こびとになっちゃった！～隠れ里に遺された落神伝説～｜リアクション

こびとになっちゃった！～隠れ里に遺された落神伝説～

●合流

　第三班が混乱を極めていたちょうどその頃、洞穴の入り口からしばらく奥に入った分岐地点には、ミミズ穴を攻略した第二班に続き、鍾乳洞の水路に挑んだ第一班が戻ってきて、待機していた第四班と合流していた。
　ミミズ班と鍾乳洞班はそれぞれ手に入れた宝を見せ合う。
　両班ともに手に入れたのは、かさかさとして半透明な蛇の抜け殻だった。すでに燃やされてしまった三枚目のことをこの場にいる一同は知らないが、繊細な模様があるところも、一枚だけ朱に染まった鱗があるところも三枚ともほぼ同じだ。

「まさか、伝説の巻物が蛇の抜け殻だったとはな」
　鍾乳洞の方の巻物はクローネの襲来に備えてダミーを用意するという周到さを見せた浮舟久雨が、胸の谷間に隠して運んできた。ミミズの方の巻物は後堂杖子の胸の谷間から登場する。豊かな胸の持ち主たちに感心しつつ、いまだミミズを身体に巻きつけたミミズの女王、桜崎巴も、
「いまのところ文字らしきものは読めないが、三つ揃えば何か分かるのかね？」
　と訝しげだ。

「クローネに警戒する方がいいな」
　鮫ノ口礼二郎がいった。
「俺がクローネなら三つ集まったときに奪おうとする。その方が手間が省けるからな」
「それはもっともですね。私たちも出来ることをしておきましょう。――お兄ちゃん」
　巻物を狙っている鬼崎あやめは何食わぬ顔でそういうと、冴木竜司の手をしっかと握って微笑む。
「デジカメ貸してください」
　竜司はあやめにデジカメを渡した。が、その表情は恍惚としつつも渋い。
「……なぜか、あやめちゃんに逆らえねェ……」
　それもそのはず、あやめの＜リリスの微笑み＞が発動していたのである。
　あやめはデジカメで巻物を撮影し、竜司の静止も聞かずにちゃんと撮れたかどうか再生して確認してゆく。竜司が資料だと言い張るパンツやおっぱいマウスパッドの写真に切り替わっても容赦ない。

　一方、御剣刀も携帯のカメラで撮影しながらひとりごちた。
「これで万が一クローネに巻物を取られても情報は得られるだろう……と思うんだが」
　正直自信がない。なにしろ、現段階でこの蛇の抜け殻から情報らしい情報を読み取れないからだ。
　とはいえ、用心に越したことはない。

　鋭い視線をあたりに向けながら、胸の内ポケットに隠しているエアガンに手をかけたままのナタリア・シシロヴァがぽつりと零した。
「非日常に巻き込まれるのはもう慣れましたが、色々と迷惑なので、
　この異常な寝子島の落神伝説を収束させてしまいたいものです」
　そのためにはテオ側につくほうが手っ取り早そう。こちら側にいる理由はそれだけだ。
「それにしても第三班、遅いですね……」

　その時、ガラガラと木のぶつかりあうような音！
「なんです？」
　ナタリアはエアガンのグリップを握りなおし、刀は弾かれたように顔を上げる。
「逆巻の合図だ！」
　刀と逆巻天野は洞穴に入る前にこんな話をしていた。

「ののこにはテオやクローネと違う何かがある。
　それはテオやクローネの態度を見ていれば明らかだ。
　それは何なのか？　過去の落神の事を知ったら何かわかるんじゃないかと思うんだ」
「僕も、過去のらっかみとは何か。興味があるよ」
　そういう天野に、刀は日頃考えていたことを話した。
　例えば、ねずと鈴島海賊は落神に関わる何かで繋がっていたのではないか？　とか、
　他にもそう言った繋がりを持つ人達が居るんじゃないか？　とか……。
「海賊との接点は面白い発想だと思う。神話、と言う意味でなら……」
　ゼウスやミノタウロス、牛頭馬頭、干支など思いつくまま考察を語り、それから天野はくすりと笑った。
「お互い。未知に貪欲なようだ」
「貪欲、というか俺のフツウを守りたいんだ。その為に情報が欲しい。だから巻物は守る」
「巻物を守るっていうのは僕も賛成。御剣が巻物の方へ行くならその間、僕は洞穴に入ってすぐのところで、クローネの襲撃に備えていくつか仕掛けをしておこう」
　こうして築かれたふたりの共闘関係。
「万が一のときは音で知らせるよ」
　その後天野は洞穴内に糸を張り巡らせ、そこに木片を吊るして鳴子のような細工をしておいたのだ。

「来たか、クローネ！」

　桜庭と小山内に知らせなければ。刀の脳裏で、ガチン！　と撃鉄の落ちる音がした。

◇

　そのしばらくあと、がおーがその場を通り抜けたが、気にするものはいなかった。