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花の色は
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足元に、色彩施されぬ花。
踏み出す毎にたち上る、様々に混ざり合った花の香に、
東城 六
は痩せた指先で口元を覆う。
雪雲の灰色した瞳を無彩色の花園に巡らせる。花の群生を幾つも経た先、栗色の髪の少女と並んで跪く黒髪の少女へと視線を伸ばす。
(何か花を摘んでいかないとここからは出られないようだな)
見知らぬ奇妙な世界に引きずり込まれて、それでも動じなかった静かな瞳が、己の心に花の色を探れば探るほどに沈んだ。
花の色を彼女に伝えなければ、この色彩の無い花園から出ることはできない。けれど、
(彼女が望むような色が僕の中にはない気がする)
物心つくまでを他人の住処を転々として生き延びて来た。生きることに必死で、花の色を気にかける暇などなかった。
「おや、こげなところで遇うなんて奇遇ですねえ」
俯いた背に、こんなところで聞けるとは思いもよらなかった声を思いがけずに聞いて、
「倉前くん」
いつも通りののんきな友人の声音に、六は知らず眉間にこもっていた力を緩める。
「……君も来てたんだ」
声の主、
倉前 七瀬
を振り返る。
「六もあの女の子にあげる花ば探しとーとですか?」
無彩色の景色の真中、彩り持った七瀬の姿がふわり浮かび上がって見えた。胸に生まれたぬくもりを不思議に思いながら、六は小さな息を吐く。
「そう。でも、覚えている花と言っても特にないかな……」
「僕も、これといって浮かばないんですよね」
口調にも顔にも焦りの見えない七瀬に、六は知らず力の入っていた肩から力を抜く。
何も探さぬ瞳で周囲を見回す。撫子、牡丹、金木犀。季節を問わず、無秩序に描かれた花々。この花畑を描いた誰かは、花の色を知らぬ日傘の少女のように、実際の花畑を知らないのかもしれない。
例えば花の図鑑を捲り、目についた花からキャンバスに描きこんでいったような。目前に広がる花畑には、そんな印象を受ける。
「課題、まだ片付いてないんですよね」
日傘の少女に届けるべき花を探しながら、七瀬がほんの少し困った調子で笑う。
「……僕もだ」
「芸術科の課題ってどんなですか」
六と他愛のない会話を交わしつつ、七瀬は足元に咲く花を確かめて花畑をのんびりと進む。傍らに肩を並べて歩く友人の、高校二年生にしては小柄な肩に、血色がいいとは言えない白い頬に、その頬に触れる白い髪に、遠慮を知らない視線をぶつける。
「……?」
不審げに見上げてくる六の視線にもたじろがず、七瀬はもどかしげに固く瞼を閉ざす。首を傾げ、こめかみを押さえ、思い出せそうで思い出せない何かを思い出そうとする。
傍らの友人を見る。彼を見ていると何か思い出せそうな気がして、もう一度凝視する。
「倉前くん?」
「……そういえば、僕が最初に読んだ本」
やっとのことで心の奥に隠れていた記憶に思い至った。ふと浮かび上がった記憶に、七瀬は思わず笑みを零す。
「あの本の表紙には白い薔薇の絵が描かれとったような気がします」
「白い薔薇?」
ついでに肝心の本のタイトルや内容も思い出せないものかと記憶を探るも、
(……やっぱり思い出せませんね)
この前、茜色の不思議な町に迷い込んだ時に忘れてしまったその記憶は、幾許かの時間を経ても戻っては来ないらしかった。なんとなく大切なものだった気もするけれど、
(……ふむ……)
しばらく考えて、それ以上に思い出せないことだけを確認する。それでも、本の表紙に白薔薇が描かれていたことだけは、おそらく間違いない。
「六のおかげですね」
ひとりで花園に迷っていたさっきまでは、本の表紙さえ思い出しきれなかった。隣に友人が並んでくれるまでは。
「ありがとうございます」
丁寧に礼を言われ、六は目を丸くする。慌てて首を横に振って、視界を過ぎる自分の白い髪に気付いた。
(ああ、僕が白いから)
友人が白薔薇を思い出した理由に思い当たり、六は何気なく自身の髪を指先に摘まむ。
色彩失った花園の花々と同じ色した白い髪。
(……ここで白い色の花を思い出すなんて)
忘れていた記憶を確かめて嬉しそうな友人の横顔を見上げる。
(倉前くんらしいな)
「そうだね、白だって色だよね……」
