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花の色は
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「花の色を、教えて」
スカートの膝に緋と純白と桃の色した花を並べた日傘の少女に請われた瞬間、
エリザ・マグノリア
の心に可憐で小さな花が咲く。
「摘んで来れば良いのですね」
律儀に尋ね、少女がこくりと頷くのを確かめてから、眼鏡の奥の春霞の灰色した瞳をモノクロの花園に巡らせる。彼方にまで続いて見える花の地平。色を失った花が数え切れず咲き乱れる奇妙な花畑に、記憶の片隅から浮かび上がったあの花を見つけ出せるだろうか。
(ヴィオレット)
道標のように、花の名を呟く。花の隙間、迷路のように敷かれた細い煉瓦の道を辿って花園に迷う。
(色?)
色のない空を仰ぐ。
フランス名家であるキャドー家を出、欧州を巡り巡った挙句、極東日本に居を構えた主を思う。
(日本語でなんと言うのでしょう?)
彼に仕える執事として、家事全般から資産運用までをこなすも、虫を苦手とするために庭仕事だけは庭師に任せている。故に、あの花と対応する日本語をすぐには結び付けられず、エリザは纏めた白金の髪の頭を小さく傾げる。
今の主と共に幼い頃を過ごしたキャドー家の広大な敷地内の庭、森を幾つも擁し、庭と言うにはあまりにも広い庭園に一角に造られた薔薇の迷路の脇にひっそりと咲いていたヴィオレットの儚くも強い花――
「花の色を、教えて」
背後に聞こえる日傘の少女の声に振り向く。日傘差し、花畑の中に座り込んで動かず同じ言葉を繰り返す少女の傍ら、黄昏の金色した髪の青年が憮然とした表情を隠さず立ち尽くしている。
「花、ですか」
細い眉を顰め、深翠の眼を歪め、
日向 透
は目前に広がるモノクロの世界を見渡す。憂鬱な息を吐く。
(……またいつものろっこんの影響ですかね)
「花を、探して」
感情の読めぬ平坦な声で繰り返す日傘の少女を、一見柔和な、けれどどこか冷酷なまなざしで見下ろす。モノクロの世界にただ一人、天然色の少女。
(これは、人か?)
おそらくは違う、と見定め、
「全く手間でしょうがないですが、仕方ないので探してきてあげますよ」
人を食った冷めた口調で言い捨て、苦笑する。
「探したらここから出してくれるのでしょう?」
少女が頷くのを横目に確かめ、色のない世界へ無造作に歩み出そうとして、花畑に立ち竦む黒髪に琥珀の瞳した青年の姿に気付いた。
「今日は」
途端、透は少女に見せた冷酷なまでの表情を一瞬のうちに押し隠す。柔らかな笑顔の仮面を貼り付け直す。
「ああ、うん、こんちは」
状況を未だ理解していない風の、お人好しな笑顔を浮かべる黒髪の青年にそれ以上の声も掛けず、透は白黒の世界に踏み込む。幾多の花ばかりが揺れる世界に視線を投げ、今この時にこの場に居るのが白金の髪結い纏めた凛とした雰囲気の女性と黒髪の青年だけであることを確かめる。
白黒の世界で人と関わることを放棄し歩み去る透の背を、
伊予 祐
は僅かに首を傾げて見送って後、
「花を探して。花の色を、教えて」
花園の央に座して繰り返すばかりの日傘の少女を真直ぐに見る。日傘の影の下、長い黒髪に縁取られた白い頬の輪郭を辿り、感情を映さぬ黒い瞳を見つめる。
「花を探してくればいいんだな」
無言で頷く少女に、任せろ、と頼もしげに頷き返す。
(ここは絵の中、だよな?)
