数多の夜を超えし腐敗の王（アサリ）｜リアクション

数多の夜を超えし腐敗の王（アサリ）

●駆け引きビーチバレー

（大人っぽい大胆ビキニで準備は万端。助太刀上等、何でもアリさ！）
　桜崎巴は、御剣刀を狙いたいが身体能力で勝てる気がしないので日暮ねむるを狙う。
（仕方ない、ねむるを集中攻撃するか。顔面とか急所とか）
　遊びとは思えない気迫を感じ取った北原みゆきは、巴も刀に恥ずかしい思いをさせられた被害者なのかと思っている。
（すごい気迫だよぉ。私も頑張ろうっと）
　緊張気味のみゆきに「リラックスしよう」と励ます響タルト。
「さて試合開始か……今回もよろしくね、御剣くん」
「今回も逃走マフィア同様、勝たせてもらう！　負けるつもりはない！　日暮、よろしくな」
　普段から身体を鍛えているので運動なら任せろ！　な刀は、ねむると連携して身体能力の差で押し切る。
「とりあえず、巴さんを徹底マークしようか」
「それがいい。桜崎は手強いからな」
　巴が自分を標的にすることを念頭に、ねむるは立ち回り方を考える。
「サーブはマフィア側からでいいね」
「ああ、いいぜ」
　ネット越しに、巴と刀の視線が、勝敗をめぐり火花を散らす。

　タルトのサーブで、逃走マフィアリベンジを賭けたビーチバレー勝負が始まった。
「いける！」
　速度、威力ともにあまりないので軽々とレシーブできる、と思ったら……。
「水着がずれちゃう～♪」
　腕で胸を挟み、胸の谷間を強調して悩ましい声を出すタルトに「マジ！？」とチラ見した刀の顎にボールが当たった。
（すごいタルトちゃん！　刀くんのエッチさを逆手に取った！）
　刀もだが、体育の授業でねむるの動きを見ているみゆきは、彼も意外と侮れないと警戒。
　作戦成功！　と喜ぶタルトと巴はハイタッチ。
「やだー、やっぱり刀くんってムッツリだね～♪」
「……違うんです！　俺だからじゃないんです！　男は水着がズレたって聞いたら反応しちゃうんです！」
「言い訳するんじゃないよ、ムッツルギ」
「その言い方やめろ！　倍返しで反撃だ！」
　ムキになる刀はビシッと巴を指し宣言。
「反撃するって？　上等さ。最後に立っている方が勝ちだ。あたしも本気でいくよ」
「二度とムッツルギなんて言わせない！」
「そんなこと二度と言えないようにしてやるよ！」
　怒鳴る巴に、ただならぬ気迫を感じた刀を除く面々は、彼女を怒らせないほうがいいと思った。

　次のサーブは、ねむるがレシーブ。
（悪いけど巴さんは狙わないよ。狩りってのは得てして弱肉強食なんだから）
　みゆきに強烈なスパイク…… と、見せかけ、ねむるはループレシーブの時間差攻撃を仕掛ける。
「いい作戦があるのか？」
　パスを繰り返すことに疑問を抱いた刀の問いに「まぁね……」と眠そうな目で答える。
　何度かそれを繰り返しているうち、そろそろいいかな……と、ねむるは刀にトスを頼む。
「強い攻撃は多分打たないから安心してね……」
　作戦どおり、狙うのは巴ではなくみゆき。
「身体能力ではこちらが不利。なら！」
　向こうが失敗してくれれば……とネットに近づき、ジャンプしてブロックしようとするが指先を掠める程度に終わった。
「ごめんなさい……」
「気にしないで、みゆきちゃん」
「あんたの仇、あたしが取ってやるよ」

　捜査官側のサーブはねむる。
　無回転のブレ球サーブで撹乱を狙うが、巴は難なくレシーブしタルトにボールを。
「巴ちゃん！」
　タルトがトスしたボールを、巴は、ねむるの急所をめがけ叩き込む。
「アイタッ！　はは……凄いスパイク。それに急所狙いか。ふふ、面白くなってきたねえ」
　ねむるはバックステップした状態で腕を引き、急所狙いの強烈なスパイクの威力を減退。
「御剣くん」
　刀のろっこんを活かせるように、離れた箇所に無茶ぶりトスを。
　奥の手だ！　と刀は頭の中で撃鉄を落として加速しようとしたが……。
「刀！　ろっこん使用は反則じゃないのかい！？」
　巴もろっこんを使ったのだが、自分のことを棚に上げる。
「ハイすいません、っておい！？　桜崎もさっき使ってたじゃないか！」
　舌打ちする巴は、先程の反撃宣言の怒鳴りでろっこんを使っていた。
（バレてたか。ろっこんを封じたところで、刀相手は分が悪いねぇ）
　巴の物言いで一時中断したが、仕切り直して再勝負を。