、
(いつものこと)
瞬きのうちに妖の跳梁跋扈する世界へと迷い込んでいて、さゆるは顔色ひとつ変えず冷めた視線を巡らせる。荒々しい熱気に満ちた草原を、まるで街中の雑踏を流されるかの如く過ぎる。
己の靴先を見下ろしていた何の感慨も孕まぬ瞳が、不意に周囲に沸き立つ歓声と怒声に僅か動いた。もたげた視線の先には、観客が作る人の輪の中、一心に殴り合うがしゃどくろとミノタウロス。
「お、姉ちゃんも見るか?」
痩躯ながら眼光鋭い老人に気安い声掛けられるまま、
「はいよ、ちょいと御免よ」
妙に隙の無い身のこなしの老人に導かれるまま、さゆるは気が付けば最前列の席に居た。
物の怪達が全身全霊でぶつかりあう度に沸き起こる大歓声にも眉ひとつ動かさず、無感動な眼差しを向ける大人びた容姿の少女を傍らに、
伊織 紘之助
は皺深い頬に男くさい笑みを刻む。
(気紛れに墓参りに来た、……と思っていたんだが)
いつの間にやら迷い込んだ妙な雰囲気の妙な場所で、伊織翁は白髪交じりの坊主頭を掻く。米寿に達しても、まだまだこの世は摩訶不思議なことばかり。
(……いや、夢だなこりゃ)
己を取り巻く世界をそう断じて、ぐるり、化け物共を見渡す。道の途に見つけてうっかり連れてきてしまった人らしき少女も居るには居るが、周りを闊歩し雄々しい歓声撒き散らすは人ならざる者ばかり。
その中に混ざって殴り合いの試合を観ているなど、近所の酒飲み仲間の誰一人として信じはすまい。
(白昼夢とは、俺もとうとう焼きが回ったかね)
困惑気味に眉間を寄せながら、にしても、と一対一の拳で語り合う化け物を見る。拳が交わされる毎に騒ぐ周囲の化け物共を見る。
(おーおー、楽しそうなことやってんじゃねぇかよ)
野蛮にすら思える空気は、古流の武術『庵流』の八代目家元たる紘之助にとって、どこか懐かしさすら覚えるもの。
「お?」
暁より暗い黄昏の空舞う一反木綿が撒き散らす札を宙に掴んで確かめれば、『がしゃどくろ』と『みのたうろす』と書かれたそれはどうやら掛札らしい。
「賭事もやってんのか、碌でもねぇな……」
呟く唇が心底楽しそうに歪み、伊織翁はカカカと声上げて笑った。どうせ夢の中とあらば、
(ちっと遊んだってバチは当たんねェよな)
非日常を前に戸惑い、その後呵々大笑する老人を視界の端に映らせるまま、さゆるは呼吸と瞬きだけを繰り返す。老人の戸惑いも、その後の大笑も、理解だけは出来た。ただ、彼の感情の変化に対しても、目前の非日常に対しても、何も感じられなかった。
眼前に広がる非日常な現実も、まるで薄く強靭な白膜に遮られているかのよう。どんな物事も、最早この摩耗しきった心には届かないのかもしれない。
己の心に対する認識にすら何の感慨も抱かず、ただただ目前の試合を無表情に眺める。
ミノタウロスの蹄の前脚に頭蓋掴まれたがしゃどくろが空気の軋むような悲鳴をあげる。勝利を確信したミノタウロスが勝利の雄たけびを上げたその瞬間、がしゃどくろの頸が外れた。勢いこんで仰向けに倒れるミノタウロスの首にがしゃどくろが噛み付く。
激しい悲鳴と共、大量の赤い飛沫が周囲に飛び散る。
「ぅおっ?!」
驚嘆まじりの歓声を上げ、飛んでくる血飛沫をひょいと軽く躱す老人の傍ら、さゆるは人ならぬナニカの血を頬に受ける。衣服に受ける。
熱帯びた血は、頬に触れた途端冷たくなった。
掌で血を拭う。喉元に込み上げる熱の塊にも似た思いの正体を探りもせず、さゆるは瞳を巡らせる。
場にそぐわぬ少女の様子を心配してか、ひらひらと降り下りてくる一反木綿に手を伸ばし、布の端を掴む。
己が今から行おうとしている、衝動的と言うにも余りにも唐突すぎる言動に己自身でも理解及ばぬまま、さゆるは紅い唇を開く。
「参加させて」
「大丈夫かよ、姉ちゃん」
半ばバラバラのがしゃどくろと満身創痍のミノタウロスが拍手喝采浴びて退場する様子を眺めていた老人が目を剥くのに、さゆるは小さく首を傾げた。
「……さあ?」