キャットロードの画廊に入って見た絵そのままの世界を見回す。白黒の花畑に咲き乱れる花は、けれど白黒が故にどれがどれだかもよく分からない。
(色んな季節の花が咲いていることはなんとなく分かるんだが)
しゃがみこみ、足元に咲く花に指先を触れる。秋桜、竜胆、萩、と見知った花を確かめてその名を次々に呟く。
(心なしかもの寂しいな)
色を失くした花々は、どこか元気がなくしおたれて見える。
立ち上がる。肩越しに振り返り、色のない花園に一人蹲る日傘の少女を見遣る。
(あの色のついたお嬢さんだけ取り残されているみたいだ)
視線巡らせれば、おそらくは己と同じに花探しを請われた二人が白黒の花園を彷徨っている。
白金の髪の女性はどこか戸惑った風に歩みを進めている。
金髪の青年は視線を花園に迷わせながらもゆったりと歩いている。この世界にも日傘の少女にも無関心に見えた青年の頬が、遠目にふと淡い笑みに歪んで見えて、祐は琥珀の眼をしばたたく。
(愉快な世界だ)
花を探す瞳を休ませ、透は白にしか見えない単調な空を仰ぐ。青くない空が、色の抜けた世界が、すべてが白と黒の世界が、妙に心に馴染んだ。
それが何故かも分からず、けれどその理由を心に探そうとも思わず、透は今度は足元に視線を落とす。
気にも留めていなかったが、足元を埋めるは全て花。蕾の見当たらない、不自然に咲き乱れる花々から視線を逸らす。少女は花を探せと言っていた。花の色を教えろと。
色を知る適当な花を選ろうと腰を屈め指を伸ばして、
(だが、まだ早い気がする)
やめる。足元に咲く名も知らぬ野辺の花の色を知ってはいる。
(この花は摘みたくない)
心に生じる声に従う。たぶん、これは『違う』のだろう。
背を伸ばす。何気なく伸ばした視線の先、花に囲まれて跪く白金の髪の女性の姿。
生真面目そうな横顔に浮かぶ懐かしげな表情に、ほんの僅かに興味を抱く。金色の睫毛に縁取られた灰色の瞳の視線を辿ってみれば、小さな、取るに足らぬちっぽけな花。
知らずに踏み潰してしまいそうなその花に、女性が触れる。
刹那、光宿るように花に色が灯った。
「……紫、ですね」
「そう、紫、ですね」
思わず色の名を口にする透を、エリザは振り返る。礼儀正しく一礼し、微笑む。
白黒の花の中、鮮やかに色づいた小さな花の一輪をそっと採る。大輪の花を咲かせる派手な花に半ば埋れ、ひそやかに咲くこの花を見つけた時、
――砂糖漬けを作るので花弁を採って来て欲しい
父が執事を勤めるキャドー家当主の奥方の声が耳に蘇った。
――はい、奥様
――うん、いいよ
それに応じる幼い己の声と、キャドー家長男であり幼馴染であり、現在に於いては己の主であるあの人のあどけない声も。
(五、六歳の頃でしょうか)
キャドー家に仕える幾人もの庭師の手によって整えられた薔薇の迷路を同じ敷地内で育った幼馴染と共に巡り、薫り高い薔薇の花弁を籠に摘み集めた。
指先にしみつく薔薇の香りを、足元の芝生からたち上る草のにおいを、今でも覚えている。
それから、いつもは気ままな幼馴染が少し離れた薔薇の茂みに座り込み、黙々と作業する背中を。
夢中になって何かを作り上げる小さな少年の背中が、今現在の主の背中と重なる。随分と年を重ね、広く逞しくはなったけれど、夢中になると周りが見えなくなるあの背中は、今も変わらない。
(あの頃から私は、あの背中が)
幼馴染の背中を横目に、手にした籠がいっぱいになるまで薔薇の花を集めたあたりで、ふわり、薔薇とは違う甘い香りを感じた。顔を上げると、正面にニコニコと笑う幼馴染の少年が後手に立っている。
――目を閉じて
楽しげな様子に首を傾げつつ、素直に瞼を伏せれば、頭に何かがフワリと乗る感触。
――屋敷に戻るまで見ちゃ駄目だよ
此方を覗き込み、彼は満足げに大きく頷いた。大真面目に言われ、怪訝に思いながらも小さく肯う。艶やかな花弁でいっぱいの籠を二人で抱えて屋敷に戻る道すがら、出会った庭師やメイドの大人達が皆揃って笑みかけてくるのが心底不思議だった。
花籠を届けに向かう途中、幼馴染は屋敷のどこかに行ってしまった。追うわけにもいかず、花盛りの中庭で砂糖漬けの準備をして待っていた奥方に花籠を持参して、
――素敵ね
道すがらに会った大人達と同じ優しい微笑みを貰った。
――頭に何が乗ってるのでしょう?