呟く唇が、色づくように淡く笑む。
(そうか、白という色か……)
風のない世界で、不意に風を浴びたように、六は伏せていた瞳を上げる。感情を映し難い灰色の瞳にほんの僅か、淡い光にも似た、柔らかな色。
「六。ありましたよ、白薔薇」
白も色のひとつと教えてくれた友人が、白黒の花畑の一点を示す。友人の指が示す先へと視線を向けて、
「おや、誰か居ますね」
白い空に誇らしげに茎を伸ばし、大輪の花を幾つも開かせる薔薇の傍ら、緋色の髪を結い上げた青年が一人。
「やあ、君達もこの花なの?」
花畑を渡って近づいて来る少年二人に、
ニコ・ライニオ
は銀色の瞳を人懐っこく笑ませる。
頷く少年達を招き、ニコは周囲に咲き乱れるモノクロの花々を見遣る。
旺盛に蔓伸ばすノウゼンカヅラには夏の盛りに出逢った夏空の似合う女の子の思い出が、控えめな小さな花咲かせるローズマリーにはハーブの庭に立っていた魔女のような妙齢の女性の思い出が。今までに出会った何十人もの様々な女の子達をひとりひとり、女性についての確かな記憶力で克明に思い出す。
ひとつの花に想い出ひとつ。けれど、やはり。
(一番鮮明なのはかえがえのない、たったひとり)
「君も、ほら」
白薔薇を求めて来たらしい少年の一人を導き、ニコは幾つもの花を付ける薔薇の一輪に、少年と共に触れる。
触れた先から、薔薇が色を取り戻す。茎と葉は強く瑞々しい深緑に、大きく咲く花びら彩るは、何ものにも染まらぬ純白。
純白に色づく薔薇に、ニコは愛する妻を思い出す。白薔薇は、結婚式で彼女を飾ったブーケの花だった。今でも脳裏に焼き付いて離れない、白薔薇と同じ真っ白なウェディングドレスを身に纏った彼女の姿。薔薇よりもずっとずっと美しい、愛する妻。
(年貢の納め時だーなんて、周囲には散々からかわれたものだけど……)
結婚式に友人たちから浴びた賑やかな野次をも思い出して、ちょっとだけ苦笑いする。けれどそれも楽しい思い出。
あの日、ふたりで恋人から『家族』になることを誓い合った。ふたりだった『家族』がほどなく三人になって、でも妻も子も、そのどちらもが、
(世界で一番大好きなんだ)
白薔薇を一輪手折る。花にまつわる思い出を、家族のことを話そうと決める。
もうひとりの少年の分の花を探すという、仲の良さそうな友達同士らしい少年ふたりに別れを告げ、日傘の少女のもと目指して歩き始める。
「ところで、六はどの花にするか決めたとですか?」
白黒の花園を遠ざかる緋色の背中をぼんやりと見送っていた六は、白薔薇を手にした七瀬に問われて我に返った。七瀬の傍らに色づく白薔薇を見、七瀬の背後に広がる白黒の花畑を見渡す。
おっとりとした表情の友人の背後、ふと白の中に黄色を見た気がした。光が煌くに似て幻のように消えた太陽のような黄色をもう一度見つけようと目を凝らす。
「……向日葵」
花の名を呟くと同時、白黒の花々の中、大地に根ざし太陽を目指す大輪の花を数本見つける。
「そういえば夏に向日葵畑に行った」
「へえ、向日葵畑に行ったとですか。それはよかですねぇ~」
光と影の色しか持たぬその花に、六は夏の日に見た色彩を重ねる。あの鮮やかな黄色と、それから、青い空。
あの一面の向日葵畑で、言葉にしなければ、態度に表さなければ伝わらないことを知った。それなのに、
(もう忘れていた)
再び思い出した大切なことを、今度は二度と忘れまいと心に刻む。
「……甘味処があって、」
六は、夜明けの海で初めて出会った友人を真直ぐに見る。この島に来て出来た『友達』と、満天の星空も見に行った。そんなことが出来るなんて、この島に来た頃は思いもしなかった。
「あんみつが、おいしかったよ」
海も夜空も、子供の頃に幾度も見ていた。あの頃は海も空も、ただ存在するだけだった。そんなに綺麗だとも思わなかった。
けれど、今は。
(僕の中にもこんな花畑があるとしたら)
白黒の花畑の中に佇む白い向日葵の前に立ち、自分よりも背の高い向日葵の花の一輪に手を伸ばす。作り物めいた花びらに触れれば、途端、絵具のついた筆を水に落としたように、向日葵は明るい太陽の黄色に染まる。
こんな風に、と思う。こんな風に、少しずつ色づいて行っているのかもしれない。
(そうだといい)
そう思わせてくれた友人と向き合う。
「ありがとう、いつも」
ぎこちないながらも、笑いかける。自分の気持ちをきちんと伝えるために。
(……はて?)
