怪人セブンの復讐｜リアクション

怪人セブンの復讐

【撲滅隊の突入→驚愕→銃声】

　急転直下。
【隠密Ａ班】の連絡を受けた【情報班】をはじめ待機メンバーに衝撃が走る。
　骨削は行方不明（しかしあまり心配されていないのは、日頃の行いのせいか）に加え、李の身柄拘束。
　たちまち撲滅隊の動きが鈍る。
「隠密Ａ班はどうするって？」
　逆巻の疑問に、黒依は神妙な顔付きで答えた。
「……このまま、２Ｆへ哨戒するそうよ。それと【内部工作員】のおかげで１Ｆ迷宮の大半は意味を成さなくなってるし、マッピングも埋まったわ。先行している２人も既に２Ｆの調査とマッピング情報を送ってきてくれているわ」
「分かった……。それじゃ、僕たちの出番だね……」
　逆巻は静かに同じ班のメンバーに告げた。
「時間がない。僕たちは【隠密Ａ班】に追従して、一気に３Ｆまで制圧するよ」
「糞がァッ！　メサイヤのクズどもめッ！　俺様の大事な愛で対象の李を人質に取りやがってよォ！？　ブッ殺してやるぜッ！」
　李の八極拳の師匠であり親しい友人、犬神花梨の怒髪天を衝く様に、クロウディア・Wも拳を鳴らす。
「叢雲もメサイアも腐ってやがるぜ！　穏便に済ませたかったが、こうなった以上、俺も本気出さざるを得ないな」
　クロウディアは怒りをろっこんのエネルギーに変換するイメージを練ると、たちまち白色の装甲を纏った二足歩行ロボットに変身した。

「難しい事考えるのは苦手なんだ。そういうのは、逆巻、お前に任せるよ。なぁに、最悪、俺が盾になってやるからさ、泥船に乗った気持ちで居てくれ」
「そこは、大船じゃないかな？　泥船だと、沈んじゃう……」
　オロオロと落ち着かないのは十文字若菜。
「どうしよう……、小麗ちゃん、大丈夫かなぁ？　相手は銃を持っているんでしょ？　やっぱり、ただの高校生の私たちには無理なんだよ……」
　怯える十文字。
　そんな彼女に、三城竜太が後ろから優しく抱き締めた。
　セクハラである。
「若菜先輩、こういう時こそ愛です！　愛を信じていれば、必ず小麗先輩を救出できます！　僕たちは仲間です！　協力し合いましょう！」
　三城の励ましに、十文字の胸の奥が熱くなる。
「……ありがとう、竜太君。すごく勇気出たよ！」
　十文字は三城へ向き直るとハグをした。
　三城のやる気が30倍まで跳ね上がった。
「若菜先輩、大ッ好きです！　勿論、皆さんも大好きです！　大好きな先輩たちの愛を届けるために、僕は頑張りますよ、天野先輩！」
「うん、頑張ろうか、三城」
　話を振られた逆巻は、至極フラットな口調で答えた。
「ところで、轟先輩の姿が見えませんが、どうしたのでしょうか！？」
　三城の言う通り、風雲児轟の姿がどこにも見当たらない。
「……さっき、緊張でお腹痛いといって、トイレを探しに行ったぞ」
　黒服も一緒だが、と如月が答えてくれた。
「……やれやれ、この非常時に」
　呆れる逆巻。だが、次の瞬間、彼は目を疑った。

　黒服がローカルヒーローを連れて戻ってきたのだ。

「腹痛で急遽リタイアした風雲児君に代わり、俺、参上ッ！」

「救出ッ！　撲滅ッ！　まとめてストレイトに決めるぜッ！」
　ポーズを決めるローカルヒーローに、撲滅隊は呆気に取られる。
「寝子島ローカルヒーロー、『ザ・ストレイト』！　あとは俺に任せろ！」
「なんで寝子島のローカルヒーローが、こんなところにいるのかしら？」
　神野が目をぱちくりさせた。
　それにザ・ストレイトは答えた。
「ヒーローは寝子島のみんなの危機とあらば、地球の裏にだって駆けつけるぜ、真っすぐにな！」
　ビシッと親指を立てて決めポーズ。
「うわ、本物のヒーロー！？　すげー！」
　楢木はちょっとテンションが上がっていた。
　一方、ヒーローの横に居る黒服は、とても複雑な表情を浮かべていた。
　お察しのとおり、ザ・ストレイトの正体は、ろっこんで変身した風雲児である。
（彼だけはろっこんの内容を虚偽申告していたのだ。ヒーローは正体を隠すのがセオリー）
　……撲滅隊の大半はその事実に気が付いているのだが、あえて真実を口にしようとしなかった。
　日本人の奥ゆかしさの表れである。
「という訳で、寝子島のみんな、攫われた少女を助けに行くぞ！」
　ザ・ストレイトのテンションに気圧される【突入Ｂ班】であった。