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ジリリリン、と喧ましく社務所兼自宅の廊下に鳴り響く電話の音に、
齋藤 智照
は黒縁眼鏡の奥の黒い瞳を些か鋭く上げる。
境内の紅葉を掃き集める竹箒の手を止め、旧市街の外れに在る音来寺の住職はうっかり険しさを含んでしまった目元を冷えた指先で揉む。
「はい、お待ちくださいねぇ」
竹箒を手近な紅葉の幹に立てかけ、足早に社務所に向かう。
素早い所作で三和土に草履を揃え、毎朝磨き込む廊下を渡り、
「はい、齋藤です」
黒電話の受話器を取る。受話器から聞こえてきた県外の大学に在学する娘の声に、住職の瞳が淡く和む。
「どうかしましたか」
柔らかな声で問いかけて返ってきた言葉に、四十路も間近な住職の温厚な表情があからさまな喜色に染まった。
「これはまた急な話ですねぇ」
その癖、声音には少し困惑を含ませる。
「明日の何時くらいになりますか? 迎えは要りますか」
けれど堪え切れない嬉しさにうっかりしつこく問うてしまった。電話の向こう、素っ気無い返事の後に電話が切れる。
切れた受話器を置き、父は娘の態度も気にせず思わず笑みを零す。いつもより少し弾んだ足取りで廊下を渡り、仏間の仏壇の前に座る。鈴を鳴らし、妻の遺影に手を合わせる。
「帰省、だそうです」
嬉しさを隠さず笑いかけ、
「久しぶりに顔が見られますねぇ」
呟きながら立ち上がる。折角帰って来てくれる娘のため、ここはひとつ娘の好きなデザートでも用意しようか。
いそいそと廊下奥の台所に立ち、素早く襷を掛けて手を洗い清める。
食器棚に仕舞っていた大きなすり鉢とフライパンを取り出す。火にかけたフライパンで乾煎りするのは、流し台の下の乾物ストッカーに保存していた大量の黒胡麻。
焦がさないように丁寧にかき混ぜてゆけば、胡麻に艶が出る。台所いっぱいに香ばしい香りが広がる。
焦がさないうちに火から外し、他のものに使う分を小鉢に取り分ける。残りは全てすり鉢の中へ流し込む。
作業台の上の大きなすり鉢の中、香ばしい匂いの熱を上げる黒胡麻を見下ろし、住職はひとつ息を吐く。ここからが本番、長丁場。
擂粉木を脇に手挟み、すり鉢を両手に抱え、台所から居間に場所を移す。
「さて、始めましょうかねぇ」
胡坐の両膝にすり鉢を挟み込み、擂粉木を使い始める。余分なことは一切考えず、ただひたすら無心に胡麻を擂る。
修行時代にもよく胡麻をひたすらに擂った。けれどこうして胡麻を擂っていて思い出すのは、母の姿。
(やっぱり居間でよくこうして擂っていましたねぇ)
母と同じことをしていると思えば、瞳に自然と笑みが滲んだ。
(市販の胡麻ペーストを使えば良いのに)
いつだったか、幼い己が母に向けた言葉を心に呟いてみる。
瞼に浮かぶ母は、己の言葉にそうねと頷き、そうしてちらりと首を傾げる。擂粉木を動かす手だけはひとときも休めず、悪戯っぽく笑う。
――意外と楽しくなってくるのよ
(確かに、そうですねぇ)
耳朶に蘇る母の言葉に、今はしみじみと頷くことができる。
煎った胡麻が潰れる毎にふうわり立ち昇る香りも、ただひたすらに手を動かすばかりののんびりとした時間も、
(悪くはないですねぇ)
リズムを刻むように擂粉木を動かす。すり鉢に胡麻の粒がなくなるまで、次第に油が滲みしっとりとした具合になってくるまで。
手を止め、擂り胡麻の具合を確かめる。すり鉢の縁に残る皮のざらつきがまだ気になって、もう少しもう少しと気長に無心に、手を動かす。
ごりごり、ごりごり、すり鉢で胡麻を擂る音と胡麻の香りばかりが静かな社務所兼自宅に流れて過ぎる。
陽光にいつしか黄昏の暗さが混ざっていることに気付いて、住職はふと思い出したように息を吐いた。壁掛けの時計を見れば、始めてからもう二時間が経っている。
満足いく滑らかな状態に仕上がった黒胡麻ペーストを台所に運び、半量は保存パックに流し込む。残りは小鍋に移し変え、水と豆乳、黒糖と寒天とを混ぜて弱火にかける。
(母も、よくこうして作ってくれましたねぇ)
母と同じように、小鍋の中身を木勺でくるり、かき混ぜる。満遍なく混ざり溶け込んだことを確認し、火を強める。沸騰直前で火から下ろし、
「……ああ」
器の準備を忘れていたことに眉を下げる。鍋敷に一旦小鍋を置き、食器棚から小ぶりな器を五つ取り出し並べる。
粗熱の取れた鍋の中身を注ぎ入れれば、あとは冷蔵庫で冷やすばかり。
(これが好きなんですよねぇ)
――これが好きなのよねぇ
娘の喜ぶ顔を思い浮かべて、いつだったか同じものを作りながら母が呟いていた言葉を思い出した。娘に、母に、智照は瞳を細める。
「さて、……」
袖にかけた襷を外そうとして、保存パックに移しテーブルに置いていた胡麻ペーストが目に止まった。
夕飯はこのペーストで一品作ろうかと冷蔵庫の前に立って、住職はふと首を傾げた。何か忘れている気がする。
夕暮れの色に染まる台所の窓から外を見遣って、
「しまった、掃除を」
娘が帰ってくる嬉しさのあまり綺麗さっぱり忘れていた境内の掃除と放りっぱなしの竹箒とちりとりをやっと思い出した。
法衣の裾を翻し、住職は廊下に飛び出す。そうしながらも、思わず小さな笑みを零す。
明日、娘が帰ってくる。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年08月17日
参加申し込みの期限
2015年08月24日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年08月24日 11時00分
参加キャラクター一覧
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