堪え切れずに尋ねて、幼馴染とよく似た楽しげな笑み浮かべる奥方に連れられ鏡の前に立った。
あの時姿見に映った幼い自分自身を思い出す。
金髪を肩で切り揃えた少女の頭には、菫の冠。戸惑い顔の少女を彩る花冠の、小さくとも鮮やかなヴィオレット。あの時に己の心を満たした甘い香――
(あの人は、)
己が主とした彼は、そうやって人の心に小さな楔を少しずつ打ち込んで行く。心に固く根付いて離れぬ、優しい記憶の楔。そんな風に勝手に打ち込まれては此方は困るばかりだと言うのに。
眼鏡の奥の瞳に憤りの色が僅かに滲んで強張るも、手にした紫の花を見下ろせば、その色は淡く溶ける。甘く柔らかく、白い頬に照れたような薄紅が浮かぶ。
「でも、日本にも『スミレ色』という表現がありますよね?」
香りの記憶と共、手にした花に適する日本語が浮かんだ。
ニオイスミレ。花の名さえも心に見つけ出す。
傍らに穏かな顔で佇む青年に向け、エリザは微笑む。
「ヴィオレットはヴィオレット。スミレはスミレ色。その方が素敵ですよね」
「そうですね」
ちっぽけな花一輪を手に理知的な笑み浮かべる女性に、透は如才なく笑み返す。それではさようなら、と物腰柔らかく踵を返し、白黒の花園を再び歩む。
(想いを抱いて花に触れることが鍵か)
花に色が宿った瞬間の女性のどこか懐かしげな瞳を思い出す。
(けれど)
あんな顔が出来る花を、己は知っているだろうか。
(花の色を見つけられなければ、この世界に閉ざされるのか)
色のない、すべてが作り物じみた花園。
それも悪くはない、そう思えば唇が皮肉な笑みに歪んだ。知らず靴先に落ちていた視線を花園いっぱいに広げる。
風のない空の下、不意に忌まわしい温もりを見た気がして、その色に胸をつかれた。瞬きひとつのうちに見失った柔らかな色を、けれどもう一度見るべく瞳を凝らす。
見たくない思いと見たい思いがせめぎ合う心のまま、足を進める。ほんの数歩進んだだけで、その花に視線が引き寄せられた。
見た筈の色は無く、色彩無くした数多重なる小さな花弁に陰影だけを沈ませる、その花。
――蒲公英。綺麗ね
――かわいいね
ふと、懐かしい声が耳をくすぐる。
脳裏に広がる茜の色に、掌に蘇る母の手の温もりに、透は片手で顔を覆う。記憶すらも曖昧な幼い頃の優しい思い出に、何気ない優しい会話に、思わず息が詰まる。
昼の青さを残す夕空の下、母と手を繋いで家路を辿った。その途に見た、道の片隅にふうわりと花を広げる蒲公英。
――お母さんの髪の色みたいだね
あどけない己の声すら思い出して、反吐がでそうになる。何の屈託もなく笑うことの出来た、あの頃。
母が己と呑んだくれの父を捨て、違う男と逃げてしまうとは思いもしなかったあの頃。
――あなたの髪の色にもそっくりよ
心の奥から引きずり出される母の声が暖かくて懐かしかった。そんな風に思ってしまう己が気に入らなかった。
母と同じ色した己の髪の根元を掴む。肌が痛みを訴えるほどに強く掴んで後、母の思い出を叩き捨てるように髪から手を引き離す。
捨てた思い出の代わりに足元に咲く蒲公英を摘む。掌の中、光を浴びるに似て明るい黄色を取り戻す、春浅い頃から咲くその花を見もせず、来た道を戻る。白黒の花に包まれて座る少女の前に立つ。幾つかの花に飾られた少女のスカートの膝の上、摘んで来た蒲公英を無言で放る。
少女が胸に抱いていた菫の花に重ねて蒲公英を拾い上げる。菫色があるということは、あの凛々しい金髪の女性は一足先に元の世界に帰ったのだろう。
「きいろ」
胸に渦巻く複雑な思いがひたすらに厭わしかった。
あどけない笑み浮かべる少女から瞳を逸らす。色彩失せた、一度は気に入ったはずの世界から、黙したまま去る。
「……お、帰ったのか」
少女の前に立った青年の姿が雪のように白黒の世界から溶けて消えて、祐は琥珀の眼を丸くする。
