"Saying, 'Go to this people and say:"Hearing you will hear,
and shall not understand; and seeing you will see, and not perceive;
For the hearts of this people have grown dull.
Their ears are hard of hearing, and their eyes they have closed,
lest they should see with their eyes and hear with their ears,
lest they should understand with their hearts and turn,
so that I should heal them."'
――――――From "The ACTS of the Apostles" Chapter 28
<第1部のあらすじ>
今年4月、雨の日の教会の事件がきっかけで白亜の殺人鬼が引き起こした一連の殺人事件。
3ヶ月間続いた凶行(通称『地獄の3ヶ月』)は7月に遂に終止符が打たれた。
白亜の殺人鬼こと怪人セブンの正体は、芽森 菜々緒の裏人格『七男』の仕業だった。
菜々緒に関わってきた仲間たちは、彼女を救うべく、また彼を止めるべく奔走。
そして異空間のオペラハウスの決戦にて、ナナオたちは刺殺された。
もれいびたちの懸命の治療によって蘇生したものの、以前の人格は消滅。
残されたのは代替人格『女王』のみだった。
その後、七男があらかじめ用意した替玉の犯人たちが逮捕、世間の目を欺いた。
そして一夏の間、『女王』――芽森 菜々緒はフツウの少女として幸福な時間を手に入れたのだった……。
【唐突な幕開け】
君は随分と長い間眠っていたようだ。
体がズキズキと痺れるような痛みを訴えている。
目を開けると、見慣れない風景が飛び込んできた。
監獄を思わせる鉄格子。薄暗い室内。
打ちっぱなしのコンクリート床は、真冬を思わせるほど冷たかった。
体を起こそうとするが、手足の自由が利かない。
何かで強く打ち付けられたような痛みが全身に走る。
自分自身に何が起きたのか、君はゆっくり記憶を辿ることにした。
――観光客と名乗る男女2人組に声を掛けられ、
――道を尋ねられて、余所見をした瞬間……。
――火花。
……激しい頭痛が君を苛む。
辺りを見渡せば、同じように意識を取り戻した少年少女が困惑の表情を浮かべていた。
君と同じく背後から頭を殴られて昏倒した者もいるようだ。
中には、ろっこんで不意を突かれて、騙されて付いてきたら閉じ込められた、なぞ理由は様々だ。
それにしても、見知った顔が多いのは気のせいだろうか?
……と、その時。
「ほら、おとなしくしてろ!」
黒服の男がまた新たに少女を牢の中へ叩き込んだ。
君は彼女をよく知っていた。
透き通るような白亜の少女――怪人セブンの成れの果て、
芽森 菜々緒。
菜々緒は顔にアザを作って床に倒れ込んだ。
どうやら気絶しているみたいだ。
一体、何が起きたというのだろうか?
「これで全員? ……ちゃんと確認しましたか?」
牢の外から、若い女性の声が聞こえる。
「分かりました、それでは『名も無き英雄たち<ネームレスヒーローズ>』との初邂逅と参りましょう」
声の主は牢へと近付いてきた。
そして、直ぐにその姿を現した。
燃えるような赤髪のショートボブ。
ひと目で上流階級と分かる佇まいと服装。
そして吐き気を催させるほどの強烈な殺意を彼女は発していた。
「ごきげんよう、『名も無き英雄たち<ネームレスヒーローズ>』の皆さん?」
女性の口調は明らかに怒りを抑えていた。
「あたしは
加納 泉月花(かのう いつか)と申します」
スカートの裾をつまんで会釈をした姿は、不吉にも彼岸花を連想させた。
「あなたたちを誘拐するように指示した首謀者――叢雲教団の主席巫女です」
叢雲教団……!
君は聞いたことがあるはずだ。
6月、
寝子電スタジアムで『正義』を振りかざした占拠事件の首謀グループが、叢雲教団である。
おそらく泉月花は教団のトップクラスの関係者なのだろう。
君は「なんでこんな事をした?」と尋ねる。
すると泉月花の目元が、わずかに数回痙攣した。
「決まっています、これは『復讐』です」
泉月花は両手で鉄格子を力一杯掴む。
「『名も無き英雄たち<ネームレスヒーローズ>』のあなたたちによって、そこの白いポンコツが打ち負かされて以来、私たちの計画は凍結せざるを得なくなりました。……せっかく人々が幸せになれる素晴らしい計画でしたのに、あなたたちの邪魔が入ったおかげで! 今や再開の目処が立たないくらいに破綻してしまいました!」
ガンッと怒りに任せて泉月花は鉄格子を蹴った。
「……ですので、今日は『英雄たち』を1人残らず誘拐し、ここで処刑することにしました」
君は『処刑』という言葉に耳を疑った。
このまま理不尽に殺されるのか?
