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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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【お三夜】秋の夜の訪問者たち
月の道を星のさざなみが彩る。
別れたときと同じ胡坐の格好で、ぼうやりと湖を眺める日暮の背中に、
「グレちゃん！」
後木 真央はタックルする勢いで駆け寄る。
「うわ何やあっ」
「ヒトバシラって何なのだ」
猩々面と真央から借りたタオルを膝の上に、うつらうつら居眠りしていたらしい日暮の凡庸な顔を、真直ぐ、怖じることなく見据え、真央は井戸端の女から聞いた言葉を口にする。
「向こうの奴らにはそう呼ばれとるな」
「ほんとにそれだけ？」
「意味なんか聞いてもしょもないで」
真央の真摯な瞳から逃れるように、日暮は面を掛けて立ち上がる。湖の向かいの森へと気遣わしげに視線を伸ばす。
「まだ誰も来やせえへん」
「心配いらないのだ」
そわそわと落ち着かぬ日暮に、真央は大事に提げて来た忍者焼き入りの包みを押し付ける。
「せっかく来たのだ、帰りにみんなで食べてほしいのだ」
「そらおおきに。せや、使うてしもて悪いけど、……次会えるかも分かれへんし、返さしてな」
お土産の代わりにタオルを受け取り、真央は少し俯く。
向こう側の世界の皆が大好きだった。何もせずに帰してしまうのが嫌で、だからお土産を渡して、けれどそれでは足りない気がした。
「どっちの世界でもいいから、……また会おうなのだ」
言葉にして、気がついた。別れるのが寂しいのだと。
もしかしたら、向こう側へ一緒に行ってしまいたいのかもしれないと。
「せやな、また会えたらええな」
俯く真央の背中を叩こうと伸ばした手を止め、日暮は面の頭をもたげる。暗い森の山道に向け、大きく手を振る。
「おお、こっちやあ」
湖に響く日暮の声につられて顔あげた真央の瞳に映るは、森の闇を退けて流れ来るいくつもの青白い鬼火。蒼炎に照らし出されて夜道を闊歩する単眼の老翁、老翁にエスコートされる長い黒髪に白着物姿の女、二人の頭上に飛ぶ鬼の頭と蛇の尻尾持つ鳥、不気味な鳥向けて橙の火花を口から吐き掛ける小鬼、はしゃぐ小鬼の足元でわやわやと遊ぶ人面犬や、かたちすら持たぬ怪しげなナニカ。
百鬼夜行の様相を呈する一行に紛れて、神木の巫女カンナと手を繋ぐゼロ・シーアールシーと宮祀 智瑜、妖の最中にあって泰然と歩く御剣 刀、猫のにゃーくんをオメンライダーのお面被った頭に乗せてはしゃぐ桜庭 円、一反木綿をマフラー代わりにする猫島 寝太郎、憮然とした表情を飽きず周囲に巡らせる津島 直治。そうしてそれから、百鬼夜行の空を横切る白鶴の翼。
「連れて来たよ」
着物の袖を翻し、音羽 紫鶴は日暮のもとへと舞い降りる。その腕に抱えてきた猫又を日暮に手渡す。
「おおきに、ほんま助かったわ」
だらりと胴を伸ばす猫又を片手に抱いて、日暮はぺこりと頭を下げた。
「またね」
紫鶴は静かに微笑む。
「また会おう。俺もまたそっちに迷うと思うから」
湖畔に至る道の果てで、刀はカンナへ短く笑う。
「偶にはこっちにも遊びに来いよ」
こちら側の世界への誘いには曖昧に首を傾げるだけに終わらせ、カンナは智瑜へと視線を移す。
「凄い数ですね」
夜の湖畔に揃った物の怪たちを眺め、智瑜は改めてその多さに目を瞠る。
(良かった、日暮さんもまだ居る)
いつも突然現れて突然いなくなる面掛けた男が、今日はまだ元と同じ位置に立っていることにホッとする。
「また来てくださいね」
約束、と指きりの小指を差し出す。カンナはおかっぱの髪を揺らして首を横に振った。ゼロに猫耳としっぽを返し、ふたりの手を離す。刀に、智瑜に、ゼロに、それぞれに向けて小さく手を振り、湖畔に立つ日暮のもとへと駆けて行く。
神木の巫女の姿を認め、日暮が安堵したように大きく頷いた。猫又を抱えるのとは反対の手を巫女へと差し出す。人柱と妖たちに呼ばれる男の手を引き、巫女が水面に揺れる月影に足踏み出せば、白銀の月光が一面に溢れた。
(約束は出来なかったけれど)
月の光に霞んで消えるカンナや日暮や妖たちの背に向けて、智瑜は笑顔で手を振る。
(きっとまた会える)
少女はそう信じる。
(次はうちにも来て欲しいなあ)
信じるがゆえに、そう、思う。
別れたときと同じ胡坐の格好で、ぼうやりと湖を眺める日暮の背中に、
「グレちゃん！」
後木 真央はタックルする勢いで駆け寄る。
「うわ何やあっ」
「ヒトバシラって何なのだ」
猩々面と真央から借りたタオルを膝の上に、うつらうつら居眠りしていたらしい日暮の凡庸な顔を、真直ぐ、怖じることなく見据え、真央は井戸端の女から聞いた言葉を口にする。
「向こうの奴らにはそう呼ばれとるな」
「ほんとにそれだけ？」
「意味なんか聞いてもしょもないで」
真央の真摯な瞳から逃れるように、日暮は面を掛けて立ち上がる。湖の向かいの森へと気遣わしげに視線を伸ばす。
「まだ誰も来やせえへん」
「心配いらないのだ」