出場手続きをするため、一反木綿に連れられ拳闘場の胴元の前へと向かうさゆるを見送り、伊織翁は唇を歪める。均整は取れてはいるが、見るからに女性らしい華奢なあの身体で、どう戦うつもりなのだろう。
「止めりゃ良かったか」
「止まらないと思うよ」
穏やかな声に視線流して見れば、旧市街によく見る黒髪の少年が立っている。
「今日は」
「おう」
道端で出会ったときのような気軽な挨拶だけを残して、少年は化生の妖たちの作る輪の央に向かう。先ほどの少女を誰かに任せたのか、忙しく飛び回る一反木綿が撒き散らす掛札を掴んで確かめれば、対戦票は『
御剣 刀
』と『鬼童』。
「……ふゥん」
掛札を見下ろし、場の中央で相手と向き合う少年を一瞥し、伊織翁は愉快そうに唇を歪めた。
観客のナニカたちが沸く。
刀に対するは、黒牛の皮衣を頭から被った、刀と体格のそう変わらない妖。歓声に応じて皮衣を頭から落とせば、両のこめかみから隆起する黒い角があらわとなった。
夕空に掛札が雪片のように舞う中、刀と鬼は睨みあう。
(やってやるさ)
参加を胴元の天狗に伝えた折、試合は基本素手の殴り合いであると条件を呑ませられている。刀が常とする刀剣での闘いはここでは御法度。
(剣だけじゃない所を見せてやる!)
鬼の勝利を確信して好き勝手に喚き散らす観客の物の怪たちの声に一切構わず、刀は気息を整える。人とそう変わらぬ姿持ちながら、間違いなく人とは違う、獣のような力持つ相手を見据える。
開始合図代わりの法螺貝を一反木綿が空から降らせる。構える様子もなく相手が地を蹴る。
皮衣が宙に舞う。鬼の身を刀の視界から一瞬隠す。
視線の動きや爪先の動きも、重心のバランスや呼吸も、何もかも悉く関係なく、獣の形相で獣の如く、刀に向けまっすぐに飛びかかる。
「ッ?!」
攻撃の出始めに間合いに踏み込み相手の呼吸を潰そうとしていた思惑を外され、刀は息を呑む。けれど惑いはほんの一瞬。瞬きにも満たぬ間に、ほとんど無意識に戦略を組み直す。
笑みすら刻んだ相手の顔が迫る。大きくはない体全体を使うが故の鋭いぶちかましを、ふわり、まるで体重を感じさせぬ動きで横に躱す。体勢崩しながらの横殴りの乱雑でありながら鋭い拳は、刀が残した瞬きの間の逡巡の分だけ、刀の頬を浅く裂いた。
血が散るも、それは動きを止める理由にはならない。
身を捻る。相手の繰り出す拳を刀は掌で柔らかく受け流す。相手の力さえ利用して相手の死角に回り込む。宙を殴る手応えのなさに相手が焦れて吼える。焦れば焦るほどに乱れて大振りになる拳を、刀はまるで舞うように避ける。
弾丸じみた突進を紙一重に躱す。地面の草をつま先に抉り、相手が無理やりに首を巡らせる。
刹那、視線が交錯する。
鬼の瞳に映るは、紙切れのようにひらひらとした身軽さを一転、地面を重く踏みしめる刀の爪先。力を溜めるように捻られた刀の半身。
「これでも喰らえ!」
捻った体が戻る力を固めた拳に乗せ、相手の後ろにある空すら殴りつける勢いで相手の顎を打ち抜く。
刀の渾身の一撃を受け、鬼が地に伏せる。
「っ、……」
知らず詰めていた息を吐きだし、刀は足元に転がる鬼を見下ろす。倒れた対戦相手はもう動かない。
「っし!」
固めた拳を解かぬまま、刀は己の敗北を決め込んでいた観客たちを見回す。堪え切れない笑みと、
「うぉー!」
叫びと共、拳を高らかに振り上げる。
黄昏の空気震わせ、熱帯びた歓声が巻き起こる。
「痛っ……ちょっと張り切りすぎたな」
頬の傷にびりびり響く歓声にちらりと顔顰め、刀は笑み零しながら場を離れた。傷の手当てを受けるために救護所に向かおうとする刀の背を、興奮した妖たちが賛辞込めてばしばしと叩く。空から舞い降りた一反木綿がお疲れさん、と金一封を押し付ける。
思わぬ勝者に沸く観客たちの中を、袴に襷掛け姿のさゆるは静かに歩く。胴元の天狗に参加を申し込んだ途端、その姿では動きにくかろう、と着替えさせられてしまった。足元だけは履き慣れた冬用ブーツではあるけれど、慣れない和装で存分に戦えるだろうか。