「俺も、助けてあげなくちゃな」
呟いて、モノクロの花園に眼を凝らす。少女の願いを叶える花は、己が少女に色を伝えられる花は、どの花だろう。
「あ」
大輪開く花々に隠れながら、精一杯空に茎を伸ばして小さな花を幾つも咲かせる、
「……なんだっけ、懐かしい」
春になれば道端に咲く、何処にでもあるような、その花。
柔らかな黄緑の茎に、真中の黄色を抱いてめいっぱいたくさん開く白く細い花弁。
(淡桃がかったものもいてさ)
記憶にあるその花の色を思い出す。この花の色ならあの子に伝えられそうだと花に手を伸ばす。細い癖に案外強い茎を掴み、力を込めて手折ると、チクリと胸が痛んだ。
(ごめん、ちょっとだけもらうよ)
花に詫びて、残った花の一輪を指先で撫でる。
(そう言や、あの日もこうして手折ったっけ)
花を手にして、思い出したのは十年程前の春の日。
入院している母のためになにか持って行きたくて、でも何にすればいいのか分からずに病院に向かう道の途で見つけた花だった。容易く見つけられた見舞いの花。
ただ単純に、花ならいいかなと思ってその花を摘んだ。病院の売店で貰った牛乳瓶を花瓶にして、母の病室へと急いで、
――来たよ
開けた扉の向こう、ベッドには小さな女の子が居た。
部屋を間違えたらしいと気付くより先、女の子と目が合う。開け放たれた窓から春の風が吹き込む。風に連れられ、桜の花びらが白い病室に舞う。女の子の白い肌を覆う黒い髪が風に揺れる。
こちらを見つめる鮮やかに赤い瞳が、瞳に焼き付いて離れなかった。
気がつけば、彼女に話しかけていた。持っていた花を渡していた。
懐疑心をあらわにする、どこか人形じみた印象の彼女が笑ってくれないかと思いつく限りの話題を口にしたように思う。
笑って欲しかった。
サイドテーブルに山と積まれた本に植物図鑑を見つけて、花の名前を問うた。知らないと首を振る彼女のベッド脇にパイプ椅子を引き摺って並び、図鑑に花の名前を調べた。
「そう、ハルジオンだ」
花の名を思い出して、祐は笑みを零す。
(そうそう、貧乏草の別名が出てきたもんだから慌てて隠したっけ)
掌にそっと掴んだ春紫苑の花を見下ろす。記憶にある通りに優しい春の色を取り戻した花の姿に頬の笑みを深くする。
今も鮮やかに思い出す、命溢れる春の陽の中にあって儚い赤い瞳したあの女の子。
(今思うと、あれが始まりだったのかもな)
あの出会いの後、機会を見つけては彼女のもとに通った。枕元で、夕暮れの屋上で、会うたびにおどけて殊更に明るく笑って見せた。
あの時は、病床の女の子を元気付けたい一心だった。
あの時は、自覚がなかった。
(初恋)
笑みに寂しさが混ざる。彼女とはしばらくして会えなくなった。会えなくなってから、彼女に抱いた恋心に気づいた。
掌の中、ハルジオンが色を鮮明にする。
モノクロの花園で、祐は無邪気に色づくハルジオンを見つめる。
(花言葉は、)
記憶を辿り、日傘の少女への道を辿る。
(……『追憶の愛』)
胸に抱いて、己の中で確かに咲く、その記憶。
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15人
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15人
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2015年02月10日
参加申し込みの期限
2015年02月17日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年02月17日 11時00分
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