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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
今日のごはんは何にしよう
閉ざした瞼の向こう、暁の光が揺れている。
庭で摘んだラベンダーの香のする枕にハイビスカスの鮮やかな紅色した髪を乱して、ジェレミア・ベルトーニは白い眉間を顰める。
海を渡って寝子島に動物病院を開いた獣医師の長身を覆う毛布がもそもそと動く。温かい毛布の中から顔覗かせて、ぴょこり、灰色の大きな尖がり耳した仔猫。
窓辺のカーテンにじゃれつき、揺れる暁光と遊んでいた茶虎の仔猫がみゃあ、と笑う。猫らしい仕草で窓辺からベッドに飛び移ろうとして、仔猫は目測を誤った。後ろ足までベッドにしがみ付けず、ずり落ちそうになって慌てて毛布に細い爪を立てる。みゃうみゃうと不満の声を上げつつ、必死にベッドの上によじ登る。
心配して寄って来た灰色仔猫と顔合わせ、茶虎仔猫は失敗なんてしなかったかのようなきょとんとした顔をする。灰色仔猫の鼻先に鼻先を合わせ、オハヨウとご挨拶。
オハヨウの後は、いつものごとく夜が明けてもまだ眠りから覚めない寝ぼすけな家族を今日もがんばって起こさなくては。
春先と夏の終わりに寝ぼすけさんに保護された仔猫二匹は顔を見合わせ、息の合った仕草でベッドの上で跳ね回る。にゃあにゃあ、みゃうみゃう。
「……うーん……」
白い額に掛かる赤毛を片手でかきあげ、ジェレミアは小さく唸る。色素の薄い瞼の下、夏草色の瞳が覗く。
小さな猫たちにいつものようにベッドを揺らされ覚醒を促されながら、枕元の時計に手を伸ばす。時間を確かめれば、やっぱりいつも通りな起床にはまだ早い時間。
（もう少し寝られるよネ）
薄く開いたカーテンの外から流れ込む白い朝陽に瞳を細め、眩しさに片手を翳す。そのまままたうとうととまどろんで、――みゃう、みゃあ！ 仔猫たちの抗議の猫パンチを額や頬に食らわされた。ぺちぺちと当たる仔猫の小さな手を、思わず優しく握る。
「おはよう、待たせてごめんね」
ふわり、愛しい猫たちに微笑みかけて起き上がる。小さな頭を交互に撫でて、
（すみとこはくは今日も可愛いなぁ）
朝から親馬鹿全開気味につくづく思う。
足元に灰色猫のすみと茶虎猫のこはくをまとわりつかせ、寝室からキッチンに移る。星ヶ丘の自宅に隣接する病院の開院まではまだ時間がある。万が一急患があればいつでも応対するつもりではあるけれど、それまでは可愛い仔猫たちとのんびりしよう。
自分の朝ごはんの準備よりも優先するのは、仔猫たちの朝ごはん。
「食べ盛りだからね」
自分たちではどうがんばっても届かない高い戸棚から取り出される仔猫用カリカリの箱を見て、仔猫たちの声が一層大きくなる。細くて小さな尻尾が高々と持ち上がる。
あまりの喜びように山盛りいっぱい与えたくなるところをぐっと我慢、与え過ぎには注意！ と心を鬼にして、適量をそれぞれに用意して並べた食器に移す。二匹、二三ヶ月ほど月齢は違うけれど、同じフードを与えても問題はない。
水入れに残っていた水を新鮮な水と入れ替えて、
「はい、おあがり」
待ちかねた仔猫たちが並んで仲良くご飯を食べる可愛い姿をにこにこ眺める。
「……と」
そうしていて、一人暮らしの獣医師はふと思い出す。今のうちに自分の朝ごはんを用意しなくては。
母国ではもっぱらエスプレッソとクロワッサンにジャムやチョコクリームを添えたものを朝ごはんにしていたけれど、日本に来てからの朝ごはんは大抵がグラノーラとヨーグルト。
キッチンで自分用の皿にドライフルーツ入りグラノーラに牛乳を注ぎ、小皿に盛った冷たいヨーグルトに蜂蜜を回し掛ける。締めのエスプレッソのためにデミタスカップを準備しておいて、まずはしっかり朝ごはん。
（グラノーラって人間用のカリカリみたいだね）
テーブルの向こう側でカリカリを食べる仔猫たちに微笑みかけつつ、やっぱり猫馬鹿全開なことを考える。ざくざくとした食感が楽しいグラノーラをスプーンで口に運んでいると、みゃーう、食事を終えた猫たちが我先に膝へよじ登ってくる。甘えた仕草で不思議そうに顔を見上げてくる。
――まだ食べているの？
無邪気に話しかけられた気さえして、親馬鹿で猫馬鹿な獣医は甘く相好を崩す。
「ああもう、可愛いなぁ」
心の中の声をダダ漏れに、仔猫たちを優しく撫でつつ、幸せなひと時を噛み締めつつ、
「でも、テーブルに乗るのは駄目だよ」
そこのところの躾はしっかりと。
「すみもこはくも、ずっとずっと長生きしてね」
丹精こめて世話する庭を照らし、窓辺から流れ込む朝陽に夏草の瞳を細める。
日々はとても満たされていて、だからこそジェレミアは思う。
（この島に来て良かった）
庭で摘んだラベンダーの香のする枕にハイビスカスの鮮やかな紅色した髪を乱して、ジェレミア・ベルトーニは白い眉間を顰める。
海を渡って寝子島に動物病院を開いた獣医師の長身を覆う毛布がもそもそと動く。温かい毛布の中から顔覗かせて、ぴょこり、灰色の大きな尖がり耳した仔猫。
窓辺のカーテンにじゃれつき、揺れる暁光と遊んでいた茶虎の仔猫がみゃあ、と笑う。猫らしい仕草で窓辺からベッドに飛び移ろうとして、仔猫は目測を誤った。後ろ足までベッドにしがみ付けず、ずり落ちそうになって慌てて毛布に細い爪を立てる。みゃうみゃうと不満の声を上げつつ、必死にベッドの上によじ登る。
