開け放した窓から冷たい風が流れ込む。
枯葉の匂いが混ざる風に適当に束ねた黒髪を撫でられ、
高城 律は突っ伏して寝ていた卓袱台から顔を上げた。頬に貼りついていた紙がパラリ、机上に落ちる。
「んあー……」
鉛筆の跡がついた頬を鉛筆の粉がついた手で擦り、耳からヘッドフォンを外す。
「……寝てた? 俺寝てた?」
寝癖気味の頭を掻いて自身が管理人を務める古アパートの自室を見回す。
破れかけた網戸から流れ込む風に飛ばされたのか、古びた畳の上に散らばって、目に付くものを片っ端から描き散らしたデッサンの紙。
痺れた足を擦りながら立ち上がった途端、目が眩むほどの空腹感に襲われた。腹の虫が凄まじい声で鳴いた。
ふらふらと歩き、台所に立つ。水切り棚に置いたままのコップに水を満たし胃袋に水を突っ込むも、
「……腹減った……」
長時間集中してデッサンを描き続けて消耗した身体はコップ一杯の水では納得してくれなかった。
(おかしい)
黒い瞳に真摯な色宿らせ、律は空っぽの胃を抑える。
(人間愛と勇気さえ友達にしてたら他は食事なんてあんまいらないって爺ちゃんが言ってたのに)
本気の顔で冗談を呟いてみても、空腹がおさまるわけもない。
歩くたびに軋む台所の床を踏みしめ、小さな冷蔵庫の扉を開ける。野菜室には大根と白葱のみ。
「わあ、鍋ができるよ爺ちゃん」
キラキラと瞳を輝かせて言ってみて、深々と溜息を吐く。肉がない。まだまだ食い盛りな二十歳男子に肉なし鍋はあまりに寂しい。
(鍋食おう鍋)
現実の厳しさからは目を逸らし、大根と白葱を取り出す。
他界した祖父から譲り受けたアパートの一室で、今現在はほぼ引き篭り生活をしつつ社会復帰のタイミングを計っているとりあえず今のところ立派な引き篭り大学生はガス台の下の戸棚から土鍋を引っ張り出す。
水を張ってガス台に置く。昆布を一切れ突っ込む。気を取り直して包丁を構える。
「ネギだ! 大根だ! いざ鍋だ!」
こんにちは。阿瀬 春と申します。
今回は、ごはんに関するお話のお誘いにあがりました。
ガイドには高城 律さんにご登場いただきました。ありがとうございました。
もしご参加頂けます場合は、ガイドはサンプルのようなものですので、ご自由にアクションをお書き下さい。
そういうわけでごはんです。
みんなで外食な風景でも、ひとりで公園のベンチで一休みなごはんでも、誰かとふたりきりな食卓風景でも。どんなごはんでも構いません。何ならおやつでも、ガイドにありますように準備場面からでも。朝ごはんでも昼ご飯でも夜ご飯でも、深夜メシでも。なんでしたらご飯に至るまでのどたばただけだって構いません。
あなたは今日、誰と、どんなごはんを食べますか。どんなことを思いながら、話しながら、ごはんにしますか。
よろしければお教えください。書かせてください。
ご参加、お待ちしております。