数多の夜を超えし腐敗の王（アサリ）｜リアクション

数多の夜を超えし腐敗の王（アサリ）

●プライベートビーチで何をしよう？

「さっきまで人で溢れかえっていたのに……なにか事件かな？」
　テオドロス・バルツァの「腐敗の王をどうにかしろ」という声が聞こえた北原みゆきは、気が付いた時には既にここにいた。
「腐敗の王をどうにかするのが、今回の目的なの？　なんというか、名前の響きにゾクッときちゃう……」
　中二病な前向き思考で、テオとは仲良くなれそうと親近感をおぼえた。
「瘴気を撒き散らす腐敗の王を、約束の地に封印させること。それが勇者たる私の使命なんだね」
　すっかり勇者気分になっているみゆきだった。

「テオ君……ありがとう！」
　アサリを埋めてから、おもいっきり遊ぶことにする恵御納夏朝。
（それにしても、数多の夜を超えし腐敗の王って名前、長いなぁ……。アサリさんでいいか……）
　たしかに、舌を噛んでしまいそうな長い名前である。

「私、なんでここにいるの？」
　気が付いたときには、既にここにいた朝野未沙は「お礼、言われるようなことしたかな？」と首を傾げる。
　考えても、思い当たることは何もないので「ま、いっか」と気にせず、思いっきり遊ぶことに。
「せっかくビーチに連れてきてもらったんだから、おもいっきり遊ばないと損だよね！」
　未沙同様、気にせず、釣りでもすることにした亜魚隈猯利。
「世話になった礼だとか言っていたな。俺はテオの役に立った覚えはあまりないんだが……まあいいか」
　自分達以外誰もいないのなら、のんびり釣りができそうだ。大物が釣れるよう、持参した釣竿を取り出す。
「テオは本当にフリーダムだね……。素直に「ありがとう」って言えばいいのに」
　音海なぎさは、テオが作った世界なら、適当な選択でも死なないだろうからと、適当に楽しむことに。

　聞き慣れたテオの声に、いつもとちょっと違う調子に吹き出してしまった桃川圭花。
（のんびりするような時間はあまりなかったけど、今日は……）
　テオの厚意に甘え、プライベートビーチでゆっくりすることにした。
「そういうことなら、しばらくここでゆっくりしてってあげる」
　ありがと♪　と、どこかで様子を窺っているかもしれないテオにお礼を言う。

　厚意に甘えてのんびりしたり、思いっきり楽しもうと決めた者がいる中、憤っている者も。
「まーた糞猫か！　有無を言わさず他人を拉致して行きやがって！　ああ畜生め、せめて存分に殴らせろ！」
　桜崎巴は、事あるごとにテオに神魂事件を解決させられるこの怒りをどうしてくれようと腹が立った。
　ビーチに顔見知りが何人かいたので、そのメンツ相手に憂さ晴らしさせてもらう！　と鬱憤を晴らすべく、大暴れすることに。

　テオも一緒に遊びたい、と探す者もいた。
「せっかくのテオの心づくしなのだ。倒れるまで遊ぶのだ♪　どうせならテオも遊んで行けばいいと思うのだ」
　後木真央は「テオどこなのだ？」と周囲を探すが、どこにも姿は見えず。
「真央ちゃんもテオ探しているの？」
　にゃーくんと一緒に寝子ヶ浜海岸で遊んでいた桜庭円は、テオが素直になったのはいいことだけど、一緒に遊ばないの？　と思った。
「テオも、どうせなら一緒に遊んで行こうなのだ。たまにはお休みするといいと思うのだ！　円ちゃんも、そう思うのだ？」
「そうだね」
　今回みたいに、自分達の世界から、どうにも出来ないものを切り離してくれたりしてくれている。
　思惑はどうであれ、寝子島の皆を護ってくれてる気もする。
「ボクもそう思う。テオにはけっこうお世話になっているからお互いさまなんじゃないかなー？　にゃーくんも一緒にテオと遊びたいよね？」
　遊びたいー、と答えるかのように鳴くにゃーくん。
「真央ちゃん、一緒にテオ探そう」
「そのつもりなのだ」
　ふたりは「テオー」と名前を呼びながら、去って行ったと思われる方向をウロウロする。
「隠れて休んでるとか、どこかから見てるとか？　にゃーくん、わかるーかなー？」

　ふたりと１匹でくまなく探したが、結局、テオは姿を現さなかった。

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