心配して寄って来た灰色仔猫と顔合わせ、茶虎仔猫は失敗なんてしなかったかのようなきょとんとした顔をする。灰色仔猫の鼻先に鼻先を合わせ、オハヨウとご挨拶。
オハヨウの後は、いつものごとく夜が明けてもまだ眠りから覚めない寝ぼすけな家族を今日もがんばって起こさなくては。
春先と夏の終わりに寝ぼすけさんに保護された仔猫二匹は顔を見合わせ、息の合った仕草でベッドの上で跳ね回る。にゃあにゃあ、みゃうみゃう。
「……うーん……」
白い額に掛かる赤毛を片手でかきあげ、ジェレミアは小さく唸る。色素の薄い瞼の下、夏草色の瞳が覗く。
小さな猫たちにいつものようにベッドを揺らされ覚醒を促されながら、枕元の時計に手を伸ばす。時間を確かめれば、やっぱりいつも通りな起床にはまだ早い時間。
（もう少し寝られるよネ）
薄く開いたカーテンの外から流れ込む白い朝陽に瞳を細め、眩しさに片手を翳す。そのまままたうとうととまどろんで、――みゃう、みゃあ！ 仔猫たちの抗議の猫パンチを額や頬に食らわされた。ぺちぺちと当たる仔猫の小さな手を、思わず優しく握る。
「おはよう、待たせてごめんね」
ふわり、愛しい猫たちに微笑みかけて起き上がる。小さな頭を交互に撫でて、
（すみとこはくは今日も可愛いなぁ）
朝から親馬鹿全開気味につくづく思う。
足元に灰色猫のすみと茶虎猫のこはくをまとわりつかせ、寝室からキッチンに移る。星ヶ丘の自宅に隣接する病院の開院まではまだ時間がある。万が一急患があればいつでも応対するつもりではあるけれど、それまでは可愛い仔猫たちとのんびりしよう。
自分の朝ごはんの準備よりも優先するのは、仔猫たちの朝ごはん。
「食べ盛りだからね」
自分たちではどうがんばっても届かない高い戸棚から取り出される仔猫用カリカリの箱を見て、仔猫たちの声が一層大きくなる。細くて小さな尻尾が高々と持ち上がる。
あまりの喜びように山盛りいっぱい与えたくなるところをぐっと我慢、与え過ぎには注意！ と心を鬼にして、適量をそれぞれに用意して並べた食器に移す。二匹、二三ヶ月ほど月齢は違うけれど、同じフードを与えても問題はない。
水入れに残っていた水を新鮮な水と入れ替えて、
「はい、おあがり」
待ちかねた仔猫たちが並んで仲良くご飯を食べる可愛い姿をにこにこ眺める。
「……と」
そうしていて、一人暮らしの獣医師はふと思い出す。今のうちに自分の朝ごはんを用意しなくては。
母国ではもっぱらエスプレッソとクロワッサンにジャムやチョコクリームを添えたものを朝ごはんにしていたけれど、日本に来てからの朝ごはんは大抵がグラノーラとヨーグルト。
キッチンで自分用の皿にドライフルーツ入りグラノーラに牛乳を注ぎ、小皿に盛った冷たいヨーグルトに蜂蜜を回し掛ける。締めのエスプレッソのためにデミタスカップを準備しておいて、まずはしっかり朝ごはん。
（グラノーラって人間用のカリカリみたいだね）
テーブルの向こう側でカリカリを食べる仔猫たちに微笑みかけつつ、やっぱり猫馬鹿全開なことを考える。ざくざくとした食感が楽しいグラノーラをスプーンで口に運んでいると、みゃーう、食事を終えた猫たちが我先に膝へよじ登ってくる。甘えた仕草で不思議そうに顔を見上げてくる。
――まだ食べているの？
無邪気に話しかけられた気さえして、親馬鹿で猫馬鹿な獣医は甘く相好を崩す。
「ああもう、可愛いなぁ」
心の中の声をダダ漏れに、仔猫たちを優しく撫でつつ、幸せなひと時を噛み締めつつ、
「でも、テーブルに乗るのは駄目だよ」
そこのところの躾はしっかりと。
「すみもこはくも、ずっとずっと長生きしてね」
丹精こめて世話する庭を照らし、窓辺から流れ込む朝陽に夏草の瞳を細める。
日々はとても満たされていて、だからこそジェレミアは思う。
（この島に来て良かった）
あとがき
担当マスター：
阿瀬春
ファンレターはマスターページから！
お待たせいたしました。
朝昼夕ご飯に夜食、色んなごはんの一幕、お届けにあがりました。
色んなご飯を作ったり食べたりなみなさまを、とても楽しく書かせて頂きました。
ご参加くださいまして、また、読んでくださいまして、ありがとうございました。
少しでもお楽しみ頂けましたら幸いです。
ありがとうございました。
さて。
今日のごはんは何にしましょうか。
朝昼夕ご飯に夜食、色んなごはんの一幕、お届けにあがりました。
色んなご飯を作ったり食べたりなみなさまを、とても楽しく書かせて頂きました。
ご参加くださいまして、また、読んでくださいまして、ありがとうございました。
少しでもお楽しみ頂けましたら幸いです。
ありがとうございました。
さて。
今日のごはんは何にしましょうか。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2015年08月17日
- 参加申し込みの期限
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- 2015年08月24日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2015年08月24日 11時00分
