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寝子島高校
秋雨に濡れ
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【雨は、やがて】
久しぶりに顔を合わせた旧友が、言いました。
楽しそうだね、と。
あの時は大変だったけど、良かったね、と。
「……そう見える?」
矢萩 咲
に、そんな自覚はありませんでした。
確かにこの街は、旧市街の界隈には、良い思い出がありません。目の前の友人と一緒に、少しばかりやんちゃをしていた頃。中学生時代。怖いものなど無く、それがために身体へ、心へ、多くの傷を負った記憶。
悔いて止まない過去。
それらを乗り越え、今、自分は明るく日々を過ごせているのだろうか。充実しているのだろうか。
「そうね。そうだったら、咲も嬉しい」
旧友の言葉にあたたかみを感じながら、用事を済ませて、別れを告げて。
何となく良い気分で、外へ出たところで。
「あ……」
さああ。さああと。静かなあの雨の音に乗り。
「…………あ……ああ……」
やってくるのです。
痛いほどに目に焼きついた、恐怖の色。取り戻せない、過去という名の絶望が。
いつも、雨が降っていました。強く、強く。稲光すら伴う、激しく、恐ろしいほどの豪雨が。
ある時は。扉を開けたら、ゆらゆら、ゆらり。咲の目線の高さで、一定のリズムを刻んで揺れる、両足。走る稲妻に照らし出された父の顔を表現する言葉を、咲は未だに持ちません。
ある時は。どたん、という音に駆けつければ、床へ這い蹲る母の姿。見る間に青く、冷たくなっていく肌の感触を思い出すたび、背から頭頂へと、抜けるような悪寒が走ります。
ある時は。あの男の、恐怖におののく顔。見開かれた瞳。自ら報復を加えてなお、再び脳裏へ浮かぶことすらおぞましい、一時は恋人と呼んだこともある、自分を弄んだあの男の顔。
そして。気が狂いそうなほどに白い、白い病室。鏡の中。ぼさぼさにほつれた髪。かさかさに乾いた唇に肌。真っ赤に染まった目、腫れたまぶた。見る影も無いほどに精彩を欠いた、自分の顔。
痛む傷。割れそうな心。
あの時失ったものを思うたび、咲は。咲は、かき乱されて。震えて。取り戻しようが無いことに怯えて、ひたすらに怯えて。
「……あ ああ。あああ あああああああああ……」
強烈にこみ上げた吐き気、ちかちかと白く瞬く眼窩の奥、フラッシュバックする過去の奔流、雨の音に押し流されるように、咲の意識は消し飛びました。
気付くと。そこは、旧市街のバス停のようでした。
サラリーマンらしき見知らぬ男が、怯えきった目で雨に打たれるままに、咲を見つめています。その表情を、咲は見たことがある、とぼんやり考え、そして程なく思い至りました。
そう。あの時の、あの男の……怯えた表情に、そっくり。
正気を失っている間に、ひどく暴れてしまったらしく、周囲にはいくつもの破壊の痕跡が残されています。咲を見つめる男もやがて後ずさり、足をもつれさせながら逃げていきました。
ここまで、自分は走ってきたのでしょう。咲もまた全身を濡らして、寒気が肌の上を這い、頬に張り付いた髪が、今日に限ってひどく鬱陶しく思えて。
あまりにも、惨めで……ばらばらになってしまいそうなほど、無残な気分。
「……んふふ」
少女が一人、椅子に腰掛けていました。ゆったりと足を組み、微笑みを浮かべながら。
「随分と、荒れていらっしゃるご様子でしたね。皆さん、逃げるように行ってしまいました」
「……君は、逃げないのか?」
口調が険しさを帯びたのは、警戒のためでしょうか。
それとも、弱った自分を取り繕う、咄嗟にまとった言葉の鎧だったのでしょうか。
「わたくし、いつもは見られる側ですから。こうしてオフの日くらい、見る側に回るのも、良いかと思いまして」
「何を……」
少女は。
胡乱路 秘子
は口角を上げ、言いました。
「とても、とても、悲しい思いをされてきたのですね。お父様とお母様のこと。恋人の……あら、ごめんなさい。元恋人の、男性のこと……」
「……っ!? 咲は、喋って……?」
「さあ、どうでしょう? そこが重要なのですか?」
にちゃ、と耳につく、粘着質な音。ちりちり、頭の後ろで鳴る、耳鳴りのような警報。
聞きたくない。
「わたくしが特に胸を打たれたのは、あの病院でのこと。とても辛い選択をされたのですね。あなたは、あなたの……」
「やめてぇッ!!」
自分でも驚くほどの大きな声が、咲の口から迸ります。
見も知らぬ少女がなぜ……なんて、考える余裕も無くて。ただただその先を、聞きたくなくて。
「辛い経験。悲しい過去。とても、とても、後悔されているのですね」
「やめて……」
「もしもその時、もっと早く気付いていたなら。もう少し、早く決断していたなら。迷わず行動に移していたなら。覚悟を持って、心を決めていたなら。そうしていたなら、あるいは……と」
「やめてッ……!」
耳を塞いでも、頭を強く振っても、指の間からするり、秘子の言葉は雨音と共に入り込み、咲を翻弄し。
「もう少し、上手くやることができていたなら。失った全てのものを、もしかしたら、手放さずに済んだのかもしれない。あなたはそうして、ずっとずっと、ご自分を責め苛んでいらっしゃるのですね。ご自分を、許すことができないのですね」
「…………やめて……もうやめて…………咲は……咲は、もう……」
濡れたコンクリートの上、咲はくずおれて、両膝をついて。
からからの喉。脳髄が沸騰するような、頭を占める圧迫感。じくりと痛む下腹部。