……そんなの、真っ平御免だ!
君は噛み付くように叫んだ。
すると泉月花が鉄格子から離れた。
「ですが……、その気概があるのなら、1つ、あたしの依頼を受けてみませんか? もちろん、依頼を成功させれば、皆さんの身の安全は保証しましょう」
どういうことだ、と尋ねれば、泉月花はニヤリと邪悪に微笑む。
「あなたたち、怪人セブンになってみませんか?」
君は「具体的に何をさせるつもりだ?」と質問で切り返す。
すると泉月花はすぐに言葉を継ぎ足した。
「これから皆さんには教団と敵対関係にある危険なもれいびの集団『メサイア』の撲滅に向かっていただきます。『メサイア』はろっこんを悪用する不逞の輩。野放しにしておけば、いずれフツウが脅かされてしまうでしょう」
泉月花の話を鵜呑みにするならば、相当厄介な連中のようだ。
フツウを死守するため、『メサイア』とやらの横暴を食い止めるべきだろう。
しかし、泉月花の依頼を受けるということは、教団の一兵卒として動くということ。
これはつまり、身勝手な正義を振りかざした怪人セブンの行為の焼き増しである。
悩む君を見て、泉月花は懐から黒光りする金属製の物体を取り出した。
――自動拳銃ベレッタ92!
そして同時に自動小銃を抱えた10名の黒服の男が、泉月花の横に次々と並んだ。
銃口を向けた泉月花は言った。
「モデルガンではありません。教団側の独自ルートから仕入れた本物です。マガジン(弾倉)にも銃弾がぎっしり装填されています」
そういうと、泉月花は拳銃のセイフティーを解除した。
「言い忘れていましたが、あなたたちに拒否権はありません。
『メサイア』を撲滅しなければ、あたしはこの場で皆さんを射殺します」
泉月花は君に銃口を向けると、たおやかに微笑んだ。
そして、引き金に彼女の指が掛けられた。
だが、黙ってここで撃ち殺される訳にはいかない。
君はろっこんを発動しようと試みた。
「それともう1つ……」
泉月花は矢継ぎ早に言い放った。
「今、この場でろっこんは発動できません。……この人のろっこんが働いている限りは」
泉月花に肘で小突かれた黒服の男の顔には、大きなアザが出来ていた。
なぜそんなケガをしているかは定かではない。
だが、確かにあの男がいる限り、君と仲間はろっこんが発動できないようだ。
……となると、いよいよ本当に選択肢は1つしかないのだろう。
こうして何の前触れもなく開幕した第2幕は、いきなり風雲急を告げる!
さぁ、諸君! 生き延びるため、再びフツウを死守する時が来た!
手に取るべきものは、武器か、それとも……?
よぉ、いい夢は見れたか?
難易度:地 獄
※難易度については、焼きスルメのマスターページ参照
※この難易度は、乾物のシナリオのみに適用されるものです。
【過去の七罪シリーズ】
※第1部(菜々緒編)※
<序 幕・原罪>怪人セブンの邂逅
<第1幕・憤怒>怪人セブンの断罪
<第2幕・傲慢>怪人セブンの正義
<第3幕前編(番外編)>芽森菜々緒の友愛
<第3幕中編(外伝)>レディ・ロゼッタの運命考察 ※清水るねマスターとのコラボシナリオです!
<第3幕後編(本編)・嫉妬>怪人セブンの歌劇
※第2部(叢雲編)※
<序 幕・福音>このシナリオガイドです。
ガイド概要
君たちは叢雲教団によって誘拐されてしまった!
身の安全を得るため、泉月花の依頼をこなせ!
