数多の夜を超えし腐敗の王（アサリ）｜リアクション

数多の夜を超えし腐敗の王（アサリ）

●たくさん召し上がれ

「私、おなかすいてきちゃった。常闇さんは？」
「そう言われると私も……」
　切り出された世界も、現実と同じくお昼時だ。
「昼食のご用意を致しましょうか」
「私、焼きそばを作りたいです！」
　大雑把な料理は得意、大味でＯＫということで焼きそばを作りたいと椿美咲紀が言い出した。
「お手伝いしましょうか？」
「私ひとりで大丈夫です」
「他の方も召し上がっていただくのでしたら、多めに作らないと。おひとりで作るのは大変でしょう。人手があったほうが良いと思うのですが」
　たしかに、と檜扇唱華に手伝ってもらうことに。
　作るのには何か理由があるだろうと、作りたいと言った理由を聞かず、唱華は美咲紀を調理場に案内した。
「たくさん召し上がる方もいるでしょう」
「常闇さん、ぶちょーのことお願いね」
「わかりました」
　常闇月は、八神修が動かないよう看ている。
「動いては駄目ですよ」
「わかっている」

「いろいろ食材がありますので、お好きなものを使ってください」
「すごーい！」
　業務用冷蔵庫には食材がビッシリ。ラーメンやカレーといった海の家定番メニューも作れるほどだ。
　ぶちょーに食べてもらうのです！　と美咲紀は張り切って野菜と肉を切り、焼きそばを作り始める。

　海の家の側で砂の猫を作っていた後木真央、恵御納夏朝、一緒に作ろうと真央に誘われた朝野未沙は、ソースの匂いを嗅ぎ付けた。
「おいしそうな匂いなのだ」
「……焼きそばかな」
「あたし、お腹すいた」
　そう言うなり、未沙の腹の虫が鳴る。
「真央ちゃんもお腹がすいたのだ。皆で食べに行くのだ」
「……僕も」
「あたしも」

　サーフィンを満喫した入江みつびとシダ美穂戸もお腹がすいたので、海の家で腹ごしらえ。
「はらへった、シダ」
「おなかすいたね。海の家にいこっか」
「海の家、ただらしい。全部たべよう、全部」
「テオくんが作った世界だから、タダだよね？」
「たくさんたべる、シダ」

　ビーチバレー勝負に勝って上機嫌の桜崎巴と響タルトは軽い足取りで海の家へ。
　それに対し「いくら払うんだ？」と財布の中身が気になる御剣刀は足取りが重い。
　勝負に疲れた日暮ねむるは、食べたらもう一眠りしたい……とあくびをしながら歩く。
　海の家に着くと、北原みゆきは３人分のラムネを注文する。
「テオさんが作り出したビーチですので、お代はけっこうです。今、お持ちしますね」
　それを聞き、刀は胸を撫で下ろす。
「刀くん、ビーチバレー見てたよ。ミス多かったね。どうしたの？」
　桜庭円にそう言われた刀は「たまたまだよ」と誤魔化す。沽券にかかわるので、理由は絶対に話せない。
「お待たせしました」
「待ってましたー！」
　タルトが唱華が持ってきたラムネをみゆきと巴に手渡し、その場で乾杯。
「勝利のラムネはうまいねぇ」
「うん、おいしい」
「サイコーだねー！」
　更に上機嫌のマフィアチーム。
「桜庭は遊んだりしなかったのか？」
「にゃーくんが心配だからね。暑さでバテちゃったみたいだし」
　部屋の隅の日陰で眠っているにゃーくんを見て、ボクが看ていないと大変だしと言う円。
　海の家に来た当初はぐったりしていたが、だいぶ落ち着いてきたようなので心配なさそうだ。

「八神さん、鼻血、止まってよかったですね」
　唱華の指示、適切な処置のおかげで、修の鼻血は止まった。
「何か飲むか、食べるかしますか？」
「そうだな……冷やし飴をいただくよ。あればだけど」
「わかりました。八神さん、以前より体力がついてきましたか？　体つきも少し変わったみたいですし」
「そうか？」
　月にそう言われ、すごく嬉しいのでニッコリ笑む修。
「皆、お待たせー！　焼きそばができましたー！」
　大きな皿にこんもり盛られた焼きそばを持ってきた美咲紀が、満面の笑みで完成を報告。
「たくさんありますから、遠慮なく召し上がってくださいね」
　それと同時に真央、夏朝、未沙、みつび、シダが海の家に入ってきた。
「皆も焼きそば食べない？」
　やっぱり焼きそばだったのだ！　と席に向かう真央に続き、他の皆も焼きそばが置いてある席へ。
「いただきまーす！」
　美咲紀が作った焼きそばを、皆、さっそく食べ始めた。