六の笑顔を目の当たりにしながら、七瀬は内心首を傾げる。
(うち、何かしましたっけ……?)
礼を言われるようなことをした心当たりはなかったけれど、友達が笑ってくれるのはやっぱり嬉しかった。
向日葵と並んで笑う六と顔を見合わせれば、七瀬も不思議と笑顔になる。
「こっちなのだ」
よく通る明るい少女の声を耳にして、声のする方へ揃って視線向けた六と七瀬が見たのは、戸惑い顔の日傘の少女の手を引き、向日葵の群生へと近づく茶髪の少女の姿。
「昔、真央ちゃんは世界は善と悪、ハイとイイエだけで良いと思ってたのだ」
どっちつかずの『間』なんていらないのにと思っていた、幼い頃を話しながら、真央は少女と共に向日葵の前に立つ。色づいた一輪を持つ六を眼にして、うわあ、と顔中を笑みでいっぱいにする。
「花ちゃん」
少女に向き合う。不審気な顔のままの少女に、笑顔で話し続ける。
「夏休み、向日葵の水撒き当番に行って、センセに種を食べてみろって言われて食べてみて」
種は地面に植えるだけのものだと思っていた。芽を出して花を咲かせるためだけのものだと思っていた。
初めて食べた、固い殻の中に詰まった柔らかくてほんのり甘い向日葵の種の味。食べられるんだと気づいたときの驚き。
「あれが初めて気づいた間の灰色だったのだ」
話の意図を理解出来ずに瞬くばかりの少女の前で、真央は己が手で向日葵に触れる。途端に色づく向日葵を片手に掴み、向日葵の隣に自分の笑顔を並べる。
「花ちゃん」
少女を外に連れて行きたかった。彼女の花を彼女自身に選んで欲しかった。抑えられない衝動の裏で、それが彼女の幸せに繋がる事を祈って、だからこそ真央は祈るように少女に告げる。
「やれることは一つじゃないと思うのだ?」
太陽よりも眩しいものを見たかのように、少女は瞼を固く閉ざす。怖じて俯き、片手で袋状にして持ったスカートに幾つも色を重ねる花々を見つめる。
「ああ、居た居た。見つけた」
伏せた瞳に、純白の白薔薇が割り込む。
「こっちが僕の大切な想い出の花。そしてこっちが今日君と出会った想い出の花、と」
白薔薇に並んで差し出されるのは、雨上がりの澄んだ空の色した花弁を一杯に広げ重ねるニゲラの花。
視界埋める色彩溢れた花に、少女は顔を上げる。傍らに寄り添う格好で立つ、
ニコ・ライニオ
の人懐っこい笑顔に出会う。
「花言葉は『未来』『夢で逢いましょう』なんだって」
少女の片手に花二輪をそっと渡す。
「僕は今日の君のこともずっと覚えているよ」
「真央ちゃんも覚えてるのだ!」
ニコと真央から真直ぐに向けられたまじりっけない好意に、少女は瞳を惑わせる。
「真央と、……『未来』の、花のひと」
惑うままに呟いて、近くに立つ少年二人が持つ色づいた花へと手を伸ばす。
「しろの花、あおの花、きいろの花」
魔法の呪文のように囁く。それがこの白黒の世界から元の世界へ送り返す呪文なのだと気付いて、ニコはもう一度少女の手を取る。
ここがモノクロの世界でなくなったら、と色彩の無い花園を見遣る。少女の黒い瞳を覗き込んで、どこまでも優しく、どこかしら心配げに微笑む。
「その時は君は笑っているのかな?」
せめてそうであるように、祈る。
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シナリオデータ
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阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
SF・ファンタジー
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年02月10日
参加申し込みの期限
2015年02月17日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年02月17日 11時00分
参加キャラクター一覧
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