雨。雨の音。
こみ上げる嗚咽に身を任せるほか、咲にはもう、出来ることはありません。
「もう、嫌……雨の日なんて、嫌い。雨が、雨が、咲の心をかき乱して…………」
空を見上げれば、したたかに顔を叩く雫。灰色に垂れ込めた雨雲よりも、自分の心のほうがよほど、ぐずぐずと曇っているように思えます。
旧友の言葉が、よぎります。
「楽しそう……? 大変だったあの時を、咲は乗り越えて……今は、充実している? なんて、傲慢。なんて思い上がり。咲には……咲には、もう……」
自分には、もう。
「…………幸せになる、資格も、権利も……無いのに……」
さああ。さああと。雨が降るのは、咲を責めるため。苛むため。
あの時の記憶を幾度でも鮮明に蘇らせ、忘れさせないため。己の罪を、胸の内へと刻みつけるため。
そのために、雨は、咲を……。
「あ。んふふ、見てください、矢萩さん」
……ふいに。
楽しげな声で、秘子は、咲を呼びました。
「……なに、を……」
「空です。ほら」
す、と秘子は手を伸ばして。ためらいがちに咲はそれを握ると、冷たい感触と共に、身を起こし……言われるがまま、空を見上げて。
「…………あ……ああ……」
「矢萩さん……どんなに長く、降り続こうとも。どんなに強く、激しく降り落ちようとも」
目の前で。千切れて途切れ、両開きの窓のように開いていく、雲の切れ間。
暮れかけて、赤みがかった日の光。
「雨というのは、いつかは、やがて。上がるものではありませんか?」
服に染み込んだ雨水もそのままに、重たい足を引き摺るように歩く、
朝鳥 さゆる
の見上げた向こうで。
憂鬱に沈み込む気分を持て余し、手持ち無沙汰にバスに揺られる、
塔ヶ崎 璃亜
の視線の先で。
東屋の屋根の下、互いにかぶった仮面に遮られ、虚ろな駆け引きを繰り返す、
日向 透
と
斑鳩 遙
の頭上で。
気ままに流れる風に吹かれて、雨雲は、解けるように、溶けるように消えていき。
覗いた晴れ間のまぶしさに、目を細めて。
ね? と促すような、傍らの秘子の笑みに釣られて。ほんのちょっぴり、少しだけ。
咲は泣きながら、笑いました。
「ふわ……あぁ。起き抜けに見るには、最高の景色だなぁ」
雨音の心地良いリズムに、うっかりうたた寝。丸くなったキジトラ猫は、いつの間にやら膝の上。
ぽたぽたと、雫の残滓が待合所の屋根からこぼれ落ち。
猫島 寝太郎
は、明るくなった空へと向かって大きく伸び、次いであくびをひとつもらすと、改めて、その絶景へと目を向けます。
九夜山から眺める雨上がりの寝子島は、あたたかい茜色の中に、ゆったりと横たわり。夕焼け空は、寝太郎の顔を、ふにゃあと目を覚ましたキジトラ君の額をも、赤く染めて。
島中をまたぐようにかかる虹のアーチが、胸を突くような光景を、色鮮やかに演出していました。
「来てよかった。たまには雨も、良いもんだにゃー?」
キジトラ猫の背を撫でながら、ついついにゃ語で同意を求めてみれば、猫は、ほんとだにゃー。そう言って、まだ少し眠そうに首を巡らせて。
そのまま二人、しばらくの間、虹を見ていました。
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あとがき
担当マスター:
墨谷幽
ファンレターはマスターページから!
墨谷幽です。『秋雨に濡れ』のリアクションをお届けいたしますー。
雨の日には時折、何だかたまらなくなって、うおー! なんて叫びながら、傘も差さずに飛び出していって、思いっきり全身に雫を浴びてみたいような。そんな衝動にかられることがあります。
後が大変なので、まぁ、やりませんけれど。
そういうことって、ありませんか? 無いですか……そうですか……。
雨が降ると憂鬱になったり、何だか不安定になったり、いたたまれない気持ちになったり。むしろ浮き浮きして、嬉しくなってしまったり。人それぞれながら、誰しも感ずるところがあるものだと思います。
長雨や豪雨に、何かしらの実害が引き起こされるなんていうことも、時にはありますけれど。
ただ幸いなことに、今のところ、止まない雨。というものは、どうやら無いようです。
できることなら、いつも元気なののこちゃんのように、雨の日でもエネルギー全開!
自分もそんな風に過ごすことができたらなぁ、なんて、思ったりしつつ。
雨を通じて、皆さまにもしっとりと、何か感じていただけるものがありましたら、幸いです。
それでは、今回もご参加いただき、ありがとうございました。
またの機会にお目にかかれますことを、心よりお待ちしております。
皆さま、お疲れさまでした!
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日常
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20人
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20人
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シナリオガイド公開日
2014年11月26日
参加申し込みの期限
2014年12月03日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年12月03日 11時00分
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