【誘拐された人たちについて】
・『名も無き英雄たち<ネームレスヒーローズ>』
→ネット上で囁かれる都市伝説の1つ。
『地獄の3ヶ月』にて怪人セブンと戦ったと噂される人々のこと。
つまり、前回の菜々緒編で戦ったPCたちのことを指します。
最近では漫画『怪盗ヘブン』でも彼らをモデルとしたキャラが登場している位の知名度がある。
第1部の『正義』、『歌劇』に参加経験のあるPCは、もれなくこう呼ばれます。
・なにかの間違いで誘拐されてしまった不幸な人
黒服の男が間違って誘拐してきた人物(=新規参加PC)のこと。
間違いとはいえ、すんなり解放してくれないようです。
諦めて依頼をこなすかどうか、考えましょう。
【ろっこん無効化】
部下の1人のろっこんによって、牢の中のもれいびたちはろっこんを発動できません。
<以下、PL情報(PCの知らない情報)>
男のろっこんの詳細です。
能力名『ノーモア』
発動条件『空腹時に3人以上の男性から殴られる』
能力『その建物の自身が存在する同じ高さのフロア内に限り、他人のろっこんを無効化する』
<以上、PL情報ここまで>
【依頼内容】
叢雲教団と敵対するもれいび集団『メサイア』の撲滅。
※今回は殺害目的ではない。必ず捕虜として、全員を生かしたまま連れて帰ること。
※敵勢力はかなり手強く、教団側は幾度か苦汁を舐めさせられている。
参加PCの中で『撲滅隊』と『牢に残る人質』に分かれます。
参加確定後に、コメントページに『撲滅隊』希望か『人質』希望かを書き込んで下さい。
撲滅隊の定員は、先着30名までとします。
撲滅隊の希望者が多い場合、希望していても間に合わず人質になってしまうこともありますので、ご了承下さい。
コメントページに書き込む際、『撲滅隊志願を宣言後、牢屋の中で残る者に声をかけて出て行くところ』や『人質として残る覚悟もしくは撲滅隊への言葉』などをロールプレイとして書き込んで戴くと更に雰囲気が出るでしょう。
(一部、リアクション内の台詞として採用する場合があります。ご理解下さい)
<撲滅隊>
教団の黒服の男6名とともに、マイクロバス3台で『メサイア』のアジトへ向かいます。
(3台のうち1台は捕虜運送用)
目的地に着くまで、窓はカーテンで遮られて外の景色を見ることはできません。
(駐車場は目的地から少し離れていますので、そこからは徒歩で移動です)
残してきた人質組の解放のために依頼完遂を目指します。
敵勢力を完全に撲滅(無力化)して下さい。
敵アジトは西東京のどこかにある5階建ての雑居ビル。
屋上以外は空きフロアになっている。
しかし、中は神魂の影響を強く受けているのか、迷宮化しているので注意。
このため、この建物内でのろっこんが敵味方問わず強化されます。
アジトは最上階に存在し、向かう手段は階段かエレベーターの2つ。
各階に見張りがいる可能性あり。
敵の人数は15名。全員がもれいび。
<以下、PL情報(PCの知らない情報)>
・4名が身体強化系ろっこん
(それぞれA:タフネス、B:パワー、C:スピード、D:ジャンプの強化)
・4名は射撃系ろっこん
(E:電撃、F:氷の弓矢、G:銃弾の軌道を自由に操る、H:火炎放射)、
4名は妨害系ろっこん
(I:敵を見失う幻覚、J:床を滑らせる、K:強風で吹き飛ばす、L:悪臭ガス)
3名は治癒系ろっこん
(M:踊って回復、N:触って回復、O:食べさせて回復)
リーダーはタフネス強化系ろっこんのもれいびAです。
敵は武装している可能性が非常に高いです。
・撲滅隊の人数が20名未満の場合、戦力不足で形勢不利となります。
戦闘を優位に進めるためにも志願者は多い方がいいでしょう。
<以上、PL情報ここまで>
<人質組>
牢に残り、人質となることを選んだPCたちです。
牢の外には監視役の黒服の男が待機しています。
<以下、PL情報(PCの知らない情報)>
牢に残った者たちは「淘汰されるべき弱者」と泉月花にみなされます。
撲滅隊が出立したあと、泉月花は人質たちの始末に取り掛かります。
「臆病者で使えないもれいびは、生かしておく意味はありません」