(……どうして)
己の血を流すための場に向かうさゆるの心にあるのは、凪のように静かな疑念ばかり。いざ戦いの場に立とうとしていても、何故己がほぼ初めての経験をしようとしているのか、己にも未だに理解できなかった。
(それにしても)
お三夜祭りの夜に出会った井戸底に潜む女と言い、この黄昏の空の下に棲む化生の住人たちは皆どこかお節介だ。
「乗れ」
観客達の流れに半ば迷っていたさゆるを見かね、一反木綿が下りてきた。さゆるをその背に乗せ、拳闘場の央に連れだす。
「死なない程度にしろ」
短く告げて飛び立ち、掛札を撒く仕事に戻る布の物の怪を無言に見送り、さゆるは己の相手となるものへと視線を遣る。
「おいおいおい、大丈夫かよ」
恐れや困惑を一切感じさせない凛とした背中を見せる少女を見つめ、伊織翁は低く唸る。少女と相対するは、猿の頭に虎の手足を持つ獣。掛札が示す名は、『鵺』。
一方的て残酷な勝敗を予見してか、場の一方が静まり返り、血を見るを好む残忍な性勝つ一方が昂った喚声をあげる。
法螺貝の音が響き渡る。
空に響く音に背中を押されたように、女が慣れない仕草で拳を作る。仕掛けることもせず、向かうこともせず、ただ静かに己の前に四肢で立つ妖獣を見つめる。
拳に肌破られた経験もなさそうな女と向き合って、けれど妖獣は動かなかった。虎鶫の声で小さく息を零して、惑うように虎の前脚で地面を引っ掻くばかり。
さゆるは静かに呼吸する。
体を包んでいた膜が剥げ落ちるような、自分の中の何かが研ぎ澄まされてゆくのを感じる。
(あの時以来、かしら)
脳裏を掠めたのは、視界を覆い尽す白い霧。あの時霧の中から現れ出でた、己の記憶を奪った『鬼』。
己の命すら脅かすものを前に、胸が轟いた。
それが何なのかは考えもせず、さゆるは地を蹴る。猿の頭へ無造作に手を伸ばす。
わあっ、と悲鳴にも似た歓声が耳に響く。
歓声にも似た衝撃が腹に響くと同時、さゆるは己の身が宙を舞っていることに気が付いた。瞬きもせぬうち、背中から地面に叩きつけられる。
鵺の腕の一振りを腹に受けたのだ、と思い至るより先、眩暈が襲う。内臓がひっくり返るような感覚にえづいて咳き込む。
咳き込みながら立ち上がる。よろめきながら踏み出す。
勝ちが決まっているはずの鵺がさゆるに対し怪訝そうに不気味そうに呻く。腕の一振りで女は振り払える。尻尾の蛇で噛み付けば女は毒に倒れる。闘いにもならず、女を打ちのめすことができる。
女が近づく。観客の歓声に押されるように鵺が女に殴打を加える。蛇の尻尾を鞭じみてしならせ女を打ち据える。
「死にてェのか、姉ちゃん!」
客席から誰かの怒鳴り声が聞こえる。
そうかもしれない、ふと思う。
今この身を心を満たすのは、例えば破滅願望と呼ばれるものなのかもしれない。例えば死への強烈な欲求なのかもしれない。
そうでないのかもしれない、そうも思う。
(だって、)
一方的に殴られながら、さゆるは尚も立ち上がる。飽きず相手に向かう。
体中が痛かった。まともに開かぬ瞼をこじ開けてみれば、体中が血と泥に塗れていた。視界が赤いのは意識が砕けようとしているせいだろうか、額が裂けているせいだろうか。
(だって――)
もう立ってもいられない。
牙を剥き出した鵺の顎が迫る。避けなければ、全てを終わらせられる。
血まみれの顔で、さゆるは薄らと笑った。
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担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年12月29日
参加申し込みの期限
2016年01月05日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年01月05日 11時00分
参加キャラクター一覧
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