怪人セブンの復讐｜リアクション

怪人セブンの復讐

　李の救出という新たな目標が出来たため、本隊の【突入Ｃ班】と【突入Ｄ班】も同時突入することになった。
「予定外の事態だが……、俺たちのやることは変わらねぇ」
　リーダーの如月庚が冷静に告げた。
「俺たちが目指すのは５階のアジト、そしてそこにいる親玉だけだ……。きっと、李もそこにいるはずだ」
「ああ……、その為にも体力を温存しながら進まないと……まーこのメンツなら安心して前線を任せられるぜぃ！」
　志波はこんな時でも笑顔だ。
　内心、自己嫌悪になるほど、笑顔であった。
「これは困ったことになったねー、でもセブン絡みの事件って予測不能なことがよく起こるから、不思議と驚かないんだよー」
　三ヶ島葵は相変わらずニヤニヤと口元を緩ませていた。
「ということで、如月くん、御剣くん、志波先輩……よろしくだよー」
「おう、よろしくな、三ヶ島……」
　御剣の顔は、憤怒に染まっていた。
「……よくも俺の仲間を！　メサイア、俺を怒らせたな！？」
　憤怒の大罪を自認する御剣刀は、木刀を握る手に力がこもる。
　今にも飛び出しそうな御剣の肩を、【突入Ｄ班】のリーダー、シグレ・ナイトウォーカーが軽く叩いた。
「りきみすぎだ、御剣。肩に力が入ってたら、いざという時の剣筋が鈍るぞ？」
「でも、ナイトウォーカー先輩。こうしている間に李の身に危険が！」
　歯を食いしばり、御剣はこめかみに手を当てた。
「くそっ、まただ、頭が痛い……！　俺は、自分の手が伸ばせる状況で誰かを救えないなんてこと、もう二度と御免なんだ！」
「落ち着けよ、御剣！　いつも冷静なお前はどこにいったんだ？」
　同じ剣道部の仲間、笹森清真が御剣を一喝した。
「俺はセブン絡みの事件に巻き込まれたのは初めてだし、御剣がこれまでどんな想いで事件に関わってきたのか知らねぇけど、今は怒りに任せて突っ込もうなんて愚策はするな」
　御剣は木刀を持っていない方の拳をギュッと力いっぱい握り締めた。
　それに笹森が手を添える。
「……俺だって、出来ることなら今すぐに突っ込んでメサイアの連中をぶっ飛ばしたい。でも、今はそれじゃ駄目なんだ。俺はシグレ先輩を信じて、出来ることを精一杯やる。だから、御剣も如月たちと協力して、親玉をぶん殴ってくれ」
　笹森の言葉に、御剣は唇を噛み締めて自制する。
　そこへ楢木が御剣にエールを送る。
「Ｄ班は他の班の援護が仕事……ってシグレ先輩が言ってたぜ！　まー、俺は難しい事は分からねーから、御剣たちがピンチの時は直ぐに俺たちが助けてやる！」
　そう言って楢木はパーカーの内ポケットに忍ばせていた小袋を差し出した。
「にくきゅうマカロン、１個だけポケットに入れていたのを思い出したんだ。甘いものはイライラ防止になるらしいぜ？　ほら、遠慮せずに食っとけ！　な？」
　あんなに食べたがっていたマカロンを御剣の手に握らせる楢木。
　これは楢木なりのエール、信頼の証。
　そのことを察した御剣は、マカロンの小袋を破いてかぶりついた。
「さすが『Raton』のにくきゅうマカロンだ。変わった味だけど、美味いな。ところで何味だ？」
　御剣が食べた黄緑色のマカロンの味を楢木に尋ねた。
　すると楢木は胸を張って答えた。
「ピスタチオ味だぜ！　イケるだろ！？」
「なるほど……、どうりで香ばしいわけだ……」
　御剣がマカロンを完食する頃には、怒りもすっかり収まっていた。
　両手を合わせてお辞儀しながら、御剣は楢木に感謝した。
「ごちそうさまだ、ありがとな、楢木」
「無事に寝子島へ帰れたら、好きなだけ食わせてやるぜ！　あ、御剣のおごりでな？」
「なんでだよ！？」
　ぺちん、と御剣が楢木のおでこを叩いた。
　そして自然とこみ上げる笑い声。
　一時のやりとりは意味がないように見えるが、２人の絆を確実に強固なものにしたのだ。
「……それじゃ、そろそろ作戦決行ってことで」
　逆巻の合図を受け、13名の少年少女たちが死地へ赴く。
　雑居ビルの前に到着した彼らを待ち受けていたのは……。

　♪ぴんぽんぱんぽーん！

『あーあー、撲滅隊の間抜けども～、あっしはメサイアの一員だったのさぁ！』