「全員の身の保証をすると言った覚えはありません」
彼女が手元のスイッチを押すと、牢の床が開いて人質たちは真下へ落下。
落ちた場所は淡水のプールになっています。
(水深1.5m)
地下プールから生還するためには、レンガ造りの壁を頭上の穴まで登る必要があります。
(高さおよそ8m、水の侵食の影響なのか僅かな突起あり、体重を支えるのに心許ないが頑張れば登れそう)
登るにはボルタリング(最小限の器具で岩山を登るスポーツ)の要領で登る必要があります。
地下に落下したことでろっこんが正常に機能するので、知恵を絞って這い上がる以外に生存の道はありません。
ただし、着水とほぼ同時に大量の水が流れ込んで水位が増していきます。
溺死しないように迅速に事を進めなければなりません。
水温も低いため、留まり続けるだけで体力が奪われていくでしょう。
(水位が上昇するのと反比例してPCの体力が減少していくとお考え下さい)
地上と水面の真ん中辺りの壁に、排水口が存在しています。
人間1人が這いつくばって出入りできそうなくらいの穴が金網で覆われております。
穴の中は真っ暗で、地下の下水道に繋がっています。
脱出は下水道から地上のマンホール
しかし、時間をかけすぎると水が流れ込んできて溺れてしまうでしょう。
君たちは一縷の望みにかけて穴に潜り込んでもいいし、無視して更に上へと登ってもいい。
尚、注水口はこの穴とは関係なく、外への脱出口に成り得ないので注意。
上まで登りきると、泉月花の部下が4人、牢の外で待機中。
(ろっこん無効化もれいびもいる)
PCを発見すると危害を加えてきます。
便宜上、黒服たちをA・B・C・D(ろっこん無効化)とします。
うち、Dだけ拳銃を所持、ほかの3名は金属バットを所持。
この4人のうち、Aがプールの水位を調節するスイッチを持っています。
(これを使うと水位の上昇を食い止め、排水が可能です)
牢を脱出後、奥へ進むと泉月花のいる管理室へ向かうことができます。
(素通りして、そのまま外へ脱出することも可能)
(撲滅隊はこのことを知り得ません。またその手段もありません)
<以上、PL情報ここまで>
【補足説明】
・加納 泉月花(かのう いつか):20歳 女性(詳細はプロフィール画面参照)
叢雲教団の首席巫女にして教団代表代行を務める最高権力者。
彼女の父親は叢雲の後ろ盾と噂される草薙薬品(クサナギセイヤク)の取締役社長。
人外じみた食欲の持ち主で、自身のことを『暴食令嬢』と呼ばせることも。
ちなみに、胸部の発育はとても良好である。
【追記】プロフィールが登録されましたのでご確認ください。(3月9日12時)
・菜々緒はかなり深いダメージを負っており、未だに意識が回復していません。
ヒーラー役のもれいびの力があれば意識は戻りますが、戦闘は難しいでしょう。
せいぜい、負傷した仲間を後方へ運ぶくらいしか期待できません。
・行動次第ではPCが重軽傷を負う可能性があります。
(傷の回復に時間が掛かる場合もあります)
・持ち物は衣服以外、日用品程度の所持品(2つまで)と定めます。
無理のあるものはマスタリング対象となり、最初から持っていないことになります。
・(PL情報)PCのみなさんが捉えられている場所は、奥秩父の教団関係施設の1つです。
マスターより
ごきげんよう、乾物こと焼きスルメです。
遂に、七罪シリーズ第2部『叢雲編』の序章が始まりました。
今回は“予習復習”ならぬ“予襲復讐”です。
つまり軽いウォーミングアップをこなしていただきます。
皆様の力を泉月花に見せ付け、無事に寝子島へ帰還しましょう。
今回はらっかみ!初のゴールドシナリオとなっております。
何卒、ご理解賜りますようお願い申し上げます。
また、第2部開始ということで人員も仕切り直しと致します。
乾物は新たに七罪シリーズに挑戦するあらゆるPCさん(PLさん)を歓迎します。
あなたも“名も無き英雄たち”になってみませんか!?
勿論、第1部からの継続参加もお待ちしております!
怪人セブンになるかどうかは、あなたの決断次第です。