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花の色は
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「花の色を、教えて?」
日傘差した少女に求められ、
八神 修
はモノクロの世界映す一重の瞳を瞬かせる。地平まで広がって見える果てしない花畑の中にひとり座す日傘の少女のスカートの膝には、幾本もの花。
白黒の世界にあって、どこか人形じみた容姿の彼女と彼女の持つ花だけが鮮やかな色彩を帯びている。無造作に引き千切られたもの、丁寧に手折られたもの。彼女に乞われるまま、彼女の元に花を届けた人々が先にいるらしい。
「それだけで構わないのか?」
神魂の影響であることを確信しながら問う修に、少女は肯定を示して顎を引いた。
花の香ばかりが意識に触れる、色の無い花畑に足を向ける。
(花か)
すぐに想起したのは、星ヶ丘の自宅の庭に咲く花々。
八神家に勤める庭師に丹精こめて育てられ、季節ごとに庭を様々に彩る花の中、美しい花を咲かせると知っていても、百合や水仙等は敢えて除いている。それらの植物が、自宅で沢山飼っている犬や猫の命を奪いかねない故に。
日傘の少女と同じにどこか作り物めいた花に溢れる煉瓦の道を辿る。
白黒の世界にあって思うのは、色とりどりの花に囲まれて遊ぶ愛犬や愛猫の記憶。
甘えん坊の白猫ミルクが足に体を摺り寄せる仕種や、勇敢な黒猫ブラックが花の中に飛び込んで跳ね回り、時々ひょこっと顔を出すその様まで、まるで目前にあるように思い出して、修は思わず唇に笑みを滲ませる。様々の性格そのままに花と戯れる猫達は、みんな可愛らしかった。
真夏の陽射しに芳香放つ小さな花に桃色の鼻先を寄せる三毛のマーブルを思いながら、樹木に蔦這わせて咲く無色の茉莉花に触れれば、その花は淡い金色を央に抱いた白の色に。
晩夏の宵の風に魚のかたちした花弁を揺らす花に前肢でちょっかいをかける鯖虎のパトラを思いながら、繊細な形した満開の金魚草に触れれば、その花は涼やかな鰭にも似た緋の色に。
己の群がってじゃれつく愛猫達を抱きしめ優しく撫でるように、修は色を取り戻した花を手折り胸に抱く。
花の香りに満ちた胸を開いて仰ぐ空を埋めて、視界いっぱいの花。梢がしなるほどにみっしりと集まり咲いた花が、一瞬華やかに儚い桃色に染まって見えて、修は目を瞠る。
視界を埋めた薄紅は、けれど咄嗟に顔を覆った手にひとひら、白い花びらが触れた瞬間に薄れて消える。
掌に花弁を握りもう一度顔を上げれば、天を覆うほどに巨大な、
(桜だ……)
風のない花畑にあって、音もなく桜が散る。色のない花びらの乱舞の最中、立ち尽くす。
(桜の樹は幹の中から桜色だと誰かが言っていたな)
思い出すのは、風に音たてて揺れる満開の桜。舞い散る桜の、その春の暖かな吹雪の中を、いつだったか母と歩いた。
小さい頃に母と辿った堤防の桜並木を思う。一際巨大な桜の樹の、その重たく横に張り出した枝を、風に舞う無数の花びらを、思い出す。
空にも枝にも道にも母にも、母と手を繋いだ己にも、ひらひらと軽やかに甘やかに、懐かしく降り注ぐ、その桜色。
桜の色と共、亡くした母への寂しさがチクリ、針のように冷たく胸を刺す。けれど、この島に来てから、この島に宿る不思議な力のお陰で天国の母とは二度ほど話が出来ている。
寂しさの痛みが、温かく懐かしい気持ちに和らぐ。
掌に握った花びらを見下ろせば、色彩失せていた桜はいつの間にか薄紅を取り戻していた。瞳を笑みに細めてもう一度空を見上げて、
――天覆う桜花が、風に揺れるが如く鮮やかな色を広げて行く。
降り注ぐ花びらが薄紅に変わる。
その薄紅の霞の向こう、懐かしい人影を見た気がして、
「母さん」
母を呼ぶも、春の先に母の姿はない。
桜の樹木の下に立ち尽くし、修は母を思う。桜並木を母とゆっくりと辿り、目が合う度に笑いあった幼い日を思う。
言葉は無くても、今は傍らに居なくても、
(気持ちは伝わっている)
そう信じて、歩みを進める。
桜ひとひらを掌に包み込み、桜の空を過ぎる。
雪柳の茂みを傍らに金木犀の香を嗅いで視線を巡らせたその先、もうひともとの桜を見つけ、修は足を止める。
色のない桜の樹の下、頭上の桜と同じに真っ白な髪の少女がひとり。
雪色の肌した横顔が、修の足音に気付いて揺れる。
白い髪に縁取られた頬の白さに、鮮血の色した瞳に、修は目前の少女にも気付かれぬほどにほんの僅か、眼を細める。
血色の瞳を真直ぐに見て微笑み、静かに目礼して詫びる。
「すまない、邪魔をした」
「……いや、構わない」
小柄で可憐な容姿のその癖、固い口調で首を横に振る少女の妨げにならぬよう、修はその場を離れる。
白黒の花園を遠ざかる、同い年ほどの少年の伸びた背中を見送り、
桜 月
は意志の強そうなまなざしを再び頭上覆う色彩の失せた桜に上げた。
思い出すのは、あの春の日。
閉め切られた窓の外に溢れる桜の色を、よく覚えている。