そわそわと落ち着かぬ日暮に、真央は大事に提げて来た忍者焼き入りの包みを押し付ける。
「せっかく来たのだ、帰りにみんなで食べてほしいのだ」
「そらおおきに。せや、使うてしもて悪いけど、……次会えるかも分かれへんし、返さしてな」
お土産の代わりにタオルを受け取り、真央は少し俯く。
向こう側の世界の皆が大好きだった。何もせずに帰してしまうのが嫌で、だからお土産を渡して、けれどそれでは足りない気がした。
「どっちの世界でもいいから、……また会おうなのだ」
言葉にして、気がついた。別れるのが寂しいのだと。
もしかしたら、向こう側へ一緒に行ってしまいたいのかもしれないと。
「せやな、また会えたらええな」
俯く真央の背中を叩こうと伸ばした手を止め、日暮は面の頭をもたげる。暗い森の山道に向け、大きく手を振る。
「おお、こっちやあ」
湖に響く日暮の声につられて顔あげた真央の瞳に映るは、森の闇を退けて流れ来るいくつもの青白い鬼火。蒼炎に照らし出されて夜道を闊歩する単眼の老翁、老翁にエスコートされる長い黒髪に白着物姿の女、二人の頭上に飛ぶ鬼の頭と蛇の尻尾持つ鳥、不気味な鳥向けて橙の火花を口から吐き掛ける小鬼、はしゃぐ小鬼の足元でわやわやと遊ぶ人面犬や、かたちすら持たぬ怪しげなナニカ。
百鬼夜行の様相を呈する一行に紛れて、神木の巫女カンナと手を繋ぐゼロ・シーアールシーと宮祀 智瑜、妖の最中にあって泰然と歩く御剣 刀、猫のにゃーくんをオメンライダーのお面被った頭に乗せてはしゃぐ桜庭 円、一反木綿をマフラー代わりにする猫島 寝太郎、憮然とした表情を飽きず周囲に巡らせる津島 直治。そうしてそれから、百鬼夜行の空を横切る白鶴の翼。
「連れて来たよ」
着物の袖を翻し、音羽 紫鶴は日暮のもとへと舞い降りる。その腕に抱えてきた猫又を日暮に手渡す。
「おおきに、ほんま助かったわ」
だらりと胴を伸ばす猫又を片手に抱いて、日暮はぺこりと頭を下げた。
「またね」
紫鶴は静かに微笑む。
「また会おう。俺もまたそっちに迷うと思うから」
湖畔に至る道の果てで、刀はカンナへ短く笑う。
「偶にはこっちにも遊びに来いよ」
こちら側の世界への誘いには曖昧に首を傾げるだけに終わらせ、カンナは智瑜へと視線を移す。
「凄い数ですね」
夜の湖畔に揃った物の怪たちを眺め、智瑜は改めてその多さに目を瞠る。
(良かった、日暮さんもまだ居る)
いつも突然現れて突然いなくなる面掛けた男が、今日はまだ元と同じ位置に立っていることにホッとする。
「また来てくださいね」
約束、と指きりの小指を差し出す。カンナはおかっぱの髪を揺らして首を横に振った。ゼロに猫耳としっぽを返し、ふたりの手を離す。刀に、智瑜に、ゼロに、それぞれに向けて小さく手を振り、湖畔に立つ日暮のもとへと駆けて行く。
神木の巫女の姿を認め、日暮が安堵したように大きく頷いた。猫又を抱えるのとは反対の手を巫女へと差し出す。人柱と妖たちに呼ばれる男の手を引き、巫女が水面に揺れる月影に足踏み出せば、白銀の月光が一面に溢れた。
(約束は出来なかったけれど)
月の光に霞んで消えるカンナや日暮や妖たちの背に向けて、智瑜は笑顔で手を振る。
(きっとまた会える)
少女はそう信じる。
(次はうちにも来て欲しいなあ)
信じるがゆえに、そう、思う。
あとがき
担当マスター：
阿瀬春
ファンレターはマスターページから！
お待たせいたしました。
お三夜まつり期間中のとある宵の一幕、お届けにあがりました。少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。
ご参加くださいました方も、読んでくださいました方も、みなさま本当にありがとうございました。
またいつか、お会いできましたら嬉しいです。
ありがとうございました。
あと、ごめんなさい、個別メッセージはできるだけ書かせていただく方針ではあったのですが、しばらくお休みさせていただいております。もしも楽しみにしてくださってましたら、本当にごめんなさい。
お三夜まつり期間中のとある宵の一幕、お届けにあがりました。少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。
ご参加くださいました方も、読んでくださいました方も、みなさま本当にありがとうございました。
またいつか、お会いできましたら嬉しいです。
ありがとうございました。
あと、ごめんなさい、個別メッセージはできるだけ書かせていただく方針ではあったのですが、しばらくお休みさせていただいております。もしも楽しみにしてくださってましたら、本当にごめんなさい。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2015年10月16日
- 参加申し込みの期限
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- 2015年10月23日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2015年10月23日 11時00分
