数多の夜を超えし腐敗の王（アサリ）｜リアクション

数多の夜を超えし腐敗の王（アサリ）

●リベンジとプライド

　とんだことになっちまった、とため息をつく桜崎巴は、日暮ねむるがビーチベッドから身体を起こしたのを見た。
　ようやく目が覚めたねむるに近づき、再度、ビーチバレー勝負を申し込む。
「目が覚めたようだねぇ。そろそろ勝負しようじゃないか」
「……そうだね、やろうか」
　とはいえ、２人だけの勝負は面白味がない。
　誘えそうな人物はいないか巴が辺りを見て探していると、海の家に向かう響タルトを見かけた。
（ちょうどいい具合にタルトの奴がいるね……）
　タルトに駆け寄ると、ビーチバレーをしないかと誘う。
「ビーチバレー？」
「日暮とふたりだけでしても勝負にならないし、面白くないんでねぇ」
「でも、それだと１対２にならない？」
「大丈夫、あそこに刀がいるから誘えばいい」
　巴とは夢の中のゲームで仲良くなり、その時、自分を騙した御剣刀にリベンジしたい。
　ボソリと「刀のリベンジもあるよ」という巴の言葉に「乗った！」と即答するタルト。
「おい、刀」
　準備運動をして泳ごうとしていた刀だったが、巴に呼ばれたので「何だ？」とそちらのほうへ。
「日暮に響、桜崎も来ていたのか」
「……まあね」
　目が覚めた、と言う割に大あくびをしながら答えるねむる。
「あんたもビーチバレー勝負しないかい？　男が日暮だけじゃ不公平だし」
「いいぜ。やるからには本気出す」
　巴達がビーチバレーをやることを知った北原みゆきは、私も参加してみようかな……と、仲間に入れて、と声をかける。
「いいよ。あんたもやろう」
「いいの？」
「皆でやったほうが楽しいよ。ね？」
「３対２の勝負になるけどいいかい？」
　ねむると刀は、ハンデだと女の子チームは３人でいいと承諾してくれた。この考えが彼らを不利な状況になろうとは……。
「女の子チームだし、３人でいいよね？」
「ああ、いいぜ」
「逃走マフィア同様、男が捜査官側、女がマフィア側だね。それでいいかい？」
「……あの時のリベンジだと、そうなるね」

　勝負の前に、タルトが作戦タイムと勝負に待ったを。
　ねむるは逃走マフィアで直接関わっていなかったが、九夜山のサーキット仲間。
　刀が強いことは知っているから勝てる気はしないけど、ちょっと引っ掻き回してみることに。
「僕にいい作戦があるんだ♪」
　思いついた作戦を、男子に聞こえないよう、みゆきと巴に話す。
「巴さんがボールを打つ時に、僕が御剣くんに「あっ、水着がずれちゃう～♪　見ないで～♪」と悩ましい声を上げるの」
「それで、あいつらは絶対こっちを向くだろうから、ボールへの反応が遅れるってわけだね」
「そういうこと。何度も通用しないだろうけど、３回は効くかな？　僕が打つ時には「巴さん、みゆきちゃん、胸元見えてるよ～」とか」
　うまくいくの？　と不安そうなみゆきだったが、タルトにこう言われたことで考えが変わった。
「みゆきちゃんはパンドラの時、御剣くんに、あられもない姿を見られちゃったんだよね～」
「う、うん……」
　その時のことを思い出し、みゆきは泣きそうな顔で俯く。
「だったらリベンジしないとねぇ。よし、それでいこう！　勝負水着にこれを選んでよかったよ」
「決まりだね。よーし、勝つぞー！」
（巴ちゃんの水着、大人っぽくてカッコイイなぁ。幼児体型の私には到底着られないよぉ）
　ビーチバレーのためだけにビキニを着ているの？　というのは考えかと思うみゆきだったが、あながち間違いではない。

　やる気マンマンの女子チームを見ながら、刀は全力で勝ちにいく！　と拳を握る。
（ムッツルギ刀という不名誉な呼び名を払拭するため、必ず勝つ！！）
　女の子にムッツリスケベと思われている刀は、勝負に勝って汚名を返上したいようだ。