窓からの光を集めた姿見の鏡に、ドレス纏うて立ったときの嬉しさを、よく覚えている。
普段は屋敷の外に出ることすら許されてはいなかった。だから、毎年桜一族が一堂に会する花見の席に、今年はうちが主催だからといつもは許されない己の出席を許してもらえたときは、飛び上がるほど喜んだ。
あの時は幼すぎて気がつけなかったけれど、あの時、己を見る父と母の眼には不安に満ちていた。あれはたぶん、親類縁者の眼に己のこの白髪紅眼が触れることを恐れていたのだ。
父も母も、己の容姿を何より気味悪がった。求めるものは大抵与えてはくれたけれど、二人共、決して目を合わせようとはしてくれなかった。言葉を交わすことさえ避けていた。
それでも、着付けを手伝ってくれたメイドが、ドレス選びを母が行ったと言ってくれれば素直に信じた。嬉しかった。
華やかな気持ちで春の温もりに溢れ、一族の人々で賑わう屋敷の庭に出た。
――この傘の下から出てはいけない
人目を避けるように、桜の群生から外れた場所に設置された日よけの傘の下にひとつきりの椅子に座らされても、厳しい顔で言い聞かされても、喜びは変わらなかった。
外に出られたことが何より嬉しかった。
傘の影の中にいても感じる暖かな陽射しに、きらきらとさざめく太陽の光に、自然と顔が綻んだ。堪え切れぬくすくす笑いが零れた。
――いけません、月さま!
気が付けば、周りに控えるメイドの制止を背中に、庭へ駆け出していた。靴底に感じる芝生の感触が楽しかった。色素のない肌を苛むようにヒリヒリと春先の太陽の陽射しが染みることさえ面白かった。花見の席で笑いさざめく一族の人々の上に咲く桜が、風に流れて明るい春空に舞い上がる様子がとてもとても、綺麗だった。
枝を垂らす雪柳のトンネルを抜け、庭師達が整えた花壇に咲くチューリップやマーガレットを指先でつつき、――庭の外れ、他の桜の樹からは離れて生えた桜の下を走り抜けようとした目の前、まるで誰かが放り投げてくれたかのように、桜の花がついた小枝が降ってきた。
――わあ!
拾い上げた小枝に咲く薄紅の桜は、宝物のように綺麗だった。きれい、と呟いて、その綺麗なものを誰よりもまず父と母に見せたくなった。こんなに綺麗なものを見せてあげれば、二人共きっと喜んで笑ってくれると、その時は無邪気に信じて、二人の居る桜の下へと懸命に走った。
――おとうさま、おかあさま!
親族に挨拶をして回る父母を見つけ、息を切らせて駆け寄る。両手で大事に持って来た桜の枝を得意顔で掲げて見せる。
揃って驚いた顔をする二人に、きれいでしょう、そう言おうとして、
――月
恐ろしく怒った顔の母に手を掴まれた。周りの親族に謝り始める父の背中に言葉を失くした。
母に引き摺られるようにして元いた傘の下に連れ戻され、
――どうして言いつけを守らないの
低く怖い声で問い詰められた。
――ドレスもこんなにして
言われて初めて気がついた。母が折角選んでくれたドレスを土埃や草の汁で汚してしまったことが辛くて、体から血の気が引いた。
――ごめんなさい。ごめんなさい、おかあさま……
――もう傘の下から出ないで
ただ謝る事しか出来ない己に、母は忌まわしそうに背中を向けた。こちらを見ようともせず一族の人々に詫び続ける父のもとに向かおうとするその背中に、拾った桜を掲げて、けれど母は決して振り返ってはくれなかった。
寂しかった。
悲しかった。
身動きすることすらも拒まれた気がして、ただ俯いて座っていた。己は人形なのだと己に言い聞かせた。だから何も感じないと。
――綺麗だね
凍らせようとしていた心を包んでくれたのは、祖父母の掌とその言葉。
椅子に座るだけの月の傍に並んで膝をつき、父母でさえ気味悪がる瞳をまっすぐに見つめてくれた。あげる、と桜を差し出した手を、祖母が嬉しそうに包んでくれた。いい子だね、と祖父が頭を撫でてくれた。
(それがとても嬉しかったんだ)
今があるのは、あの時祖父母に会えたお陰。
あの時のように足元にふわり、花のついた小枝が降る。淡く笑んで拾い上げるその手の中で、桜が息を吹き返し温かな色を得る。
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シルバーシナリオ(150)
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3人まで
シナリオジャンル
日常
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SF・ファンタジー
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年02月10日
参加申し込みの期限
2015年02月17日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年02月17日 11時00分
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